sokuhyo

Trademark Appeal Case

称呼の類似性(ラ・レ音)

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2003−35121(T2003−35121/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4633043号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1.本件商標

本件登録第4633043号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成14年3月13日に登録出願され、第10類「診断用機械器具,医療用X線装置,その他の医療用機械器具」を指定商品として、平成14年12月27日に設定登録されたものである。

第2.請求人の引用する商標

請求人が本件商標の登録の無効理由に引用する商標は、下記のA及びB(以下、一括して「引用商標」という。)のとおりである。

A 登録第1484940号商標

商標の構成 「SOF−LEX」の文字を横書きしたもの

登録出願日 昭和52年9月21日

設定登録日 昭和56年10月30日

指定商品 第10類「金属製充てん材で歯を修復した個所の仕上研 削・研磨用ディスク,その他の医療用機械器具」

B 登録第4558338号商標

商標の構成 「SOF−LEX」の文字(標準文字)よりなるもの

登録出願日 平成13年8月1日(優先権主張 アメリカ合衆国 出 願日2001年2月2日)

設定登録日 平成14年4月5日

指定商品 第10類「歯科用機械器具,その他の医療用機械器具」

第3.請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証を提出した。

1.本件商標と引用商標との類否

(1)本件商標の称呼

本件商標の「SOFLUX」は造語であるが、ロ−マ字の造語からなる商標で日本語読み出来ないものは、取引の経験則上、日本人の知っている英語読みに合わせて称呼されるものである。しかるに、英語において「LU」は、「lump」が「ランプ」、「lunch」が「ランチ」、「lung」が「ラング」、「luxury」が「ラクシャリ」と称呼される如く、「ラ」と発音される。そして、ここで挙げた英語は現在では日本語化している程日本人にはよく知られているものである。したがって、英語において「LU」が「ラ」と発音されることを、わが国の平均的な需要者は知り得ていることは明らかである。

以上のことから、本件商標は「ソフラックス」と称呼される。

(2)引用商標の称呼

引用商標の「SOF−LEX」も造語であり、英語において「LEX」は、「reflex」が「リフレックス」、「complex」が「コンプレックス」と称呼される如く、「レックス」と発音される。したがって、引用商標は「ソフレックス」と称呼される。

(3)「ソフラックス」と「ソフレックス」との比較

本件商標の称呼「ソフラックス」と引用商標の称呼「ソフレックス」とは「ラ」音と「レ」音とが相違するにすぎない。しかるに、「ラ」音と「レ」音は共に子音を共通にしている。その上、「ラ」音の母音「a」音と「レ」音の母音「e」音とは母音を口の開き方及び舌の位置によって分類された母音三角形において隣り合っている。

したがって、「ラ」音と「レ」音は音質が極めて近似するものとなる。特許庁においても「...相違する音の子音がともに50音図の同行に属しその母音が近似(例えば、口の開き方と舌の位置の比較から、母音は工はアとイに近似し、...)...全体の音感が近似して聴覚されることが多い。」(審査基準)として、請求人と同様の見解を採っている。

本件商標及び引用商標は、共に6音と商標の称呼としては特段短いものではない。したがって、各音が全体称呼に与える影響が大きいものとはなり得ない。しかも、「ラ」音と「レ」音は聴者の注意を惹き難い中間部に位置している。これらの点に鑑みると、「ラ」音と「レ」音は本件商標及び引用商標の全体称呼に大きな影響を与えることができない。

以上述べた如く、本件商標及び引用商標は、相違音が音質において極めて近似し、しかも、全体称呼に大きな影響を与えることができない故に、一連に称呼された場合には、語調・語感が相紛らわしいものとなる。そして、語調・語感が相紛らわしい本件商標と引用商標とを敢えて聞き分けることが出来るような意味上の顕著な相違等の特別な事情は何ら見出せない。

したがって、本件商標は引用商標に称呼上類似する。

(4)特許庁における審決例

特許庁も、「ラ」音と「レ」音のみが相違する商標を相互に類似するものとしている。請求人はその事実を証するために甲第4号証ないし甲第19号証の審決例を掲げる。

これら審決例において類似とされた商標に比べ、本件商標と引用商標とが短い称呼からなるものではない。むしろ、本件商標と引用商標よりも短い称呼の商標同士ですら類似するものとされている。また、これら審決例における商標中「ラ」音と「レ」音の位置は本件商標と引用商標と同じく中間に位置しているものが多い。したがって、本件商標と引用商標はこれら審決例における商標と同じく類似するものとされるべきである。

