結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2002−35121(T2002−35121/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第3370862号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示したとおり、「Valentino」と「Coupeau」の文字を二段に横書きしてなり、平成6年4月20日登録出願、第25類「洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着、水泳帽、和服、エプロン、えり巻き、靴下、ゲートル、毛皮製ストール、ショール、スカーフ、足袋、足袋カバー、手袋、布製幼児用おしめ、ネクタイ、ネッカチーフ、マフラー、耳覆い、ずきん、ナイトキャップ、ヘルメット、帽子、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、靴類、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」を指定商品として、平成10年12月4日に設定登録されたものである。
請求人は、以下の6件の登録商標を引用しており、いずれも現に有効に存続している。
(a)別掲(2)に示すとおりの構成よりなり、昭和43年6月5日登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和45年4月8日に設定登録された登録第852071号商標(以下「引用A商標」という。)
(b)別掲(3)に示すとおりの構成よりなり、昭和49年10月1日登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和55年4月30日に設定登録された登録第1415314号商標(以下「引用B商標」という。)
(c)別掲(4)に示すとおりの構成よりなり、昭和45年4月16日(パリ条約第4条による優先権主張 1969年10月16日 オランダ王国)登録出願、第21類「宝玉、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和47年7月20日に設定登録された登録第972813号商標(以下「引用C商標」という。)(なお、当該指定商品中の「かばん類、袋物」については、商標登録の一部放棄を原因とする一部抹消登録が平成2年6月25日になされている。)
(d)別掲(3)に示すとおりの構成よりなり、昭和49年10月1日登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、昭和60年7月29日に設定登録された登録第1793465号商標(以下「引用D商標」という。)
(e)別掲(3)に示すとおりの構成よりなり、昭和49年10月1日登録出願、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、昭和60年6月25日に設定登録された登録第1786820号商標(以下「引用E商標」という。)
(f)別掲(3)に示すとおりの構成よりなり、昭和49年10月1日登録出願、第27類「たばこ、喫煙用具、マッチ」を指定商品として、昭和54年12月27日に設定登録された登録第1402916号商標(以下「引用F商標」という。)
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第71号証(枝番号を含む。)並びに参考資料1ないし7を提出した。
本件商標は商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。
(1)商標法第4条第1項第8号違反について
請求人は、イタリアの服飾デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)氏の同意を得て、同氏のデザインに係る各種の商品を製作、販売しており、「VALENTINO GARAVANI」或いは「VALENTINO」の欧文字からなるそれぞれの商標を上記の各種商品について使用している者であるが、上記の「VALENTINO GARAVANI」氏の氏名は単に「ヴァレンティノ」(VALENTINO)と略称されており、この略称も本件商標の登録出願の日前より著名なものとなっているところである。
「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)は、1967年にデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞して以来、イタリアファッションの第1人者としての地位を確立、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーとして知られるに至り、その顧客にはレオーネ・イタリア大統領夫人、グレース・モナコ王妃、エリザベス・テーラー、オードリー・ヘップバーンなどの著名人も多い。
