結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2003−35187(T2003−35187/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
第1.本件商標
本件登録第4552245号商標(以下「本件商標」という。)は、平成13年5月29日に登録出願され、「天使達のみるふぃ〜ゆ」の文字を横書きしてなり、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、平成14年3月15日に設定登録されたものである。
第2.請求人の引用する商標
請求人が本件商標の登録の無効理由に引用する登録商標は以下のとおりである。
(1)登録第1457789号商標(以下「引用商標1」という。)は、「天使」の文字を横書きしてなり、昭和41年4月8日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、昭和56年3月31日に設定登録され、該商標権は2回にわたり存続期間の更新の登録がされ現に有効に存続している。そして、指定商品については、平成13年3月28日にした書換登録申請により第30類「菓子及びパン」に書換の登録が同年5月23日にされている。
(2)登録第4440778号商標(以下「引用商標2」という。)は、「天使のプリン」の文字を標準文字とし、平成11年9月29日に登録出願、第30類「プリン,プリンの風味を有してなる菓子及びパン,プリンの風味を有してなるアイスクリームのもと,プリンの風味を有してなるシャーベットのもと,プリンのもと,プリンの風味を有してなる即席菓子のもと」を指定商品として、平成12年12月15日に設定登録された。(以下、引用商標1及び2を一括して「引用各商標」という場合がある。)
第3.請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めて、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第68号証(枝番を含む。)を提出した。
(a)引用各商標は、いずれも、本件商標の登録出願の日以前の出願に係る登録商標である。また、本件商標に係る指定商品「菓子及びパン」は、引用商標1に係る指定商品と同一であり、引用商標2に係る指定商品「プリン、プリンの風味を有してなる菓子及びパン」と同一又は類似の商品である。
(b)本件商標と引用商標1及び2との類否について
(イ)特許庁商標審査基準によれば、商標の類否の判断は、「商標が使用される商品又は役務の主たる需要者層(例えば、専門家、老人、子供、婦人等の違い)その他商品又は役務の取引の実情を考慮し、需要者の通常有する注意力を基準として」、「商標の有する外観、称呼及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察しなければならない」とされる。
本件商標は、「天使達のみるふぃ〜ゆ」と横書きして成る商標であるが、この商標中「みるふぃ〜ゆ」部分は、層になるように作ったパイ生地を薄く伸ばして焼き、カスタードクリームや果物などを挟んで重ねたフランス風菓子である「ミルフィーユ」を表す語であるから(甲第4号証)、普通名称であり、自他商品識別力が無いため、本件商標の要部は「天使達」の部分となる。
ところで審査においては、「天使の○○」と構成した商標で、「天使の」に続く部分が普通名称であるものについては、先願の登録商標「天使」と類似すると判断され、拒絶理由が通知されている(甲第5号証の1ないし3、甲第6号証の1ないし3、甲第7号証の1ないし3、甲第8号証の1ないし3)、甲第9号証の1及び2、甲第10号証の1ないし3、甲第11号証、甲第12号証)。
(ロ)したがって、「天使達の」に続く部分が普通名称である本件商標もまた、引用商標1の「天使」と類似すると判断されるべきであり、引用商標2の「天使のプリン」も、その要部は「天使」であるため、同様に判断されるべきである。
本件商標の要部である「天使達」も、引用商標の「天使」(又は「天使」部分)も、一般世人が一見して「天使」の意味を理解することができ、そして、「天使達」は「天使」を単に複数形にしたに過ぎない語であるため、取引者、需要者等一般世人の通常払うべき注意の程度を標準とし、離隔的に観察した場合には、誤認混同の危険が極めて高いといえる(甲第14号証ないし同第16号証)。
対比する商標が単数形か複数形かのみの違いである場合には、観念上類似すると判断された審決例等が多数存在する。仮に登録商標を複数形とし、或いは「達」を付することによって全て非類似になるとすれば、従来の審査実績を全て否定するものとなる(甲第17号証、同第18号証)。
(ハ)従来の審決例等
甲第19号証ないし同第21号証及びこれらの他にも、対比する商標が単数形か複数形かのみの違いである場合に、観念上類似すると判断された審決例等が多数存在する(甲第22号証ないし同第33号証)。
(ニ)以上より、本件商標の要部である「天使達」と、引用商標の「天使」(又は「天使」部分)は、単数形か複数形かのみの違いであるので、観念が類似することは明白である。
本件商標を当該指定商品に使用した場合、流通過程においてこれに接した需要者・取引者は、単に単数形か複数形かのみの相違をさほど気に留めないことは日常的な経験則であり、上記審決でも、そのように判断されている。
