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Trademark Appeal Case

無料配布物の商品該当性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2001−31213(T2001−31213/J2)
審判種別取消
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第3113061号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第16類「雑誌,新聞,書籍」を指定商品として、平成5年3月6日登録出願、同8年1月31日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 証拠関係について

乙号証中、以下は重複する。

1.乙第5ないし12号証は、乙第2号証の1で示した「GABA/がば 2001.3. vol.24」の原本であり、乙第2号証の1、2及び6を含むものである。

2.乙第13ないし20号証は、乙第3号証の1で示した「GABA/がば 2001.6. vol.25」の原本であり、乙第3号証の1、2を含むものである。

3.乙第21ないし27号証は、乙第4号証の1で示した「GABA/がば 2001.6. vol.26」の原本であり、乙第4号証の1、2を含むものである。

4.乙第28号証は乙第4号証の1と、乙第29ないし33号証は乙第2号証の3ないし8と、乙第34号証は乙第3号証の3と、乙第35ないし37号証は乙第4号証の3ないし5と、それぞれ同一のものである。

第3 請求人の主張

請求人は、「本件商標は、その登録を取り消す。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のとおり述べ、証拠方法として甲第1ないし9号証を提出した。

1.請求の理由

本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国において使用されていない。したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録は取り消されるべきものである。

2.答弁に対する弁駁

(1)乙第2、3、4号証の1(乙第5、13、21号証)によれば、被請求人は「フリーペーパー情報誌」(以下「本件冊子」という。)を編集・発行し、かつ、本件冊子には本件商標と同じ「GABA/ガバ」の標章の記載は認められる。

ところで、商標法は、市場において転々流通する商品の識別標識としての商標に独占排他権を付与して保護することを目的とするものであるから、商標法上における商品とは、それ自体使用価値・交換価値を有し、取引市場において貨幣と交換することを目的として流通する有体動産であるとされている。

しかしながら、本件冊子の表紙には「アジア雑貨の店チョウタリイ(奈良市)等で無料配布」との記載があり、また、その裏表紙には「キラリと輝く情報がございましたら下記までお寄せ下さい。」、“きら星通信がば”無料配布場所として「チョウタリイ(奈良市あやめ池)」との記載もあるから、本件冊子は、独立して経済取引の対象となっているとは考えにくく、本件商標は、商標法上の商品についての使用ということはできないと思料する。

したがって、商標法上の商品とは認められない商品に本件商標を使用しても、本件商標の使用に該当するものではない。

(2)「チョウタリイ」のホームページ(甲第1号証)によれば、「チョウタリイ」とは、ボランティア等を活動内容とする団体であり、展示会、音楽会、バザー等を行い、それらの収益金によってネパールの障害者やインドネシアのストリートチルドレン等の支援活動等を行っているとの記載がある。

そして、乙第2号証の6(乙第8号証:本件冊子vol.24)には「収益の一部をインドネシアのストリートチルドレンの支援金とさせて頂きます。」と、同号証の7(乙第32号証)には「収益は、タイのエイズの両親を持つ子供たちへ寄付されます。」と、同号証の8(乙第33号証)には「収益の一部をインドネシアのストリートチルドレンの支援金とさせて頂きます。」と記載されている。

これらの事実を総合的に勘案すると、被請求人は自らボランティア団体「チョウタリィ」へ協力する目的をもって、若しくは、ボランティア団体「チョウタリィ」からの募金収集の依頼を受け、ボランティアに供するための収益金を収集する手段として情報の提供を行っていると考えるのが自然である。

被請求人が、情報提供者から少しでも掲載料を徴収しているのであれば、独立して経済取引の対象となるのは第36類の役務である「慈善のための募金」となるし、一切の対価の支払いを得ることなく冊子に掲載しているのであれば、商標法上の商品に該当しないこと前述のとおりである。

