結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2003−35119(T2003−35119/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4257843号商標(以下「本件商標」という。)は、平成9年7月11日に登録出願され、別掲(1)のとおりの構成よりなり、第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同11年4月2日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する商標は、次の(1)及び(2)のとおりである。
(1)「BOAT HOUSE」の欧文字と「ボート ハウス」の片仮名文字とを二段に横書きした構成からなり、昭和54年10月21日登録出願、第17類「シャツ、その他本類に属する商品」を指定商品として、同58年1月28日に設定登録された登録第1559526号商標(甲第2号証の1及び同2、以下「引用商標1」という。)。
(2)請求人が昭和54年10月頃からトレーナー等の商品について実際に使用し、著名な商標となっていると主張している別掲(2)のとおりの構成よりなる甲第13号証に示された態様の商標(以下、この使用に係る商標を「引用商標2」という。)。
請求人は、本件商標の指定商品中、「運動用特殊衣服」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。
請求人は、主として、いわゆる「スポーツウエア」などの衣類をデザイン、製造及び販売することを業とするものであって(甲第1号証)、前記した引用商標1を有しており、その登録出願当時から前記指定商品(平成3年政令299号による改正前の商標法施行規則別表に基づく分類、以下「旧分類」という。)に使用して現在に至っている。
請求人は、件外第三者である神奈川県在住の「ボートハウスジャパン」こと「宮倉正章」氏が最近、本件商標を付した前記旧第17類の「シャツ」類と類似するいわゆる「スポーツウエア」(ジャケットなど)を販売している事実を請求人の顧客からの通報で知るに至り、同氏に引用商標1を侵害する旨通告したところ(甲第3号証)、同氏からの回答(甲第4号証)によれば、同氏は、本件商標の所有者の日本における総輸入代理店であるとのことである。なお、同氏の口頭によれば、本件商標は、登録されていて、同氏の取扱商品は「運動用特殊衣服」であるので、引用商標1の権利を侵害しないということであった。
しかるところ、請求人の顧客からは、請求人と同氏と関係があるかどうかとの問い合わせや、同氏の取扱商品と同様なものの製造依頼などがあり、請求人の取扱商品と同氏の取扱商品との間に商品及びその出所に混同誤認が生じている。
したがって、本件審判の請求をすることについて利害関係を有する。
(1)本件商標は、図形もその構成要素として有しているが、「BOATHOUSE」の文字を有していることから、「ボートハウス」の称呼及び「船小屋、ボート小屋」の観念が生じる一方、引用商標1も「BOAT HOUSE」及び「ボート ハウス」の文字を有することから、同様の称呼及び観念が生じる。したがって、両者を全体的に対比した場合には、互いに類似であるというべきであるが、本件商標の構成において、特に目立つ前記文字において、両者が共通していることから、両者は、実質的に同じであり、需要者の間において混同誤認が生じるおそれがあるというべきである。
(2)請求人は、引用商標1を本件商標の登録出願前から、旧第17類に属する商品「衣服」すなわち、いわゆる「トレーナー」や「スポーツシャツ、ポロシャツ」などの「シャツ」類、「ジャケット(ジャンパー)」類に「ボートハウス」又は「BOAT HOUSE」の商標を使用して、該商品を昭和54年10月から製造販売し、その販売時から短期間で該商標が全国的に周知になり、現在に至っている。
この周知事実の代表的例証として、昭和56年5月27日付の「サンケイ新聞 夕刊」(甲第5号証)を挙げ、更に、その周知事実の立証を補強すべく、甲第6号証(集英社の1980年8月発行に係る雑誌「週刊明星」)、甲第7号証(講談社の1981年3月発行に係る雑誌「Hot・Dog PRESS」)、甲第8号証(朝日新聞社の1981年3月13日発行に係る雑誌「週刊朝日」)、甲第9号証(祥伝社発行に係る雑誌「微笑」)、甲第10号証(講談社の1982年6月発行に係る雑誌「Hot・Dog PRESS」)、甲第11号証(婦人画報社の1987年2月発行に係る雑誌「MEN’S CLUB」)及び甲第12号証(婦人画報社の1999年4月発行に係る雑誌「別冊MEN’S CLUB 男のスタイルブック」)を提出する。
