結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2003−31264(T2003−31264/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
登録第4218931号商標(以下「本件商標」という。)は、「ENG」の欧文字と「イング」の片仮名文字を二段に横書きしてなり、平成6年6月6日登録出願、第9類「理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,レコード,メトロノーム,電子応用機械器具及びその部品,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気式ワックス磨き機,電気掃除機,電気ブザー,磁心,抵抗線,電極,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮き袋,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,犬笛,家庭用テレビゲームおもちゃ」を指定商品として、平成10年12月11日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。
本件商標は、その指定商品中「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,これらに類似する商品」について継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって使用された事実は存在しないから、商標法第50条第1項の規定により上記商品についての登録は、取り消されるべきである。
(1)本件商標は、欧文字「ENG」と片仮名「イング」を二段に書してなるものであるが、使用に係る商標は、「イングス」(以下「『イングス』商標」という。)であるから、本件商標と同一でないことは明らかである。
そこで、「イングス」商標と本件商標とを商標法第50条第1項の括弧書きに照らして比較するに、「イングス」商標は、本件商標「ENG/イング」と「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」、「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」、「外観において同視される図形からなる商標」及び「その他当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」のいずれにも該当しない。
したがって、「イングス」商標は、商標法第50条に規定する「登録商標の使用」には当たらない。
この点、被請求人は、「イングス」商標中の「ス」は名詞の所有格を示すときに形式上付記するもので、特に意味観念を有さない部分であって、実質的に自他商品の識別標識として機能しているのは「イング」の部分のみであるから、「イングス」商標は、本件商標と社会通念上同一であると主張し、さらに、「イング」は、本件商標と同一の称呼及び観念を生じる商標であるから、本件商標と自他商品の識別標識として同一の機能を果たしている旨主張する。
しかしながら、「イングス」商標中の「イング」は、特に観念を生じないところ、語尾の「ス」と分断して「イング」のみを名詞と捉えるべき特段の事情はない。そのような場合は通常「イング’s」等のようにアポストロフィー(’)を用いるのが通常であり、語尾に「ス」があることのみをもって名詞の所有格を示す記号とみることはできない。
したがって、「イングス」商標は、「イングス」と常に一連に認識されるものであり「イング」と省略されるものではないから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標には当たらない。
(2)乙各号証について
乙第2号証は、「商品・役務名リスト」の写であり、本件商標の使用の事実を証明するものではない。
乙第3号証ないし乙第6号証は、「HKS−111」の品番を付された商品が取り引されたことを示すものであるが、「HKS−111」なる品番が付された商品に、本件商標が付されたかどうかは不明であり、また、乙第3号証ないし乙第6号証自体においても本件商標及びこれと社会通念上同一である商標の記載は見られない。
したがって、これらの証拠は、本件商標の使用の事実を証明するものではない。
(3)まとめ
上述のとおり、被請求人は、本件商標を使用していたことにつき証明をしたとはいえない。
したがって、本件商標は、その指定商品中「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,これらに類似する商品」についての登録は、商標法第50条の規定により取り消されるべきである。
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)被請求人のカタログ(1998年6月作成:乙第1号証、なお、カタログには、頁が付されていないが、便宜上、表紙以下の頁を順次2頁、3頁とする。)には、表紙の右上方に「ヤマハのカラオケ/イングス」との表示され、また、2頁及び3頁に掲載されている商品の実物の写真の斜め上方にも、「イングス」の文字が、「HK−10」や「HK−1」の型式を表示する語と並べて表示されている。さらに、カタログ12頁(裏表紙)にも、「イングス全曲リスト」、「イングス本体付属のマイク」、「ハンディカラオケ・イングス」のように表示されている。
(2)本件商標と「イングス」商標の同一性について
「イングス」商標は、「イング」に「ス(s)」が付記されて表示されているが、この「ス(s)」の部分は単に名詞の所有格を示す時に形式上付記するもので、特に意味観念を有さない部分であり、実質的に自他商品の識別標識として機能しているのは「イング」の部分であるから、本件商標と社会通念上同一といい得るものである。さらに、この「イング」商標は、欧文字「ENG」と片仮名文字「イング」と併記してなる本件商標と構成を異にするが、本件商標と同一の称呼及び観念を生ずる商標であるから、本件商標と自他商品の識別標識として同一の機能を果たしている。
