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Trademark Appeal Case

NONIの普通名称性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2001−35317(T2001−35317/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第4377849号の指定商品中「せっけん類,化粧品,歯磨き」についての登録を無効とする。
その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その二分の一を請求人の負担とし、二分の一を被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4377849号商標(以下「本件商標」という。)は、平成11年2月12日に登録出願され、「NONI」の文字を標準文字により書してなり、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,歯磨き,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリーム,靴墨,塗料用剥離剤」を指定商品として、同12年4月21日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び第1答弁に対する弁駁を概略次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第34号証を提出した。

1 利害関係について

(1)請求人であるロイヤルファームズジャパン株式会社は、アメリカ合衆国ユタ州に存在するロイヤルファームズ社(最高経営責任者Mitch Tate,社長Mike Lee)の日本国における子会社(ロイヤルファームズ日本支社)である(甲第2号証)。

上記ロイヤルファームズ社は、植物「NONI」(学名;モリンダ・シトリフォア)を栽培する農場を有し、「NONI」の果実や葉や茎や根を原料にした製品(ジュース、タブレット、お茶などの栄養補助食品)を製造し販売している(ロイヤルファームズ社のホームページ;甲第3、4号証)。

請求人は、平成13年(2001年)5月8日に設立された会社であるが、ロイヤルファームズ社の製造する「NONI」を用いた製品(ジュース、タブレット、お茶など)を日本に輸入、販売するとともに、日本における複数のディストリビュータを支援する会社である。このことは、会社案内(甲第5号証)、雑誌「NETWORK JOURNAL」(Vol.2 14頁「ロイヤルファームズジャパンオープニング祝賀会開催」記事;甲第6号証)、雑誌「Naotta!」に掲載された広告(甲第7号証)などから明白である。

(2)商標権者であるアメリカ合衆国ユタ州に存在するモリンダ・インコーポレーテッドは、本社のホームページ(甲第8号証)及び日本における公式ディストリビュータのホームページ(甲第9号証)をみても明白であるように、ノニの果汁を原料とした「タヒチアン ノニジュース」を製造、販売している。

(3)したがって、請求人は、被請求人と同様に果実「NONI(ノニ)」を用いた製品を輸入、販売する競合企業であり、本件審判を請求するにつき利害関係を有する。

2 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について

(1)「NONI」は、熱帯性植物の一般名称である。

「NONI」は、ハワイ諸島、サモア、トンガ、タヒチ、ニュージーランドなどのポリネシア諸島、グアム、インドネシア、ベトナム、マレーシア、インド、フィリピン、フィジーなどの東南アジア、オーストラリア、アフリカ、沖縄などに育っている熱帯性植物の名称(一般名称)であり、学術名「モリンダ・シトリフォリア」と呼ばれ、アカネ科モリンダ属に属する常緑性低木である。

「NONI」なる言葉は、ハワイアンやポリネシア諸島など多数の国で使用されている語であり、英語の「INDIAN MULBERRY」と同じ意味であるとされている。日本やインドでは「ヤエヤマアオキ」と呼ばれている。このことは、本件商標が登録される以前から辞書「Webster’s Third New International Dictionary」(甲第10号証)や「Shogakukan Random House EnglishーJapanese Dictionary」(甲第11号証)、世界有用植物事典(甲第12号証)に記載されていることからも明らかである。

「NONI」の小さく白い芳香性の花は、クリーム色が入った白色の実がなる房状のさやに咲いている。その実は、果肉が多く熟するとゼリー状になり、小さいパンノキやジャガイモにも似ている。果肉は苦いことが特徴で、熟すると非常に強い匂いを発する。しかし、「NONI(ノニ)」の最大の特徴は、植物の実だけでなく、その樹皮、葉、花、根および種子に医学的な適応性と抗生剤としての効能を持つことが知られていることである。特に、その産地であるポリネシア諸島や東南アジアでは、当該植物は、古来、土着の治療者により痛み止め、解熱、端息、リューマチ、やけど、胃潰瘍、肝炎、高血圧症、糖尿病などの治療に利く神聖な薬用植物として盛んに利用されてきた(甲第13、14号証)。

(2)「NONI」は、薬用植物として広く認識されている。

今日では、「NONI」についての科学的な分析や研究や調査が行われ、植物NONIには、抗酸化物やビオフラボノイドを含む健康促進作用を持つ養分や植物性化学物質が豊富に含まれており、痛み止めから癌治療、精力増強にいたる多様な健康上の利点を持つ「NONI(ノニ)」の効能が解明されている(甲第15号証)。

この「NONI」の効能については、「Noni自然流ダイエット」「不思議発見」「noniの栞」「ノニの彩り」(いずれもアデン出版発行;甲第16号証)、「奇跡の鎮痛即効フルーツ」(コスモトゥーワン発行;甲第17号証)、「ノニ」(ディレクトソース発行;甲第18号証)、「ノニジュース53の使い方」(ディレクトソース発行;甲第19号証)、「神様からのフルーツ 驚異の体験集」(コスモトゥーワン発行;甲第20号証)、「驚異の自然薬ノニ」(ディレクトソース発行;甲第21号証)、「ノニジュース」(ディレクトソース発行;甲第22号証)のように、「NONI」に関する書籍が多数出版され、広く一般にも知られている。