なお、前記各雑誌は、著名である。また、前記甲号証に掲載の当該物品の写真からは、請求人の標章「Boat House」の文字は、商標として表示されていることが不明であるが、実際には、該文字を含む商標は、当該物品の前面に表示してある態様と同様なものが、甲第13号証に示すように、当該物品の襟の内面などに表示してある。もとより、襟の内面などの当該表示ばかりでなく、当該物品の写真から理解されるように、当該商品の前面の図形内に表示してある当該文字もまた、当該商品が請求人の業務に係るものであることを表示する商標機能を果たしてきているものである。
(3)本件商標の指定商品「運動用特殊衣服」、例えば、「ユニフォーム」のある種のものには、実際上、第25類(旧第17類)の指定商品「衣服」に含まれるいわゆる「トレーナー」、「ジャケット(ジャンパー)」と材質、外観、機能、用途などにおいて酷似したものがある。そして、それらは、所定の運動競技場以外、例えば、家庭、通勤電車内でも着用されることがあることは、立証するまでもなく周知の事実であって、前記「トレーナー、ジャケット」等とは峻別して使用されていない。
このように、前記「ユニフォーム」のある種のものと前記「トレーナー、ジャケット」とは、極めて近似した関係にある。
(4)前述のように、本件商標の出願前から、請求人が所有していて、いわゆる「スポーツウエア」(トレーナー、ジャケットなど)に使用していた商標「BOAT HOUSE」又は「ボート ハウス」は、請求人の業務に係る該商品を表示するものとして、需要者の間に周知になっていたものであり、しかも該商品は、本件商標の指定商品「運動用特殊衣服」としての「ユニフォーム」のある種のものと材質、外観、機能、用途等において極めて近似している。
したがって、本件商標に接する需要者は、例えば、前記「ユニフォーム」が請求人の業務に係る商品のいわゆる「スポーツウエア」商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがある。
また、仮に、該「ユニフオーム」と請求人の該「スポーツウエア」とが近似していない(非類似である)としても、請求人と経済的又は組織的になんらかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがある。
(5)叙上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効にされるべきものである。
(1)第1の答弁理由について
被請求人は、第1の理由において、本件商標は「漕艇等の競技用ユニフォーム」に付され、世界2万チーム以上に供給され、ローリング等スポーツの業界では世界的に著名となっている商標であることから、請求人の商品との間で誤認混同の余地及びおそれは全く生じない旨主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第15号の「混同を生じるおそれ」に該当するか否かは、本件商標登録の査定時において、本件商標を付した商品が請求人の商品に係わるものであると誤信されるおそれ、又は、その商品が請求人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがある場合に同法条項に該当すると判断されるべきである。
被請求人の主張によれば、1983年から本件商標を「漕艇等の競技用ユニフォーム」(以下「本件指定商品」という)に使用し、その結果、本件商標が周知なものとなったというものであるから、仮に、本件商標が本件指定商品について周知になっているとしても、それは引用商標1の周知性獲得後のことである。
このような事実関係の下にある本件商標は、その登録査定時に、商標法第4条第1項第15号の違反事由を有していたものであり、仮に、その後に前述のとおり周知になっているとしても、この事実によって、前記違反事由が解消(治癒)されるものではない。
(2)第2及び第3の答弁理由について
被請求人は、同人及び同人の販売代理人による本件商標の「ユニフォーム」は、店舗や通販等で一般の需要者に販売されるものではなく、あくまでも注文を受けた世界各国のチーム及び日本のチームに提供されるものであるので、請求人の商品とは目的、流通経路を全く異にし、商品の出所の誤認混同を生じるものではないと主張している。
しかしながら、その主張を立証する資料は全くない。仮に、被請求人及び被請求人の販売代理人の商品が注文品のみであったとしても、特定のナショナルチーム等に継続して「ユニフォーム」を提供しているのみではなく、インターネット等の通信媒体を通じて、漕艇等の競技をする者(チーム)であれば、何人にも商品を販売しているのであって、請求人が自己の店舗で漕艇等の競技を好む者にスポーツウエアを提供する場合と取引系統が異なるとはいえない。
