sokuhyo

Trademark Appeal Case

団体名称の先使用と取消

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2003−90292(T2003−90292/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4648251号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4648251号商標(以下「本件商標」という。)は、「東アジアの古代文化を考える会」の文字を標準文字により表してなり、平成14年3月27日に登録出願され、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),通訳,翻訳」を指定役務として、平成15年2月28日に設定登録されたものである。

第2 取消理由の通知

登録異議申立人 東アジアの古代文化を考える会(以下「申立人の会」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第10号、同第15号、及び同第19号に該当するから、その登録は商標法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきものであると申立てた。

そして、本件登録異議の申立てがあった結果、当審において、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものとして、平成16年1月27日付で商標権者に対して通知した取消理由は、要旨次のとおりである。

<取消理由>

1.申立人の会の提出に係る各証拠(甲各号証)によれば、以下の各点が認められる。

(1)申立人の会である「東アジアの古代文化を考える会」(会長 奥野正男)は、1972年(昭和47年)12月17日に江上波夫、久野収、金達寿、鈴木武樹の名で日本の市民への呼びかけが行われ誕生し(甲第28号証)、「東アジアの中での古代文化史像を市民的立場から学問的に明らかにすることを目的とする。会はその目的を遂行するため、機関紙の発行、後援会、研究会、シンポジウム、遺跡めぐり等の事業と分科会活動をおこなう。」ことを会の目的及び事業とする任意の団体であって、全国レベルの会員組織(甲第3号証)によって構成される申立人の会はその所在地を「東京都新宿区四谷2−11 竜文堂ビル402号室」に置き、会則(甲第2号証)所定の定めにより、機関紙「東アジアの古代文化ニュース」と題する月刊の会報を1973年(昭和48年)1月10日(甲第12号証)より発行し、また、東アジアの古代文化に関するシンポジウム、講演会、遺跡巡り等を主催してきたこと。

(2)そして、前記「東アジアの古代文化ニュース」と題する月刊の会報には、その発行所として「東アジアの古代文化を考える会」との記載ほか、1973年(昭和48年)1月10日発行の会報No 1(甲第12号証)には、「会長 江上波夫、事務局長 鈴木武樹、編集 水戸岩雄」の記載、

1993年(平成5年)5月1日及び同8月1日発行の会報No.239及びNo.242(甲第38号証、甲第41号証)には、「会長 江上波夫、編集 事務局長」、及び「郵便振替口座・東京6−120942」の記載、

1993年9月1日、同10月1日、1994年(平成6年)2月1日、及び同3月1日発行の会報No.243、No.244、No.248及びNo.249(甲第42号証、甲第43号証、甲第46号証、甲第47号証)には、「会長 江上波夫、編集 再建委員会」と郵便振替口座番号を同じくする記載、

1994年4月1日発行の会報No.250(甲第48号証)には、「会長 江上波夫、編集 ニュース担当」と郵便振替口座番号を同じくする記載、

1998年(平成10年)8月29日発行の会報No.300(別冊)(甲第22号証)には、「会長 江上波夫、編集 ニュース担当」と「東京6」から「00160−4」と地域番号等が変更され口座開設番号を同じくする「郵便振替口座 00160−4−120942」の記載、

2002年(平成14年)12月14日発行の会報No.354(別冊)(甲第23号証)には、「名誉会長 江上波夫、会長 奥野正男、副会長 鈴木靖民、編集 ニュース担当」及び「郵便振替口座 00160−4−120942」の記載、

2003年(平成15年)3月1日及び同4月1日発行の会報No.357及びNo.358(甲第4号証、甲第2号証)には、「会長 奥野正男、副会長 鈴木靖民、編集 ニュース担当」及び「郵便振替口座 00160−4−120942」の記載がそれぞれ認められるところである。

してみると、以上の「東アジアの古代文化ニュース」と題する月刊の会報は、何れも固有の任意団体である「東アジアの古代文化を考える会」の発行、すなわち、申立人の会は「江上波夫」を会長とし、その後、同人が名誉会長とする間は後任会長として「奥野正男」と羅列していること、所在地の移転ないし電話番号の変更等があるとしても、郵便振替口座の口座開設番号「120942」を同じくするところから名義が同一人と認められること、及び会報の掲載事項ないし体裁がほぼ同じくすることからして、1973年(昭和48年)1月10日発行の会報No 1ないし2003年(平成15年)4月1日発行の会報No.357の間において継続して「申立人の会」が発行しているものといえる。

(3)また、申立人の会は、1992年(平成4年)1月18日(土)〜19(日)に催された「東アジア歴史国際シンポジウム/東アジアの古代をどう考えるか」と題し、主催を東アジア歴史国際シンポジウム実行委員会(委員長 江上波夫)、及び飛鳥民際交流記念事業実行委員会とするシンポジウムにおいて協賛していること(甲第24号証)