(3)仮に、本件冊子が商標法上の商品であったとしても、本件冊子が本件審判の請求日前3年以内に頒布されたことが何ら立証されていない。

すなわち、乙各号証中に頒布時期を推定されるものとしては、乙第2号証の1(乙第5号証)の「2001.3.vol.24」、乙第3号証の1(乙第13号証)の「2001.6.vol.25」、及び乙第4号証の1(乙第21号証)の「2001.9.vol.26」の記載があるのみで、本件冊子の印刷発行日や印刷日の記載はない。さらに、報告書(乙第1号証)は、本件審判の請求日以降である平成13年12月18日に作成されたものであり、本件商標の使用を立証するものではない。

前述のように、冊子の発行月や号数の記載のみでは本件冊子が実際に市場に頒布されたことを証明するものではない。

(4)商標法第50条第1項に規定する登録商標の「使用」というためには、年間僅か数千部程の発行、かつ、奈良市ないし大阪市における配布程度では到底十分とはいえない。したがって、被請求人による「使用」行為は、商標法第50条第1項規定の「使用」に該当するとするには十分ではない。

(5)上記(4)に加え、被請求人は、本件商標をその指定商品「雑誌,新聞,書籍」に使用していない。

本件冊子「vol.24」(乙第5ないし12号証)においては、表紙及び裏表紙を除く全6頁中の3頁半、すなわち、全体の約6割が、「ほっとチョウタリィ」、「スクールガイド」(いずれも「お問合せ先」がチョウタリィ)、「アジア諸国雑貨チョウタリイ」、「チョウタリイ文庫の本」として、チョウタリィに関する記事及び広告に割かれている。同「vol.25」(乙第13ないし20号証)においては全6頁中の4頁半、すなわち7割強もの紙面がチョウタリィに関する記事及び広告である。同「vol.26」(乙第21ないし27号証)においては、全6頁中3頁半である。

被請求人は、ある特定の商人に関する記事及び広告が紙面の6、7割を占める「雑誌」あるいは「新聞」を、自己の「商品」として、該特定の商人に対し販売していると主張していることになる。

「雑誌」や「新聞」は、それ自体で「独立した読み物」として完結し(甲第6号証)、それ自体で広告部分から切り離された独自の価値(普及度やイメージ)を具えていることを要する。

被請求人が個人で作成していると目される冊子「がば」は、「複数の執筆者や記者が書いた作品や記事・写真などを掲載する定期刊行の出版物/雑誌」(甲第7号証)に該当せず、また、B5版程の紙に僅か6頁程(しかもその多くは広告)でなる冊子が「社会の出来事について事実や解説を広く伝える定期刊行物/新聞」(甲第7号証)に該当するとも思われない。また「工芸 花工房」、「仙骨無痛調整ヒーリング」、「チョウタリイ文庫の本」など、全体に占める広告の量が過大であること、また、B5版程の紙に僅か6頁程でなるその体裁からして、到底これが「独立した読み物としての内容を有して」いるとはし難く、これ自体が商取引の対象となる「書籍」に該当するとも考え難い。したがって、被請求人は、登録商標を指定商品に使用していないことになる。

(6)仮に形式的に、冊子「がば」が「雑誌,新聞,書籍」に該当するとするにしても、被請求人とチョウタリイの関係は、冊子「がば」の編集役務提供者(被請求人)と注文主(チョウタリイ)とみるのが相当であり、したがって、被請求人は役務「広告物の企画・編集・作成」の類について本件商標を使用しているとするのが適当と考える。

東京高裁における昭和52年8月24日判決(甲第9号証)は、「日曜夕刊」なる登録商標を所有する商標権者が、既刊の朝日新聞の記事からの一部抜粋及び近所の面白いニュースを取り上げて記事とした印刷物を「日曜夕刊」と題し、朝日新聞の取次販売店店頭の新聞販売用スタンドに入れて置き、不特定多数の希望者に自由に取らせて無料で配布していた事案について、「被告(商標権者)が、「日曜夕刊」なる印刷物を無料で配布したのは、被告の朝日新聞取次販売営業の顧客に対するサービスたるにすぎず、もとより、商取引としてなされたものとはいえず、したがって、右印刷物は商標法二条にいう商品というに足りない」としている。