(3)第4の答弁理由について
被請求人は、引用商標1は本件商標の登録出願前から現在に至るまで周知及び周知性を継続しているものではなく、また、現在、商標「BOAT HOUSE」を盛んには使用していない旨主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第15号の違反事由は、その登録出願当時において判断されるべきものであって、その登録後から現在までの事由は無関係である。
もとより、引用商標1を付した請求人使用商品は、全盛期であった昭和53年の発売当初から数年の間ほどではないことを認めるにやぶさかではないが、東京近郊を中心に今なお根強い人気がある商品であって、その周知性は依然として継続しているものである。
また、被請求人は、請求人のインターネット上のホームページによれば、請求人は商標「ROYAL BOATHOUSE CLUB」のみを使用し、商標として「BOAT HOUSE」または「ボートハウス」を使用していない旨主張している。
しかしながら、請求人は、前述のとおり、現在においてもなお、引用商標1を附した請求人使用商品について使用しているものであって(甲第13号証参照)、請求人のホームページを確認したことのみをもって、かかる商標を使用していないと判断するのは失当である。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第11号証を提出した。
本件商標は、乙第1号証ないし乙第4号証をもって示すとおり、「漕艇等の競技用ユニフォーム」に付されて、世界2万チーム以上に供給され、ローリング等スポーツの業界では世界的に著名となっている商標であるから、請求人の商品との間で誤認混同の余地及びおそれは全く生じない。
したがって、審判請求の利益もない。
本件商標は、商標法第4条第1項第15号には該当しない。この事実を乙第1号証ないし乙第10号証をもって立証する。
(1)第1の理由について
本件商標は、「漕艇競技用、その他の競技用ユニフォーム」に1983年から使用され、世界2万チーム以上に供給されて世界的に知られ、現在も盛んに使用されている周知の商標であるから、請求人の業務に係る商品「シャツ」類、「ジャケット」類との間で商品の出所の誤認も混同のおそれもない。
また、本件商標の周知性は、別件商標「BOATHOUSE」(商願平07−28824号)についての登録異議申立事件に対する異議決定においても認められている(乙第1号証ないし乙第4号証)。
(2)第2の理由について
本件商標が付される商品「ユニフォーム」と請求人が販売する商品とは、流通経路を全く異にするから、商品の競合は生じ得ない。被請求人が製造、販売する商品「ユニフォーム」は、店舗で販売される商品ではなく、各個人が通販で購入する商品でもない。あくまで競技用チームに対して、すべてチームと直接取り引きをし、世界各国各地のチームに競技用のユニフォームを供給するところから、同じにならないよう70種類以上の異なるスタイルのユニフォームを供給できる体制をとっており、また、スポーツ競技の特徴に応じて、生地等の素材を選び、最も機能性に優れ、あらゆるスポーツ競技の条件にも対応できる商品を提供している。
これは、被請求人会社の代表者が代々ボート競技の漕艇者で、しかもオリンピックメダリストであることから出来ることで、創設者が2年もの月日をかけ、自己の経験を生かして機能性に優れ、いかなる天候にも対応できる漕艇用ユニフォームを造り上げたことを出発点としている。これが1986年に開催された「モントリオールオリンピック」の米国ボートチームに納入され好評を得、この成功により、以後、カナダ、デンマーク、スイス、オランダ、オーストラリア、ドイツ、フランスの各漕艇チームの複数のチームから注文を受けることになり、被請求人は、漕艇競技用ユニフォームの米国で唯一の知られた企業になった。その後は、この技術を生かして、水泳、陸上競技等あらゆる運動競技のユニフォームを手がけている。
本件商標は、商品のワンポイントマークとして表示されることはない。乙第6号証ないし乙第9号証をもって示す商品カタログにもあるように、ワンポイントマークは、競技用チームの名称や図形、または、競技大会のマーク等であり、本件商標は、常に襟ネーム、胴ラベルとして表示されることを特徴としている。
したがって、小売店、量販店等で誰でもいつでも所望の商品を購入可能な請求人の商品とは、商品の目的、流通経路を全く異にするものであって、これらの事実から互いの商品間に競合はなく、商品の出所についての誤認混同は生じ得ないものである。