「東アジアの古代文化を考える会 創設30周年記念」「渋谷区制施行70周年記念」及び「國學院大學創設120周年記念」として2002年(平成14年)12月14日(土)〜15(日)に催された「東アジアから見た日本古代国家の起源」と題するシンポジウムの主催をしたこと(甲第25号証、甲第34号証)、及び当該シンポジウムのパンフレットに「申立人の会」の案内として「名誉会長:江上波夫 東京大学名誉教授、会長:奥野正男 前宮崎公立大学教授、副会長:鈴木靖民 國學院大學教授」及び前出会則(甲第2号証)と同じくする会の目的及び事業等の掲載があること。

平成15年6月14日(土)に催された「江上波夫先生記念講演会」と題し、主催を東京大学東洋文化研究所(所長 田中明彦)とする講演会において後援していること(甲第26号証)、そして、後援するに至る経緯として、申立人の会々長宛てに江上波夫の生前に特に関わりの深かった申立人の会に対し後援の了承を求める旨の平成15年3月24日付書面(甲第35号証)、及び東京大学東洋文化研究所々長宛ての後援することを申立人の会々長として「奥野正男」が前出の1998年8月29日発行の会報(甲第22号証)、2002年12月14日発行の会報(甲第23号証)、2003年3月1日及び同4月1日発行の会報(甲第4号証、甲第2号証)に記載の所在地、電話番号、及び郵便振替口座番号等を同じくする表示をもって承諾していることが認められる(甲第36号証)。

さらに、前記(1)で申立人の会の誕生について述べたところの事情等を紹介した「東アジアの古代文化を考える会−その生誕 水戸岩雄」の掲載のある「東アジアの古代文化/1974-創刊号 春」を題号とする書籍(発行所 株式会社寺子屋出版社 責任編集兼発行人・鈴木武雄 1974年(昭和49年)1月5日発行 発売元 大和書房:甲第28号証)ほか、

「東アジアの古代文化/1974 夏」を題号とする書籍(発行所 大和書房 責任編集者 鈴木武雄 発行者 大岩岩雄 1974年5月25日発行:甲第29号証)の199頁に「主催 東アジアの古代文化を考える会/読売新聞社 日時1974年8月・・・8月1日(木)開講式 挨拶 会長/上智大学 江上波夫」等の講座案内、前出2003年4月1日発行の会報(甲第2号証)等に副会長とする「鈴木靖民」が著者一人として発刊された1991(平成3年)年2月10日大和書房発行の「伽耶はなぜほろんだか」を題号とする書籍の286頁に「終わりに・・・東アジアの古代文化を考える会・・・」の記述(甲第19号証)、前出1993年(平成5年)5月1日、8月1日、1993年9月1日、同10月1日、1994年2月1日、同3月1日及び同4月1日発行の会報(甲第38号証、甲第41号証、甲第42号証、甲第43号証、甲第46号証、甲第47号証、甲第48号証)に記載の申立人の会と同じくする「千代田区飯田橋2−5−3 美国ビル 東アジアの古代文化を考える会」が1997年(平成9年)12月14日発行した「市民が拓く東アジアの古代」を題号とする書籍(甲第21号証)、「東アジアの古代文化/113号」を題号とする書籍(2002年(平成14年)11月5日大和書房発行:甲第19号証)に上記(3)で述べた「東アジアの古代文化を考える会 創設30周年記念」についてのシンポジウムのお知らせとして、その参加予定者に「奥野正男 前宮崎公立大学教授・当会会長 /鈴木靖民国学院大学教授・当会副会長」及び問い合わせとして「東アジアの古代文化を考える会/ 新宿区四谷2−11 竜文堂ビル402」等の申立人の会に関係する記載がそれぞれ認められるものである。

(4)以上の(1)ないし(3)によれば、申立人の会は、「騎馬民族征服王朝説」で知られる「江上波夫」を当初から同人が亡くなるまで会長ないし名誉会長とし、同人を中心に長年にわたり活動してきたものであって、現在は会長を「奥野正男」として、「東アジアの古代文化を考える会会員名簿(2003/3/31)会員番号順」及び「東アジアの古代文化を考える会特別会員 50音順(2003/3/31)」(甲第3号証)に掲載の会員により組織され、定例総会を毎年3月に開催(第31回総会は2003年3月15日開催された:甲第2号証、甲第4号証)している状況も認められるほか、前出の各会報によれば、幹事(事務局)並びに美術の会(会員名簿:甲第6号証)、文献の会(会員名簿:甲第7号証)、古代氏族・ことばの会(会員名簿:甲第8号証)、同人誌の会(会員名簿:甲第9号証)、シルクロードの会(会員名簿:甲第10号証)及びユーラシア研究会(会員名簿:甲第11号証)の分科会等が、「申立人の会」の下に機関紙の発行、後援会、研究会、シンポジウム、遺跡めぐり等の事業と分科会活動を継続して行っている状況が認められる。

