結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2003−35454(T2003−35454/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4685933号商標(以下「本件商標」という。)は、「イブオール」の片仮名文字を標準文字で書してなり、平成14年9月25日登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同15年6月27日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第3260010号商標(以下「引用商標」という。)は、「イブオーレ」の片仮名文字を横書きしてなり、平成6年4月26日登録出願、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,耳帯,眼帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液」を指定商品として、同9年2月24日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証(枝番を含む。)及び検甲第1号証を提出した。
(1)引用商標の使用状況
請求人は、引用商標を商品「薬剤」、特に頭痛、歯痛等の痛み止めの効果のある「イブプロフェン配合製剤」に平成7年から使用している。
平成7年から平成12年末までに請求人が製造し,関連会社である件外ラクール薬品販売株式会社及び東光クリエート株式会社が販売しており、平成13年から現在までは請求人及び関連会社である三友薬品株式会社(大阪市東淀川区南江口3丁目1番51号)が製造し、三友薬品株式会社が販売している(甲第3号証の1ないし甲第4号証)。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「イブオール」の文字よりなるものであるから、「イブオール」の称呼を生じるものである。
これに対して、引用商標は、「イブオーレ」の文字よりなるものであるから、「イブオーレ」の称呼を生じるものである。
両商標の称呼を比較すると、「イブオール」と「イブオーレ」は、ともに4音からなり、第1音から第3音の長音までの「イブオー」が同一であり,差異は語尾の「ル」と「レ」のみである。そして、「ル」と「レ」は、同行音で近似した音であり、特に語尾に存するため、全体を称呼した場合、比較的弱く発音される音である。したがって、「イブオール」と「イブオーレ」を聞いた需要者は,両称呼を区別することは難しく,両商標は称呼において類似する商標である。
したがって、本件商標は、引用商標と称呼上類似する商標であり、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品に含まれるものであるから、その登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、10年近くにわたり実際に「薬剤」、すなわち「イブプロフェン配合製剤」に使用されており、市場に本件商標が使用された商品が販売されれば、需要者が出所を混同するおそれは極めて大である。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号にも違反して登録されたものである。
(1)外観類似について
本件商標と引用商標は、ともに片仮名文字であり、「イブオ」とその後の長音を共通にし,差異は「ル」、「レ」の部分のみにある。しかも、その「ル」と「レ」は、外観上判別し難い場合もあり、全体として両商標を需要者が見た場合、混同するおそれがあり、文字商標であっても外観上類似する、と判断できるものである。
(2)商標構成部分の比較
本件商標も引用商標も同一書体、同一の大きさ、同一間隔で書かれており、ともに一体不可分の商標であり、これを構成部分に分けて比較することは一般需要者の取引上の注意力を基準とすれば、あり得ないことである。
被請求人は「イブ」につき「普通名称又は周知の呼称である」とし、本件商標の要部は「オール」であるとしている。しかしながら、前記したように、被請求人の主張は、「イブ」の部分を取り出して観察した出発点において誤りであり、まして「オール」と「オーレ」が要部であるという判断は、需要者の商標観察を無視したもので、全く理由のないものである。
被請求人は、件外エスエス製薬株式会社の「イブ」商標の使用及び自己の「オール」商標の使用について種々述べ、乙第3号証から乙第6号証を提出したが、それらはいずれも「イブ」と「オール」の商標が異なる者によって使用されていることを示すのみであって、本件商標が一体不可分に観察されるとする判断に全く影響を与えないものである。
なお、被請求人は、「イブ」又は「イブ」を使用した登録商標が多数あるとして乙第2号証を示すが、この中に「イブオー」を共通にし、それに語尾の1音が加えられた商標は、本件商標と引用商標のみである。
また、乙第2号証は、「イブ」の語が容易に他の語と結合して一体不可分の商標を作ることができることを示しており、「イブ」を分離して観察した被請求人の主張が誤りであることが明らかである。
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証(枝番を含む。)を提出した。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、以下のとおり、(1)外観において、(2)商標構成部分において、(3)呼称において類似しないものである。
(1)外観上の比較
「イブオール」と「イブオーレ」は、ともにわずか4文字の片仮名文字の構成よりなり、4文字中の1文字を判別することは多数文字中の1文字を判別することと異なり、互いに区別し得る差異があり老人、子供はもちろん、一般需要者においても判別できることは視覚上明らかである。
(2)商標構成部分の比較
「イブオール」と「イブオーレ」の構成部分を比較するには、両商標に共通する「イブ」と両商標のもつ「オール」、「オーレ」の後段とに分けざるを得ない。
前段の「イブ」は、一般的に、「キリスト降誕祭の前夜。クリスマスイブ。」を意味する英語の「eve」、「『旧約聖書−創世記』に見えるへブライ神話における人類最初の女性。」を意味する英語「Eve」であり(乙第1号証)、古くから使われている一般的に周知された呼称である。