そして、ヴァレンティノ・ガラヴァーニは世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された当時には、既に我が国においても著名であった。
同氏の名前は「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されていたことは、甲第7号証の1ないし32及び第8号証、甲第9及び第10号証(審決謄本写し)をはじめとして、甲第13号証の2、甲第15号証の2及び3、甲第16号証の2、甲第22号証の2、甲第25号証の3、甲第30号証の2及び3、甲第30号証の5、甲第48号証(報知新聞)によっても明らかである。
しかるところ、本件商標は、その構成が甲第1号証の1に示すとおりのものであって、大きく二段に横書きされた「Valentino」「Coupeau」の文字の上段部分である「Valentino」の文字が「ヴァレンティノ」と称呼されるものであることは明らかであるから、本件商標は「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)氏の氏名の著名な略称を含む商標であり、その者(他人)の承諾を得ずに登録出願されたことは明らかである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号の規定に違反してされたものである。
(2)商標法第4条第1項第11号違反について
本件商標と引用商標とを比較検討するに、本件商標は、その構成が甲第1号証の1に示すとおりのものであって、「Valentino Coupeau」の欧文字は、一つの語としてはまとまりがなく、その全体を称呼するときは「ヴァレンティノクーポー」の9音にも及ぶ冗長なものとなるばかりでなく、「Valentino」の文字と「Coupeau」の文字とが上下二段に表示されていることもあって、「ヴァレンティノ」と「クーポー」とがそれぞれ段落をもって称呼されるものであり、しかも上記のデザイナー「VALENTINO GARAVANI」氏の氏名が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称されて著名なものとなっていることとも相俟って、これに接する取引者、需要者に親しまれている「Valentino」の文字に相当する「ヴァレンティノ」の称呼をもって、取引にあたる場合も決して少なくないとみるのが簡易迅速を尊ぶ取引の経験則に照らして極めて自然である。したがって、本件商標は「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものといわざるを得ない。
一方、引用商標は、引用A商標ないし引用E商標がいずれもその指定商品に使用された結果、全世界に著名なものとなっていることは甲第9及び第10号証(審決謄本写し)をはじめとして、甲第62号証までの書証によっても明らかなところであって、引用A商標及び引用C商標は、いずれも「VALENTINO」の文字よりなるものであり、その構成上「ヴァレンティノ」の称呼を生ずるものであることは明らかである。また、引用B商標、引用D商標及び引用E商標は、「VALENTINO GARAVANI」の文字を書してなるものであるところ、その全体を称呼するときは「ヴァレンティノガラヴァーニ」の称呼を生ずるが、この称呼は冗長なものであるので、上記デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)氏の氏名が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称されて著名なものとなっていることとも相挨って、その構成文字中、前半の「VALENTINO」の文字に相応する「ヴァレンティノ」の称呼をもって取引に資されている場合も決して少なくないのが実情である。すなわち、引用B商標、引用D商標及び引用E商標は、いずれも「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものであるといわざるを得ない。
してみると、本件商標は引用A商標ないし引用E商標と「ヴァレンティノ」の称呼を共通にする類似の商標であり、また、本件商標の指定商品は各引用商標のそれと抵触すること明らかであるから、結局、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反してされたものである。
(3)商標法第4条第1項第15号違反について
請求人は、上記の各引用商標の指定商品以外の商品についても、多数の登録商標を使用しているところであって、これらのうち登録第1402916号商標(引用F商標)は甲第6号証に示すとおり「VALENTINO GARAVANI」の文字を横書きしてなり、第27類「たばこ、喫煙用具、マッチ」を指定商品とするものである。
