Trademark Appeal Case
商標の普通名称と使用態様
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 判定2003−60030(T2003−60030/J6) |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | other |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第4336357号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第16類「トイレットペーパー」を指定商品として、平成11年3月2日登録出願、同11年11月19日に設定登録されたものである。
第2 イ号標章
被請求人が商品「トイレットペーパー」に使用する標章として請求人が示すイ号標章は、「トイレットロール」の文字を横書きしてなるものである。
第3 請求人の主張
請求人は、「商品『トイレットペーパー』に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する。」との判定を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、本件商標の登録証、イ号標章の図面(以下「イ号図面」という。)、イ号標章の見本(以下「イ号見本」という。)並びに甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
(1)イ号標章を使用した商品「トイレットペーパー」(イ号見本)は、平成15年4月3日に、徳島県内のスーパーマーケットで購入したものであり、製造者を西日本衛材株式会社とし、販売者を日本生活協同組合連合会とするものである。
(2)イ号図面に示す1ないし3の3箇所には、白色で縦3.4cm、横16cmの矩形内に「トイレットロール」の標章が表示されている。
イ号図面に示す4(開口部)に、緑色で縦1.5cm、横6cmの矩形内に「トイレットロール」の標章が表示されている。
イ号図面に示す5(裏面)に、緑色で縦1.5cm、横6cmの矩形内に「トイレットロール」の標章が表示されている。
(3)上記(2)のとおり、商品「トイレットペーパー」の包装用のビニール袋に表示されたイ号標章は、消費者に商品の出所の混同を生じさせる原因となるものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)イ号標章が普通名称であるとの被請求人の主張について
被請求人は、コンサイス英和辞典、小学館英和辞典に記載があることを根拠に、イ号標章は普通名称であると主張するが、甲第2号証(LEC弁理士試験論文アドバンステキスト)には、「新聞・書籍・辞書等に普通名称と記載されていることのみをもって、普通名称と認定することはできない。あくまで判断の一資料にすぎないからである。」との記載がある。
仮に一歩譲って、基本的には国語辞典に記載されたものを普通名称と呼ぶことに値すると解釈しても、国語辞典(旺文社)には、「トイレットロール」の記載はない。ちなみに、「トイレットペーパー」の意味は、「便所で使用する為に常置する巻き紙」と記載されている。
まして、英語・フランス語・ドイツ語等外国語の辞書に記載があることをもって、即普通語であるとするのは、短絡的である。
(2)イ号標章が普通に用いられる方法であるとの被請求人の主張について
甲第1号証(LEC弁理士試験論文アドバンステキスト)には、「商標法26条にいう『普通に用いられる方法』では現実の使用態様が『普通』であるか否かが問題とされる。すなわち、商品または役務に使用される商標の現実の使用態様が出所表示機能を生じさせないような態様での使用をいい、自他商品識別標識として使用している場合でないことをいう。」との記載がある。
よって、商標法26条の普通に用いられる方法の解釈として、新聞、雑誌、商品の説明、商品の内容記載欄に記載される文字が普通に用いられる方法である。
そして、通常、出所表示機能を生じさせる最大のポイントは、表示する文字の大きさを意味する。
その具体例をあげると、例えば、乙第2号証(富士商工会議所のホームページ)、乙第3号証の1ないし4(新聞記事の抜粋)のような表示を普通に用いられる方法という。
しかし,乙第1号証(イ号標章の使用状態を示す写真)の場合は、「トイレットロール」の文字の大きさが問題であり、明らかに商標を意味するものである。
例として、乙第4号証の1の「エルモア」、乙第4号証の2の「ネピア」、乙第4号証の4の「TILETROLL」の文字大きさ、すなわち、使用の様態として商標法26条第1項第2号でいう普通に用いる方法ではない。
3 むすび
被請求人は、商標法26条(商標権の効力が及ばない範囲)の普通名称と普通に用いられる方法という用語の法解釈を誤認したものである。
