結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2003−35415(T2003−35415/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4780748号商標(以下「本件商標」という。)は、「三井温熱」の文字を横書きしてなり、平成13年10月4日登録出願、第10類「医療用機械器具」及び第42類「入浴施設の提供,あん摩・マッサージ及び指圧,きゅう,柔道整復,はり」を指定商品及び指定役務として、同15年6月13日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の登録の無効の理由に引用する登録第2691357号商標(以下「引用商標」という。)は、「MITSUI」の欧文字を横書きしてなり、平成4年3月27日登録出願、第10類「理化学機械器具、光学機械器具、写真機械器具、映画機械器具、測定機械器具、医療機械器具、これらの部品および附属品、写真材料」を指定商品として、同6年8月31日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
(1)三井グループの沿革、三井の商号、商標等について
(a)三井家の事業は、三井高利が延宝元年(1673年)伊勢松坂より京都、江戸に出て越後屋呉服店を開いたことに始まる。また、呉服業と併せ営む両替業も三井の二大事業としてその繁栄の基礎となった。
明治9年に、日本で初の民間銀行である私盟三井銀行を開業するとともに、三井物産会社を設立し、近代的企業の軌道が敷かれた。日清戦争、日露戦争後の好景気により、三井傘下の各企業はいずれも急成長し、明治42年に、三井合名会社が設立し、三井一族が株式を通じて傘下の企業を支配するという財閥の体制を整えた。
その後、昭和19年に、三井財閥の中枢機構として株式会社三井本社が設立されたが、第二次世界大戦後、連合国の財閥解体の政策により解体した。その結果、三井財閥は消滅し、財閥本社を通じての組織的な統括力を失ったが、その後の我が国の経済復興に伴い、三井財閥傘下にあった諸会社は、「三井グループ」として、引き続き日本経済において重要な地位を占めている。
三井不動産株式会社は、三井商号商標保全会など三井グループの世話役を努めている。
本件商標が出願された平成13年10月以前における三井商号商標保全会及び三井グループの状況については、「三井商号商標保全会年報」(甲第8号証)、「MITSUI GROUP 2001」(甲第9号証)のとおりである。
(b)三井家の店章「丸に井ゲタ三文字」は、三井高利が延宝5年(1676年)ころ、越後屋の暖簾に紋所として使い始めたことに由来し、以来、三井の重要な事業は、「三井」を商号中に使用してきた。
上記した三井グループの沿革において、第二次世界大戦後の財閥解体により、本社機構が解体され、100社を超す三井系各企業は、その大半が引き続き商号中に「三井」の名前を冠し、「三井」の商号、商標は、三井グループ各社の結束の精神的支柱となっている。
「三井」の商号、商標を保護する具体的な動きとして、300余年もの間「丸に井ゲタ三文字」及び「三井」の商号、商標を使用し蓄積された信用、価値を守るべく昭和31年、「三井商号商標保全会」を発足させ、三井グループ共通の財産である三井の商号、商標の保全を図ることとした。
三井グループ各社は、その多くの企業が「三井」を商号の一部とするところから、その製造、販売に係る商品の商標、サービスマーク中にも「三井」「ミツイ」「MITSUI」を含む例が多く、三井グループの著名性を基礎に、商標「三井」「みつい」「ミツイ」「MITSUI」は、産業界において強い自他商品識別力を有する商標として機能している。そして、この事情を背景として、商標「MITSUI」「三井」について、役務及び商品の各分類において、三井グループ構成各社のために商標登録が認められている(甲第6号証、甲第7号証)。これらの登録は、永年にわたる信用の蓄積を背景として三井グループ各社に登録を認められたものであり、同グループの商標は極めて価値ある商標として保護されるべきものである。
このような考え方は、審判決例(甲第3号証ないし甲第5号証)、登録異議の決定においても支持されている。
(2)商標法第4条第1項第15号及び同第10号
前記(1)のとおり、「三井」「ミツイ」「MITSUI」「みつい」といえば、三井グループを指称するものとして認識されていることは、公知の事実である。
「三井」は、一般的な氏姓としての側面をも有するが、商標は、商品流通あるいは役務の提供に際し、識別標識として機能する標識である。このような取引の場において、「三井」「ミツイ」「MITSUI」「みつい」が使用されれば、かかる商標はあたかも三井グループに属する企業の商標であるかのように認識される可能性が高いものである。
本件商標は、これが全体として一個の商標を構成するとはいえ、三井グループの「三井」「MITSUI」の著名性をかんがみれば、「三井」と「温熱」の2語からなるものと認識され、特に、「温熱」は、温熱による商品、サービスを意味するにすぎない付記的な部分であるから、一体不可分に理解されるものではない。
本件商標に接する取引者、需要者は、本件商標中の「三井」の文字部分に顕著な印象づけられ、これが要部として認識し得ることは明白である。
本件商標の指定役務及び指定役務は、前記したとおりであるところ、これら業務は、請求人は、オフィスビル関連産業、住宅関連産業を中心にホテル事業、リゾート・レジャー事業など広範な業務を営み、例えば、子会社の株式会社ウエルネスを通じて総合的な健康管理プログラムを提供している(甲第9号証)。また、これら業務は、請求人のほか三井グループ各社の業務にも係るところである。
よって、三井グループと関係のない被請求人により本件商標をその指定商品・指定役務について使用されれば、これに接する取引者、需要者は、これはあたかも三井グループを構成する企業の取り扱いに係る業務、あるいはその関連企業の業務に係るものであるかのごとく、混同を生じさせるおそれが大きい。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第10号に該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第8号について