2.本件商標の商標権者は、「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」であるところ、その理事長である出牛昭(以下「出牛」という。)は、かつて「申立人の会」の会員で幹事をしていた(甲第37号証、甲第38号証他)。

(1)しかしながら、出牛は、「申立人の会」の会員としてあるまじき行為があったことを理由に、平成5年9月6日付けで会を除名された旨の会長 江上波夫の署名がある告知(甲第45号証)ほか、出牛を論難する如き掲載のある1994年2月1日及び同3月1日発行の会報No.248及びNo.249(甲第46号証、甲第47号証)。また、この除名措置については、1994年(平成6年)3月26日に開催された申立人の会の第22回総会において「江上波夫会長より説明され、了承された。同時に、出牛に対して、『申立人の会』の会名『東アジアの古代文化を考える会』は20年以上にわたる多くの人の努力と、江上会長のご指導の積重ねの結実として社会的に認知を得ている会名である、出牛は今後一切、本会会名を使用してはならない、本会の会報『東アジアの古代文化ニュース』と同名の印刷物を発行してはならないことなど7項目の要求をする旨が満場一致で確認された」ことの1994年(平成6年)4月1日発行の会報No.250(甲第48号証)等、出牛に関する掲載がある。

(2)本件商標の商標権者により2001年(平成11年)10月1日付発行された「東アジアの古代文化ニュース」と題する印刷物には、「法人登記完了記念号」の表示ほか、「『東アジアの古代文化を考える会』は本会が唯一の法人です。紛らわしい会名を用いる他の団体には、特定非営利活動促進法第50条により、名称使用の即時中止を勧告します。」、「祝特定非営利活動法人登記完了『東アジアの古代文化を考える会』は本会が唯一の法人です。紛らわしい会名を用いる他の団体には、特定非営利活動促進法第4条及び同第50条により、名称使用の即時中止を勧告します。この勧告に従わない場合は、本会の法人活動への妨害行為として、直ちに法的な処置を行います。ただし、誠意あるお話合いには応じる用意もあります。」、「お手数ですが会費振込(前納)制です 会場では現金の授受は原則的に禁止です 予約先・・・出牛でうし昭」及び「投稿歓迎 本誌1〜2ページ分・・・東京都北区赤羽北1−18−1−408・・・出牛でうし昭」等との各記載がある(甲第50号証)。

3.「江上波夫」ないし「申立人の会」に関する新聞報道が例えば、以下とおりに認められる。

(1)「奥野正男さん(新日向人のおか目はち目)/宮崎」の見出しの下、「宮崎公立大教授(69歳)・・・『邪馬台国九州説』の論客。昨年12月、『東アジアの古代文化を考える会』の会長に就任した。前任者は、日本国家の起源を大陸からの騎馬民族の渡来に求めた騎馬民族征服説の江上波夫氏だ。会員は全国に二千人。東アジアという視点から日本の古代史の再確認を試み、プロとアマチュアが一緒になって研究を続けてきた。学界の定説に縛られない風通しのよさが自慢だ。・・・」の記事(2001年(平成13年)3月16日付朝日新聞西部地方版/宮崎)。

(2)「江上波夫さん死去 長崎の元寇海底遺跡調査に尽力」の見出しの下、「日本考古学界の最長老、江上波夫さんが11日、96歳で亡くなった。ユーラシア大陸を股にかけたスケールの大きい研究は最晩年まで、やむことがなかった。・・・1999年(平成11年)に江上さんから『東アジアの古代文化を考える会』(東京)の会長を引き継いだ奥野正男・元宮崎公立大教授(71)(福岡県遠賀町)は『皇国史観の余韻が残る終戦間もない時期に、日本古代史を東アジア史の中で考える学説を出された意義は計り知れない。晩年、一部の考古学者から批判にさらされたのは、数少ない邪馬台国九州説論者だったことも一因だろうが、残念でならない』と話した。・・・」の記事(2002年(平成14年)11月15日付読売新聞西部朝刊)。

(3)「今後なかなか出ない人物 江上波夫氏が死去 騎馬民族説で衝撃」の見出しの下、「・・・また、歴史考古学研究の市民団体『東アジアの古代文化を考える会』の会長を長年務められてもいた。活動が多彩で、今後なかなか出ない人物だったと思う。」の記事(2002年11月15日付共同通信)。

(4)「自分を磨く/清水建設技術研究所副所長・藤盛紀明氏−日本古代史研究」の見出しの下、「―古代史のおもしろさは何でしょうか。・・・日本の市民の会で最も歴史のある『東アジアの古代文化を考える会』に入会したのが三十三歳の時。この会は会員数が六百人を超え、大きな市民の会であると同時に専門家も大勢参加している。東大名誉教授の江上波夫先生が会長で、・・・」の記事(1998年(平成10年)7月6日付日刊工業新聞)。