よって、商品「ロール状トイレットペーパー」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の侵害との判定を求める。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証(枝番を含む。)を提出した。
1 本件商標について
本件商標中の図形部分は、一対のローラーを表現したものと思われる細長い横長方形状の枠を上下(上の枠を以下「上段のローラー」といい、下の枠を以下「下段のローラー」という。)に、かつ、互いに平行に描くとともに、上段のローラーと連接してその右端にはクランク状の把手を描き、さらに、前記上段のローラーの上部には横幅が該ローラーよりやや幅狭で、高さが横幅の3/5程度とした紙を表現したものと思われる矩形状大枠を、下部には該矩形状大枠と相似形の矩形状小枠を下段のローラーを跨いで中央にそれぞれ描いた構成からなるものである。
また、文字部分は、前記矩形状大枠内にその上辺と下辺に沿って明朝体の片仮名文字の「トイレットロール」をそれぞれ離間して横書きしてなり、また、前記矩形状小枠内にその上辺と下辺に沿って前記文字より小さな明朝体の片仮名文字の「トイレットロール」をそれぞれ離間して横書きした構成のものである。
2 イ号標章の説明
イ号標章は、イ号図面及び請求の理由(2)に記載したとおりのものであり、具体的には、乙第1号証に示すように、商品「ロール状トイレットペーパー」を収納した平面視が正方形状のビニール製包装袋に表示したものであって、その3つの側面(1ないし3)に角ゴジック体の大きな片仮名文字「トイレットロール」を白色で、他の一側面(背面)の上部及び取っ手部の下方に位置する天面(4)に、前記3つの側面の文字より小さな角ゴジック体の片仮名文宇「トイレットロール」を緑色でそれぞれ横書きした構成のものである。
3 普通名称であることについて
(1)「トイレットロール」は、一般に「toilet roll」に通じる欧文字として認識されるものであるが、その語義は「(便所の)巻き紙,トイレットペーパーの1巻き,トイレットペーパーの巻き紙」(コンサイス英和辞典,小学館英和辞典等)である。そして、「トイレットロール」は、現在においては「ロール状のトイレットペーパー」を意味する文字として一般に理解され、また日常において広く使用されている文字である。
(2)我が国のトイレットペーパーの業界においても、その品質、形状・寸法などについては、本件商標の出願日である1999年3月2日以前から、日本工業規格JIS P4501‐1993年(平成5年3月1日改正)に規定されている(乙第2号証)。
乙第2号証は、静岡県の富士商工会議所が開設しているホームページ(MADE IN FUJI)の「メニュー」中、「トイレットペーパー」及び「トイレットペーパーの仕様」の頁であるが、この頁には、「トイレットペーパーは『ちり紙』『トイレットロール』と、大きく2つに分けられます」の記載がある。そして、一枚一枚分かれているのは「ちり紙」で、それ以外ののものは「トイレットロール」であり、下段に記載された「トイレットペーパーのJIS規格」の項には、上記「トイレットロール」、すなわち、「ロール状トイレットペーパー」に関する品質、形状・寸法等のJIS規格がそれぞれ示されている。
(3)トイレットペーパーの業界における実際の商取引においても、「トイレットロール」なる名称は、従来から「ロール状トイレットペーパー」の普通名称として使用されてきた事実があるし(乙第3号証の1ないし4)、現在各社から販売されている商品「ロール状トイレットペーパー」をみても、「トイレットロール」を普通名称として使用している事実がある(乙第4号証の1ないし4)など、列挙すれば限りがない。
(4)被請求人も、遅くとも1987年から「トイレットロール」を商品「ロール状トイレットペーパー」の普通名称として使用しており(乙第5号証)、1996年には「ロール状トイレットペーパー」の包装袋に直接「トイレットロール」の標章を使用する(乙第6号証の1)とともに、それ以来、乙第6号証の2ないし4に示す標章を付した商品を経て、現在のイ号標章を付した商品(乙第1号証)を継続して販売してきた事実がある。
4 商標法第26条第1項について
上記のように、イ号標章は、片仮名文字で「トイレットロール」と表示したものであり、その具体的な構成は、乙第1号証に示すように、各文字が全て角ゴシック体からなり、かつ、各文字が全て同じ大きさの文字、同一間隔で一連に横書きしてなるものである。すなわち、イ号標章は、商品「ロール状トイレットペーパー」の普通名称である「トイレットロール」を普通に用いられる方法で表示したにすぎないものである。
したがって、商品「ロール状トイレットペーパー」に、イ号標章「トイレットロール」を使用する行為は、商標法第26条第1項第2号の規定に該当し、同第1項柱書きの規定により、商標権の効力が及ばない範囲であり、本件商標の商標権の効力の範囲に属さないものであることは明らかである。