(3)第3の理由について
被請求人の日本における販売代理人による本件商標の「ユニフォーム」の販売も流通経路に影響はない。被請求人は、直接日本の大学、社会人の漕艇等のチームから「ユニフォーム」の発注を受けていたが、1993年からは「ボートハウスジャパン」こと「宮倉正章」と専用販売代理店契約を締結し、販売活動を行っている。1995年以降、世界大会、オリンピック等日本のボート代表チームのユニフォームは、本件商標が付された被請求人の商品である。
被請求人は、「ボートハウスジャパン」からオーダーを受けると7日以内に商品を完成させ、特別な場合を除き、被請求人からダイレクトに注文者に発送する契約になっている。この事実から、被請求人の上述の流通経路は「ボートハウスジャパン」における使用においても全く異ならない。
(4)第4の理由について
請求人は、昭和54年10月から「トレーナー」や「スポーツシャツ」等のシャツ類、「ジャケット(ジャンパー)」類に引用商標2を使用し販売し、その販売時期から短期間で該商標が全国的に周知になったと主張し、甲第5号証ないし甲第13号証を提出している。
しかし、これらは1980年から1983年までの新聞の記事と古い雑誌広告であり、その後15年の年月を経て1999年の雑誌の記事が甲第13号証として添付されているにすぎない。確かに、1980年から数年間、東京渋谷の青山学院の近くに「ボートハウス」という店舗で販売する商品が人気であったという事実は推考できるが、その後も盛んに販売されていたという事実、著名性が継続しているという事実は認識できない。
請求人のインターネットのホームページを利害関係人として開いてみたが、「BRAND」を開いても、その関連ページ「BOAT HOUSE SPIRITS」を開いても、商標として「BOAT HOUSE」または、「ボートハウス」を使用している事実は発見されなかった(乙第11号証)。ブランド名としてあるのは、「ROYAL BOAT HOUSE CLUB」であり、請求人は、2000年以降は「ROYAL BOAT HOUSE CLUB」を使用していると推考される。
したがって、本件商標の登録出願前から現在に至るまで、引用商標2の周知及び周知性が継続している事実は見出し得ない。
(5)上述のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する商標として商標法第46条第1項第1号により無効にされる理由はない。
請求人が本件審判の請求をするについて当事者間に利害関係の争いがあるので判断するに、請求人の所有に係る引用商標1あるいは引用商標2と被請求人の所有に係る本件商標とは、いずれも、その構成中に「BOATHOUSE」の文字を有するものであり、互いに、近接する商品の製造、販売を営んでいる事実も認められ、しかも、請求人は、その顧客から被請求人の日本における総輸入代理店である「ボートハウスジャパン」との関係についての問い合わせを受けている等の事情が存するのであるから、本件商標の商標権の存否によって、請求人は、その権利に対する法律的地位に直接的な影響を受けるか、又は受ける可能性があるものということができる。
したがって、請求人は、本件審判を請求することについて法律上の利益を有するものである。
そこで次に本案にはいって、本件商標がその登録出願時(平成9年7月11日)及び登録査定時(平成11年2月2日)において、商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて判断する。
(1)引用商標2について
引用商標2は、別掲(2)に示したとおりの構成からなるところ、ロープと思しき素材のものをもって楕円形状の輪郭図形をつくり、その中の上段部分に漕艇用のボートを漕いでいる図形を表し、中央部分に大きく「Boat House」の文字を表し、その下部に小さく「BLUE TRADITIONAL」の文字を配した構成を要部とする商標であり、全体として、まとまりよく一体的に構成されているものである。
請求人の提出に係る甲各号証をみるに、甲第5号証(昭和56年5月27日付の「サンケイ新聞 夕刊」)の記事には、「ボートハウスのトレーナー、過熱...ついに海賊版」の見出しの下に、「いま、全国の若者のハートをとらえてはなさない東京・渋谷の『ボートハウス』のトレーナー。月一回の発売日には、店の前に三千人ものヤングの行列ができるほどの異常なモテようだ。...開店からわずか半年後の昨年春ごろから異常な売れ行きで、...。一人で二十枚近くも買って帰る若者がいたりで生産が追いつかないため、同年十二月からは月一回、一人一枚の限定販売。発売日の当日は全国から上京してきたクリスタル族たちが未明の二時ごろから並び始め、開店時には約三千人の長蛇の列が路地を埋めるというフィーバーがいまでもつづいている。...加山雄三や松田聖子がこのトレーナーを着てテレビに出たことなどが、若者の間にクチコミで広がり人気を盛り上げたらしい。」旨記載されている。