(3)「NONI」を原材料とした製品について

植物「NONI」の実や葉や根などに有する医学的な適応性と薬用性の効能を利用した各種の製品が多方面で開発され、多数の国々において、あるいは日本において販売されている。例えば、ジュース、カプセル、石鹸などがある(甲第23号証ないし甲第31号証)。

しかも商標権者自身のホームページや日本における公式サイトのホームページでも学名モリンダ・シトリフォリアなる植物は、通称ノ二と呼ばれ、その果実ノ二の果汁をタヒチアンノニジュースとして製品化し、販売していることを認めている(甲第8号証、9号証)。

(4)本件商標は指定商品の品質表示である。

上記のように、本件商標を構成する文字「NONI」は、熱帯性植物の一般名称であり、その実や葉や根に医学的な適応性と薬用性といった効能があることは需要者の間に広く知られている。そのため、健康を維持したり、増進させるために、これを原材料として飲料水、食品、調味料、スプレー、化粧品などとして商品化し、既に販売されている。

甲第19号証の書籍「ノニジュース53の使い方」によると、具体的に、ノニジュースだけでも53の使い方ができることが記載されている。詳細は、この本に記載されているが、その概要を当該書籍のもくじからだけでも理解することができるので、複写して示す(甲第34号証)。これを見ただけでも、指定商品中のほとんどの商品について、原材料として使用したり、添加して不可価値の付いた商品化が可能であることが解る。

このような薬用植物「NONI(ノニ)」の存在と特徴は、近年特許庁でも認識されるようになり、「NONI」を商標の要部とする商標登録出願の審査において、商品の原材料として考慮されるようになった。本件商標は、事実誤認により誤って登録されたものと思料する。

(5)結論

本件商標を構成する「NONI」は、叙上のように、熱帯性植物の一般名称であり、その実や葉は薬用植物として需要者の間で広く認識されているうえ、石鹸や化粧品として製品化されている。甲第34号証に記載された53の使い方を見ただけでも、指定商品中のほとんどの商品について、原材料として使用したり、添加して付加価値の付いた商品化が可能である。したがって、「NONI」を前記指定商品に使用すると、当該飲み物の原料になり得る薬用植物NONI(ノニ)の果実や葉や根を認識させる文字を普通に用いられる方法で書してなるものとなる。

すなわち、本件商標を指定商品に使用した場合、その商品の品質、原材料を表示するにすぎないから、本件商標は、商標法第3条第1項3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。

したがって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項の規定により、無効とされるべきものである。

3 第1答弁に対する弁駁

(1)被請求人は、わが国において、学名「モリンダ・シトリフォリア」、日本名「ヤエヤマアオキ」という植物が「NONI」という名称で認識されているという事実はなく、将来においても、そのような可能性はないと考えるのが相当であるから、本件商標が、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものではない旨主張する。

しかしながら、被請求人の上記主張は、甲第3号証ないし甲第34号証までに示した「NONI」の使用事実を全面否定するだけでなく、その証拠の存在すら認めないものである。このような主張は、以下のような矛盾を露呈している。

(ア)甲第8号証は、被請求人自身のホームページである。このホームページでさえ、「植物学名はモリンダシトリフォリア、通称ノニと呼ばれる果実」であると記載している。

(イ)甲第9号証は、被請求人自身が認めた公式販売代理店のホームページサイトである。その中では、「ノニ」は、モリンダシトリフォリアと呼ばれる果実の一般名称であることを認め、盛んに使用している。

(ウ)甲第33号証は、商願平11−12911号の拒絶理由通知書に対する被請求人の意見書であるが、その中で「学名『モリンダ・シトリフォリア(Morinda citrifolia)』は地域によっては『NONI/ノニ』と呼ばれているので、引用第1商標中『Noni』の部分は、自他商品識別力がなく、・・」と自ら一般名称であることを認めると記載している。

(エ)被請求人は、本件商標の使用は、商標法26条によって調整されるべきものである旨主張している(効力の制限の問題と登録要件の問題を混同している。)。

したがって、答弁書の主張は、到底認められないこと明らかである。

(2)被請求人は、甲第13号証ないし甲第22号証は、公表日が本件登録の登録日以後であり、甲第23号証ないし甲第31号証は、本年7月にプリントアウトされたものであるから、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当していたことを立証する証拠にはなり得ない旨主張する。

この主張は、本件商標の自他商品識別力の有無や公益的不登録事由に該当するか否かの問題を、証拠物件の公表日やプリントアウト時が登録日より前か後かの問題と誤っている。その主張する論点を錯誤しており、意味がない。

本来、本件商標の自他商品識別力の有無や公益的不登録事由に該当するか否かは、査定時を基準として判断されるが、証拠物件が何時プリントアウトされたか、公表されたかによって判断されるべきものではない。それら証拠物件の記載内容が重要である。これら証拠物件中には、昔から植物学名はモリンダ・シトリフォリアのことをノニと呼んでいたことや(甲第3、4号証及び甲第8、9号証)、登録時や査定時より以前に、多方面で通称ノニについての効能や特性についての研究がなされ、学会などで発表されていることについて記載されている(甲第14、15号証)。