しかして、請求人提出の甲第9及び第10号証(審決謄本写し)ないし甲第62号証によって、引用B商標ないし引用F商標は、婦人服、紳士服、ネクタイ等の被服、バンド、バッグ類、靴、ライター等に使用されていること、各引用商標が本件商標の登録出願の日前より全世界に著名なものとなっていることは明らかである。
そして、本件商標と引用B商標、引用D商標及び引用E商標がその称呼を共通にする類似する商標であることは上述のとおりであるから、同様の理由により、本件商標と引用F商標とは、類似する商標である。また、本件商標の指定商品と各引用商標が使用されている上記の商品はいずれも服飾品の範疇に属する密接な関係にある商品、いわゆるファッション関連の商品である。したがって、本件商標は、これを商標権者がその指定商品に使用した場合、その商品が恰も請求人の製造・販売等の業務に係る商品であるか又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係にある者、すなわち姉妹会社等の関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ぜしめるおそれがあるものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反してされたものである。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第20号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)審判請求の利益について
本件審判請求を提起するにあたって、請求人に審判請求の利益があることを明確にした主張立証がない。これが明らかにされない以上は本件審判請求をする利益がない。
(2)商標法第4条第1項第8号違反について、
請求人は、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)氏は著名なデザイナーであって同氏の顧客の中には、レオーネ・イタリア大統領夫人、グレース・モナコ王妃、エリザベス・テーラー、オードリー・ヘツプバーンなどの著名人も多いとしている。
しかし、これら著名人を指すにしても、レオーネ・イタリア大統領夫人、グレース・モナコ王妃、エリザベス・テーラー、オードリー・ヘップバーンと表示し、或いは指称するから、これら著名人を指すことがわかるが、これを単にレオーネ、グレース、エリザベス、オードリーと表示し、或いは指称したときは、レオーネ、グレース、エリザベスという人はたくさんいるので、直ちにこれらの著名人を指したことにはならない。すなわち前記著名人のレオーネ、グレース、エリザベス、オードリーの表示、名称がレオーネ・イタリア大統領夫人、グレース・モナコ王妃、エリザベス・テーラー、オードリー・ヘップバーンの著名人の著名な略称ということはできない。
それと同じように、「VALENTINO」の表示を以て直ちに著名人の「VALENTINO GARAVANI」の著名な略称ということはできない。
この「VALENTINO」の名称がイタリアの男子の名称としてよく使われる名称であることは乙第1号証に示す辞典に記載されている。
また、「VALENTINO」の表示が直ちにヴァレンティノ・ガラヴァーニ氏の著名な略称とはいえないとの判断を示した甲第2ないし第4号証に示す審決、異議決定がある。
したがって、「ヴァレンティノ」の称呼並びに表示を含む商標は、直ちに、イタリアの著名なデザイナーであるヴァレンティノ・ガラバーニ氏を指すとはいえない。
さらに、「VALENTINO」の綴りが直ちに「VALENTINO GARAVANI」の略称といえないことは後記(3)(オ)で詳説する。
よって、本件商標の登録には、ヴァレンティノ・ガラバーニ氏の承諾が必要であり、この承諾を得ないで登録された本件商標は無効であるとの主張は失当である。
(3)商標法第4条第1項第11号違反について
(ア)本件商標の「Valentino Coupeau」と引用商標の「VALENTINO GARAVANI」の表示を以て、この表示、並びに、これを読み取る称呼は冗長なものであるとする請求人の主張は否認する。
例えば、人物の氏名を表す表示、呼び名が馴染みのない名称であるときは、その名称の表示、或いは、称呼を表す綴りの文字が多いときにはこれを覚えたり読み取るときなど冗長に感ずることがある。
その一例を示すと、歴史上有名な文豪の氏名であるへミングウエイや、小泉八雲の原名であるラフカディオ・ハーンの氏名は、我々が学習上始めて接するとき、冗長に感じて、これらの氏名を覚えるのに苦労する。しかし、学習の必要上反覆して接して覚えてしまったときは、これを知っていることが学生の常識となり、受験生などはその氏名を冗長と感じずにすらすらと書いたり、読んだりすることができるようになる。
また、映画に趣味をもつ者は、オードリー・ヘップバーン、カトリーヌ・ド・ヌーブ、イングリット・バーグマン、ジャン・ポール・ベルモントの映画スターの氏名は冗長ではあるが、これを覚えるのに苦労しない。しかし、映画に趣味を持たない者は前記氏名が冗長であるので覚えるのに苦労する。