(5)「江上波夫氏の米寿記念論集で第30号特集−−『古代文化を考える』」の見出しの下、「『東アジアの古代文化を考える会同人誌分科会』が同人誌『古代文化を考える』第30号特集として『江上波夫先生米寿記念論集』を刊行した。『東アジアの古代文化を考える会』は市民参加の歴史研究の団体で江上波夫氏が会長。同人誌分科会は会員が勉強の成果を発表する同人誌『古代文化を考える』を編集発行している。同人は約八十人。・・・」の記事(1994年(平成6年)12月15日付毎日新聞東京夕刊)。

4.以上の1.ないし3.の各認定によれば、申立人の会は、騎馬民族征服王朝説で知られる「江上波夫」を中心に長年にわたり活動してきたものであって、現会長を「奥野正男」とし、会員及び特別会員により組織され、定例総会を開催ているほか、「申立人の会」の下で機関紙「東アジアの古代文化ニュース」と題する月刊の会報の発行、後援会、研究会、シンポジウム、遺跡めぐり等の事業と分科会活動を継続して行っているものであり、その団体名称「東アジアの古代文化を考える会」は、その会名をもって日本古代文化史の分野において、本件商標の登録出願前において既に広く認識されるに至っていたものといえる。かつ、その事業活動及び周知性は現在もなお継続しているとみて差し支えなく、その後の状況は特に変化はみられない。

対して、本件商標の商標権者の理事長である出牛は、かつて「申立人の会」の会員であったが、会員を除名となった後、主導的立場で本件商標の商標権者である「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」を設立し、申立人の会の第22回総会において確認された要求に反して、「申立人の会」と同一の「東アジアの古代文化を考える会」又はこれと極めて紛らわしい「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」という名称を本件商標の商標権者の名において使用するとともに、「申立人の会」の会報と同一題号の「東アジアの古代文化ニュース」と題する印刷物をも発行したものである。そして、本件商標の商標権者が特定非営利活動法人として設立されたのを機に、本来申立人の会が使用できる筋合いの「東アジアの古代文化を考える会」という団体名称を使用することが恰も違法であるかのような広報活動をして、申立人の会がその会名を使用することに対し不当な圧力を加えている状況がある。

してみると、本件商標権者(代表者 出牛)による本件商標の権利取得は、上記事実関係よりみて正当な権限に基づくものでなく、むしろ、申立人の会によるその登録が存しないことを奇貨として、その独占的使用を企画した意図は明らかであり、申立人の会、及びその会名の下に永年にわたって培われた「申立人の会」の事業活動等を混乱に陥れ、その事業運営に支障を来すことは必至といわなければならない。

したがって、本件商標権者による本件商標の権利取得及び申立人の会がその名称を使用することに対し不当な圧力等は、社会公共の利益に反し、又は社会一般の道徳観念に反し、或いは公正な取引秩序を阻害するものであって、不正目的によるものというほかないから、本件商標登録は公序良俗に反すると認めることができ、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものといわざるを得ない。

第3 商標権者の意見

商標権者は、上記第2の取消理由に対して、意見を要旨次のように述べている。

1.当初の「東アジアの古代文化を考える会」は、「日本の古代文化を東アジア史全体の中に正しく位置付けて理解するとともに、古代文化研究の成果を専門家の手から一般市民に広く開放すること」を目的として、明治大学教授の鈴木武樹氏を中心にして、弁護士後藤孝典氏ら複数の幹事により1972年11月に発足したものである(乙第1号証)。

当初の「東アジアの古代文化を考える会」を発足させるに当たり、会員の募集、事業の普及・円滑化、収入の安定化等を図るために当時「騎馬民族説」で広く知られていた「江上波夫」氏に会長をお願いしたものである(乙第1号証)。当初の「東アジアの古代文化を考える会」の運営は、ボランティアとして会の運営に参加していた複数の幹事による幹事会により議論され、決定され、執り行われ、機関誌として「東アジアの古代文化ニュース」を継続して発行し、各種シンポジウム、講演会を開催し、古代遺跡巡り等の事業を行ってきたものである。これらの運営における主体は、あくまでも幹事会であり、高齢の「江上波夫」氏が日常的に参加することはなかった。

2.その後、1990年代に入った頃より、当初の「東アジアの古代文化を考える会」の趣旨、活動・事業方針等を巡って幹事会内部での意見の相違が顕在化し、江上波夫が会長を辞するとの言明を受け、一部の幹事が江上波夫を旗印として、「再建委員会」と称する会派を立ち上げて分派し、「東アジアの古代文化を考える会」の名称と同一名称を名乗り、「東アジアの古代文化を考える会」の発行する機関誌と同一名称の「東アジアの古代文化ニュース」を発行したものである(以下、商標権者が述べる「分派した考える会」は「申立人の会」であること明らかであるからこれを用いる。)。