冊子「がば」は、チョウタリイの活動や商品を紹介する記事の格別の多さ、及びこれを来店した者にチョウタリィが無料で頒布している態様を踏まえれば、「日曜夕刊」と同様に、少なくともチョウタリイにとっては、チョウタリイの顧客に対するサービスあるいはその活動や商品を紹介する広告物の類とみるのが相当であり、この限りにおいて商標法2条にいう「商品」というに足りない。

加えて、被請求人は、実質的に、チョウタリイの依頼により、その方針に基づきあるいはこれを踏まえ、冊子「がば」を編集・発行しているのであって、これは、顧客に対するサービスあるいはその活動内容を紹介する広告物の類としてチョウタリイ店頭で配布される無料の冊子について、「注文主の依頼に基づき、記事等を注文主より交付を受けないしは他より入手しこれを編集加工して完成品として注文主に提供する」編集サービスを行っている、かかる労務への対価として乙第38号証の1などの領収書記載の金額が被請求人に支払われていると考えるのが、最も自然である。

(7)以上のとおり、被請求人は、登録商標を指定商品について使用していないから、本件商標は、その登録を取り消されるべきである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由及び審尋に対する回答を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1ないし43号証(枝番を含む。)を提出した。

1.本件冊子が商標法上の商品であることについて

(1)請求人は、本件冊子はその表紙に「アジア雑貨の店チョウタリィ(奈良市)等で無料配布」とあるから、市場で取引を供される目的として生産され又は取り引きされているものではないと主張する。

商標法上の商品とは、「市場で取引の対象となりうる流通性、代替性のある有体動産である」と一般的に定義されている。本件冊子は、表記のとおり、配布そのものは無料ではあるが、チョウタリィに対し有料で販売している。その根拠となる資料としては、チョウタリィを経営する有限会社貴貴(以下「貴貴社」という。)の平成13年6月30日決算の会計済み総合仕訳帳に、日付欄「6月30日」、摘要(内容)欄「S−36国内仕入れ」、借方欄「商品仕入高」、貸方欄「長期借入金」、取引金額欄「500000円」とあり、被請求人が経営する「染色工芸 花銀河」の領収書が添付されていて、それに基づいて公認会計士により作成されている。したがって、取引として金銭と交換されていることは明白であり、それ自体が使用価値、交換価値を有した商品としての要件を満たしている(乙第38号証の1ないし12)。ちなみに、平成13年6月30日の取引金額欄「500000円」の内訳は、本件冊子22号 単価50円×2000部=100,000円

本件冊子23号 単価50円×2000部=100,000円

本件冊子24号 単価50円×2000部=100,000円

本件冊子25号 単価50円×2000部=100,000円

インドネシア語重要単語集 単価50円×400部=100,000円である。

なお、乙第38号証中の各「領収書」に記載されている「商品代金」の「商品」及び「総合仕訳帳」中の「摘要」欄の記号(例えばS−36)等が、本件冊子であることについては、被請求人の取引先である貴貴社の「商品代金支払い証明書」(乙第40号証)及び貴貴社の顧問公認会計士である小川公認会計事務所の「記帳証明書」(乙第41号証)より明らかである。また、「領収書」に付されている記号(例えばS−36)は、会計の便宜上に付されたものであり、「領収書」に記載の「染色工芸 花銀河」の屋号は、「花銀河」であり、「花銀河出版」は「花銀河」の出版部門である。「花銀河」の代表者は被請求人である(乙第42号証の1ないし3)。

(2)本件冊子と同様に、無料配布される冊子等、いわゆるフリーペーパーと呼ばれるものが多数登録されている。例えば、リクルート社発行の無料配布誌「タウンワーク」「ホットペッパー」などがある。このようなフリーペーパーの発行者は、無料配布といえども決してボランティアで発行されているものではないとするのが客観的にみても常識であろう。

