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Trademark Appeal Case

単数形と複数形の商標類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2003−35110(T2003−35110/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4543292号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4543292号商標(以下「本件商標」という。)は、「キッス」の片仮名文字を標準文字とし、平成13年5月10日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、平成14年2月8日に設定登録されたものである。

2 引用商標

請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第424634号商標(以下「引用商標」という。)は、「KISSES」の欧文字を横書きしてなり、昭和27年3月24日に登録出願、第43類「チヨコレート、キヤンデー、ドロツブス、その他本類に属する商品及糖菓類」を指定商品として、昭和28年4月23日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。

(1)請求の理由

(ア)本件商標は、片仮名文字「キッス」からなり、「口づけ、接吻」(KISS)を意味することが明らかである。英語の「KISS」の音表記の片仮名文字は「キス」であるともいえるが、この英語「KISS」が促音(ッ)を伴って「キッス」と発音され、音表記されることもよくあることである。このことは、その構成中に「KISS」とこの音表記の片仮名文字を「キッス」として含んでいる登録商標が多数存在することからも明らかである(甲第3号証)。したがって、本件商標は、「口づけ、接吻」の観念が生ずる。

他方、引用商標は、英文字「KISSES」からなるが、この英文字が、わが国でも中学で学習する基本・最重要英単語であり、一般によく知られた「口づけ、接吻」を意味する英単語「KISS」の複数形であることは明らかである(甲第4号証ないし甲第6号証)。また、英語の名詞の複数形に関する変化形は、英語学習の基礎であり、名詞の英単語の語尾が「s」、「ss」等で終わる場合、名詞の複数形は規則的に「es」をつけることにより表すことは、一般の常識ともいえるものである(甲第6号証)。したがって、わが国で親しまれている英語の一般的な理解度からしても、引用商標の英文字「KISSES」が「口づけ、接吻」を意味する「KISS」の複数形であることが一般に容易に認識されることに疑う余地がない。

引用商標「KISSES」は、「口づけ、接吻」を意味する英語「KISS」の複数形を表したものであることが明らかであるが、複数形であることにより単数形の場合と明確に異なる観念が生ずるものとはいえないから、引用商標は、本件商標と同様に「口づけ、接吻」の観念が生じる。

したがって、本件商標と引用商標は、観念において相紛らわしい類似する商標である。

さらに、両商標の称呼を比較するに、本件商標は、その構成文字から、「キッス」と称呼される。

これに対し、引用商標は、「KISSES」(KISSの複数形)から、「キッスイズ」(〜iz)とも称呼され得る(甲第4号証及び甲第5号証)。

そこで、本件商標の称呼である「キッス」と引用商標の称呼である「キッスイズ」を比較すると、両称呼は、聴覚上影響力の少ない語尾において、「イズ」の音の有無の相違があるにすぎないから、両称呼は互いに類似する。

特に、本件の場合、比較される称呼「キッス」と「キッスイズ」は、同じ英単語の単数形と複数形の発音であり、相違音の「イズ」は複数形を示す文字に相当し印象に強いものとはいえず、共通の「キッス」の部分が印象が強いものであるから、両称呼は、同じ英単語の称呼として紛らわしいものといえる。

したがって、本件商標と引用商標は、称呼においても類似する。

(イ)これに関し、過去の審決(審判平9−18680号)においても、「シャワーズ/SHOWERS」と「シャワー」の両商標が、単語の複数形と単数形の差異にすぎないことを理由に、観念・称呼において類似すると判断されている(甲第7号証)。

また、過去の登録異議決定(異議平10−91091号)においても、「小さな恋人」と「小さな恋人たち」の両商標が、「小さな恋人」という概念において、単数か複数かの相違にすぎないものであるとして、両商標は観念上類似すると判断されている(甲第8号証)。

(ウ)請求人は、本件審判請求と同じ理由で、登録異議申立(異議2002−90310)を行ったが、「両商標は非類似」との判断が下され、本件商標の登録を維持するとの決定が出された(甲第9号証)。

しかしながら、その判断の内容は、論理的に矛盾を含むものであり、不当なものといわざるを得ない。

(エ)以上述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するから、その登録は、同法第46条の規定により無効にされるべきである。

(2)答弁に対する弁駁

(ア)引用商標「KISSES」が、「口づけ、接吻」を意味する「KISS」の複数形と理解されることは、異論のないところである。したがって、これより生じる観念は、「複数(回)の口づけ、接吻」である。

また、「口づけ、接吻」(の行為)が複数回行われることは、何も特別なことではないから、引用商標の「KISSES」、すなわち、「KISS」の複数形の意味するところは、本件商標の意味する「口づけ、接吻」に実質的に異ならない。したがって、本件商標と引用商標は、観念において類似する。

(イ)さらに、本件の具体的な取引の実情を考慮するに、引用商標「KISSES」が、需要者・取引者間では、単に「キス(チョコ)」(とのみ)とも呼ばれていることからしても(甲第10号証及び甲第11号証)、引用商標からは、単に「キス」すなわち、「口づけ、接吻」の観念が生じるものであり、本件商標に観念上類似することが明らかである。

また、引用商標「KISSES」が需要者・取引者間で「キス(チョコ)」とも呼ばれていることは、引用商標と本件商標との呼称上の類似をも基礎づけるものである。

(ウ)被請求人の引用する東京高裁判決(東京高裁判決 昭和28年(行ナ)第18号)は、観念類似に関する判断の基礎となった事実が明らかに本件とは異なるから(甲第12号証)、本件での判断の参考にはならない。また、甲第3号証中に列挙・表示される各商標の存在も、本件での観念類似に関する判断の参考にはならない。なぜなら、本件の場合は、両商標は、実質的に同じ語の単なる単数・複数形の相違にすぎないからである。