この間、それまでに使用してきた事務所の使用権を巡ってトラブルが発生し、申立人の会の一部幹事が事務所の鍵を勝手に取り替え、当初の「東アジアの古代文化を考える会」(以下、分派後の出牛の属するところの「当初の『東アジアの古代文化を考える会』」は「商標権者側の考える会」という。)は、これに対して論理的に反論(乙第2号証)していたところであるが、従前より手狭で不便と考えていたそれまでの飯田橋の事務所から、便利で広い千代田区富士見の事務所に移転し、その後、法人化の後に現在の北区赤羽北に事務所を構え、事業を継承したものである。

なお、「申立人の会」もその後、新宿区四谷に事務所を移転している(甲第2号証)。

3.「商標権者側の考える会」は、上記の分派行動に左右されることなく、設立当初から行ってきた機関誌の発行、各種シンポジウム、講演会の開催、古代遺跡巡り等の事業を継続してきたものである(乙第3号証の1ないし乙第3号証の7)。

そして、「東アジアの古代文化を考える会」の創立30周年を迎えるに当たり、社会的な認知と活動の客観性、永続性及び発展性を図る見地から、特定非営利活動法人を設立したものである(乙第4号証ないし乙第9号証)。

また、「商標権者側の考える会」の収支の透明性、明確化を図る観点から、麹町税務署に対して「法人設立届出書」を提出し、その後、税務申告をも行っているものである(乙第10号証、乙第11号証)。

4.このようにして設立された「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」は、「商標権者側の考える会」の事業を継承し、設立当初から行ってきた機関誌の発行、各種シンポジウム、講演会の開催、国内外の遺跡巡り等の事業を継続しているもので、2002年4月時点の会員数も242名となり、現在も会員が全国規模で増えつつあるところである(乙第12号証、乙第13号証の1ないし乙第13号証の6)。

そして、これらの事業において特筆されるべきものは、「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」が2002年12月22日に開催した「江上波夫先生追悼特別講演会」における収益金をお見舞い金(御香典)として拠出したことに対して、喪主である江上波夫の奥様より礼状が寄せられたことでである(乙第13号証の3)。

5.「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」が社会的な認知を受けている状況について

「商標権者側の考える会」及びその事業を継承した「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」は、設立当初から行ってきた機関誌の発行、各種シンポジウム、講演会の開催等の事業を継続しているところであるが、その事業と関連の深い「日本考古学協会」、「東北・関東前方後円墳研究会」等の考古学の団体とも密接な交流があり、「商標権者側の考える会」及びその事業を継承した「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」の開催する各種シンポジウム、講演会には、考古学界の「大塚初重」明治大学名誉教授(元日本考古学協会会長)、「岩崎卓也」筑波大学名誉教授(元日本考古学協会会長)、「甘粕 健」新潟大学名誉教授(現日本考古学協会会長)、「近藤義郎」岡山大学名誉教授、「岡内三眞」早稲田大学教授、「小田富士夫」福岡大学名誉教授、「水野正好」元奈良大学学長、「東 潮」徳島大学教授(元橿原考古学研究所主任研究員)、「石野博真」徳島文理大学教授(元橿原考古学研究所副所長)、「白石太一郎」奈良大学教授(元国立歴史民族博物館副館長)等、文献史学界の「直木孝次郎」大阪市立大学名誉教授、「佐藤 信」東京大学大学院教授、「門脇禎二」京都府立大学名誉教授、「荒木敏夫」専修大学教授、「山尾幸久」立命館大学名誉教授、「加藤友康」東京大学史料編纂所長、「吉田 晶」岡山大学名誉教授、「篠川 賢」成城大学教授、「新川登亀男」早稲田大学教授、「鶴間和幸」学習院大学教授、「倉本一宏」駒沢女子大学教授、「坂詰秀一」元立正大学学長、「堀口義信」堺女子短期大学学長等の錚々たる名士が講師、パネラー等として参加していること、これらの各種シンポジウム、講演会を開催するに際しては、東京都立「東京芸術劇場」会議室に使用権利の登録をして毎月継続使用が認められていること、豊島区勤労福祉会館の毎月複数回継続使用が認められていること等から、「商標権者側の考える会」及びその事業を継承した「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」が社会的な認知を得ていることは明らかというべきである(乙第3号証ないし乙第13号証)。