(5)結論

本件商標は引用商標に類似し、その指定商品も同一であるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきである。

2.答弁に対する弁駁

(1)被請求人の主張の要約

ア.本件商標は採択の趣旨から「ソ・フラックス」と称呼されるのに対して、引用商標はその外観から「ソフ・レックス」と称呼されるので、聞き誤ることはない。

イ.商標「LUX」と商標「REX」及び商標「レックス」とが非類似のものとして併存している。

ウ.請求人の挙げる審決例における商品と本件無効審判での商品が相違するので、審決例とは事案を異にする。

(2)請求人の弁駁

ア.本件商標及び引用商標の称呼方法

取引において、商標に息の段落を入れる場合に、需要者は一々商標の採択の趣旨や外観を考慮することはない。あくまで、商標の称呼の音声学的な面からのみで、息の段落を入れるか否かを決定するものである。

したがって、被請求人の主張は何らの根拠もないものである。本件商標及び引用商標は、第3音の「ラ」音と「レ」音のみが相違するだけで、他の音を共通にし、しかも、相違音が同じラ行音であるから、その息の段落を入れる場合に異なる位置になることはない。したがって、被請求人の上記(1)ア.の主張は妥当を欠くものといわざるを得ない。

イ.併存例

被請求人が挙げる商標「LUX」と商標「REX」及び商標「レックス」との併存例においては、これら商標の称呼が4音と商標の称呼としては短い部類に属し、かつ、相違音は需要者の最も注意を惹く冒頭に位置している。4音程度の音からなる商標で、冒頭音が相違する商標が相互に非類似のものとされていることは知られている。

したがって、この併存例と全体として6音からなり、相違音が需要者の注意を惹き難く中間に位置する本件商標と引用商標とは事案を異にすることは明らかである。それ故、被請求人の上記(1)イ.の主張は本件無効審判には当てはまらない。

ウ.審決例

請求人が挙げた審決例には、本件商標及び引用商標の指定商品のものが含まれていない。しかしながら、被請求人が述べたように、請求人が挙げた審決例は様々な商品分野のものであり、このことから、「ラ」音と「レ」音とのみが相違する商標を類似のものとすることは特定の商品分野に限られない普遍的な取扱であるといえる。そして、本件商標及び引用商標の指定商品の分野において、この「ラ」音と「レ」音とのみが相違する商標を類似のものとする取扱いが特にされないという理由は見出せない。

したがって、被請求人の上記(1)ウ.の主張は妥当を欠き、請求人が挙げた審決例と同じく、本件商標は引用商標とは類似するとされるべきである。

以上のとおり、被請求人の主張はいずれも妥当を欠くものである。

第4.被請求人の主張

被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。

1.本件商標「SOFLUX」は、「soft flux」(ソフトフラックス)の語源から創作された造語商標である。「flux」は、岩波理化学辞典第4版第1118頁等に示されるとおり、「電束密度,磁束」等の意味を有する用語として知られているものであり、このような意味を有する語源から本件商標は採択されたのである。

2.請求人は、本件商標の造語性を認めているものの、英語において「LU」は、「lump」、「lunch」、「lung」、「luxury」などの例にみられるとおり「ラ」と発音され、これらの英語は現在では日本語化しており、したがって、英語において「LU」が「ラ」と発音されることをわが国の平均的な需要者は知り得ていることは明らかであり、本件商標は「ソフラックス」と称呼されると主張する。

また、引用商標の「SOF−LEX」も造語であり、英語において「LEX」は、「reflex」、「complex」などの例に示されるとおり、「レックス」と発音され、したがって、引用商標は「ソフレックス」と称呼されると主張する。

しかしながら、請求人の上記の称呼特定は次の理由により誤りである。

(1)本件商標「SOFLUX」は、上述のとおり「soft flux」(ソフトフラックス)の語源から創作された造語商標であり、「微弱な」という意味の形容詞「soft」と、「電束密度,磁束」という意味の名詞「flux」とから成るものであるから、後半部の「flux」(フラックス)に重点が置かれて「ソ・フラックス」の称呼で取り扱われるとするのが自然である。

