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Trademark Appeal Case

結合商標の要部抽出と類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2002−35543(T2002−35543/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4126118号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成8年10月8日に登録出願され、「Esprit de PARIS」の欧文字を横書きしてなり、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類」を指定商品として、同10年3月20日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

1 請求人は、「本件商標の登録は無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第74号証を提出している。

2 請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第653754号商標(以下「引用商標1」という。)、登録第1558196号商標(以下「引用商標2」という。)登録第2097119号商標(以下「引用商標3」という。)及び登録第2187153号商標(以下「引用商標4」という。)は、それぞれ以下に示すとおりであり、いずれも現在も有効に存続中のものである。

(1)引用商標1

「エスプリ」のカタカナ文字を横書きしてなり、昭和38年3月27日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、同39年9月21日に設定登録され、その後、同51年8月9日、同59年10月19日及び平成6年12月21日に存続期間の更新登録がなされているものである。

(2)引用商標2

「ESPRIT」の欧文字を横書きしてなり、昭和53年12月11日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同57年12月24日に設定登録され、その後、平成6年1月28日及び同14年12月10日に存続期間の更新登録がなされているものである。

(3)引用商標3

別掲に示す構成よりなり、昭和61年8月8日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同63年11月30日に設定登録され、その後、平成11年1月5日に存続期間の更新登録がなされているものである。

(4)引用商標4

別掲に示す構成よりなり、昭和61年8月8日に登録出願、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成元年11月28日に設定登録され、その後、同11年8月31日に存続期間の更新登録がなされているものである。

(以下、引用商標1ないし引用商標4をまとめていう場合には単に「引用商標」という。)

3 本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号及び同第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録は無効とされるべきものである。

(1)引用商標の著名性

引用商標は、申立人及びエスプリインターナショナルを中心とするエスプリグループが、米国、欧州、アジア各国で、カジュアルウェア、アクセサリー、バッグ、靴等に長年使用している著名商標である。

かかるエスプリグループは、1968年米国サンフランシスコでの創業以来、カジュアルウェアを主とするファッションメーカーとして著しい発展を遂げてきた。1974年には香港に生産拠点を確保しアジア進出、1970年代後半には、ヨーロッパ、スカンディナビア、オセアニアへの進出を果たした。80年代にはいると、アクセサリー、バッグ、靴等次々に品目を増やし、世界的なトータルファッションブランドとしての地位を不動のものにした(甲第6号証ないし甲第61号証)。

日本においては、1984年エスプリジャパン設立後、衣類、バッグ等の輸入販売を開始し、その後、日本有数の寝装具メーカーである株式会社内野と提携し、パジャマ、バスローブ、タオル、シーツ、ハンカチ等の販売を開始した。さらに、1994年には日本各地に直営店を開き、カジュアルウェア、アクセサリー、バッグ、靴等、非常に好調な売れ行きを呈している。

商標「ESPRIT」は、エスプリグループが1976年に衣類について使用して以来、カジュアルウェア、アクセサリー、バッグ、靴等に長年使用され、エスプリグループの商品であることを表示するものとして広く知られている。当該商標を付した商品は、日本を含め世界中で一流品としての信用が形成されており、数々の刊行物によって紹介されている。

また、1970年以来、エスプリグループの各企業は、取引業者、新聞雑誌、消費者の間で、単に「ESPRIT」または「エスプリ」と略して称されてきており、「ESPRIT」または「エスプリ」が申立人を含むエスプリグループの各構成企業を表す略称であることは広く知られている(甲第7号証ないし甲第61号証)。

さらに、特許庁においても、第三者の登録商標に対する登録無効審判事件における審決理由において、少なくとも昭和61年(1986年)4月11日以前に、エスプリ社が世界的な大企業であって、その商標「三SPRIT」の文字は、わが国において一般に広く認識されていたと認め得ると判断されている(甲第52号証)。さらに、近年の商標登録異議申立の決定理由におきましても、商標「三SPRIT」が、著名商標であると判断されている(甲第53証及び甲第54号証)。

