Trademark Appeal Case
サイバーセキュリティ管理の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2003−5845(T2003−5845/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第16類,第35類及び第41類に属する願書記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、商標法第10条第1項の規定によって平成12年2月7日に登録出願された2000年商標登録願第8998号の分割出願として、平成14年5月20日に登録出願されたものである。
その後、指定商品及び指定役務については、平成13年6月6日、平成14年2月13日、平成14年5月20日、平成14年8月2日及び平成15年4月4日付け手続補正書をもって、第16類「雑誌,新聞」及び第35類「インターネット・ファックス・電話及びダイレクトメールを介しての企業情報の提供,インターネット(電話回線を介しての接続が可能な電子計算機を用いて行う通信網)による広告の代理及びその他の広告,インターネットによる商品の売買契約の媒介」と補正されたものである。
2 原審の拒絶理由
原査定は、「本願商標は、『頭脳又はコンピュータ(ネットワーク)』の意を看取させる『CYBER』と『保安、防犯』の意を看取させる『SECU RITY』と『管理』の意を看取させる『MANAGEMENT』の欧文字を普通に用いられる方法で横書してなるものであるところ、近時、インターネットを利用した電子商取引や情報の交換が普及し、ハッカー等の不正侵入者の対策としてセキュリティ管理が重要視され、それらに関する教育、セミナーが開催されている事からすれば、本願商標に接する需要者等は、『コンピュータネットワークにおけるセキュリティ管理』の意を容易に想起させるものですから、これを本願の指定役務中『技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナー・講演会及び展示会の企画・運営又は開催』に使用しても単に役務の質(内容)を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨の認定、判断をして、本願を拒絶したものである。
3 請求人への審尋
平成16年4月2日付審尋書をもって通知した審尋の理由は、次のとおりである。
本願商標は、「情報通信ネットワークシステムの安全防護」を表す「CYBER SECURITY」の欧文字及び「管理」の意を看取させる「MANAGEMENT」の欧文字を「CYBER SECURITY MANAGEMENT」と横書きに表したものであるが、最近、サイバー(電脳空間)への不正行為が、大幅に増えている状況のもと、日本を含む世界は、高度情報社会に向けての根本的なセキュリティ管理が不可欠になっている。そうとすれば、本願商標を、その指定商品・役務中「情報通信ネットワークシステムの安全防護の管理が施された商品又は役務」に使用するときには、本願商標に接する取引者、需要者は、上記商品又は役務であることを端的に表示したものと理解するに止まり、全体として、何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができないものとみるのが相当であり、自他商品・役務識別力がないものと理解されるものである。かつ、これを上記商品又は役務以外の商品又は役務に使用するときは、商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。そして、前示の認定、判断は下記(ア)ないし(ウ)の一般新聞情報からみてもその実情が是認できる。
(ア)「北米大停電でサイバーセキュリティーの重要性浮き彫りに 対策の遅れ指摘の声」の見出しの下
日本でも、専門家の間では重要インフラの防護に関するネットワークセキュリティーの立ち遅れが指摘されている。それによれば、日本でサイバーセキュリティーが最も遅れているのは電力と通信であり、世界的なハッカーが日本の原子力発電所に侵入し制御不能にすることも不可能ではないとされる。(電気新聞2003年09月08日版)
(イ)「綜合警備保障、ネットワークセキュリティー事業に進出」の見出しの下
・ ・・ひぼう・中傷サイト検索については社内外でのテストを検討する。また、ひぼう・中傷サイト検索と電子文書長期保存を、日本経営協会が23日から25日まで東京・東京ビッグサイトで開く「自治体総合フェア2001」に出展、企業や自治体の需要を探る。電子認証とサイバーセキュリティーは外部企業と提携し、システムを購入して対応する。(日刊工業新聞社 2001年05月04 日)
(ウ)「緊急性増すサイバー安保 生活に直結、依存高まり社会の弱点」の見出しの下
キャンベル前米国防次官補代理は「サイバーセキュリティーには、プライバシー保護や情報の保秘といった問題が絡む」と指摘している。しかし、それだけではあるまい。サイバーセキュリティーには、コンピューターネットワーク防衛(CND)のほか、攻撃(CNA)の分野もある。米宇宙軍はすでに攻撃能力の開発を宣言し、具体的に動き出している。サイバー攻撃は相手に大きな打撃を与える。憲法に基づく日本の専守防衛政策の枠組みは、CNAを容認しないと考えるのが自然だろう。(東京朝刊 2000年11月05日版)
4 請求人の回答(要旨)
上記2の審尋に対して、請求人は、次のように回答を述べている。
本願は原審において拒絶理由通知を受けて、当該拒絶理由通知解消の為に、補正・分割等により対応をしてきたが、今回の拒絶理由通知は、全く別の拒絶理由通知である。本願に対する拒絶理由の内容が時間の経過とともに拒絶理由通知となっている。識別性(独占適応性)認定の時期が「査定又は審決時」との法解釈は知悉してはいるが、特許庁のその都度の拒絶理由の内容を解消してきた請求人にとっては、本願商標に対する拒絶理由には納得しがたい。しかしながら、今回の特許庁の認定が、商標「CYBER SECURITY MANAGEMENT」に対する統一的な特許庁の見解の保証とされるならば、当該拒絶理由通知を前提としての審決で明確にされれば、請求人の使用中の商標「CYBER SECURITY MANAGEMENT」の識別性(独占適応性)のないとの特許庁判断のお墨付きとする。
5 当審の判断
本願商標は、別掲のとおり、「情報通信ネットワークシステムの安全防護」を表す「CYBER SECURITY」の欧文字及び「管理」の意を看取させる「MANAGEMENT」の欧文字を「CYBER SECURITY MANAGEMENT」と横書きに表したものである。
しかして、本願商標について示した先の審尋は、妥当であって、コンピューターネットワーク分野において、本願商標の表示がそれぞれ使用されている取引の実情に照らし、本願商標を、その指定商品・役務中「情報ネットワークシステムの安全保護の管理が施された商品又は役務」に使用するときには、本願商標に接する取引者、需要者は、上記商品又は役務であることを端的に表示したものと理解するに止まり、全体として、何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができないものとみるのが相当であり、自他商品・役務識別力が有しないとすべきである。かつ、これを上記商品又は役務以外の商品又は役務に使用するときは、商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するものといわざるを得ないから、本願商標はこの理由をもって拒絶すべきものである。
なお、原査定においては、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するとして拒絶したものであるが、本願商標は上記のとおり、自他商品識別力の機能を果たさない商標であり、この認定において原査定と相違するものではないから、結局、原査定は妥当なものであって、取り消す限りではない。
また、請求人は、本願に対する拒絶理由の内容が時間の経過とともに別の拒絶理由通知となっている旨主張するが、商標の識別力については、商品又は役務に関する流通の実態等の取引の実情に基づき、登録出願に係る商標が指定商品又は役務等に使用された場合、取引者・需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるか否かを認定、判断すべきものであるところ、商品又は役務に関する取引ないし流通は時代とともに変化するものであるから、それに伴って需要者・取引者の認識にも変化が生ずることはあり得ることであり、査定又は審決時において、識別力の有無については個別、具体的に認定、判断すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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