一方、「イブ」又は「イブ」の文字を使用した登録商標は、185件登録(指定商品「薬剤」を含むもの)に及んでいる(乙第2号証)ところであり、特に、新一般用医薬品として厚生省(現厚生労働省)が認めた昭和55年6月以降は、先行商品としてイブプロフェン配合製剤の商品が、エスエス製薬株式会社より「イブ」、「イブA錠」、「エスタックイブ」の名称で逐次発売、全国的にマスコミ宣伝され、営業活動をした結果、広く「イブ」の名称が鎮痛鎮静剤と衆知され、「イブプロフェン製剤」の略称として「イブ」、「イブプロ」と使用されているのが現状である(乙第3号証及び乙第4号証)。
よって、両商標は、その構成中の「イブ」は、普通名称又は周知の呼称であるから、後段部分の「オール」と「オーレ」が要部であり、「オール」と「オーレ」の構成部分を比較検討することが必須となる。
そして、両者を比較するに、後段部分を英文字に置換すれば、「オール」は「ALL」であり、「オーレ」は「AURE」(検甲第1号証)であるから、両者は、全く類似しないものであり、その違いは判然と区別できる。
「オール」についていえば、被請求人は、昭和31年3月2日に会社を設立して以来、主たる製品の名称に「オール」を使用し(乙第5号証)、その後50数年にわたり全国的に発売、営業努力を注いできた。その間、オールPに関しては、関西地区を基盤として四国、九州、沖縄、関東、東北とテレビ、ラジオ、新聞雑誌、置看板等数々の宣伝を行いオールの名称は、全国的に周知されるところとなっている(乙第6号証及び乙第7号証)。また、「オール/ALL」の商標が登録されている(乙第8号証)。
したがって、「オール」は、被請求人の製品である観念を生じる大きな意味を持つものである。
一方、請求人の「オーレ」、「AURE」につき探査したところ、「オーレ」、「AURE」に該当する語彙が不明であり、単に「イブ」と「オーレ」を合成した商標と判断せざる得ず、引用商標の「オーレ」より何らの観念も生じず単なる造語と考えられ、本件商標と引用商標とに大きな差異があり、出所の混同は生じない。
(3)呼称について
「オール」、「ALL」と「オーレ」、「AURE」を比較するに、「ALL」は「オール」の称呼を、「AURE」は「アウレ」の呼称を生ずるから、両者は、全く呼称の類似がない。
また、日本語としても「オール」と「オーレ」の最後の「ル」と「レ」との差異は、これらの母音である「ウ」と「エ」は、近似するものでないから、本件商標は、商標第4条第1項第11号に該当しない(乙第9号証)。
(1)称呼について
本件商標は、前記したとおり、「イブオール」の片仮名文字(標準文字)書してなるものであるところ、該文字は、同一の書体をもって、同一の大きさ、同一の間隔で書してなるばかりでなく、本件商標を構成する文字全体から生ずると認められる「イブオール」の称呼も一気に称呼し得るものである。
そうすると、本件商標は、これを構成する各文字の一体不可分性は強いというべきであるから、その構成文字に相応して、「イブオール」の一連の称呼のみを生ずるものであって、特定の観念を想起させない造語を表したと理解されるというのが相当である。
これに対して、引用商標は、前記したとおり、「イブオーレ」の片仮名文字を横書きしてななるものであるところ、本件商標より生ずる称呼と同様の理由により、これより「イブオーレ」の一連の称呼のみを生ずるものであり、特定の観念を想起させない造語を表したと理解されるというのが相当である。
そこで、本件商標より生ずる「イブオール」の称呼と引用商標より生ずる「イブオーレ」の称呼を比較するに、両称呼は、いずれも長音を含めた5音よりなり、そのうちの「イブオー」の4音を共通にし、異なるところは、わずかに語尾に位置する「ル」と「レ」の音の差異にすぎないものである。
そして、「ル」と「レ」の音は、50音図中の同行音に属し、発音の方法等において近似した音といえるばかりでなく、前音の「オ」の長音は、「オ」を1音長く発音するように「オ」として発音され、全体の称呼中、最も強く響く音として聴取されるから、これに続く差異音は比較的明瞭には発音されにくく、聴取され難い音ということができる。
したがって、該差異音が両称呼全体に及ぼす影響は決して大きいものとはいえず、これらの称呼をそれぞれ全体として称呼するときは、その語調、語感がきわめて近似したものとなり、互いに聞き誤られるおそれがあるというのが相当である。
(2)外観について
本件商標と引用商標は、いずれも片仮名5文字よりなり、そのうちの「イブオー」の文字を共通にし、語尾において「ル」と「レ」の文字の差異を有するところ、該「ル」と「レ」は、50音片仮名文字中比較的近似した構成態様からなるものであるから、両商標をそれぞれ離隔的に観察した場合は、その需要者をして、誤認混同を生じさせる程度に外観上も相紛らわしい商標というのが相当である。
(3)被請求人の主張について
被請求人は、本件商標及び引用商標中の「イブ」の文字部分は、「キリスト降誕祭の前夜」等を意味する普通名称であり、かつ、「イブプロフェン製剤」の略称として周知であるから、「オール」及び「オーレ」が要部である旨主張し、さらに、「オール」は、被請求人の取扱いに係る商品「滋養強壮剤」等について使用された結果、周知となっているから、両商標を使用した商品の出所について混同は生じない旨主張する。
しかし、「イブ」の語が「イブプロフェン製剤」の略称を表すものとして、需要者の間に広く認識されているという証拠は見出せない。
さらに、「イブ」の語それ自体では普通名称であるとしても、また、仮に「オール」の文字よりなる商標が、被請求人の取扱いに係る「滋養強壮剤」等について使用され、需要者の間に知られているものであるとしても、引用商標はもとより、本件商標においても、これを構成する文字全体が一体不可分の造語を表したと認識される商標というべきであって、その構成中の「オール」及び「オーレ」の部分のみが看者に強く印象づけられるものではない。
そして、前記認定のとおり、本件商標と引用商標は、これらより生ずる全体の称呼及び外観において類似する商標というべきである。
したがって、上記被請求人の主張には、前提において誤りがあり、失当というべきものである。
(4)以上によれば、本件商標は、引用商標と称呼及び外観において類似する商標であり、その指定商品である「薬剤」は、引用商標の指定商品中の「薬剤」と同一の商品と認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものというべきであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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