また、上記のように、無料配布の冊子等が商標登録されているという事実の背景には、無料配布といえども、その物自体が、独自の名称を用いた独立した有体動産として、独自の付加価値を有し、市場に認知され、需要者に譲渡される目的をもって生産され、流通され、市場において取引されているものであるから、その商行為は、その物自体が、独立した独自の商品としての流通性、代替性を有する有体動産であり、正しく商取引においての商品そのものである。

したがって、無料配布される冊子等は、商品として流通者及び需要者にその出所を明確にし、かつ、流通者、需要者が混同を招かないようにするためにも、当然として商標を出願し登録を受けるものとしての対象であるべきものである。

(3)請求人は、本件冊子の配布先であるチョウタリイに関し、「チョウタリィとは、ボランティア等を活動内容とする団体であり」と指摘して、チョウタリィから「情報提供者から少しでも徴収しているのであれば、第36類の『慈善のための募金』となるし、一切の対価の支払を得ることなく情報誌に掲載しているのであれば、商標法上の商品に該当しない。」旨主張する。

ここで問題となるのは、発行の主体者は、どこにあるかという事である。仮に、チョウタリィ自体が自己の団体の活動内容を報告するようなニュースレターを自ら発行していればそれは、「慈善のための募金」という役務になる可能性もあるかもしれないが、本件冊子の発行者は、あくまでも被請求人であり、被請求人の主体性により独立して発行されているものである。チョウタリィが発行しているものではない。

いうまでもなく、情報誌とは情報の提供を広く求めるものであり、その内容において仮に情報の一部に非営利的な情報を掲載したとしても、それは、あくまでも情報誌としての情報の一部にしか過ぎず、それは、対価の有無を問わず、それをもって第36類の「慈善のための募金」であるという主張は、到底成り立つものではない。

3.本件商標の使用時期等について

(1)請求人は、本件冊子には印刷日等の記載がない旨主張するが、本件冊子は、発行年月が記載されており、常識的に考えても、配布時期はその年月内であることは、充分推定できるものである。

また、被請求人は、本件冊子に掲載された美術館、企業等の情報先からの日付が明記されたマスコミ向けに送付される資料と被請求人の宛名を明記した情報先からの封書等を添付しており、このことによっても、本件商標がこの3年以内に使用されていたことを立証するものである。

(2)請求人は、乙第1号証(報告書)に関し、「当該報告書は、本件請求日以降である平成13年12月18日に作成されたものであり、乙第1号証は、本件商標の使用を立証するものではない。」としているが、そもそも本件冊子の存在により本件商標の使用は、客観的にみても立証されている。

第5 当審の判断

本件審判に関し、使用に係る商標が本件商標の使用であること及び本件商標の使用者が商標権者であることについて、当事者間に争いがない。そこで、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品のいずれかについて使用されたか否かについて検討する。

1.乙第5ないし38号証及び乙第40ないし43号証(枝番を含む。)によれば、以下の事実が認められる。

(1)乙第5ないし12号証(本件冊子)について

ア.その表紙には、「きら星通信」、「『きら星』の如くキラリと輝く、人・文化・街のフリーペーパー情報誌」、「2000.3.vol.24」、「アジア雑貨の店チョウタリィ(奈良市)等で無料配布」、「発行所 花銀河出版 〒633 奈良県桜井市谷上田町135−7」、「編集・発行人 神戸日出夫 Hideo Kanbe 2001 Printed in Japan」などの文字ともに本件商標と同一態様からなる商標が表示されている。

イ.その内容は、「Museam Guide」として伊丹市立美術館で「2/10(土)〜3/25(日)」に開催される「笑い展」及び兵庫県立近代美術館で「4/7(土)〜5/20(日)」に開催される「シャガール展」に関する案内、「草木染タペストリー ランプ 製作/工房 花銀河」、「ひきたま うた・カリンバ・コラ・弾き語り・・・出前演奏致します」などと記載された広告、「ほっと/チョウタリィ」として「津軽三味線コンサート」、「アジアの家具展」、「バザー開催」に関する案内、インド舞踊等の「スクールガイド」、その他チョウタリィに関する広告、森の宮ホリスティック治療院の広告などが掲載されている。