6.しかるところ、「申立人の会」が「商標権者側の考える会」と同一の名称を名乗り、双方の会の活動が「文化財発掘出土情報」等に何度も掲載されたため、一般の方が「商標権者側の考える会」に入会しようとして誤って「申立人の会」に申込書や入会金を送付するといった不都合が生じたことから、「商標権者側の考える会」(特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会)は、やむなくその機関誌「東アジアの古代文化ニュース」に注意を喚起するための「類似会名の無断使用は違法行為です」等の警告を掲載したものである(乙第13号証の2、乙第13号証の4、乙第14号証)。

7.以上述べたように、「当初の『東アジアの古代文化を考える会』」の事業を継承した「商標権者側の考える会」が社会的な認知と活動の客観性、永続性及び発展性を図る見地から、特定非営利活動法人を設立して「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」となり、その名称の主要部である「東アジアの古代文化を考える会」の文字よりなる商標を出願し、登録を受けた上で、その名称を守り、一般の方に注意を喚起するための警告を機関誌に掲載することは、特定非営利活動法人として当然の義務であり、不当な圧力とはいい得ないものであり、これらの行為が社会公共の利益に反し、又は社会一般の道徳観念に反し、或いは公正な取引秩序を阻害するものであって、不正目的によるものとは到底いえないものであることからすれば、本件商標は商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものでないというべきものである。

第4 当審の判断

本件商標が商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものとの理由により、その登録を取り消すべきものとした先の取消理由(上記第2)は妥当であって、その認定の誤りを述べる商標権者の意見は、以下のとおり採用することができない。

1.「東アジアの古代文化を考える会」について

商標権者は、意見書において「・・・高齢の『江上波夫』氏が日常的に参加することはなかった。」と述べるところ(上記第3 1.))、この点をもって、取消理由(上記第2)で認定した「東アジアの古代文化を考える会」が1972年(昭和47年)12月17日に江上波夫、久野収、金達寿、鈴木武樹の名で日本の市民への呼びかけが行われ誕生したこと(甲第28号証)、及び申立人の会が「江上波夫」を中心に長年にわたり活動してきたとに関して何ら影響を及ぼすものとはいえない。

また、この点を除き、商標権者が意見書において述べるところの「当初の『東アジアの古代文化を考える会』」とする団体は「日本の古代文化を東アジア史全体の中に正しく位置付けて理解するとともに、古代文化研究の成果を専門家の手から一般市民に広く開放すること」を目的として、鈴木武樹氏を中心にして、後藤孝典等により1972年11月に発足したものであること、及び「騎馬民族説」で広く知られていた「江上波夫」に会長をお願いしたものであるとの経緯(乙第1号証)ほか、その運営、機関誌の発行、各種シンポジウム、講演会を開催し、古代遺跡巡り等の事業を行ってきたものであるとすること自体は、取消理由で述べたとおり「東アジアの古代文化を考える会」(申立人の会)の設立経緯(甲第28号証)等と同じくし、これを認め得るところ、先の取消理由(上記第2)の認定を左右するものでない。

2.「分派した考える会」について

商標権者の述べるところの(上記第3 2.)、1990年代に入った頃より、「東アジアの古代文化を考える会」の趣旨、活動・事業方針等を巡って幹事会内部での意見の相違があったこと、ないし、使用事務所の使用権を巡ってのトラブルが発生したことについては、取消理由(上記第2 2(1))で述べたところからも窺える。

しかしながら、一部の幹事が江上波夫を旗印として、「再建委員会」と称する会派を立ち上げて分派し、「東アジアの古代文化を考える会」の名称と同一名称を名乗り、「東アジアの古代文化を考える会」の発行する機関誌と同一名称の「東アジアの古代文化ニュース」を発行したものである。との点は俄に認め難く、むしろ、取消理由(上記第2の各項)で認定した如く、申立人の会は、騎馬民族征服王朝説で知られる「江上波夫」を中心に長年にわたり活動し、会員及び特別会員により組織され、定例総会を開催ているほか、「申立人の会」の下で機関紙「東アジアの古代文化ニュース」と題する月刊の会報の発行、後援会、研究会、シンポジウム、遺跡めぐり等の事業と分科会活動を継続して行っているものであり、現会長を奥野正男とするその団体「東アジアの古代文化を考える会」は、その会名をもって日本古代文化史の分野において、広く認識されるに至っていたものといえるものであって、商標権者の意見及びその提出に係る乙各号証をみても、「申立人の会」が分派した会とするとはいえないし、これを裏付ける確たる証左を見出すこともできない。また、商標権者(特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会)が「当初の『東アジアの古代文化を考える会』」の事業を承継したとすることもできないから、本件商標権者による本件商標の権利取得が正当な権限に基づくものとまでいえない。

