sokuhyo

Trademark Appeal Case

図案化文字の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2003−35025(T2003−35025/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4601573号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、平成13年7月6日にに登録出願され、別掲(2)に示すとおりの第9類、第16類、第35類、第37類、第41類及び第42類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同14年9月6日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用する登録商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4423060号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(3)に示すとおりの構成よりな

り、平成11年10月27日に登録出願され、別掲(4)に示すとおりの第9類、第16類、第38類及び第42類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同12年10月6日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張

請求人は、「本件商標の指定商品及び指定役務中第9類、第16類及び第42類は、これを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び同第2号証を提出した。

(1)本件商標は、別掲(1)に示すとおり、「t」の文字を図案化した「t図形」からなるものである。

(2)本件商標と引用商標との類否

そこで、引用商標と本件商標との類否を検討するに、両者は共に「t」の文字の縦の部分の先端を伸ばして恰も円を描くように構成してなるものであって、デザイン上のコンセプト・モチーフを共通にする。商標に基づいて商品を選択するに際しては、過去に商品購入時又は宣伝広告で見て記憶している商標と商品上に表示される商標とを比較するものであるから、比較される商標の一つは観念的なものとなる。そうであるとすれば、外観上の商標の類否の判断に際しては両商標を直接的に対比観察するのではなく、時と所を異にした離隔観察において紛れるか否かという観点からされなければならない。

離隔観察において「t」の文字の縦の部分の先端を伸ばして恰も円を描くように丸めて構成してなると記憶された引用商標と本件商標の「t図形」と比較した場合には、上述したように、本件商標も同じく「t」の文字の縦の部分の先端を伸ばして恰も円を描くように丸めてなる故に両者はデザイン上のコンセプト・モチーフを共通にするので、必然的に外観上相紛らわしいものとなる。

本件商標は赤く着色された円の中に「t図形」が白抜きに描かれているが、円は極めてありふれた図形であり、また、円を赤く着色することもありふれたことであることは言うまでもないことである。したがって、自他商品・役務識別標識として本件商標を捉えた場合には、需要者は赤く着色された円の存在に殆ど注意を払わない。これは、取りも直さず、赤く着色された円が本件商標と引用商標との見分けに殆ど影響を与えることが出来ない。その結果、離隔観察においては赤く着色された円の存在は捨象され、本件商標は引用商標に相紛らわしいものとなる。

また、本件商標と引用商標とは「t」の文字の縦部分の先端の位置が異なるが、人が本件商標及び引用商標のように、「t」の文字の縦部分を伸ばして恰も円を描くように何回も書いたときには、その先端部分の位置は常に異なるものであり、引用商標のような位置になる場合もあるし、時には本件商標のような位置になる場合もある。このことからすれば、本件商標及び引用商標に接した場合には、その先端の位置には注意を払わない。したがって、赤く着色された円と同じく「t」の文字の縦部分の先端の位置も離隔観察においては捨象されてしまう。

以上述べたことから明らかなように、本件商標と引用商標との相違点は両者を見分ける根拠とはなり得ない。

さらに、図形と言えども、取引上商標から何らかの観念を感得して需要者に取り扱われるものである。この場合、引用商標と本件商標の「t図形」とはそのデザイン上のコンセプト・モチーフから共に「図案化したt」ないしは「縦の部分の先端を伸ばして丸めた図案化したt」との観念をもって取り扱われるものである。この点で、両者は観念上も相紛らわしいものとなる。

(3)以上詳述した如く、本件商標は引用商標と外観及び観念上相紛らわしく類似して商標法第4条第1項第11号に該当するにもかかわらず登録されたものである。したがって、本件商標の登録は商標法第46条第1号によって無効とされるべきである。

(4)答弁に対する弁駁

(a)被請求人は論理の飛躍があると主張するが、具体的にどのような理由で論理の飛躍があるのか何ら主張していない。この点で、被請求人の主張は根拠がないものである。

人は図形を記憶するに際して、複写機のように図形そのものを細部に渡って記憶するのではなく、あくまで言葉によって記憶するものであり、そのため、必然的に商標の認識は観念的にならざるを得ない。観念的とは言葉を変えればコンセプトやモチーフである。したがって、コンセプトやモチーフが共通すれば相紛れるものとなる。