ウ.裏表紙には、「“きら星通信がば”無料配布場所/チョウタリイ(奈良市あやめ池) 森の宮ホリスティック治療院(大阪市)」、「キラリと輝く情報がございましたら下記までお寄せください。/・・花銀河出版『がば』編集室」、「『がば』は、季節毎に発行しています。」などの文字が記載されている。

(2)乙第13ないし20号証(本件冊子)について

その表紙は、前記(1)ア.で認定した「2000.3.vol.24」の部分が「2000.6.vol.25」となる以外の文字部分は同一である。

また、その内容も、「きら星レポート」のほか、「Museam Guide(白髪一雄展)」、広告、「ほっと/チョウタリィ」に関する案内、「スクールガイド」などが掲載されている。さらに、裏表紙も前記(1)ウ.の記載と同様である。

(3)乙第21ないし27号証(本件冊子)について

その表紙は、前記(1)ア.で認定した「2000.3.vol.24」の部分が「2000.9.vol.26」となる以外の文字部分は同一である。

また、その内容も、「ムービーいんふぉめぇしょん」として「チアーズ!」の案内のほか、「Museam Guide(浮世絵展)」、広告、「ほっと/チョウタリィ」に関する案内、「スクールガイド」などが掲載されている。さらに、裏表紙も前記(1)ウ.の記載と同様である。

(4)乙第28ないし37号証は、乙第5ないし27号証に掲載された美術館等で開催された展覧会、映画、コンサート、バザー等のちらし及びこれに関連する書類(封筒等)である。

そして、兵庫県立近代美術館からの2001年2月23日付FAX(乙第31号証)には、「年間の展覧会案内をお送りいたします。併せて、『シャガール展』を紹介していただきたく、よろしくお願い致します。」なる記載がある。

(5)乙第38号証の1ないし12(平成13年6月30日、同13年10月4日、同14年2月22日、同14年4月12日、同14年5月10日及び同14年6月15日付けの「染色工芸 花銀河」作成の領収証並びに平成13年6月分、同13年10月分、同14年2月分、同14年4月分、同14年5月分及び同14年6月分の貴貴社の「総合仕訳帳」)には、例えば、平成13年6月30日付けの領収証(乙第38号証の1)に、「チョウタリィ様」、「¥500.000」、「S−36 商品代金として」、「染色工芸 花銀河」等の文字が記載され、これに対応するように、貴貴社の平成13年6月の「総合仕訳帳」(乙第38号証の2)に、「月日 6/30」、「S−36国内仕入」、「商品仕入高」、「500000」の記載がある。

(6)乙第40号証(貴貴社による「商品代金支払い証明書」)は、貴貴社が、乙第38号証の1ないし12による「商品代金」(商品仕入高)について領収証及びこれに対応する「総合仕訳帳」に記載の金額を花銀河代表である被請求人に支払ったことを証明しているところ、平成13年6月30日の商品代金は、本件冊子22号から25号及びインドネシア語重要単語集に関するもの、同14年4月12日の商品代金は、本件冊子26号及びインドネシア語重要単語集に関するもの、同14年5月10日の商品代金は、本件冊子27号及びインドネシア語重要単語集に関するものであり、それ以外の商品代金は、インドネシア語重要単語集に関するものとの記載がある。

また、乙第41号証(公認会計士の小川皖司による「記帳証明書」)は、乙第38号証の1ないし12の総合仕訳帳及び領収書との関係を証明したものである

(7)乙第42号証の1及び2(1999大阪商工名鑑)には、「印刷関連サービス業」の項に、「屋号・代表者」欄に「花銀河 代表 神戸 日出夫」、「所在地」欄に「奈良県桜井市谷上田町135−7」、「業種・取扱商品名」欄に「芸術品及び装飾品、壁掛け、壁面装飾品、商業印刷物、宣伝用印刷物」の記載がある。