(2)一方、引用商標「SOF−LEX」は、ローマ文字の「SOF」と「LEX」とをハイフン「一」で連結して成るものであり、この外観構成態様から見て、前半部の「SOF」と後半部の「LEX」とに対等に重点が置かれるとみるのが相当である。すなわち、これら引用商標「SOF−LEX」の称呼は「ソフ」の一息あとに「レックス」の称呼が生じ、「ソフ・レックス」の称呼で取り扱われるとするのが自然である。

(3)上述のとおり、本件商標の称呼「ソ・フラックス」と引用商標の称呼「ソフ・レックス」とは、前者が語頭音「ソ」の後にひとまとまりの「フラックス」を有し、後者が語頭音および第2音「ソフ」の後にひとまとまりの「レックス」を有する点において、全体の発音構成が互いに全く相違するものであることが明白である。さらに、前者の後半部「フラックス」は後者の後半部「レックス」と顕著な差異を有するものであるから、本件商標の称呼「ソ・フラックス」と引用商標の称呼「ソフ・レックス」とは、取引者・需要者に誤認混同されるおそれのない非類似の商標である。

(4)また、請求人は、上記主張に加えて、本件商標と引用商標との称呼の差異は「ソフラックス」と「ソフレックス」との間の「ラ」と「レ」の1音だけの差異であるとして、両者の類似性を主張している。

しかし、本件商標並びに引用商標の指定商品の取引分野においても、「ラ」と「レ」の1音の差異に基づき非類似の商標と特許庁で判断されている(乙第1号証ないし乙第3号証)。

すなわち、本件商標並びに引用商標の指定商品の取引分野において、登録第216011号商標「LUX」の構成態様から称呼「ラックス」(乙第1号証)、登録第82992号の1商標「REX」の構成態様から称呼「レックス」(乙第2号証)、登録第4310839号商標「レックス」の構成態様から称呼「レックス」(乙第3号証)がそれぞれ生ずる場合、1音の差異に基づきそれぞれ非類似の商標として判断されており、請求人の上記主張の根拠欠如が明らかである。

(5)請求人が引用した審決例(甲第4号証ないし甲第19号証)は、次の理由で、本件商標と引用商標との間の類否判断に参酌されるべきものではない。

すなわち、請求人の引用した審決例の各審決公報はいずれも本件商標の指定商品の取り扱われる分野以外の分野の審決を記載したものであって、指定商品の取引事情から本件類否判断に参酌されるべき事案はない。

(6)上述のとおり、請求人の主張には根拠がなく、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではないので、答弁の趣旨のとおり審決を求めるものである。

第5.当審の判断

本件商標と引用商標の構成は、それぞれ前記したとおりであるところ、両商標は、共に特定の意味合いを表現し、親しまれているものとは認められない造語よりなるものであるから、各構成文字に相応して、両者を造語商標において一般的に行われる英語読み風に発音できる読み方をして、本件商標よりは、淀みなく一連に「ソフラックス」の称呼を、引用商標よりは、ハイフン(−)を介した構成であるとしても、淀みなく一連に「ソフレックス」の称呼を生ずるものとみるのが相当である。

そこで、本件商標より生ずる「ソフラックス」と引用商標より生ずる「ソフレックス」の両称呼を比較すると、両者は、共に同数の6音よりなるうち、第3音において「ラ」と「レ」の音の差異を有するにすぎず、語頭音を含む他の構成音を全て同じくするものである。

しかして、この差異音である「ラ」(ra)と「レ」(re)の音は、いずれも50音図中「ラ」行の同行音に属し、子音(r)を共通にする近似する音であって、しかも、該差異音は比較的聴別し難い中間に位置するものであり共に同じ位置で促音を伴うので、その差異は一層薄れがちのものとなり、この差異音が両称呼の全体に及ぼす影響は決して大きいとはいい難いものであるから、両称呼をそれぞれ一連に称呼した場合には、その語調、語感が相近似したものとなって彼此聴き誤るおそれがあるものといわなければならない。

また、引用商標はハイフン(−)を介してはいるが、両商標は、その綴り字において「U」と「E」の一文字の差異を有するにすぎず、時と所を異にして離隔的に観察するときは、全体として近似した印象を受けるから、外観上も相紛らわしいものというべきものである。

してみれば、本件商標と引用商標とは、観念においては比較し得ないものであるとしても、称呼において類似する商標であるばかりでなく、外観上も近似するものであり、かつ、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は同一又は類似のものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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