甲第6号証(集英社 1980年8月発行の雑誌「週刊明星」)には、引用商標2(あるいは引用商標2の上部に「YUZO KAYAMA」の文字を配した標章)が大きくプリントされている「Tーシャツ」を着た俳優の加山雄三の写真が掲載されている。
甲第7号証(講談社 1981年3月発行の雑誌「Hot・Dog PRESS」)には、引用商標2がプリントされている「トレーナー」の写真等が掲載されている。
甲第8号証(朝日新聞社 1981年3月13日発行の雑誌「週刊朝日」)には、「...このトレーナーは一着五千八百円。生地が普通のものの二倍の厚さというぐらいで、いってみればなんのへんてつもない。若大将・加山雄三さんご愛用とかで、若者の宝物となったようだ」との記事とともに、引用商標2がプリントされているトレーナーを請求人の出店(店名:ボートハウス)で多数の人々が購入する状況を示す写真が掲載されている。
甲第9号証(祥伝社 1981年7月25日発行の雑誌「微笑」)には、「450名が人気トレーナーを」の見出しで、「...加山雄三愛用のマーク入りトレーナー(1着5800円)の売り出しは月1回。それを目指して、関西や名古屋からも若者がやってくる。」との記載とともに、請求人の商品トレーナーを請求人の出店(店名:ボートハウス)で多数の人々が購入する状況を示す写真が掲載されている。
甲第10号証(講談社 1982年6月発行の雑誌「Hot・Dog PRESS」)には、「特別対談・青春は海の色」と題する加山雄三と下山好誼との対談記事が掲載されており、その中には、「お気に入りのボートハウスを着こんで...」等の記載とともに「BOATHOUSECLUB」の文字等の入った標章をプリントしたトレーナーの写真等が掲載されている。
甲第11号証(婦人画報社 1987年2月発行の雑誌「MEN’S CLUB」)には、「ボートハウス」の紹介記事があり、「’80年代初頭にブルートラディショナルという言葉と共に、ファッション界に一大旋風を巻き起こしたボートハウス...」の記載とともに、引用商標2がプリントされているトレーナー等の写真が掲載されている。
甲第12号証(婦人画報社 1999年4月発行の雑誌「別冊MEN’S CLUB 男のスタイルブック」)の記事には、「BOAT HOUSE 20th ANNIVERSARY」の表題のもとに、「1979年、青山学院横のユニバーシティロードに、20平方メートル程度の小さな店『ボートハウス』が誕生しました。海を愛し、アメリカを慕う気持をトレードマークに注ぎ、僕の服作りの原点となる1枚のトレーナーが出来上がったのです。このマークは20年経った今でも、僕に素晴らしい仲間との出会いを与え続けてくれています。本物のアメリカンアイビーとして、決して色あせないBOAT HOUSE SPIRITが20周年への感謝の証として今、新たにこのデザインを捧げます。」と記載され、新たなデザインとして、上部に王冠を載せた二重楕円輪郭の中に引用商標2を配し、該二重楕円輪郭内に「BOAT HOUSE 20th ANNIVERSARY」の文字と「BLUE TRADITIONAL」の文字を表した構成の標章が示されている。また、「マリンアイビー少年、大集合/IVY少年大人になる」の表題のもとに、「VAN蹉跌のあと、アイビーの衣鉢を継いだのが下山好誼氏のボートハウス。その20周年を祝うパーティが昨年暮、盛大に催された。海と正ちゃん帽の似合う永遠のアイビー少年たちが大集合」等の記事やパーティの写真が掲載されている。
以上の甲各号証によれば、引用商標2を使用したトレーナー等の商品は、例えば、「若大将・加山雄三さんご愛用とかで、若者の宝物となったようだ」(甲第8号証)、「加山雄三愛用のマーク入りトレーナー(1着5800円)の売り出しは月1回。それを目指して、...」(甲第9号証)等の記事にもみられるように、俳優加山雄三の人気とも相俟って、昭和55年春頃から全国的に若者の間において人気を博し、以後、甲第11号証の雑誌「MEN’S CLUB」が発行された1987年(昭和62年)頃までは、その人気は継続していたものと推認することができる。
しかしながら、それ以降も引続いて、引用商標2の人気が継続していたことを認めるに足る証左はなく、僅かに、甲第12号証の雑誌「別冊MEN’S CLUB 男のスタイルブック」が提出されているのみである。