前記(1)で述べたように、三井グループ各社は「三井」の商号、商標を保護すべく三井商号商標保全会を設立し結集している。平成14年3月31日現在、三井商号商標保全会に結集する法人219社中、200社を越える企業が「三井」をその商号中に使用している。
三井商号商標保全会は、「三井」商号商標の適正な管理のため、「三井」「ミツイ」「MITSUI」「みつい」を商標、商号の一部として使用するに際しては、事前に同会の承認を得ることとしているところ、「三井」の文字を含む本件商標の出願及び使用に際し、同会が承認を与えた事実はない。
「三井グループ」と関係のない被請求人が「三井」を含む本件商標をその指定商品・指定役務について使用すれば、三井グループ及び構成各社の人格権が毀損されるおそれがあることを否定できない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号にも該当するものである。
(4)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、前記(2)のとおり、全体として一個の商標を構成するとはいえ、著名な商標「三井」と治療法に関する一般用語「温熱」からなるものであり、「三井」の部分より「ミツイ」の称呼及び「三井」の観念をも生じる。
他方、引用商標は、その構成文字より「ミツイ」の称呼、「三井」の観念を生じるものである。
よって、本件商標は、引用商標とその称呼及び観念を共通にする類似商標である。
本件商標は、第10類に属する商品を指定商品としており、これが引用商標の指定商品と抵触することは明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
(5)利害関係の存在について
本件商標が使用されれば、請求人の業務と混同を生ずるおそれが大きい。
また、請求人は、「三井グループ」の商号、商標を管理、保全する三井商号商標保全会の幹事会社としてその保全を図る責務を負っている。
よって、請求人は、その業務の保護、商標の保護のため本件審判を請求するにつき必要な利害関係を有する者である。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同第10号、同第8号及び同第11号に該当し、同法第46条に基づき、無効とされるべきものである。
被請求人は、前記3の請求人の主張に対し、何ら答弁するところがない。
(1)甲第3号証、甲第8号証ないし甲第10号証及び請求の理由によれば、次の事実が認められる。
三井系企業の事業は、江戸時代の延宝元年(1673年)に、三井高利が伊勢松坂から江戸に出て家業として呉服業、両替業を営んだことに始まる。
明治9年に、我が国で初めて民間銀行である三井銀行を設立し、これと並行して、同年、三井物産を創立した。日清戦争、日露戦争後の好景気により、三井傘下の各企業はいずれも急成長し、明治42年に、三井合名会社を設立し、三井一族が株式を通じて傘下の企業を支配するという財閥の体制を整えた。
しかし、第二次世界大戦後、連合国の財閥解体の政策により三井本社も解体し、その結果、三井財閥は消滅した。その後、三井財閥傘下にあった多数の会社は、「三井グループ」として、企業グループを形成し、現在に至っている。
三井一族は、創業以来、丸の中に井桁三のマークを配した標章を商号、商標として使用してきたところ、三井系企業の多くは、三井財閥の傘下にあった時代、その後の三井グループを形成した現在を通じて、「三井」の文字を含む商号、丸の中に井桁三のマーク、「三井」の文字からなる商標を使用し、広範な分野において営業活動を行っている。
そして、これら三井グループに属する企業は、上記商号、商標の使用によって築き上げられてきた名声及び信用を保護し、これらの有する出所識別機能を維持するために、三井商号商標保全会という組織を開設し、請求人が三井商号商標保全会の幹事会社となっている。
(2)前記(1)で認定した事実によれば、三井グループに属する企業は、三井財閥の傘下にあった時代以来、「三井」の文字からなる商標を自己の業務に係る商品又は役務について永年にわたり使用して、三井系企業としての名声と信用を築き上げてきたものであって、三井グループに属する企業全体としての事業規模の大きさ、営業活動の期間の長さを考慮すると、「三井」の文字からなる商標は、本件商標の登録出願前より、三井グループに属する企業の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、取引者、需要者間に広く認識され、全国的に著名となっていたことが認められる。
(3)本件商標は、前記したとおり、「三井温熱」の文字を書してなるものであるところ、構成全体をもって親しまれた意味合いを生ずるものではないのみならず、その構成中の「三井」の文字部分は、三井グループに属する企業の使用に係る著名な商標と同一文字よりなり、強い識別性を有する部分であるのに対し、「温熱」の文字部分は、その指定商品「医療用機械器具」、指定役務「入浴施設の提供,あん摩・マッサージ及び指圧,きゅう,柔道整復,はり」との関係から、「温熱治療」の意味合いをもって、商品の品質、効能等を、また、役務の提供の方法、効能等を表したと理解され、自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を有しない部分であると認められる。
そうすると、本件商標に接する需要者は、前記した三井グループに属する企業の使用に係る「三井」の文字よりなる商標の著名性ゆえに、その構成中の「三井」の文字部分に強く印象づけられ、これを本件商標中の要部として捉えて、三井グループに属する企業の使用に係る商標を連想するというのが相当である。
したがって、本件商標は、これをその指定商品及び指定役務について使用するときは、該商品及び役務が三井グループに属する企業の業務に係る商品及び役務であるかのように、需要者をして、商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれのある商標といわざるを得ない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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