すなわち、その氏名を冗長に感ずるかどうかはその氏名に馴染んだかどうかによるものである。
そうすると、ヴァレンティノ・ガラバーニの氏名が著名であるなら、この表示、称呼は取引者、需要者に親しまれているということであり、取引者、需要者は、「VALENTINO GARAVANI」の表示を以て無理なく「ヴァレンティノ・ガラバーニ」と読み取ったり、称呼することは普通に行われることである。そうすると、取引者、需要者はこれを以て冗長とは感じないようになるというべきである。
本件商標も、後記(オ)に記載した商標に倣って、「ヴァレンティノ」と略称されることなく「ヴァレンティノクーポ」と呼び、これが冗長であるという感じを持ったり、或いは持たれたりせず使われている。
(イ)請求人が、本件商標の構成について、本件商標は「Valentino」と「Coupeau」と二段に横書きされた構成からなっているとする主張は否認する。
本件商標の構成は、「Valentino」と「Coupeau」を単純に二段に配した構成ではない。本件商標の「Valentino」と「Coupeau」 の綴りは、まず、同じような書体で綴られていて、その綴りの大きさも同じような字配りで表示され、さらに、その配列は、「Valentino」と「Coupeau」の綴りを単純に上下二段に配列した構成としたものではなく、「Valentino」の綴りの下に、「Coupeau」の綴りの書き出しがやや右寄りからずれて始まって、その書き終わりがやや右寄りにずれて終わるように配列されてデザイン化されている。
すなわち、本件商標は、「Valentino」と「Coupeau」とは、「ValentinoCoupeau」と一連に表示する構成ではないが、「Valentino」と「Coupeau」が各別の綴りとして二段に配列された構成でなく、「Coupeau」の文字も「Valentino」の文字とが一体となって目立つように連続して一連化されて認識されるような工夫を凝らした字配りで構成されており、「Valentino」と「Coupeau」のいずれか、どちらかが目立つような配列の仕方には構成されていない。
したがって、本件商標に取引者、需要者が接したときは、極く自然に「ヴァレンティノクーポ」と称呼するよう読み取り、本件商標の「Valentino」の文字(綴り)を「Coupeau」の文字(綴り)と切り離して「Valentino」の文字(綴り)に注目するような構成とはなっていない。
以上、観察したところから明らかなように、本件商標と引用商標とはまず、外観を異にするだけでなく、称呼を異にし、さらに、同一人物を指すものでないところから観念を異にするものである。
(ウ)適法に登録処分を受けた本件商標について、その登録後、被請求人は本件商標の普及に積極的な営業活動を開始することに着手している。そうすると、本件商標が取引者、需要者に知られることによって取引者、需要者に馴染まれ、本件商標の表示が冗長であるとか、称呼が冗長であるとかという感じはなくなるのは当然である。
(エ)請求人は、本件商標の「Valentino Coupeau」を構成する文字の中、本件商標の「Valentino」の文字の称呼が、引用商標の「VALENTINO GARAVANI」の表示中の「VALENTINO」の文字の称呼と共通にすることを以て、両商標は同一性があるとしているが、これは誤りである。
そればかりでなく、引用商標も本件商標も冗長であるところから「VALENTINO」と略称されることがあり、この称呼を共通にする本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反するというものである。しかし、この考え方は誤りである。
(オ)「VALENTINO GARAVANI」の商標中の「VALENTINO」の表示が直ちに著名なヴァレンティノ・ガラバーニ氏を指す略称であるとか、「VALENTINO」の表示を使用した本件商標が直ちに引用商標と類似するという請求人の主張は否認する。
イタリアでは「VALENTINO」の綴りは男子の氏名によく使われている(乙第1ないし第4号証)。また、「VALENTINO」の綴りを用いた氏名を名乗る著名なイタリアのデザイナーに「VINCENZO VALENTINO/ビンチェンツォ・ヴァレンティノ」、「MARIO VALENTINO/マリオ・ヴァレンティノ」、「GIOVANNI VALENTINO/ジョバンニ・ヴァレンティノ」、「GIANNI VALENTINO/ジャンニ・ヴァレンティノ」等がいる。
そして、これらデザイナーの氏名はそれぞれ商標として登録されている(乙第5ないし第8号証)。
上記商標なり、ブランド名を指称するとき、それぞれが冗長であるからといって、「ビンチェンツォ」と言ったり、「マリオ」、或いは、「ジョバンニ」、「ジャンニ」と略称したりはしない。また、上記商標を「ヴァレンティノ」とも略称しないし、単に「ヴァレンティノ」と言ったときは、取引上上記商標を指さない。