よって、本件商標は、引用各商標と類似する商標であり、その指定商品も同一又は類似であるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
本件商標は、洋菓子の一種名である「ミルフィーユ」を表す語を有して成る商標であることから、これをその指定商品中、「ミルフィーユ」以外のものに使用するときには、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるといえる。
本件商標と同様に、「天使の○○」の構成をとり、「天使の」に続く語が普通名称である商標については、その指定商品を当該普通名称のものに限定していない場合には、商標法第4条第1項第16号を理由とする拒絶理由が通知されている(甲第5号証の2、同第6号証の2、同第8号証の2、同第9号証の2)。
請求人は、「天使」を創業の精神を体現するシンボルとし、長年の間、「ANGEL」又は「エンゼル」の語を使用した登録商標やエンゼルマークを使用した登録商標を、「菓子、パン」等に使用しており、現在ではこれらの登録商標は、請求人を表すものとして需要者・取引者間において周知・著名となっている。そして、「ANGEL」又は「エンゼル」の語やエンゼルマークからは、「天使」の観念が生じるのは明白であり、このような事実からも、「菓子及びパン」等に使用された商標「天使」に接した需要者・取引者が、請求人を想起することは明白であり、従って、引用各商標は周知・著名であるといえる。また、請求人は、「チョコレートの風味を有する菓子及びパン」等を指定商品とする登録商標「天使のショコラ」(第4598690号;参考資料9)及び「チーズスフレの菓子」等を指定商品とする登録商標「天使のチーズスフレ」(第4598691号;参考資料34)を保有している。引用各商標及びこれらの商標と同じ市場に、本件商標「天使達のみるふぃ〜ゆ」が置かれた場合には、需要者・取引者は、それらの出所が同一であると考えるのが自然であろう。そして、周知・著名商標「天使」の記憶をもとに出所源を判断することは疑う余地が無く、このことは、本件商標中「天使達」部分が「天使」の複数形になっていることによって左右されない。
従って、本件商標は、取引過程において具体的出所混同を生じる蓋然性は極めて高いといえ、商標法第4項第1号第15号に該当する。
以上の理由により、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第16号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効にすべきである。
第4.被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
請求人の主張は、次の理由により妥当性を欠くものである。
請求人の上記主張の根拠として、以下の(1)ないし(3)を主張すると共に、特許庁商標審査基準やいくつかの審・判決例を挙げている。
(1)本件商標「天使達のみるふぃ〜ゆ」中、後半部分の「みるふぃ〜ゆ」は、「フランス風菓子」である「ミルフィーユ」を表す語であるから、普通名称であり、自他商品識別力が無く、したがって、前半部分の「天使達」に本件商標の要部があること。
(2)「天使の○○」と構成した商標で、「天使の」に続く部分が普通名称であるものについては、「天使」と類似商標であること。
(3)「天使達」は「天使」を単に複数形にしたにすぎない語であるため、「天使」と類似商標であること。
要するに、請求人は、商品の普通名称を含む商標の類否判断に当って、当該普通名称を除いた部分を要部として抽出し、この要部を以って他の登録商標と対比し、これが類似するかどうかを判断すれば事足りるとしているのである。
しかしながら、例えば、乙第1号証ないし乙第4号証の審決例・異議決定等から本件商標を検討すると、本件商標「天使達のみるふぃーゆ」は、下記の特性を有している。
(イ)文字全体が同書、同大、同間隔で表示され、外観上まとまりよく一体に表現されている。
(ロ)構成、各文字全体をもって呼称しても、冗長ではなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
(ハ)「みるふぃーゆ」の語は、請求人の主張するように単なる菓子の普通名称として消費者、需要者に把握されているとは現時点ではいい難い。
(ニ)また、仮に、本件商標の構成中の「みるふぃーゆ」が菓子の普通名称を表示する語であるとしても、本件商標の前記構成においては、特定の商品内容を具体的に表示するものとして直ちに理解し得るものとはいい難く、むしろ構成全体をもって一体不可分のものとして、一種の造語を表示してなる商標とみるのが相当である。
(ホ)「天使達のみるふぃ〜ゆ」と「天使のみるふぃ〜ゆ」とはイメージ的に大きな差異がある。すなわち、「天使達の○○」の文字からは「多くの天使に好まれるあるいは食される○○」の意味と理解され、単なる「天使のみるふぃーゆ」と比較しても優れた商品特性のイメージを消費者、需要者に与える。したがって、両商標の違いは、請求人の主張するように単なる単数形か複数形かの差だけではない。
以上要するに、本件登録「天使達のみるふぃーゆ」は、全体として一個の造語を表示してなる商標であり、したがって、引用商標1の「天使」、引用商標2の「天使のプリン」と対比するに当って、いわゆる離隔観察したとしても、互いに誤認混同を生ずるおそれのない非類似の商標であることは明らかである。