3.「商標権者側の考える会」について

(1) 商標権者は、意見書(上記第3 3.)で「商標権者側の考える会」は、上記の分派行動に左右されることなく、設立当初から行ってきた機関誌の発行、各種シンポジウム、講演会の開催、古代遺跡巡り等の事業を継続してきたものである(乙第3号証の1ないし乙第3号証の7)。と述べているが、事務所の使用を巡るトラブルに対して理論的に反論していたとして、商標権者の提出に係る表題に「会長 江上波夫、編集 事務局長」の記載のある1993年(平成5年)8月1日発行の会報No.242(乙第2号証、申立人からも発行日と会報Noを同じくする「甲第41号証」が提出されている。なお、乙第2号証には「郵便振替口座・東京」とのみ記載されその口座番号「6−120942」の記載はない。)には、「東アジアの古代文化を考える会 規定」が掲載されており、これと申立人の会々則(甲第2号証)とは、「四、役員」の定めにおいて「名誉会長一名を総会の承認を得て、選出する事が出来る。」とする以外、その規定ないし会則自体を同じくするものであり、当然に「二、目的及事業」に「・・・分科会活動とを行う。」と定めているところである。

(2) ところで、「申立人の会」は、美術の会(会員名簿:甲第6号証)、文献の会(会員名簿:甲第7号証)、古代氏族・ことばの会(会員名簿:甲第8号証)、同人誌の会(会員名簿:甲第9号証)、シルクロードの会(会員名簿:甲第10号証)及びユーラシア研究会(会員名簿:甲第11号証)の分科会が存することを認めることができるのに対し、商標権者からは「商標権者側の考える会」に各分科会の存在を示すものの提出はない。

また、「申立人の会」の各会報(甲第4号証、甲第41号証、甲第42号証、甲第47号証等)にはその活動状況が報告されているのに対し、「商標権者側の考える会」の事業の継続を証するものとして提出の会報(乙第3号証の1ないし乙第3号証の7)には、各分科会の存在ないし具体的活動状況を把握させるに足りるものを見出すことができない。

加えて、会報(乙第3号証の1ないし乙第3号証の7)には、前出会報No.242(乙第2号証)の表題部にある「会長 江上波夫」の記載もなく、「商標権者側の考える会」における「江上波夫」の地位は不明である。

(3) そして、会報(乙第3号証の1ないし乙第3号証の7)からして「商標権者側の考える会」が機関誌の発行、各種シンポジウム、講演会の開催、古代遺跡巡り等の事業を「東アジアの古代文化を考える会」の会名の下における事業活動の状況は認め得るとしても、「江上波夫」を当初から同人が亡くなるまで会長ないし名誉会長とし、同人を中心に長年にわたり活動し、現会長を「奥野正男」とする「申立人の会」の古代文化史の分野におけるその会名「東アジアの古代文化を考える会」としての認識性は高く、「商標権者側の考える会」がこれを凌ぐ程の実情は見出せない。すなわち、取消理由(第2 1.(3))で認定したように「東アジア歴史国際シンポジウム実行委員会(委員長 江上波夫)、及び飛鳥民際交流記念事業実行委員会とするシンポジウムにおいて協賛していること」(甲第24号証)、「『東アジアの古代文化を考える会 創設30周年記念』『渋谷区制施行70周年記念』及び『國學院大學創設120周年記念』として催された『東アジアから見た日本古代国家の起源』と題するシンポジウムの主催をしたこと」(甲第25号証、甲第34号証)、「『江上波夫先生記念講演会』と題し、主催を東京大学東洋文化研究所(所長 田中明彦)とする講演会において後援していること」(甲第26号証)等ほか、新聞報道における「宮崎公立大教授(69歳)・・・『東アジアの古代文化を考える会』の会長に就任した。前任者は、・・・江上波夫氏だ。・・・」の記事(2001年3月16日付)、「・・・1999年(平成11年)に江上さんから『東アジアの古代文化を考える会』(東京)の会長を引き継いだ奥野正男・元宮崎公立大教授(71)・・・」の記事(2002年11月15日付)、「・・・また、歴史考古学研究の市民団体『東アジアの古代文化を考える会』の会長を長年務められてもいた。・・・」の記事(2002年11月15日付)、「・・・日本の市民の会で最も歴史のある『東アジアの古代文化を考える会』・・・東大名誉教授の江上波夫先生が会長で、・・・」の記事(1998年7月6日付)、「『東アジアの古代文化を考える会同人誌分科会』が同人誌『古代文化を考える』第30号特集として『江上波夫先生米寿記念論集』を刊行した。『東アジアの古代文化を考える会』は市民参加の歴史研究の団体で江上波夫氏が会長。同人誌分科会は会員が勉強の成果を発表する同人誌『古代文化を考える』を編集発行している。同人は約八十人。・・・」の記事(1994年12月15日付)等によりして裏付けられる。