以上のように、「イングス」商標は、本件商標と社会通念上同一と認められるものである。
(3)商品の同一性
「イングス」商標は、商品「カラオケ機器及びその付属品(カラオケ用ミュージックカートリッジ)」に使用されていることは、乙第1号証より明らかである。
「商品・役務名リスト」(乙第2号証)によれば、「カラオケ機械器具」、「カラオケ装置」、「カラオケ通信機器」等の商品は、いずれも類似群コード「11B01」で第9類に属する商品であることが示されている。そして、「『商品及び役務の区分』に基づく類似商品・役務審査基準〔改訂第8版〕」には、第9類の類似群コード「l1B01」が「電気通信機械器具」に該当することが明記されている。
してみれば、商品「カラオケ機器及びその付属品(カラオケ用ミュージックカートリッジ)」に付した「イングス」商標は、本件商標の指定商品「電気通信機械器具」についての使用であることは明らかである。
(4)ところで、カタログの12頁(裏表紙)に示されているように、カラオケ機器を購入した場合、機器本体に同梱されている「注文書」によって、オリジナルのミュージックカートリッジを注文することができる(乙第3号証の1ないし乙第4号証の6)。
乙第3号証の1ないし6(注文書)及び乙第4号証の1ないし6(入金チェックリスト(日報))には、それぞれ6桁の注文番号が記載されており、この注文番号を照合することにより、販売日を確認することができる。
例えば、乙第3号証の1には、「082087」の注文番号が記載されており、この注文番号の商品については、2003年9月10日に入金があったことが乙第4号証の1から分かる。
これら乙第3号及び乙第4号証は、同じく注文番号を示した「生産実績レポート」(乙第5号証の1ないし5)及び「売上明細表(日報)」(乙第6号証)とも併せて、記載されている時期に、上記商品(乙第1号証に呈示される商品)の取引が実際に行われたことを示している。
(1)乙第1号証は、「ヤマハのカラオケ/イングス」との表題がある1998年(平成10年)6月作成(本件審判の請求の登録日は、平成15年10月22日)の被請求人のカタログであるところ、その表紙には、カラオケ機器とマイクロフォンの写真が掲載され、カラオケ機器の正面左上方部には、「HANDY KARAOKE」の文字とともに、別掲のとおりの構成よりなる商標(以下「別掲商標」という。)が表示されている。
2頁及び3頁には、上段部分に、「テレビに飽きたら、テレビで歌おう。」、「本格機能のデジタルカラオケ」と記載され、その下の、2頁部分に「イングス」の文字を、3頁部分に別掲商標が横並びに表示されている。そして、これらの表示の左側には、「イングス HK−10」の、同右側には、「イングス HK−1」の記載があり、それぞれの機種のカラオケ機器とマイクロフォンの写真が掲載されており、各カラオケ機器の正面部分には、別掲商標が表示されている。
4頁ないし11頁にかけては、「豊富なジャンルと多彩な曲ミュージックカートリッジ」との表題のもと、「カートリッジNo. HKS−Z01」ないし同「HKS−Z26」、「カートリッジNo. HKS−P01」ないし同「HKS−P18」、「カートリッジNo. HKS−E01」、同「HKS−E02」及び同「HKS−E05」ないし同「HKS−E18」、「カートリッジNo. HKS−G01」及び同「HKS−G02」、「カートリッジNo. HKS−K01」及び同「HKS−K02」、「カートリッジNo. HKS−J01」ないし同「HKS−J06」、「カートリッジNo. HKS−W01」ないし同「HKS−W04」の記号が付されたカートリッジとともに、それぞれの記号が付されたカートリッジに録音された曲名が記載されている。
12頁(裏表紙)には、「あなたの十八番が創れる〜カスタムカートリッジ(15曲入)」のもと、「盛りだくさんのイングス全曲リスト(本体同梱)の中から歌いたい曲だけを15曲選んでご注文ください。あなたのオリジナルのカートリッジができます。」、「※詳しくは、本体同梱の『メールオーダーシステムのご案内』をご覧ください。」、「カスタムカートリッジ/1巻15曲入り 1本3,500円」などの記載やカスタムカートリッジを注文する際の「本体に同梱されている『注文書』記入例」が示されている。その他、「OPTION」としてマイクロフォンの紹介に、「イングス本体付属のマイクと同型の・・」、「注意」として「ハンディカラオケ・イングスをご使用の際は、・・」などの記載がある。
また、同頁には、右上に黒塗り長方形内に白抜きで「SING ING’S」の記載、「ING’Sの新曲情報」の記載がある。
(2)乙第3号証の1ないし6は、注文番号を「082087」、「107608」、「100819」、「107192」、「107579」、「107484」とするミュージックカートリッジの「注文書」であるところ、それぞれの「カスタムカートリッジ曲番号記入欄」には、曲番号が記入され、それぞれの「カスタムカートリッジ代金」欄には、代金が記入されている。
(3)乙第4号証の1ないし6は、「入金チェックリスト」であり、乙第5号証の1ないし5は、「生産実績レポート」であるところ、これらによれば、乙第3号証の注文番号「082087」は、「2003/07/15」に受注し、「03/09/10」に入金されたこと、以下、同じく「107608」は、「2003/06/09」に受注し、「03/07/25」に入金されたこと、同「100819」は「01/08/20」に受注したこと、同「107192」は、「01/08/20」に受注し、「01/08/06」と「01/08/20」に代金の出し入れがあったこと、同「107579」は「02/11/11」に入金されたこと、同「107484」は、「2002/09/20」に受注し、「02/09/17」に入金されたことが認められる。