(3)甲第16号証ないし甲第22号証の本や小冊子は、その殆どが登録時や査定時より前に刊行されている。例えば、甲第19号証の本の裏表紙には、1998年に著作された旨の記載が確認できる。そのうえ当該本の記載内容は、甲第34号証で明らかなように、ノニはモリンダ・シトリフォリアのことであり、その果実のジュースを「ノニジュース」と称し、その使い方について明記されている。

被請求人は、これら証拠物件の記載内容や発行時を確認しておらず、その記載内容を否定するような主張も証拠も示していない。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、本件請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を第1答弁及び第2答弁において概略次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第159号証を提出した。

(1)請求人は、本件商標「NONI」が、学術名「モリンダ・シトリフォリア」、日本名「ヤエヤマアオキ」という植物の一般名称であって、ハワイやポリネシア諸島など多数の国で使用されている語であると主張する。

しかし、この主張の根拠とする甲第10号証には、「NONI」の語が掲載されているが、「central Polynesia & Hawaii」という限定された地域でのみ用いられるハワイ語及びマルケサス語であることを示すにすぎず、しかも、「英英辞典」という使用者が極めて限定された一辞書に掲載されていることを示すにすぎないから、多数の国で使用されている証拠とはなり得ず、また、甲第11、12号証に至っては、「NONI」という語は一切紹介されていないのであるから、請求人の上記主張に理由のないこと明らかである。

また、植物「モリンダ・シトリフォリア」の効能などについて説明する資料と考えられる甲第13号証ないし甲第22号証は、その公表日が本件登録の登録日以後であるので、本件商標がその査定時に、商標法第3条第1項第3号もしくは同法第4条第1項第16号に該当していたことを立証する証拠にはなり得ない。

同様に、甲第23号証ないし甲第31号証(ホームページ写し)は、いずれも本年(2001年)7月にプリントアウトされたものであるから、本件商標が査定時に商標法第3条第1項第3号もしくは同法第4条第1項第16号に該当していたことを立証する証拠にはなり得ない。

(2)わが国における植物図鑑などについて

わが国における植物図鑑などを見ると、学名「Morinda citrifolia Linn(モリンダ・シトリフォリア リン)」という植物が、いずれの文献においても日本名「ヤエヤマアオキ」として紹介され、一部の文献では英名「Indian mulberry」も紹介されているが、「NONI」という語を掲載する文献はない(乙第1号証ないし乙第30号証)。又、乙第31号証ないし乙第34号証は、「現代用語の基礎知識」(自由国民社発行)及び「情報・知識 lmidas」(株式会社集英社発行)の目次であるが、いずれを見ても「NONI」又は「ノニ」の語は見当たらない。

このような事実に照らして考えれば、わが国において、学術名「モリンダ・シトリフォリア」、日本名「ヤエヤマアオキ」という植物が「NONI」という名称で認識されているという事実はなく、また、将来においても、そのような可能性はないと考えるのが相当である。

また、被請求人の調査によれば、上記植物について、世界各地の国や地域で約90もの呼名がある中で、「モリンダ・シトリフォリア」を「NONI(ノニ)」の呼び名で使用するのは、甲第10号証の記述とほぼ同様に、ハワイ、ポリネシア及びプエルトリコ地域だけであり、しかも、ポリネシアでは「オウル・トゥリー」という別名称、ハワイにおいては「インディアン・マルベリー」という別名称も存在するので、これらの3地域においてすら「ノニ」は確立した名称ではないとも言える。そして、これらの地域における本件植物の生産量及びこれらの地域を産地とする本件植物を原料とするジュース及びその他の製品の流通量は極めて少ないものと考えられる。加えて、日本においては、古来からの「ヤエヤマアオキ(八重山青木)」の呼び名が存在するのであるから、約90もの呼び名の中から「NON1(ノニ)」のみが選びだされて、日本における「モリンダ・シトリフォリア」を示す普通名称となる理由は全く存在しない。

以上のような状況から考えると、わが国の需要者若しくは取引者が、「NONI」という語から、上記植物を認識することはないと考えるのが相当である。

商標法第3条第1項第3号に該当するか否かの判断においては、その標章がわが国において現に使用されていることまでは必要とされないが、その標章がわが国で品質を表示する標章として認識されていることが必要とされるものであり(東京高裁昭和52(行ケ)82、昭和56年5月28日判決)、本件においては、わが国の需要者若しくは取引者が「NONI」という語を植物を表示する標章とは認識していないのであるから、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しないと考えられる。

(3)本件商標を採択した経緯について

健康補助食品及びその他の食品の開発会社を経営しており、後に被請求人の設立者となる2名の科学者が、1994年と1995年に、「モリンダ・シトリフォリア」のサンプル及び情報を収集するため、仏領ポリネシアに渡った。この果物は現地では「NONO」等と呼ばれており、長年にわたって、この果物を病気の治療のためや痛み止めとして利用していた。

この2人の科学者は、研究を重ねた結果、この果物が全世界の人々に届くようにすべきと考えたが、それを実行するためには多くの障害があり、特に、この果物の味とにおいはとても口にしたくないと思うほどにひどいものであることが最大の障害となった。そこで、両科学者は、試行錯誤の末、この果実から抽出したジュースと他のフルーツジュースをブレンドすることによって飲むに堪え得る味のジュースを開発した。