5 むすび
以上述べたように、被請求人が商品「ロ一ル状トイレットペーパー」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力が及ばない範囲のものである。
第5 当審の判断
1 本件商標は、別掲のとおり、文字と図形との組み合わせよりなるものであるところ、その構成中の文字部分は、上段に大きく横書きにした2つの「トイレットロール」の片仮名と下段にやや小さく横書きにした2つの「トイレットロール」の片仮名である。そして、本件商標は、その指定商品を「トイレットペーパー」とするものであることは、前記したとおりである。
2 イ号標章は、商品「トイレットペーパー」の包装用袋に、「トイレットロール」の片仮名文字を普通に用いられる方法で横書きしてなるものである。また、上記包装用袋には、イ号標章のほか、「リサイクルパルプ100%で、ソフトな肌ざわりのトイレットロールです。」、「12ロール」、「リサイクルパルプ100%の、環境に配慮したトイレットペーパーです。」などの記載がある(イ号図面及び乙第1号証)。
3 ところで、トイレットペーパーは、「トイレットで使用する紙」(「JIS工業用語大辞典」財団法人日本規格協会、2001年3月30日第5版第1刷発行)と認められ、「ちり紙」と「ちり紙を巻き取ったもの」とに大別される。
一方、「トイレットロール」の語は、「小学館ランダムハウス英和大辞典」(株式会社小学館、1999年1月10日第2版第7刷発行)によれば、「toilet roll トイレットペーパーのロール」を意味し、また、「新英和中辞典」(株式会社研究社、1983年(41刷)発行)によれば、「a toilet roll《1巻きの》トイレットペーパー」を意味するものであることが認められる。
また、トイレットペーパーを取り扱う業界において、「トイレットロール」の語は、乙第5号証、乙第6号証の1での使用例のほか、例えば、1988年5月25日付け読売新聞(東京夕刊、7頁)の「[ものモノ]ふき取り効果の高いトイレットロール」の見出し記事において、「トイレットロール(五十メートル)四百円」、1993年7月9日付け日本食糧新聞の「ニチイ、牛乳パック再利用のトイレットペーパーを7月10日から全店舗で発売」の見出し記事において、「『リサイクルクラブ芯無しトイレットロール』。通常商品の三倍の長さの一八〇mで、」、1998年8月28日付け朝日新聞(東京夕刊、3頁)の「トイレットペーパー 11円VS.105円(快楽のお値段)」の見出し記事において、「『モイスチャートイレットロール』は、厳選された百%パルプが原料。・・二枚重ね三十メートル巻き四個で四百二十円。」、また、1999年6月17日付け日刊工業新聞(27頁)の「ヤマト運輸、牛乳パック100%使用のトイレットペーパーを発売。」の見出し記事において、「97年4月に古紙再生トイレットロール(シングルロール140メートル巻き、ダブルロール70メートル巻き、ともに6本入り)」などのように使用され、さらに、「東京製紙原料協同組合」のインターネット上のホームページの「組合の歴史」の項(http://www.kosi-tokyo.or.jp/paper/rekisi.html)には、「昭和49年(1974)/政府、トイレットロールとちり紙の標準価格設定」との記載が認められる。
そうすると、「トイレットロール」の語は、本件商標の登録査定時には既に、「ロール状(巻き取り)のトイレットペーパー」の意味をもって、商品「トイレットペーパー」の形状、品質等を表示するものとして、一般の消費者に広く理解されていたとみるのが相当である。
4 以上によれば、商品「トイレットペーパー」について使用される本件商標中の「トイレットロール」の文字部分及びイ号標章は、その需要者をして、「ロール状(巻き取り)のトイレットペーパー」の意味をもって、商品の形状、品質等を表示するものと認識させるものであるから、該文字が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものと認めることはできない。
したがって、イ号標章が本件商標中の「トイレットロール」の文字部分と同一の文字よりなるものであるとしても、商品「トイレットペーパー」の需要者は、殊更、本件商標中の「トイレットロール」ないしイ号標章のみを抽出して、商品の取引に当たるものとは考えにくいところであるから、本件商標を使用した「トイレットペーパー」とイ号標章を使用した「トイレットペーパー」とがその出所について混同を生じさせるとする請求人の主張は、採用することができない。
5 以上のとおり、イ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものと認める。
よって、結論のとおり判定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。