そして、甲第12号証の雑誌は、1999年(平成11年)4月に発行されたものではあるが、記事の内容からみれば、引用商標2の人気が全盛であった当時を回顧し、当時の仲間が集い、ボートハウスの20周年を祝うパーティの記事であって、この記事が掲載された平成11年4月当時において、引用商標2の人気が継続していた旨の記述はなく、引用商標2を付したトレーナー等の商品が盛んに取引されていたことを認めるに足る記載も見当たらない。また、他に、本件商標が登録出願された平成9年7月11日ないし登録査定がなされた同11年2月2日当時において、引用商標2を使用したトレーナー等の商品についての具体的な宣伝広告、販売実績等を示す証拠も提出されていない。
(2)本件商標及び被請求人による本件商標の使用実態について
本件商標は、別掲(1)に示したとおりの構成からなるところ、「BOATHOUSE」の欧文字の冒頭の「B」の文字は、これに続く「OATHOUSE」の文字に比べて、著しく大きく表され、かつ、該「B」の文字の左側には、これと同じ高さの長方形状の図形が配され、「OATHOUSE」の文字には下線が施されているものであって、全体として、まとまりよく一体的に構成されているものということができる。
被請求人の主張及び被請求人の提出に係る乙各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
乙第3号証(別件に係る平成7年商標登録願第28824号に対する商標登録異議申立事件)に添付の証拠[甲第1号証(登記証明書)、甲第2号証ないし甲第15号証(商品カタログ等)、甲第16号証ないし甲第28号証(米国雑誌「AMERICAN ATHLETICS」、「American ROWING」等)、甲第48号証及び甲第49号証(顧客名簿、インボイス等)、甲第58号証ないし甲第61号証(決算報告書等)、甲第62号証(1994年2月6日発行の新聞「BUSINESS」)]及び乙第4号証(上申書)に添付の証拠(1996年発行の雑誌「American ROWING」)によれば、被請求人は、アメリカ合衆国ペンシルバニア州で1982年に「BOATHOUSE ROW SPORTS,LTD.」を設立以来、同人が販売する「ボート、その他の運動競技用ユニフォーム」には全て本件商標を使用していたこと、これが1986年に開催されたモントリオールオリンピックの米国ボートチームに納入され好評を得、この成功により、以後、アメリカのみならず、カナダ、デンマーク、スイス、オランダ、オーストラリア、ドイツ、フランスの各漕艇チームから注文を受けるようになり、その後は、この技術を生かして、水泳、陸上競技等あらゆる運動競技のユニフォームを手がけ、世界2万チーム以上に、ボート、その他の競技用ユニフォームを供給していたこと、また、我が国においても、被請求人は、直接日本の大学、社会人の漕艇等のチームから「ユニフォーム」の発注を受けていたが、1993年からは「ボートハウスジャパン」こと「宮倉正章」と専用販売代理店契約を締結して、販売活動をしていたこと、乙第3号証に添付の証拠[甲第29号証ないし甲第47号証(日本漕艇協会発行の月刊雑誌「漕艇」の1994年6月号から1995年12月号)]には、本件商標が付されたボート競技用ユニフォームの広告が掲載されており、その記事の中には「ボートハウススポーツは、カスタム・チームウェアとして、...」、「CUSTOM ROWING JACKET/ボートハウススポーツは、アメリカペンシルバニア州にあるチームオーダー・ローイング・ジャケット専門のメーカーです。...」、「全ての商品のオーダーは基本的に12着以上から受け付けています。...」との記載があり、同じく、乙第3号証に添付の証拠(甲第50号証ないし甲第57号証)によれば、「全国高等学校選抜競漕大会」のプログラム、「THE GREEN REGATTA」のプログラム、「THE REGATTA/WASEDA VS KEIO」のプログラム及び「朝日レガッタ」のプログラムにおいても、上記と同様の広告が掲載されていたことを認めることができる。
また、乙第4号証に添付の日本漕艇代表チームのユニホームについての資料によれば、1995年以降、世界大会、オリンピック等日本のボート代表チームのユニフォームは、本件商標が付された被請求人の商品であることを認めることができる。
そして、乙第6号証ないし乙第9号証(1998年から2002年までの被請求人の商品カタログ)によれば、被請求人は、本件商標をユニフォームについて使用するにあたり、ワンポイントマークとして用いるのは、競技用チームの名称や図形、又は、競技大会のマーク等であり、本件商標は、襟ネーム、胴ラベル等として表示していたことを認めることができる。
(3)出所の混同の有無について