これらのデザイナーの氏名を表す「VALENTINO」の表示を用いた上記商標なりブランドが、取引者、需要者によって引用商標なりヴァレンティノ・ガラバーニ氏のブランドと取り違えられることはない。現に、上記商標なりブランドは「VALENTINO GARAVANI」の引用商標なりブランドと区別されて通用している。
それだけでなく、請求人が著名商標「VALENTINO GARAVANI」の著名な略称であるとする「VALENTINO」の文字を用いたもので著名として取り扱われている商標、ブランドは、引用商標の他にいくらでも使用されている。
すなわち、「VALENTINO GARAVANI」の略称であるとする「VALENTINO」の綴りを使用した著名商標がある(乙第9ないし第12号証)。その使用の態様も自らの使用ではなく使用権を設定して使用されているものもある(乙第13号証)。そして、これらは、取引上「ヴァレンティノ」とは略称しない。また、単に「ヴァレンティノ」と言ったときは、取引上これらを指さない。
請求人の理屈からいえば、これら乙第5ないし第12号証に示す著名として扱われている商標も無効となるということになる。
しかし、これらの登録商標に対して請求人が主張する前記理屈が通らないことは明らかである。そうすると、本件商標も請求人の主張する理由によっては無効となることはない。
(カ)これらの商標は、取引者、需要者に外観、称呼、観念がそれぞれ異なると認識され、その認識の下にそれぞれが親しまれているのであり、冗長な商標として取り扱われてはいない。また、略称を以てしては取り扱われていない。本件商標も略称を以て取り扱われていない。
よって、請求人の主張は失当である。
(4)商標法第4条第1項第15号違反について
請求人の主張の要旨は、本件商標は、引用商標と類似するということである。
ところが、本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれも相違することは既に(3)(イ)で説明したとおりである。
また、「VALENTINO」の文字を商標中の構成に取り入れている多数の商標が引用商標とは類似しないとして有効に登録されている点からしても本件商標を以て引用商標に類似するというのは誤りである。
そうすると、本件商標を以て、直ちに商標法第4条第1項第15号に該当するということはできない。
(1)審判請求の利益について
被請求人は、請求人には本件審判請求をする利益がない旨主張する。
しかし、本件審判請求書の請求の理由によれば、請求人は、本件商標の登録が存在することにより、自己の取扱いに係る商品と本件商標を使用した商品との間に、出所の誤認混同を生じさせるおそれがある、又は、請求人と強い関連性を有する「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏の人格権が害されると主張しているのであるから、本件商標の存在により、直接不利益を被る者ということができる。したがって、請求人は、本件商標の登録無効の審判を請求することについて法律上の利益を有するものというべきである。
(2)本件商標の無効理由の当否について
次に、本案に入って、請求人が主張する本件商標の無効理由の当否について判断する。
(ア)請求人商標の著名性
請求人は、自己の商標の周知・著名性を理由に、本件商標の商標法第4条第1項第15号該当違反を述べているので、先ず、この点について判断する。
請求人提出の甲第7及び第13ないし第71号証(枝番号を含む。)によれば、次の事実が認められる。
(a)「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)は1932年(昭和7年)イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後、フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年(昭和34年)ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年(昭和42年)にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来、同氏は、イタリア・ファッションの第一人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで、国際的なトップデザイナーとして知られるに至っていること。
(b)我が国において、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の名前は、前記「ファッションオスカー」受賞以来知られるようになり、その作品は「Vogue(ヴォーグ)」誌などにより継続的に日本国内にも紹介されていたこと。昭和49年には三井物産株式会社の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として「株式会社ヴァレンティノ ヴティック ジャパン」が設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品は我が国のファッション雑誌や業界紙、一般新聞にも数多く掲載されるに至り、同氏は我が国において著名なデザイナーとして一層注目されるに至ったこと。また、請求人主張の全趣旨よりして、請求人会社は前記デザイナーのデザインに係る各種製品の製作・販売に携わる者であること。