その後、両科学者は、他の仲間と共に、被請求人会社を設立するに至った。そして、開発した「モリンダ・シトリフォリア」を原料とするジュースに付すべき商標を選択するにあたって、商品の原料を一義的に想起させる名称である「NONO」を避け、世界で一般的に使用されている名称ではなく、識別力を有すると考えられる名称「NONI」を採択することとした。本件商標又は「ノニ」を指定商品について初めて使用したのも原告である。

(4)本件商標には被請求人の信用が化体している。

被請求人は、「モリンダ・シトリフォリア」という果実のタヒチ産のものを原料として含む果実飲料を製造、販売する米国の会社として1996年に設立され、1年目の売上げは、6.28百万米ドル、2年目は、64.12百万米ドル、3年目は、125.79百万米ドルに達している。その商品の高い品質が消費者の潜在的需要を掘り起こした結果、年々急成長を遂げている企業である。また、このような米国における成功の下で、世界中において被請求人の拠点が設置されており、日本マーケットにおける拠点である被請求人の日本支社も1999年(平成11年)に設立された。

被請求人は、他の商品開発を行わずに、「モリンダ・シトリフォリア」を原料として含む果実飲料を主力商品として、その販売促進に全力を傾けており、この被請求人商品の独自性及び有用性を一般消費者に理解、浸透させるため、被請求人及び被請求人の日本支社は、本件商標又は「ノニ」の商標を付した被請求人の商品の大々的な宣伝広告活動を行なっている。

すなわち、「モリンダ・シトリフォリア」を原料として含む果実飲料は、被請求人が製造販売するまでは日本の市場には全く存在しなかったため、より多くの人に被請求人の商品を知ってもらう必要があった。そのために、被請求人の日本支社は、日本における設立から現在までに、本件商標又は「ノニ」の商標を付して、被請求人商品の宣伝広告を行なうために、平成11年(1999年)は、約2億3400万円、平成12年(2000年)は、約2億3000万円、平成13年(2001年)は、約3億3800万円という費用を投じている。

被請求人は、このような莫大な宣伝広告費をかけて、多数の人が行き交う新幹線、私鉄、地下鉄、JR等の路線の主要な駅で、本件商標又は「ノニ」を使用した被請求人商品を紹介する看板、ポスターを貼付した(乙第39号証ないし乙第89号証)。

また、被請求人は、本件商標又は「ノニ」の商標が付された被請求人の商品を雑誌等の印刷媒体においても積極的に宣伝広告している。すなわち、被請求人は、本件商標又は「ノニ」を使用する被請求人商品の宣伝広告を、平成11年(1999年)から平成14年(2002年)にかけて、1回の発行部数が約72万部に達する「週刊新潮」や発行部数が約50万部に達する「an・an」等多数の雑誌において、継続的に行なっている(乙第96号証ないし乙第131号証)。

以上の被請求人による本件商標又は「ノニ」を使用する被請求人商品の宣伝広告では、被請求人商品の原料が「モリンダ・シトリフォリア」という果実であることを説明している(乙第97号証ないし乙第104号証、乙第106号証ないし乙第108号証、乙第110号証ないし乙第114号証等)。また、商品に関する説明的な語句を伴って本件商標又は「ノニ」の商標を使用する場合には「TM」又は「マルアールの記号」(以下「マルアール」とする。)の表示を併記して、これが普通名称ではなく、被請求人の登録商標であることを明示し(乙第64号証、乙第65号証、乙第69号証、乙第70号証、乙第78号証、乙第79号証、乙第86号証の1、乙第88号証、乙第89号証、乙第91号証、乙第92号証等)、他方、被請求人商品の製造・販売の主体として被請求人の名称を明記しているので(乙64号証、乙第65号証、乙第68号証ないし乙第87号証等)、本件商標が被請求人の業務に係る商品を表示するものであることは、一般需要者に容易に理解できるものであった。

そして、上記のとおり、被請求人及び被請求人の日本支社が、本件商標又は「ノニ」を使用した被請求人商品をより多くの人に知らしめるために、積極的に電車、地下鉄、新幹線等不特定多数の人が目にする広告スペースを利用して継続的に宣伝広告を行い、また、雑誌等の印刷媒体においても積極的に広告を掲載したことに加え、被請求人商品が従来市場に存在しなかった斬新なものであり、潜在的需要を掘り起こすに足りる非常に高い品質を持っていたことなどから、本件商標又は「ノニ」が使用された被請求人商品は、市場において高い評価が与えられ、その結果、被請求人及び被請求人の日本支社の日本における本件商標又は「ノニ」を使用した商品の売上げは、平成11年度(1999年度)は、約88億円、平成12年度(2000年度)は、約156億円、平成13年度(2001年度)は、約164億円と急激に増加した(乙第132号証)。

上記の被請求人商品の売上げは、主として日本におけるディストリビュータに対する販売によるものであるが、日本の新規のディストリビュータの数も毎月約4000人づつ増加し、平成11年2月の日本での営業開始直後は約10,000人であった登録ディストリビュータの数が、平成12年度は115,610人、平成13年には155,005人にまで達しており、被請求人の日本におけるビジネスが非常に成功を収めていることがわかる(乙第133号証、乙第134号証)。また、乙第144号証ないし乙第146号証の2は、被請求人がディストリビュータに配布した本件商標を付した指定商品についてのカタログ、パンフレットの一例であるが、これらのカタログ、パンフレットのうち、例えば、乙第145号証のカタログは、乙第143号証に示すように、17万部、乙第146号証のカタログは同じく14万3千部印刷されて配布されていることから、これらのカタログ、パンフレットは、多数のディストリビュータ及びかかるディストリビュータから購入する一般消費者の目に触れる機会があったものである。