(8)乙第43号証の1及び2(2001/6〜2002/5 職業別タウンページ)には、「出版社(情報誌)」の項の「桜井市」に「花銀河出版 谷135−7」の記載がある。

2.(1)上記1.の認定事実を総合すると、本件冊子は、「人・文化・街のフリーペーパー情報誌」、「アジア雑貨の店チョウタリィ(奈良市)等で無料配布」などの文字から、フリーペーパーと認められる。

ところで、フリーペーパーは、「収入を広告でまかない、無料で配布される新聞、雑誌。団地などで配布され、買い物情報、生活情報などを中心に掲載したものが多い。」(株式会社三省堂、1998年3月30日第1刷発行「官公庁のカタカナ語辞典 第2版」)、「無料紙。広告収入だけで製作され、読者に無料で配布される新聞。・・配布地域を細分化して限定しているため、本紙には向かない地域の小規模広告主を吸収でき、・・読者にとっては地域の広告を見ることができ、また付随して生活情報が掲載されているのが役に立つというメリットがある。」(株式会社自由国民社発行「現代用語に基礎知識2001」)というものである。

そして、本件冊子の掲載内容は、美術館、博物館等の開催内容の紹介、チョウタリィ(奈良市)で開催されるイベントの紹介、その他出前演奏の広告、スクールガイド(問い合わせ先は「チョウタリィ」との記載があるが、該チョウタリィが主催するものとは考えにくい。)、森の宮ホリスティック治療院の広告などであり、フリーペーパーとして何ら不自然なところはない。また、題号と理解される「GABA/がば」は、フリーペーパーとしての内容を具体的に表示するものとはいえず、それ自体自他商品の識別機能を有する態様であるといえる。さらに、本件冊子は、2001年(平成13年)3月、2001年(平成13年)6月、2001年(平成13年)9月に発行されたと認められ、また、「『がば』は、季節毎に発行しています。」との記載からしても、定期的に発行されたものであり、かつ、発行所、編集・発行人も明記され、定期刊行物としての体裁が備わっているものということができる。

そうすると、本件冊子は、指定商品中の「新聞」の範疇に属する商品というのが相当である。

(2)本件冊子が、例えば、チョウタリィ(奈良市)等で無料配布されるものであるとしても、少なくとも被請求人とチョウタリィとの間には、本件審判の請求の登録前3年以内と認められる平成13年6月30日の時点(乙第38号証の1及び2)において、本件冊子の取引があったと推認することができ(この点に関しては当事者間に争いがない。)、上記した定期刊行物としての特徴を備わった本件冊子は、市場において流通する商標法上の商品であると認めることができる。

なお、チョウタリィとの間における取引書類(領収証)中にある「染色工芸 花銀河」の代表者は、被請求人本人であることも認めることができる。

3.請求人の主張について

(1)請求人は、本件冊子が無償配布であるが故に、独立して経済取引の対象となっているものとはいえず、商標法上の商品ではないから、本件商標の使用に当たらない旨主張する。

しかしながら、本件冊子は、流通過程におかれる商標法上の商品であること前記のとおりであって、たとえ、最終需要者には、無償で配布されているものであるとしても、一定の発行所から、定期的に発行されているものであることが認められ、ある需要者にとっては、その情報の内容が一定の内容(美術館、博物館等の開催内容の紹介、チョウタリィで開催されるイベントの紹介など)をもっていることが保証され、情報の内容そのものに独自の価値を見出して、「GABA/がば」なる題号を目印にして、他の情報誌等と区別して選別するというのが相当である。

してみると、使用に係る「GABA/がば」商標(本件商標)は、自他商品の識別標識としての機能を発揮するものということができ、かつ、それ自体独自の価値を有する内容をもつ印刷物ということができるから、商標法上で保護するに値する商標ということがいえるのであって、その登録を維持すべき必要性は高いというべきである。