なお、エスプリ社が世界的な大企業であって、その商標「三SPRIT」は、上記の通り、わが国において一般に広く認識されていたと認められるのみならず、世界においてもその著名性は認められており、この点を証するものとして、近年では、フランスの工業所有権庁及び裁判所において、第三者の商標が、審判請求人の著名商標に類似するとして異議申立により取消し、或いは裁判所において商標権侵害が認められている(甲第57号証ないし甲第61号証)。

以上より、引用商標は、本件登録商標の出願時である平成8年(1996年)10月8日当時において、エスプリグループの業務に係る商品を表示するものとして、また、エスプリグループの各構成企業を表す略称として、既に我国において著名であったものと確信する。

(2)商標法第4条第1項第11号について

本件商標の、「de PARIS」の部分は、フランス語で「パリの〜」を意味するものであり、その前にある「ESPRIT」の文字からなる語を修飾するものであるとして一般需要者に知られているところである。また、「PARIS」の部分は、著名な地理的名称であり、かつ、本件商標の指定商品である「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類」を含むファッション製品の産地、販売地等を示す態様としてしばしば単独で或いはフランス語の「de」の語とともに「MINIM‘S DE PARIS」、「SOIR DE PARIS」、「CAFE DE PARIS」等のように使用されている(甲第62号証ないし甲第64号証)。従って、このような態様の商標は、「de PARIS」の文字部分について識別力が弱く、その前に位置する文字部分に商標としての要部があると考えるのが相当である。

以上に加え、本件商標の「Esprit」部分は大文字と小文字で、「PARIS」部分は大文字のみで記載されている。従って、本件商標を一連一体に把握しなければならない特段の事情もなく、本件商標の要部は「Esprit」の部分であり、かかる部分からは、「エスプリ」の称呼が生じるにすぎない。特に、引用商標の上述の如き著名性に鑑みれば、このことは容易に首肯されるものと思料する。

引用商標からも、それらの文字に相応して「エスプリ」の称呼が生じることは明らかである。

そして、本件登録商標の指定商品は引用商標の指定商品と同一又は類似する。

以上より、本件商標は引用商標に類似するものであり、その指定商品も同一又は類似することから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第10号について

本件商標は著名商標である引用商標に類似し、その指定商品と同一又は類似する商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。

(4)商標法第4条第1項第15号について

エスプリグループの各構成企業を表示するものとして著名な引用商標と類似する本件商標がその指定商品に使用された場合、取引者・需要者をして、その商品がエスプリグループの提供にかかわるものであるかのごとく、あるいは、エスプリグループと何等かの経済的・組織的関連があるかのごとく認識され、出所混同を生ぜしめるおそれがあると思料する。

従って、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(5)商標法第4条第1項第7号について

世界的なトータルファッションブランドとして著名な引用商標と相紛らわしい本件商標を、エスプリグループとは何ら関係のない他人が自己の商品について商標として採択し使用することは、本来みずからの営業努力によって得るべき業務上の信用の維持をはかる商標法の目的に反し、該名称の著名性にフリーライドするものであり、また、著名商標である引用商標3及び引用商標4に化体した莫大な価値を希釈化させるおそれがあるといわざるをえない。

従って本件商標は、公正な競業秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであり、商標制度の趣旨に則しないものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第3 被請求人の答弁

被請求人は上記第2に対し、何ら答弁していない。

第4 当審の判断

(1)引用商標の著名性について

請求人の主張及び請求人の提出した甲各号証によれば、以下の事実が認められる。

甲第22号証ないし甲第25号証によれば、エスプリ社は、1970年創業のアメリカ サンフランシスコ所在の衣料品製造会社であり、ファッション業界にあって、米国のみならず、日本を含む海外でも、衣類のほかアクセサリーやバッグ等の商品展開を行い相当の売り上げをなす世界的な企業であるとの記事が掲載されており、そして、甲第15号証ないし甲第21号証、甲第26号証、甲第34号証及び甲第40号証ないし甲第46号証の雑誌においては、商品「被服、バッグ」に引用商標3を、また、商品「靴」に引用商標4を、それぞれ使用している事実が認められ、他に甲第50号証にあっては商品「時計」について引用商標3及び引用商標4と同一の標章を使用しているところであり、そのいずれも、本件商標の登録出願日以前に発行された、我が国において広く知られている、指定商品と関連性の高い雑誌(non・no、JJ、ViVi、CanCan、女性自身他)や新聞(繊研新聞)である。