(c)同氏の名前は、「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」とフルネームで表示される一方、同時に書籍、雑誌、新聞等の記事や見出し中には、単に「ヴァレンティノ」「バレンチノ」「VALENTINO」等(以下「略記標章」という。)と略称又は略記されてとりあげられており、この点は、例えば、甲第7号証(「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」に関するいずれも昭和51年発行の各種ファッション関連雑誌・同新聞広告のスクラップ記事)、甲第13号証(講談社「世界の一流品大図鑑」1981年版)、甲第15号証(同「世界の一流品大図鑑」1985年版)、甲第16号証(同「男の一流品大図鑑」1985年版)、甲第22号証(アシェット婦人画報社「25ans,ヴァンサンカン」1987年10月号)、甲第30号証(世界文化社「ミス家庭画報」1990年5月号)、甲第33号証(同「ミス家庭画報」1994年6月号)、甲第48号証(1991年7月29日付「報知新聞」の取材記事)、甲第55号証(アシェット婦人画報社「エル・ジャポン」1997年8月号)、甲第56号証(ビクターブックス「ドンナジャポーネ」1998年4月号)、甲第63号証(同文書院「服飾辞典」1988年発行)、甲第65号証(岩波書店「岩波=ケンブリッジ世界人名辞典」1997年発行)、甲第66号証(講談社「ライフカタログVOL.1 世界の一流品大図鑑」1976年発行)、甲第67号証(同「EUROPE 一流ブランドの本」1977年発行)、甲第68号証(集英社「non−no」通巻NO.426 1989年発行)、甲第71号証(1982年11月20日付朝日新聞(夕刊)の取材記事)等の記載に照らし、その状況を十分窺うことができる。そして、ファッションに関して、「VALENTINO」「ヴァレンティノ」といえば、容易に前記デザイナーを指し又はそのデザイナーブランドないしはその作品群を想起し得る状況が窺われること。
以上の各点よりすると、「VALENTINO GARAVANI」「valentino garavani」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)の文字よりなる標章又は「VALENTINO」「Valentino」(バレンチノ又はヴァレンティノ)の略記標章(以下、これら標章又は前記2において引用した登録商標を一括して、「請求人商標」ともいう。)は、VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏がデザインした婦人服、アクセサリー、バッグ、靴等のファッション関連商品におけるデザイナーブランドとして、少なくとも本件商標の登録出願時である1994年(平成6年)4月20日前においてすでに我が国の取引者、需要者間に広く認識せられていたものであり、また、その状況は本件商標の登録査定時である1998年(平成10年)9月10日を含む現在に至るまでの間も引き続き同様とみて差し支えないものである。
(イ)本件商標の構成並びに指定商品について
本件商標は、その構成別掲(1)に示すとおり、「Valentino Coupeau」の欧文字を上下二段に横書きしてなるものであって、視覚上、自ずと上段の「Valentino」と下段の「Coupeau」とに分離して看取し得るものであり、かつ、全体をもって特定の意味合いの熟語的文字として把握し得るような事情はなく、また、その証拠も見出せないので、視覚上又は意味上においてこれらを常に一体不可分のものとして把握しなければならない特段の理由は存しないから、該構成は、「Valentino」と「Coupeau」の文字(語)を結合してなるものと容易に認識し把握されるとみるのが相当である。
そして、本件商標に係る指定商品は、上記したとおりのものであって、前記請求人の取扱いに係る商品「婦人服、その他の衣料品、かばん類、靴」等とは、同一若しくは類似し、又はそうでなくともその用途、需要者層を共通にする場合が多く、共にファッション性があって、素材や色柄、デザイン等が重視される点でその性格を共通にするものである。
(ウ)出所混同のおそれについて