また、世界における「モリンダ・シトリフォリア」を原料として含む果実飲料の被請求人のマーケットシェアは95%以上である(乙第135号証)。既に確立していたトマトジュース系野菜飲料の市場全体の売上が約500億円(平成11年)、果汁ミックス野菜ジュースの市場全体の売上が約780億円(平成11年)であったこと(乙第136号証)と比較すると、被請求人1社の単体の商品の売上げがいかに巨額で、かつ爆発的な伸びであるかは一目瞭然である。

以上のように、被請求人が莫大な費用をかけて行った宣伝広告及び販売活動によって、本件商標又は「ノニ」を使用した被請求人商品は、東京を中心に爆発的な人気を得ることができ、また、近年の健康食品ブームの中において、被請求人商品は、食生活の乱れやストレスに悩む現代人に必要な栄養素を含むという点からも、一般的な消費者の圧倒的な支持を得ている。

したがって、本件商標又は「ノニ」の商標が、一般需要者によって、被請求人商品の原材料であると認識される可能性や原材料の普通名称であると認識される可能性、及び他の多くの同業者が提供する同種製品をも表示するものであると認識される可能性は、いずれも全く存在しないのであって、被請求人による被請求人商品の宣伝広告によって、本件商標又は「ノニ」の商標は、自他商品識別機能を特別顕著性を有するに至るほど強力なまでに取得しているのである。

(5)競合他社の「NONI」標章の使用について

他方、競合他社が、被請求人商品に付された本件商標に化体したグッドウィルにフリーライドして自己の商品を販売すべく、本件商標を含む名称を自己の商品に付して、あたかも被請求人商品と類似する商品であるかのごとく販売を行うような事態が発生してしまった。

すなわち、本件商標を使用した「モリンダ・シトリフォリア」を原材料とする被請求人商品は、被請求人の本件商標の出願を行なった平成11年2月12日の時点においては、日本の市場に全く存在せず、米国においても、平成9年(1997年)に被請求人が「NONI」を被請求人商品についての商標として採択するに際し、インターネットにおいて検索を行なったが、その当時から被請求人のディストリビュータであった者のホームページが検索されただけであった(乙第137号証、乙第138号証)。このように、被請求人が米国及び日本において会社を設立し、被請求人商品の販売を開始したころは、競合他社が「モリンダ・シトリフォリア」を「NONI」と表示していた事実は全く存在せず、又は、はかかる果実飲料の原料その他その品質を示すものとして「ノニ」という言葉が通常に用いられていたという事実は全く存在しなかった。

このような事態が生じていることは、甲第13号証ないし甲第31号証の証拠がいずれも被請求人の商品が爆発的な人気を得た本件商標の登録日以後の日付であることからも明らかである。しかし、被請求人は、このような事態を漫然と放置し、被請求人のグッドウィルが化体した本件商標のフリーライドや普通名称化を黙認しているわけでは決してなく、被請求人の登録商標を無断で使用する者に対しては、商標権侵害及び不正競争防止法違反の通知書を送付して、上記事態を一掃する努力をしており、請求人に対しても、被請求人のグッドウィルに対するフリーライドを直ちに停止すべく、商標権侵害及び不正競争防止法違反の通知書を送付している(乙第139号証ないし乙第142号証)。

したがって、被請求人による多額の宣伝広告費用と営業活動により確立されたグッドウィルに只乗りを企む請求人が甲第15号証ないし甲第31号証の証拠を提出して、本件商標が査定時に商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号に該当していたと主張すること自体全く的はずれである。

万が一、現時点においては本件商標が自他商品識別力を失うに至っていたとしても、第三者の本件商標若しくはこれに類似する商標の使用と本件商標権の関係は、商標法第26条によって調整されるべき問題であって、本件商標が査定時に自他商品識別力を有しており、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当していなかったことは明らかである。

(6)甲第8号証及び甲第9号証の記載について

甲第8号証の被請求人のホームページのうち「植物学名はモリンダシトリフォリア、通称ノニと呼ばれる果実」と記載されたのは、外部のホームページ作成会社が被請求人の意図を誤解して記載してしまったにすぎない。現在の被請求人のホームーページには、この記載は削除されている(乙第147号証)。

また、甲第9号証は、被請求人のディストリビュータのホームページであるところ、このホームページの数箇所において、ノニがモリンダシトリフォリアの一般名称であるかのごとく記載されているのは、一部のディストリビユータの誤解によるものであり、現在はそのような記載は全て削除されている。

したがって、このような例外的な誤記をもって、被請求人が本件商標を「モリンダ・シトリフォリア」の一般名称として使用しているとする請求人の主張は全く誤りである。

更に、別件である商願平11−12911号の拒絶理由通知書に対する意見書の件(甲第32号証、甲第33号証)は、当該出願の登録を早急に認めてもらうために他に手段がないと当時の代理人からアドバイスを受け、疑問を抱きながらもやむを得ずこれに従ったからであり、出願人の本意ではない。