以上の事実を総合してみれば、少なくとも本件商標が登録出願された平成8(1996)年10月以前において、引用商標のうち、引用商標3及び引用商標4は、請求人がその業務に係る上記各商品について使用され、その特徴的な態様から、すでに我が国における取引者・需要者の間においても広く認識されるに至っていたものと認め得るものであり、その周知・著名性は、登録査定時においても継続していたものというのが相当である。

(2)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、「Esprit de PARIS」の欧文字よりなるところ、その構成文字全体は、外観上まとまりよく一体的に表されており、観念上も全体の文字に相応し「パリの精神」の如き意味合いを理解させるものであって、これより生ずる「エスプリドパリ」の称呼も格別冗長に亘るものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものであり、また、係る構成にあって、後半の「de PARIS」の文字部分が商品の品質を表示したものと認識、理解されるとはいい難いものであり、これを、殊更、分離観察してみなければならない特段の理由も発見できないところであって、前半の「Esprit」の文字部分のみが独立した標識部分として認識されないというべきであるから、本件商標は、その構成全体をもって一体不可分のものと認識し、把握されるとみるのが相当である。

してみれば、本件商標は、その構成文字に相応し「エスプリドパリ」の称呼のみを生ずるものと判断するのが相当である。

他方、引用商標3及び引用商標4は、やや図案化してなるとしても、容易に「ESPRIT」の文字よりなるものと看取されるものであり、他の引用商標1は「エスプリ」、引用商標2は「ESPRIT」の文字よりなるものであるから、引用商標は、「エスプリ」の称呼を生じ、単に「精神、精霊」等の観念を生ずるものである。

そうして、本件商標より生ずる「エスプリドパリ」の称呼と引用商標より生ずる「エスプリ」の称呼とは、「ドパリ」の音の有無という差異を有するものであるから、明らかに聴別し得るものである。また、本件商標と引用商標の構成は、前記したとおりであるから、外観において互いに区別し得る差異を有するものであり、観念においても上記したとおり相紛れるおそれのないものである。

そうとすれば、本件商標と引用商標とは、その称呼、外観及び観念のいずれの点においても非類似の商標といわざるを得ない。

(3)商標法第4条第1項第10号及び同第15号について

さらに、(1)に述べたように、請求人の提出した各甲号証に徴すれば、請求人及び請求人の関連企業が、商品「被服、アクセサリー、バッグ、靴」等に引用商標を使用した結果、引用商標3及び引用商標4が本件商標の登録出願時に我が国において広く知られていたことは認められるとしても、さきに述べた本件商標と引用商標との類否の判断において示したとおり、その称呼、外観及び観念のいずれの点においても非類似の商標であり、別異の商標と認識、理解されるものであって、引用商標3及び引用商標4を想起するとはいえないから、本件商標をその指定商品に使用したとしても、請求人又は請求人と経済的、組織的に関係のある者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものとは認められない。

(4)商標法第4条第1項第7号について

そして、本件商標は、その構成自体が矯激、卑猥、差別的な印象を与える文字、図形よりなるものでなく、また、本件商標と引用商標とは、その称呼、外観及び観念のいずれの点においても非類似の商標であり、別異の商標と認識、理解されるものであって、引用商標を想起するとはいえないことはこれまで述べたとおりであるから、本件商標をその指定商品に使用したとしても、請求人の商標の出所表示機能を希釈化させるおそれはなく、その他、本件商標をその指定商品について使用することが、社会公共の利益、一般道徳観念及び国際信義に反するものとすべき事実は認められず、他の法律によってその使用が禁止されているものとも認められない。

(5)まとめ

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号及び同第15号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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