また、本件商標の前半部を占める「天使達」の語と引用商標1、2の「天使」の語だけでも、消費者、需要者が受ける印象、観念は異なるが、本件商標「天使達のみるふぃ〜ゆ」全体となると、引用商標との観念の差が一層引き立つこととなるため、この点からも本件商標は引用各商標と非類似であることは明らかである。
よって、本件商標は、引用商標1、2と比べてたとえ指定商品において同一又は類似であるとしても、商標が非類似であるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
請求人の上記の無効理由を要約すれば、本件商標は、洋菓子の一種名である「ミルフィーユ」を表す語を有して成る商標であるから、これをその指定商品中、「ミルフィーユ」以外のものに使用するときには、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当するものといえる、というものである。
しかしながら、上記請求人の主張は、先に述べたように、「みるふぃーゆ」の語は、単なる菓子の普通名称として消費者、需要者に現時点で認知されているとはいい難く、また、仮に普通名称を表示する語であるとしても、本件商標全体の構成においては、特定の商品の普通名称を具体的に表示するものとして直ちに理解し得るものとはいい難く、むしろ構成全体をもって一体不可分のものとして、一種の造語を表示する商標とみるのが相当であるから、本件商標をその指定商品中、「ミルフィーユ」以外のものに使用したとしても、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれはない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
請求人の上記の無効理由を要約すれば、請求人の引用商標である「ANGEL」又は「エンゼル」の語やマークを使用した登録商標は、請求人を表すものとしていわゆる周知・著名であり、「ANGEL」又は「エンゼル」の語やマークからは「天使」の観念を生じるのは明白であるから、本件商標「天使達のみるふぃ〜ゆ」が引用各商標と同一市場に置かれた場合には、需要者、消費者は出所の誤認を生じる蓋然性が極めて高い、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえるというものである。
しかしながら、上記請求人の主張は、先に述べたように、例え「ANGEL」又は「エンゼル」の語が請求人を表示するものとして需要者、取引者に周知・著名であったとしても、本件商標と引用各商標とは全く別異の商標であって、彼此が誤認混同する要素は見出せないものであるから、結局、本件商標「天使達のみるふぃ〜ゆ」をその指定商品について使用しても、請求人の業務に係る商品の如く、その出所について混同するおそれはない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
よって、被請求人は答弁の趣旨通りの審決を求めるものである。
第5.当審の判断
そこで先ず、本願商標と引用商標1及び引用商標2との類否について検討するに、本件商標は、前記したとおり「天使達のみるふぃ〜ゆ」の文字よりなるところ、その構成に係る後半部の「みるふぃ〜ゆ」の文字部分は、その指定商品(菓子及びパン)との関係において、よく知られている、パイ生地を薄く伸ばして焼き、カスタードクリームや果物などを挟んで重ねて作られているフランス風菓子の一である「ミルフィーユ」(甲第4号証)を平仮名で表示したものと容易に看取し得るものである。
したがって、本件商標中、該文字部分には自他商品識別標識としての識別力はないか又は極めて薄いとみるのが相当であり、本件商標において自他商品識別標識として機能を果たす文字部分(要部)は、この文字部分を除いた語頭部分の「天使達」の漢字部分にあると判断するのが相当である。
してみれば、本件商標からは、その全体を称呼した場合の「テンシタチノミルフィーユ」の称呼のほか「天使達」の文字に相応して「テンシタチ」の称呼をも生ずると認められるものである。
これに対し、引用商標1は、前記したとおり「天使」の漢字よりなるから、「テンシ」の称呼及び「天使」の観念を生ずること明らかである。また、引用商標2は、前記のとおり「天使のプリン」の文字よりなるところ、その構成中の「プリン」の文字は、洋菓子(プリン)の普通名称であるから、これより生ずる称呼は「テンシノプリン」のほか「テンシ」の称呼を生ずるものであり、また「天使」の観念を生ずるものである。
そこで、本件商標より生ずる上記「テンシタチ」の称呼及び「天使達」の観念と引用各商標より生ずる上記「テンシ」の称呼及び「天使」の観念とを比較すると、本件商標の「天使達」は、正確には「天使」を複数的に表現したといえるものであるが、これから特に「天使」とは何か別の意味合いを認識させるものではなく、結局のところ「天使達」といっても「天使」といっても「天使」を認識させることに変わりはないと判断するのが相当である。
そうとすれば、本件商標と引用各商標は、共に「天使」の観念を生ずるといえるものであり、かつ、「テンシ」の称呼を共通にするものとみるのが相当である。
してみれば、本願商標と引用商標1及び引用商標2は、観念及び称呼において類似する商標といわなければならない。また、本件商標の指定商品は、引用各商標の指定商品と同一又は類似の商品である。
したがって、本件商標は、他の請求人の主張について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
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