(b)商標は図形であっても、自他商品の識別標識であり、絵画等ではない。この点で自他商品の識別標識としてどのように捉えられるかを問題とすべきである。しかるに、商標は専らその顕著な部分によって自他商品の識別を需要者に可能ならしめるものであるから、商標の類否にあたってもありふれた部分は捨象されるものである。被請求人はありふれたものこそ識別に役立つかの如く主張しているが、この主張は商標が自他商品の識別標識である点を明らかに見落としたものであると言わざるを得ない。

以上述べたことから、本件商標の赤く着色された円は極めてありふれた図形であるが故に、本件商標と引用商標の類否の判断に影響を及ぼせない。

(c)被請求人は本件商標には円があるから面としての要素を有していると主張していると推測されるが、引用商標において「t」の文字の縦の部分の先端を伸ばして恰も円を描くように丸めている点で同じく面としての要素を有していると言える。現に、被請求人自身も「本件商標及び引用商標共に略丸い図形という範疇に当てはまる」として、引用商標が円として捉えられること、すなわち、面の要素があることを認めている。

(d)上述したように、赤く着色された正円であることは商標の類否の判断においては捨象される。また、引用商標は「t」の文字の縦の部分の先端を伸ばして恰も円を描くように丸めているが、これは、@の構成を基に表現されたものではない。かりに、引用商標が@の構成を基に表現されたものであっても、当該商標が「t」の文宇の縦の部分の先端を伸ばして恰も円を描くように丸めているものと、本件商標と同じコンセプトやモチーフである以上、類似のものとされる。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。

答弁の理由1

(1)本件商標は、略赤く着色された正円(陰影により「球体」ともとれる)の中を略楕円図形で白抜きして成る。

(2)なるほど請求人がいうように、両商標を欧文字「t」のデザイン化とみることはできるし、請求人が当該「t図形」をして、「文字の縦の部分の先端を伸ばして恰も円を描くように丸めて構成してなる」と表現するのも自由である。

しかしながら、両商標の具体的表現形式は全く異なっているのだから、両「t図形」を「文字の縦の部分の先端を伸ばして恰も円を描くように丸めて構成したもの」といい得るかどうかはともかく、両商標が「デザイン上のコンセプト・モチーフを共通」にするものでないことは明らかである。

請求人が両商標の構成を前示の如く分説しているのは、外観上の類否は「視覚」だけでなく「観念的な繋がり」をみるべきであるとの前提で、「(記憶を頼りに行う)離隔観察手法よりすれば両商標は(観念的に)類似する」旨の判断を求めているからと目されるが、そもそも商標のコンセプトやモチーフが共通しさえすればその外観までもが必然的に類似してくるわけではないし、需要者が両者を取り違えやすくなる蓋然性が増すわけでもない。請求人の主張には明らかに論理の飛躍がある。

また請求人は、本件商標を構成する赤い正円図形はありふれているから、需要者がこれを記憶し取引上の標識として利用する際には当該正円要素を捨象し、よって「赤く着色された正円の有無」という視覚的要素をしては本件商標と引用商標とを見分けることができないと説くが、図形的要素のみで構成される本件商標について、それが部分・部分に切り離され別々に記憶されるなどということが起こりうるのかどうかは置くとしても、極めてありふれた図形だと何故に看者の意識から除外されてしまうのか、ありふれているからこそ記憶にとどめやすく、商標の差別化に役立つ場合もあるのではないか、といった点に対し具体的な論証がされていない以上、請求人の主張は採用に値しない。文字商標の類否を論ずる際の「要部認定」がそのまま図形商標の類否判断にも援用できるかの如き主張は失当である。

加えて請求人は、「『人が』『t』の文字のタテ部分を伸ばして恰も円を描くように何回も書いたとき」という場面を想定し、両商標がだんだんと似てくる場合のあることに言及しているが、なに故このような仮定が必要なのか理解に苦しむ。要は「t」の終端位置の相違は需要者の記憶に残らないということをいいたいのだろうが、両者の間に