前記2で認定した事実を総合すると、本件審判の請求の登録前3年以内である2001年(平成13年)8月ころから2003年(平成15年)9月ころにかけて、被請求人は、乙第1号証の12頁(裏表紙)に記載の「あなたの十八番が創れる〜カスタムカートリッジ(15曲入)」を、顧客の注文に応じて販売したと推認し得る(乙第3号証の1ないし6の「カスタムカートリッジ曲番号記入欄」に記載された曲番号は、乙第1号証中には存在しないが、乙第1号証の裏表紙の「本体に同梱されている『注文書』記入例」と同様のものとみることができる。)ところ、該「カスタムカートリッジ」の注文書は、カラオケ本体の購入時にカラオケ本体と同梱されるものであることが認められ、カスタムカートリッジの注文時期は、カラオケ本体の購入時からいつまでといった期限は見あたらないが、カラオケ本体の購入時とほぼ同時期か、遅くとも数カ月後にあったとみるのが相当である。
そうすると、「カスタムカートリッジ」、すなわち、カラオケに使用される録音済みテープが、本件請求に係る指定商品である「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,これらに類似する商品」の範疇に属する商品であるか否かはさておいて、少なくとも「電気通信機械器具及びその付属品」の範疇に属するカラオケ機器及びその付属品たるマイクロフォンについて、本件審判の請求の登録前3年以内に取引があったと推認し得るところである。
(1)前記2(1)によれば、カタログ(乙第1号証)に掲載されたカラオケ機器本体の正面部及び3頁上段部分に表示された別掲商標は、独特の手法をもって図案化され、きわめて特徴のある商標といえるものであり、カラオケ機器本体の正面部に表示されていることも相俟って、看者に強く印象づけられ、記憶されるというのが相当である。そして、「イングス」商標は、別掲商標の片仮名表記と理解されるにとどまるとみるのが相当である。
そうすると、被請求人がその取扱いに係る商品として、乙第1号証に掲載したカラオケ機器及びその付属品たるマイクロフォンについて使用する商標は、別掲商標とその片仮名表記の「イングス」商標(両商標をまとめていうときは、以下「使用商標」という。)であるというべきである。(なお、12頁(裏表紙)に表示された「ING’S」は、別掲商標を活字体で表記したものと認められる。)
(2)本件商標は、前記したとおり、「ENG」の欧文字と「イング」の片仮名文字を二段に横書きしてなるものであるから、これより「イング」の称呼を生ずるものであって、本件商標の指定商品における需要者は、特定の観念を想起しないものというのが相当である。
これに対し、使用商標は、前記したとおり、別掲商標及びその片仮名表記の「イングス」商標であるところ、別掲商標は、独特の手法できわめてまとまりよく表現され、構成全体をもって、一体不可分の商標を表したと認識されるばかりでなく、「イングス」商標は、別掲商標の片仮名表記と理解されるから、使用商標は、これより「イングス」の称呼を生ずるものであって、本件商標同様に、特定の観念を想起させない造語よりなるものと理解されるものである。
そうすると、本件商標と使用商標は、商標法第50条第1項括弧書きにおいて、例示された各商標に当たらないことはもとより、社会通念上同一と認められる商標にも当たらないというべきである。
(3)上記(2)に関し、被請求人は、「イングス」商標は、その構成中の「ス(s)」の部分は、単に名詞の所有格を示す時に形式上付記するもので、特に意味観念を有さない部分であり、実質的に自他商品の識別標識として機能しているのは「イング」の部分であるから、本件商標と社会通念上同一といい得るものである旨主張する。
しかし、前記認定のとおり、使用商標は、別掲商標及びその片仮名表記の「イングス」商標であるというのが相当であるから、「カラオケ機器及びその付属品」について使用する商標が「イングス」商標であることを前提に、「イングス」商標と本件商標とは、社会通念上同一の商標であるとする被請求人の主張は、前提において誤りがあるというべきである。
仮に、使用に係る商標が「イングス」商標のみであると理解される場合があるとしても、「イングス」商標は、同一の書体をもって、同一の大きさで同一の間隔で書されているものであるから、その構成中の「ス」の文字部分が、被請求人主張のように、所有格を表したと理解されるとすることは困難であるといわざるを得ない。
したがって、「イングス」商標は、「イングス」との一連の称呼のみを生ずるものであって、特定の観念を生じないものというのが相当であるから、本件商標とは、同一の称呼及び観念を生ずる商標ということはできないし、外観上明らかに区別し得るものである。その他、「イングス」商標が本件商標と社会通念上同一の商標と認められる要素は見出せない。
以上によれば、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできない。
したがって、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が本件請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標を使用したことを証明したものとは認めることはできない。また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしていないものである。
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定商品中「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,これらに類似する商品」についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。