(7)以上を総合して勘案すれば、わが国において、学名「モリンダ・シトリフォリア」、日本名「ヤエヤマアオキ」という植物が「NONI」という名称で認識されているという事実はなく、将来においても、そのような可能性はないと考えるのが相当であるから、本件商標が、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものではないこと明らかであり、本件審判請求には理由がない。

第4 当審の判断

1 請求人の提出に係る甲第4号証(請求人の親会社であるロイヤルファームズ社のホームーページの日本語サイト)、甲第5号証(請求人の会社案内)、甲第6号証(雑誌「NETWORK JOURNAL」Vol.2)、甲第7号証(雑誌「Naotta!」)、甲第13号証(公開ホームページ)、甲第14号証(「POLYNESIAN NONI」リタ・エルキンス著、ウッドランド印刷発行)、甲第15号証(「101の医療的用途をもつトロピカルフルーツ タヒチアンノニジュース」医学・生理学博士ニール・ソロモン氏の公開論文)、甲第19号証(「ノニジュース53の使い方」イザべル・ナヴァール・ブラウン著 ディレクトソース発行)、甲第23号証(「ハワイアン・ノニ」についてのインターネットホームページ)、甲第24号証(「ポリネシアンノニジュース」についてのインターネットホームページ)、甲第25号証(「スーパープレミアムノニジュース」についてのインターネットホームページ)、甲第26号証(「クックノニジュース」についてのインターネットホームページ)、甲第27号証(「ハワイアンノニジュース」についてのインターネットホームページ)、甲第28号証(「Earth’s Bounty NONI」ついてのインターネットホームページ)、甲第29号証(「from Tahiti NONI」についてのインターネットホームページ)、甲第30号証(「Quest Noni juice」についてのインターネットホームページ)、甲第31号証(「MAUI NONI SOAP」についてのインターネットホームページ)、甲第34号証(書籍「ノニジュース53の使い方のもくじ」)及びその他の甲各号証によれば、以下の事実が認められる。

(1)学術名を「モリンダ・シトリフォリア」とする常緑性低木は、フランス領ポリネシア諸島では、通称「NONI(ノニ)」と呼ばれ、ポリネシア諸島では、2000年以上にわたって、該ノニの木の実を始め、葉、根、樹皮、花の抽出液を、滋養源、病気の治療、健康の維持・増進に使用してきたこと(ただし、甲第4号証には、「ポリネシアの島々ではノニ、ノヌ、またノノ等の別称で知られています。」旨の、また、甲第14号証には、「サモアおよびトンガ諸島群ではノヌになり、タヒチの人々はノノと呼びます。ノニというよく知られた名前はマルケサス諸島及びハワイで使用されます。」旨の記載がある。)。

(2)ノニの木の実、葉、根、樹皮、花等の薬効については、1990年代の初めより研究されており、例えば、「フランスの研究者たちは、ノニの木の根に含まれる成分は天然の鎮痛剤や鎮静剤として作用することを発見し、プランタメディカ誌の1990年の記事の中で詳細を発表した。(甲第14号証)」、「ノニに含まれるダナカンサルは、1993年に『RAS細胞に対する新型の抑制剤』として医学的に定義されました。(甲第14号証)」、「ノニの根と癌予防;1999年、日本の千葉大学医学部の生化学科の研究者たちは、モリンダ シトリフォリアの根に含まれるダナカンサルが悪性の細胞の増長を促進するチロシンキナーゼと呼ばれる酵素を抑制すると報告しました。(甲第14号証)」、「癌とノニジュース;1994年に実施された研究では、ノニの実の成分が持つ肺癌に対する抗癌作用が指摘されました。(甲第14号証)」、「1992年植物科学の・・アボット博士は、ノニの一般的用途には糖尿病、高血圧、がんの抑制が含まれると述べている。(甲第15号証)」、「1950年に出版された『パシフィック・サイエンス・ジャーナル』に掲載された科学報告書には、ノニには消化器系や心臓を守る抗菌作用があることが立証されている。(甲第15号証)」、「伝統的にサモアとハワイの治療者は、腸障害、消化不良、皮膚炎、感染症、口腔のただれ、熱、捻挫、打撲傷などの症状にノニを使用していました。(甲第14号証)」「ノニの実、葉および根からの抽出液の治療への応用法として、・・口腔カンジタ症、歯肉炎、歯痛・・(甲第14号証)」等々の記述があること。

(3)ノニの木の実、葉、根、樹皮、花等の抽出液が商品化されたことに関しては、甲第14号証には、ノニの近代的な商品化が開始されたのは、ミッチ・テイトという名の人物がポリネシア諸島で偶然ノニに遭遇した1994年のことであること、テイト氏と何人かのパートナーたちによって、ノニの健康上の利点を大規模に市場に紹介する最初の会社としてモリンダ社が設立されたこと、薬効をもつノニジュースは急速に普及し、アメリカや世界のその他の地域で広く販売されていることが記載されており、また、甲第5号証には、ミッチ・テイトがそのパートナーと設立したモリンダ社は、1996年にアメリカ市場にノニ製品をもたらしたこと、ミッチ・テイトは、ノニ植物の全部分を利用し低価格で完璧なノニ製品のラインを市場にもたらすために、その後間もなくモリンダ社と別れ、ロイヤルファームズ(請求人の親会社)が誕生したこと等の記述があること。