(a)引用商標が「線」のみで構成されているのに対し、本件商標のそれは明らかに「面」としての要素を有している。

(b)即ち、両者の基本的な態様は「略丸い図形」という範疇には当てはまるものの、それを具体的に構成する「図形要素」は全く異なる。

(c)本件商標は「円」の内部が赤く着色されている。問題の「t図形」は、赤く着色された正円の中で白抜きされている。

(d)引用商標は、「@」(アットマーク)に似せて、或いはアットマークの構成からヒントを得て、これと同様の手法を欧文字の「t」にあしらったのであろうことが容易に推測できる。

といった特徴的差異があることは事実として明らかなのだから、「人が本件商標と引用商標とを手書きする場合」といった特殊な事例を云々するよりも、上記の相違点を以て両商標は区別できると解した方が余程自然であろう。

(3)以上述べた如く、本件商標中の「t図形」が、引用商標と全く同一であるか、かなり近似した表現で白抜きされているような場合であれば格別、両「t図形」を、外観的にであれ観念的にであれ「類似する標章」として評価する必要は全くない。「デザイン上のコンセプト・モチーフ」が類否判断の要素となり得る場面のあることは否定できないが、請求人がいうそれは、余りにも漠然としすぎていて採用の限りでない。本件商標と引用商標は、外観上も観念上も相紛れるおそれがなく、非類似と目するのが相当である。

よって、本件商標が商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたことにはならず、これが無効とされるべき理由は何等存しない。

なお請求人は、本件商標で指定されている商品・役務のうち、第9類、第16類及び第42類の「全指定商品」「全指定役務」について無効を主張しているが、引用商標の指定商品・指定役務とは審査基準上「非類似」であるとの推定が働く商品・役務の無効理由については、何ら具体的な主張・立証を欠いている点を指摘しておく。

答弁の理由2

本件無効審判事件につき被請求人は、平成15年4月30日付で既に答弁書を提出済みであるが、その後、同種の無効審判事件(無効2002−35111号)において被請求人の主張を全面的に認める内容の審決があった(平成15年4月22日付起案、同年5月6日付送達)。

そこで、ここに前記審決の写しを提出すると共に、本件無効審判事件についても同じ結論の審決を速やかに頂きたく願い上げる次第である。

第5 当審の判断

本件商標は、別掲(1)に示すとおりの図形よりなるところ、当該図形は、赤色の球体らしき図形とそれに収まる程度の大きさの左回りで白抜きのアルファベット文字の「t」と思しき文字を配し、先端部から終端部へ次第に細くしながらその先端部と終端部とをやや離した楕円状にし、そして、先端部やや下から短く横線を楕円状の線とほぼ直角に交わるように描き、更に、先端部と終端部との中心部に光源を置きその光源から等間隔に拡散した光の模様の如くに白抜きしてなり、全体として立体的形象の図形として認識されるとみるのが相当である。

他方、引用商標は、別掲(3)に示すとおり、アルファベット文字の「t」の末尾の部分を長く伸ばし、「t」の文字部分を円状に囲うという図形、いわゆる「アットマーク」(@)を彷彿させる形状で描かれてなるものであり、全体として平面的形象の線図形として認識されるとみるのが相当である。

そうとすれば、本件及び引用の両商標は、共に看者の注意を最も強く惹くアルファベット文字「t」を題材としたところに共通点があるにしても、その表現の方法、描き方は全く別異のものであり、取引者、需要者に与える印象は著しく相違し、それぞれ異なったものとして記憶されるとみるのが自然であるから、時と処を異にして離隔的に観察するも、外観において相紛れるおそれはないものといわなければならない。

また、両商標は、アルファベット文字「t」を題材にした図形よりなる商標としても、特定の観念を生じ得ないものとみるのが相当であるから、両者は観念上比較し得ないものである。

そして、両商標は、他に類似するところがない。

してみれば、本件及び引用の両指定商品、役務の類否について検討するまでもなく、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても類似するものということができない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を

無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。