したがって、本件冊子は、最終需要者に無償で配布されているものであることのみをもってして、商標法上の商品でないとすることはできない。

(2)請求人は、甲第1号証を示し、チョウタリィは、ボランティア活動をする団体であり、また、情報提供者から本件冊子への掲載料を徴収しているのであれば、独立して経済取引の対象となるのは、第36類「慈善のための募金」であるし、掲載料を徴収していないのであれば商標法上の商品に該当しないとも主張する。

しかしながら、乙第2号証の7及び8(乙第32、33号証)に、「収益は、タイのエイズの両親を持つ子供たちへ寄付されます。」、「収益の一部をインドネシアのストリートチルドレンの支援金とさせて頂きます。」と記載されているとしても、これらは、「津軽三味線コンサート(料金 1500円)」からの、あるいは「アジアの家具展」での収益の全部若しくは一部を寄付するというものであって、本件冊子への掲載料の全部若しくは一部を寄付するというものではないから、上記請求人の主張は当を得ていないのみならず、本件冊子が商標法上の商品であることは前記のとおりである。

(3)請求人は、本件冊子が商標法上の商品であったとしても、乙第1号証ないし乙第4号証の5によっては、本件冊子が本件審判の請求日前3年以内に頒布されたことが何ら立証されていない旨主張する。

しかしながら、本件冊子の表示には、それぞれ「2001.3.vol.24」、「2001.6.vol.25」、「2001.9.vol.26」の記載があり、これよりそれぞれ2001年(平成13年)3月、2001年(平成13年)6月、2001年(平成13年)9月に発行されたことが理解されるものであり、これらの裏表紙に記載された「『がば』は、季節毎に発行しています。」と符合する。このことは、例えば、乙第2号証の5(乙第31号証)に、「シャガール展 2001.4.7〜5.20」との記載があることからも認め得るところである。そして、これらの発行日は、本件審判の請求の登録日(平成13年11月21日)前3年以内であることが明らかである。

(4)請求人は、本件冊子は、発行部数が少なく、配布地域が狭いから、商標法第50条で規定する「使用」に当たらない旨主張し、さらに、被請求人の行う本件冊子の編集、発行活動は、注文主たるチョウタリィのための行う編集サービスにすぎないものであるから、商標法上の「商品」に該当しないものであり、本件商標の使用は、その指定商品についての使用とはいえない旨主張し、甲第9号証(「日曜夕刊」判決)を引用する。

しかし、フリーペーパーは、前記認定のとおり、団地など配布地域を細分化して限定して配布されるものであり、そのような配布方法からして配布部数も必然的に少なくならざるを得ない。しかし、このような性格を有するフリーペーパーたる本件冊子が1回につき、2000部発行していることは必ずしも少ない部数ということはできない。

また、本件冊子に使用される「GABA/がば」は、他人の取り扱う新聞、雑誌等と識別し得る態様で使用され、商標として機能していること、及び本件冊子が商標法上の商品であることは前記したとおりである。さらに、本件冊子に掲載されている内容は、チョウタリィ(奈良市)で開催されるイベントの紹介のほか、チョウタリィ以外の事業者の広告、あるいは美術館、博物館等の開催内容の紹介などがあり、また、表紙に記載された発行所、編集・発行人の記載及び裏表紙に記載された「キラリと輝く情報がございましたら下記までお寄せください。/・・花銀河出版『がば』編集室」、「『がば』は、季節毎に発行しています。」などの文字からみても、チョウタリィのためにのみ行う編集サービスとみることはできない。

(5)したがって、上記(1)ないし(4)に関する請求人の主張は、いずれも理由がない。他に前記2.の認定を覆すに足る証拠の提出はない。

4.むすび

以上のとおりであるから、被請求人は、商標権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を請求に係る指定商品中の「新聞」について使用していたことを証明したものと認め得るところである。

したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すことはできない。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

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