さらに、アメリカ合衆国のハワイで産出されたノニから製造されたと認められるパウダー化したカプセルに関し、「『ハワイアン・ノニ』は、『タヒチアン・ノニ』が製品化する何と4年前の1992年から製造している」旨のが記述があること(甲第23号証)。

また、わが国においては、遅くとも2001年(平成13年)7月には、ノニを原材料としたジュース、カプセル、石鹸がインターネットを通じて販売されていたこと(甲第23号証ないし甲第31号証)。

(4)我が国における翻訳本の発行年月日は不明であるが、リタ・エルキンス著「ポリネシア産ノニ 南太平洋の希少な薬用植物(甲第14号証)」は、2000年(平成12年)にウッドランド印刷から発行されており、「ノニ」の治療効果等を詳しく紹介していること、1998年(平成10年)には、「ノニジュース」に関する「ノニジュース53の使い方」なる書籍(甲第19号証)が出版されており、その目次には「ノニアフターシェーブローション、ノニハンドトリートメント、ノニ爪トリートメント、ノニ頭皮治療法、ノニ口臭予防液、ノニ歯と歯茎用湿布」等の項目も記載されていること(甲第34号証)。

2 前記1で認定した事実よりすれば、「NONI(ノニ)」は、ポリネシア諸島で産する学術名を「モリンダ・シトリフォリア」とする常緑性低木の通称であり、その実、葉、樹皮、根、花、種子の抽出液は、抗菌性、鎮痛性、抗癌性などの特性を有し、薬用植物として、また、ビタミンC、ビタミンE、カルシウム、マグネシウム、亜鉛を含むビタミンやミネラルを豊富に含んでいるため、健康な体を維持するものとして、ポリネシアの人々は、古くからノニの実などから抽出した液を治療等に使用してきたこと、ノニの木の各部から抽出される液の薬効作用については、様々な国で1990年代の初めころより研究され続けてきたこと、ノニを原材料とした商品は、1996年ころにはアメリカ市場に出回っていたこと、また、タヒチで産出されるノニを原材料とした製品に先駆け、ハワイで産出されるノニを原材料とした製品が市場に出回っていたこと、1998年(平成10年)には、わが国においてノニに関する書籍が出版されていたことなどを認めることができる。

してみれば、健康志向が極めて強い今日のわが国の風潮や、インターネット等情報通信分野の発展に伴って情報の伝達が高速化されたわが国における今日の社会的状況下にあって、本件商標の登録査定時(平成12年2月25日)には、わが国の食物研究者、食品を専門に取り扱う業者、輸入販売業者、あるいは特に健康維持に興味のある需要者層においては、「NONI(ノニ)」の語は、ポリネシア諸島に生育し、数々の薬効を有する植物ないしはその果実の普通名称であること及び該「NONI(ノニ)」が健康にもたらす好影響について、一般的に認識することができたものと認められる。

3 しかして、本件商標は、前記したとおり、「NONI」の文字を標準文字により書してなるものであるところ、前記1のとおり、ノニを原材料とした石鹸が商品化されているばかりでなく、ノニジュースの使い方として、ノニアフターシェーブローション、ノニハンドトリートメント、ノニ爪トリートメント、ノニ頭皮治療法、ノニ口臭予防液、ノニ歯と歯茎用湿布等が紹介されている事実及び上記2で認定した事情よりすると、本件商標は、これをその指定商品中「NONI(ノニ)を原材料中に含むせっけん類,化粧品,歯磨き」について使用しても、これに接する取引者・需要者は、該商品の原材料を表示したものと理解するにとどまり、自他商品の識別標識とは認識し得ないものであり、また、これを上記以外の「せっけん類,化粧品,歯磨き」について使用するときは、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。

4 被請求人の反論について

(1)被請求人は、学術名「モリンダ・シトリフォリア」の植物について「NONI」の名称が使用されているのは、ハワイ、ポリネシア及びプエルトリコ地域だけであり、しかも、これらの地域における本件植物の生産量及びこれらの地域を産地とする本件植物を原料とするジュース及びその他の製品の流通量は極めて少ないものと考えられ、わが国の需要者、取引者が、「NONI」という語から、上記植物を認識することはない旨主張する。

しかしながら、「NONI(ノニ)」がハワイ、ポリネシア及びプエルトリコ地域だけで使用される学術名「モリンダ・シトリフォリア」の通称であるとしても、本件商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かの判断は、取引者、需要者が「NONI」若しくは「ノニ」の語から正式な学術名称としての「モリンダ・シトリフォリア」を認識するか否かではなく、「NONI」若しくは「ノニ」の語がせっけん類、化粧品、歯磨きあるいは食品や飲料等の商品に使用され、これに接した取引者、需要者が商品の原材料を表したと認識するか否かの問題であり、前記2で認定した事情からすれば、「NONI(ノニ)」の語は、タヒチ島などのポリネシア諸島やハワイで産出される植物と理解し、身体の健康に好影響をもたらすものとして、商品の原材料を表したと認識するするにとどまるものであることは、前記したとおりである。