上記(1)において認定した事実を総合すれば、引用商標2は、トレーナー等の商品に使用されて、昭和55年春頃から、若者の間において人気を博し、昭和62年頃までは、その人気は継続していたものと推認し得るが、それ以降は、引用商標2あるいは「BOAT HOUSE」の文字を構成中に含むその他の商標が使用されていたとしても、次第にその人気は薄れ、本件商標が登録出願された平成9年7月11日ないし登録査定がなされた平成11年2月2日当時においては、一部の愛好者の間において、引用商標2の人気が全盛であった頃の記憶がなお残存していたとしても、トレーナー等の被服についての一般的な取引者、需要者の間においては、本件商標と出所の混同を生じさせる程の周知、著名性が引続き存在していたものと認めるのは困難なことといわなければならない。
加えて、上記(2)において認定した事実によれば、被請求人の使用に係る本件商標は、その登録出願がなされた1997年(平成9年)7月当時においては、少なくとも、ボート競技用ユニフォームの商標として、我が国におけるこの種商品の取引者、需要者の間においては、相当程度広く認識されていたものとみるのが相当である。
しかも、本件商標と引用商標2とは、いずれも「BOATHOUSE(Boat House)」の欧文字を主要な構成要素とするものではあるが、「BOATHOUSE(Boat House)/ボートハウス」の語は、「船小屋、ボート小屋」等を意味するものとして、我が国においても広く一般に知られている英語(外来語)であって、造語商標とは異なり、この語自体に格別の独創性があるものではないこととも相俟って、前記した両商標それぞれの特色ある構成をもってすれば、これらに接する取引者、需要者をして、その構成は、容易に識別可能なものと認められる。
また、請求人の取扱いに係るトレーナー等の商品と本件商標の指定商品中の無効請求に係る運動用特殊衣服とは、商品によっては、互いに近接した関係にあることを否定するものではないが、両者の取引の実情をみれば、請求人の取扱いに係るトレーナー等の商品は、店舗において(あるいは通信販売によることがあるとしても)、一般の消費者を対象に販売されているものと認められるのに対して、被請求人の取扱いに係るボート競技用ユニフォームを始めとする各種運動競技用のユニフォームは、世界各国各地の競技チームを主な顧客としているものであり、各チームからのオーダーを受けて、各チームへ直接納品されているものと認められる(もっとも、乙第3号証に添付の甲第41号証「月刊漕艇」に掲載されている広告記事によれば、限定販売として、ウェザーシャツを今回の注文は1着から受け付けている旨表示されているので、全てが各チームとの直接取引の形態であるとはいえないとしても、主たる販売形態は、各チームとの直接取引によるものとみて差し支えないものということができる。)。そうとすれば、両者の商品の主たる取引形態には、明らかな差異を認めることができる。
さらに、実際に商品に付される商標の表示態様をみても、本件商標の場合は、競技用チームのユニフォームに使用されていることから、ワンポイントマークとして用いるのは、競技用チームの名称や図形、競技大会のマーク等であって、本件商標は、専ら襟ネームや胴ラベル等として表示されているのに対して、引用商標2の場合は、襟ネーム等としても用いられてはいるが、むしろ、デザイン的な要素を強調して、トレーナーの前面に大きく表示されているところに意味があり、特色があるといえるものであるから、マークの表示態様の点においても、両者は互いに異なるものということができる。
してみれば、本件商標の登録出願時ないしは登録査定時において、トレーナー等に使用されていた引用商標2の周知性の程度とボート競技用ユニフォーム等に使用されていた本件商標の周知性の程度とを比較考量し、これに、本件商標と引用商標2が使用されていた商品の用途、流通経路、主たる需要者の違いを勘案し、併せて、両商標の構成の差異と実際の使用態様をも勘案すれば、被請求人が、本件商標をその指定商品である「運動用特殊衣服」に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、請求人の使用に係る引用商標2あるいは請求人の所有に係る引用商標1の「BOAT HOUSE/ボート ハウス」の商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
(4)まとめ
したがって、本件商標の指定商品中、「運動用特殊衣服」についての登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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