Trademark Appeal Case
著名人名略称の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年異議第90165号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4195912号商標(以下「本件商標」という。)は、「ROYALQUEENVALENTINO」の欧文字を横書きしてなり、平成9年3月7日に登録出願、第25類「靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,ゴルフ靴,乗馬靴」を指定商品として、同10年10月9日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立の理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきであるとして、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第62号証を提出している。
(1)本件商標は、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏の氏名の著名な略称を含むものであり、その者(他人)の承諾を得ていないものであるから、その登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してなされたものである。
(2)本件商標は、登録第1786820号商標と称呼を共通にする類似の商標であって、本件商標の指定商品は引用商標の指定商品と抵触するものであるから、その登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものである。
(3)本件商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして著名な商標「VALENTINO」、「VALENTINO GARAVANI」と類似するものであり、本件商標をその指定商品に使用した場合、申立人の業務に係る商品とその出所について混同を生ずるおそれがあるから、その登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものである。
3 本件商標に対する取消理由
当審において、平成13年8月28日付けで商標権者に対し通知した取消理由は次のとおりである。
申立人の主張の趣旨及び甲第7号証ないし同第62号証(枝番号を含む。)によれば、次の事実が認められる。
「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)は1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーと呼ばれ国際的なトップデザイナーとして知られている。
我が国においても、ヴァレンティノ ガラヴァーニの名前は1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品は「Vogue(ヴォーグ)」誌などにより継続的に日本国内にも紹介されている。
昭和49年には三井物産株式会社の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノヴティックジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品は我が国のファッション雑誌にもより数多く掲載されるようになり、同氏は我が国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。
以上のとおり、ヴァレンティノ ガラヴァーニは、世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された平成9年3月7日当時には、既に我が国においても著名であったものと認められる。
同氏の名前は「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられており、ファッションに関して「VALENTINO」「ヴァレンティノ」といえば同氏を指すものと広く認識されるに至っているというべきである。
さらに、当審において調査するに、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」「VALENTINO GARAVANI」は、我が国においては、「ヴァレンチノ」、「ヴァレンティーノ」あるいは「VALENTINO」とも略されて表示されていることは、田中千代「服飾辞典」同文書院1981年p550、山田政美「英和商品辞典」(株)研究社1990年p447、金子雄司外「世界人名辞典」岩波書店1997年p84)において裏付けられるばかりでなく、雑誌における表現においても、たとえば、「marie claire」1996年2月1日号、「non-no」1989年 No23号等からも認められる。
以上の事実よりすると、請求人は、「VALENTINO」又は「VALENTINO GARAVANI」よりなる商標を婦人服を始めとし、紳士服、アクセサリー、バッグ、香水等の商品に使用しており、その結果、これら商標は、本件商標の登録出願の時には、既に我が国において、取引者、需要者間に広く認識されていたものといえる。
他方、本件商標は、その構成中に「VALENTINO」の文字を有するものであり、その指定商品は、引用商標が使用されている被服等とファッション関連ということで共通する商品を含むものである。
以上を総合すると、本件商標を、商標権者がその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をして、その商品があたかも上記デザイナーあるいは、同人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
4 商標権者の意見
上記3の取消理由に対して、商標権者は、次のように意見を述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出している。
本件商標は、「ROYALQUEENVALENTINO」の一体文字からなり、25類「靴類,靴合わせくぎ,ゴルフ靴,乗馬靴」を指定商品とするものである。従来の特許庁の見解は、乙第1号証のアンダーラインで示すとおり、「VALENTINO」が服飾デザイナーとして著名であっても、靴やかばん類、袋物の商標としては著名とは認めていない。この見解に基づき、ハンドバックを指定商品とする「SUPER MONTANA VALENTINO」の登録が維持され、靴類では、「RUDOLPH VALENTINO」が登録第1504659号として登録されている。これらの商標は「VALENTINO」を含んでいるが、この商標が付された商品は、消費者がバレンティノ ガラバーニと関係のある商品と混同を生じるおそれがないものと判断され、登録が維持され、「RUDOLPH VALENTINO」の登録第1504659号に対する無効審判も却下されている。服飾類以外の商品については、「VALENTINO」は著名とは言えないというのが、確立された特許庁の見解である。
しかるに、審査官は、「VALENTINO」及び「VALENTINO GARAVANI」が、靴類を表示するものとして著名商標であると認めた上で、本件商標が、略記商標または申立人商標を想起し、出所の混同を来すおそれがあると認定している。
しかしながら、靴類において、「VALENTINO」及び「VALENTINO GARAVANI」が著名商標であるとは認めることができない。
常識的に判断しても、本件指定商品に関して、需要者が本件商標を使用した商品と「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」の商品との間に出所の混同を来すおそれはまったくないものと思料する。
また、「VALENTINO」は、日本でいえば「太郎」或いは「一郎」に相当し、それ自体、イタリアではありふれた男性の名前を表示するものである。
しかるに、バレンティノ ガラバーニという服飾ファッションデザイナーの姓名は、世界的に著名なため、「VALENTINO」を単独で使用すれば、バレンティノ ガラバーニの略称として上記デザイナー名を連想するであろうが、「ROYALQUEENVALENTINO」と商品に付してあれば、これがバレンティノ ガラバーニに関係するものと異なるということは、上記デザイナーのガラバーニの名称が著名であるがゆえに、一目瞭然である。「VALENTINO」が他の文字と結合した場合、結合した文字が商標の要部であり、「VALENTINO」は、商標の要部を構成しないことは、「VALENTINO」が、上述の如く、それ自体、イタリアではありふれた男性の名前を表示するものであることから、明らかである。
以上述べた理由により、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する需要者が、「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」の商標を容易に想起するものではなく、その商品があたかも申立人会社ないしはその関連会社の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を来すおそれがある商標とは認めることができない。
5 当審の判断
本件商標は、「ROYALQUEENVALENTINO」の欧文字よりなるところ、上記3の取消理由は妥当なものであって、著名となっている「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の著名な略称「VALENTINO」の文字を有する本件商標を、商標権者が、その指定商品について使用するときは、その商品があたかも上記デザイナーあるいは同人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認める。
そして、これに対する上記4の商標権者の意見は、以下の理由により採用することができない。
すなわち、「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ」について、「VALENTINO」との略称表示が使用されてきた実情が存在するから、「VALENTINO」の文字を含む商標が登録されていることが、「VALENTINO」がヴァレンティノ ガラヴァーニ氏又はそのデザインに係る商品を表すものとして取引者、需要者間に広く認識されていたことを認め得る妨げとはならないものであるばかりでなく、そもそも、具体的事案の判断は、過去の登録例に拘束されることなく個別具体的に検討されるべきものである。
また、「VALENTINO」が、日本においては、ありふれた氏姓ないし名であるとは認め難いものであり、イタリアにおいてありふれた男性の名前であるとしても、そのことが、日本において、商標として機能することを否定することにはならないから、商標権者の主張は採用することができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その商標登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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