したがって、被請求人の上記主張は採用できない。

(2)被請求人は、甲第13号証ないし甲第31号証は、その公表日若しくはプリントアウトされた日付けが本件商標の登録日以降であるから、本件商標がその査定時に商標法第3条第1項第3号もしくは同法第4条第1項第16号に該当していたことを立証する証拠にはなり得ない旨主張する。

確かに、甲第13号証ないし甲第31号証の多くは、その公表日若しくはプリントアウトされた日付け自体が本件商標の登録査定日以降であることは認め得るところであるが、前記2で認定したように、これらの記載内容には本件商標の登録査定前からの「ノニ」に関する事情・状況が説明されており、又、わが国国民における健康志向の強さ等の事情を総合勘案すれば、取引業者及び健康維持に興味のある需要者層は、「NONI(ノニ)」の語を一般的に認識することができたものというのが相当であり、「NONI」の語を一私人に独占させて使用させることは適切ではなく、この点からしても、本件商標は、独占適応性に欠けるものといわざるを得ない。

したがって、この点に関する被請求人の主張も採用できない。

(3)被請求人は、本件商標を採択した経緯等を述べ、本件商標を使用するにつき、その取扱いに係る商品に関して営業努力及び品質向上努力を続けた結果、自他商品識別機能、特別顕著性を有するに至るほど強力に取得し、本件商標にいわゆるグッドウィルが化体したところ、競合他社によって本件商標に対するフリーライド若しくはダイリューション行為を受けているのであり、フリーライド若しくはダイリューション行為を行っている競合他社の一社からの請求により本件商標の登録が無効とされるのは不当である旨主張している。

しかしながら、被請求人の主張を認めるに足りる的確な証拠はなく、かえって、前記1に認定の各事実に照らせば、被請求人の上記主張は、到底認めることができない。前述したとおり、「NONI」若しくは「ノニ」の語は、独占適応性に欠けるものであり、何人もこれを使用することが可能なものであるから、そこには、フリーライド若しくはダイリューション行為が発生する余地はないものというべきである。

(4)被請求人は、「被請求人は、莫大な宣伝広告費をかけて、多数の人が行き交う私鉄、地下鉄、JR等の路線の主要な駅で、本件商標等を付して被請求人商品を紹介する看板、ポスターを貼付し、また、被請求人商品を雑誌等の印刷媒体において、本件商標等を付して積極的に宣伝広告しており、これらの被請求人による本件商標等を使用した被請求人商品の宣伝広告では、被請求人商品の原料が『モリンダ・シトリフォリア』という果実であることを説明しさらに、被請求人商品に関する説明的な語句を伴って『NONI(ノニ)』の標章を使用する場合には、『TM』又は『マルアール』の表示を『NONI』又は『ノニ』の文字に併記し、これが普通名称ではなく、被請求人の登録商標であることを明示しており、本件商標が、被請求人の業務に係る商品を表示するものであることは、一般の需要者が容易に理解することができるものであった」旨主張し、それに沿うものとして、被請求人の宣伝広告の実例等を提出している。

しかしながら、被請求人が被請求人商品の宣伝広告において、被請求人商品の原料につき「モリンダ・シトリフォリア」という果実であることを説明していても、前記認定のとおり、我が国では、「モリンダ・シトリフォリア」が「NONI」と呼ばれていることが広く紹介され、「NONI(ノニ)」の語は、タヒチ島を含むポリネシア諸島に生育し、数々の薬効を有する植物ないしその果実の普通名称として一般的に使用されてきているものと認められるのであるから、本件商標に接する本件商標の指定商品の取引者、需要者は、「NONI」の文字は、自他商品の識別標識として出所表示機能を備えるものではないものと理解し、被請求人商品の原材料を表すものであると認識することが多いものと容易に推認することができる。

また、被請求人が主張するように、被請求人が被請求人商品の宣伝広告において「NONI(ノニ)」の文字標章を使用する場合に「TM」又は「マルアール」の表示を「NONI」又は「ノニ」の文字に併記していても、この点に係る被請求人提出の各証拠によれば、「TM」又は「マルアール」の表記は、「NONI」、「ノニ」の表記と比較して非常に小さいものであると認められ、本件商標の指定商品の取引者、需要者は、その「TM」又は「マルアール」の表示に特に留意することなく、「NONI」の用語が本来備えている前述の意義を直ちに想起して、「NONI」の文字は「ノニの果実」という商品の原材料を表示するものであると即断することが決して少なくないものと推認することができる。

したがって、この点に関する被請求人の主張も採用できない。

4 以上のとおり、本件商標は、これをその指定商品中「NONI(ノニ)を原材料中に含むせっけん類,化粧品,歯磨き」について使用しても、単に商品の原材料、品質を表したものと認識されるにとどまり、それ以外の「せっけん類,化粧品,歯磨き」について使用するときには、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。

しかしながら、請求人の提出に係る証拠をもってしては、指定商品中の「せっけん類,化粧品,歯磨き」以外の商品について、その商品の原材料、品質を表すものとは認められず、又、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものとも認められない。

したがって、本件商標の指定商品中「せっけん類,化粧品,歯磨き」についての登録は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたと認められるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とし、請求に係るその余の指定商品については、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたと認められないから、無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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