(4) そうすると、「東アジアの古代文化を考える会」は、「江上波夫」を当初から同人が亡くなるまで会長ないし名誉会長とし、同人を中心に長年にわたり活動してきたものであって、現会長を「奥野正男」とする「申立人の会」は事業等を継続し、その会名をもって我が国の古代文化史分野において広く知られているとみるのが相当であるから、「申立人の会」が分派したものであるとし、「商標権者側の考える会」が正当な会派である如き述べる商標権者の意見はこれを認めることができず、「申立人の会」の事業活動等を混乱に陥れ、その事業活動に支障を来す虞のある本件商標の権利取得を是認することはできないといわざるを得ない。

4.「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」について

(1) 上記の2.及び3.で述べたとおり「商標権者側の考える会」が「申立人の会」を超えて、当初の「東アジアの古代文化を考える会」の事業を承継し、それを継続してきたとは認め難いものであるとしても、「商標権者側の考える会」から「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」に事業を承継し、機関誌の発行、各種シンポジウム、講演会の開催、国内外の遺跡巡り等の事業を継続していること、2002年4月時点の会員数も242名であるとの点は認められる(乙第12号証、乙第13号証の1ないし乙第13号証の6)。

しかしながら、当該「特定非営利活動法人」を設立し、法人として登記されたことにより(乙第4号証ないし乙第9号証)、既に「東アジアの古代文化を考える会」の会名をもって我が国の古代文化史分野において広く認識されるに至っていたものといえる「申立人の会」は、その下での機関紙「東アジアの古代文化ニュース」と題する月刊の会報の発行、後援会、研究会、シンポジウム、遺跡めぐり等の事業と分科会活動を継続して行えないとする事情が存するものといえず、かつ、その事業活動及び周知性は現在もなお継続している状況にあり、例えば、会員数をみても「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」の242名(乙第12号証)に対し、「申立人の会」は「東アジアの古代文化を考える会会員名簿(2003/3/31)」及び「東アジアの古代文化を考える会特別会員 50音順(2003/3/31)」(甲第3号証)に掲載の会員、並びに各分科会々員(甲第6号証ないし甲第11号証)において凌ぐものである。

(2) また、商標権者は、「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」が社会的な認知を受けている状況として、その事業と関連の深い「日本考古学協会」、「東北・関東前方後円墳研究会」等の考古学の団体とも密接な交流があり、「商標権者側の考える会」の開催する各種シンポジウム、講演会には、錚々たる名士が講師、パネラー等として参加していること、これらの各種シンポジウム、講演会を開催するに際しては、東京都立「東京芸術劇場」会議室に使用権利の登録をして毎月継続使用が認められていること、豊島区勤労福祉会館の毎月複数回継続使用が認められていること等から、「商標権者側の考える会」及びその事業を継承した「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」が社会的な認知を得ていることは明らかというべきである(乙第3号証ないし乙第13号証)、と述べている。

しかし、講師、パネラー等として参加している「大塚初重」、「東 潮」、「石野博真(博信)」、「白石太一郎」、「門脇禎二」、「山尾幸久」は、「申立人の会」の「東アジアの古代文化を考える会特別会員 50音順(2003/3/31)」(甲第3号証)に特別会員として掲載されているところであり、これら者を含めその参加している講師、パネラー等が各種シンポジウム、講演会の講義等をする以上に、「申立人の会」を無視することや、「商標権者側の考える会」及びその事業を継承した「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」の社会的な認知をすることを意識して参加しているともいえないし、「日本考古学協会」等の考古学の団体とも密接な交流とは如何なるものなのかは明らかでなく、及び東京都立「東京芸術劇場」及び豊島区勤労福祉会館の継続使用にあたって、その使用者の社会的な認知を要件とするようなものがあるともいい難い。

(3) そうすると、これら事情から「申立人の会」を超えて「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」が社会的な認知を得ているとはいい難いところであって、たとい、そうであるとしても、「申立人の会」の事業活動を阻害するような行為が許されるものでない。

5.結語

以上のとおり、商標権者の上記第2の取消理由の認定判断の誤りを述べる意見は、商標権者が「申立人の会」の事業活動の存在を認めた上で、自己都合による事情及び本件商標と特定非営利活動法人としての名称に関しての解釈を自己に有利なように述べたに止まるものというべきであって、商標法の目的に照らしみても社会的妥当性を欠くものであるから、その主張は採用できないものである。

そして、商標権者による本件商標の権利取得及び申立人の会がその名称を使用することに対し不当な圧力等は、「特定非営利活動法人東アジアの古代文化を考える会」の当然の義務であるといえるものでなく、このような商標権者の行為に基づいて登録された本件商標は、たとい、商標の構成自体がきょう激、卑わい、差別的な印象を与える文字等でないとしても、一般的社会通念に照らしてみた場合に、公正な商取引の秩序を混乱させ、ひいては社会公共の利益に反し、公の秩序を乱すおそれがあるものというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、その登録は商標法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。