(エ)さらに、引用商標は、その「小型タマネギ型」チョコレートの歴史ある世界的に著名な商標である(甲第10号証、甲第11号証及び甲第13号証)。このチョコレートは、日本でも、古くから、全国有名百貨店、スーパー等で販売されており、引用商標はわが国でもよく知られている(甲第13号証)。なお、このチョコレートの当時の輸入総代理店は、被請求人とされており、被請求人自身が引用商標をよく知っていると考えられる(甲第11号証)。

本件は、引用商標の著名性の故に、また、両商標は同じ語の単なる単数・複数形の相違を表示したものと評価されるにすぎないが故に、さらには、既に指摘したように、引用商標「KISSES」が需要者・取引者間で単に「キス(チョコ)」(のみ)とも呼ばれていることとも相俟って、両商標は紛らわしい類似の商標ということができる。

3 被請求人の主張

被請求人は、「本件審判の請求を棄却する。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べている。

(1)本件事案は、登録異議申立(異議2002−90310)において論じられたものであり、本件審判の請求の理由は、登録異議申立理由と全く同じであり、異議決定理由で否定されているものであり、その否定理由は、正当なものであるから、改めて論議する必要はないというべきである。なお、被請求人は、甲第9号証を乙第1号証とし、異議決定理由を答弁内容として援用する。

(2)理解困難性

請求人が主張する「KISS」の複数形というのは、文法的な意味での観念であるにすぎず、言語それ自体の観念ではない。問題は、「KISSES」の言語上の意味である。あるいは「KISS」の複数形とは言語において一体どんな観念なのかである。非常にわかりにくいといわざるを得ない。

(3)観念の法的意味

商標の類似判断においては、「KISSES」という言葉の意味が、取引上どう認識されて流通されるかということが問題なのであり、「KISSES」が、「KISS」の複数形であるといっても、意味を成さず、商標法上の商標の観念を特定したことにはならない。

(4)引用商標の観念

そこで「KISSES」が、どのように理解されるかを検討するに、「KISS」が「口づけ、接吻」を意味するのであるから、その複数としての意味は、「何回かの口づけ、接吻」と解釈するのが自然である。

しかし、これは具体的にどのような意味なのであろうか。「この欧文字の意味が理解しがたい。」とした異議決定の認定は、少しの不自然あるいは不合理もない。もっと砕いて考えると、一つは、「同一カップルがした2以上の口づけ、接吻」を意味するといえる。また、同一のカップルではなく、「複数のカップルがした(2以上の)口づけ、接吻」を意味するかもしれない。

(5)観念と取引の関係

もし、このような意味であるとしても、需要者がこのような意味に到達するまでには相当な時間を要するはずであり、そのようなことを、異議決定は、「直ちには理解しがたい。」といっているのである。「商標の観念は、一見して世人に直ちに一定の意義を理解させるようなものでなければならない」(東京高裁判決 昭和28年(行ナ)第18号)のである。

殊に簡易迅速を尊ぶ取引界においては、そのような細かいことまで考えている時間的余裕はなく、需要者が取引において引用商標に接して感じるのは、引用商標が「KISS」(口づけ、接吻)と関係ある語であるという程度のものであろうと推測される。しかし、甲第3号証を援用するならば、「KISS」に関連する商標はあまた存在するというわけであり、「KISS」(口づけ、接吻)と関係ある語であるというだけでは、商標法上の観念類似とはならない。

(6)観念同一

商標の類似として、観念の類似がいわれるが、基本的には、類似判断のファクターたり得るのは、観念の同一である。これは、観念が、商標の出所認識において、二義的に作用し、意味において強い関連性を有しなければ、出所の混同には至らないからである。

然るに、引用商標は、「口づけ、接吻」そのものではなく、「何回かの口づけ、接吻」というような得体の知れない観念であるから、観念同一ということはあり得ない。

(7)結び

以上のとおり、本件商標と引用商標とは、称呼において誤認するおそれはなく、観念上の類似も存在しない。

5 当審の判断

本件商標は、「キッス」の文字よりなるところ、該文字(語)は、我が国において「口づけ、接吻」(KISS)を意味する外来語として普通一般に使用され、日常親しまれている言葉である。

してみれば、本件商標は、「口づけ、接吻」の観念を生ずること明らかである。

他方、引用商標は、「KISSES」の文字よりなるところ、該文字(語)は、「キッシズ」と発音され(甲第10号証及び甲第11号証)、我が国において中学でも学習する基本語にして平易な英単語であり、「口づけ、接吻」を意味する英語「KISS」を複数形で書したものと容易に看取、理解されるものというのが相当である。

そうしてみると、引用商標は、「口づけ、接吻」を意味する英語「KISS」の複数形を表したものであって、複数形であることにより「何回かの口づけ、接吻」の意味を想起する場合もあり、その意味では単数形の場合と必ずしも同一とはいえないとしても、「口づけ、接吻」という行為の面をごく普通に捉えれば、その意味は同じであって、単数形の場合と明確に異なる観念が生ずるものとはいえないから、単に「口づけ、接吻」の観念を生じるものというべきである。

そうとすれば、本件商標と引用商標とは、外観及び称呼上相違するところがあるとしても、それぞれより生ずる「口づけ、接吻」の観念を同じくする点で相紛らわしく、互いに誤認混同のおそれのある類似の商標といわざるを得ない。

また、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、同一又は類似のものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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