以上の(ア)(イ)を総合すれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する需要者は、前記各事情よりして、その構成上段にあって、請求人商標又は略記標章と綴り字を同じくする「Valentino」の文字部分に着目し、容易に請求人商標を連想・想起するとともに、これをデザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)又は請求人会社に係る一連のデザイナーブランド又はその兄弟ブランドないしはファミリーブランドであるかの如く誤認し、或いはこれら者と事業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといわなければならない。
してみれば、本件商標は、他人の業務に係る商品とその出所について混同を生ずるものというべきであるから、その登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものといわざるを得ない。
(エ)被請求人の主張について
(a)被請求人は、本件商標の構成は「Valentino」と「Coupeau」の両文字を単純に二段に配した構成ではない。両文字は一連化されて認識されるような工夫を凝らした字配りで構成されており、いずれか一方が目立つような配列の仕方には構成されていない等と述べ、本件商標についてその構成上の一体性を主張するが、本件商標の構成は別掲(1)のとおりであって、上段の「Valentino」に比べ下段の「Coupeau」の書き出し位置が3字ほど右にずれている点を捉えれば確かに単純に二段に配したものとはいえないとしても、一方で、そのような表示態様であるからこそ視覚上「Valentino」と「Coupeau」の二つの要素からなるものと容易に理解、認識されるものともいえる。そして、本件商標は、この視覚上はもとより、意味上においても常に一体のものとしてのみ把握されるとは限らないこと前記認定のとおりである。したがって、被請求人の前記主張は採用の限りではない。
(b)被請求人は、イタリアでは「VALENTINO」の綴りは男子の名前によく使われていること、「VALENTINO」の綴りを用いた氏名を名乗る著名なイタリアのデザイナーに「VINCENZO VALENTINO/ビンチェンツォ・ヴァレンティノ」、「MARIO VALENTINO/マリオ・ヴァレンティノ」、「GIOVANNI VALENTINO/ジョバンニ・ヴァレンティノ」、「GIANNI VALENTINO/ジャンニ・ヴァレンティノ」等がいること、その他「VALENTINO」の文字を用いたもので著名として取り扱われている商標、ブランドは、引用商標だけに限られないこと等を述べ、それらが引用商標と区別されて通用しているとし、本件商標もこれと同様引用商標と類似しない旨主張している。しかし、「VALENTINO」がイタリアでありふれた名前であっても我が国においてありふれた名前であるとは認められないし、「VALENTINO」の文字を含む請求人商標は、それがイタリアでの一般的なありふれた名前であるかどうかに関係なく、前記認定のとおり、我が国においてファッション関連商品に使用された結果、取引者、需要者に広く認識されている商標といえるものである。また、「VALENTINO」の文字を含む商標等が他に存在するとしても、それらの商標等と本件商標とは、その構成が相違し、事案を異にするものであって、それらが請求人商標との関係で混同を惹起させるものかどうかは、個別・具体的に決せられるものであって、本件事案とは直接関係がないから、それら商標等の存在をもって本件における混同可能性を否定する根拠とするのは適切でなく、前記認定を左右するものではない。さらに、それらの商標等が請求人商標と明確に区別されていると認めるに足りる証拠はなく、むしろ、前記認定のとおり、請求人商標と何らかの関連性のあるものと誤解している可能性も否定できないというべきである。
したがって、これらの点について述べる被請求人の主張は、前記判断を左右するに足りない。
(c)被請求人は、本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれも相違する非類似の商標であるとし、それを根拠に、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するということはできない旨述べているが、もとより、前記認定・判断が商標の類似に基づくものでないことはその判断の過程よりして明らかであり、また、同号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」であるか否かの判断に当たっては、商標自体とそのほか諸般の事情、すなわち、当該他人の商標の著名度、当該商品分野における需要者一般の注意力の程度及び当該商品相互の関係等を併せ考慮の上、取引の実情に照らし総合判断することが至当と解される。そして、本件にあっては、前記認定を相当とするから、この点について述べる被請求人の主張は妥当でなく、採用の限りでない。
(d)このほか述べる被請求人の主張及びその提出に係る乙号証をもってしては、前記認定を覆すことはできない。
(3)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、請求人のその余の無効事由について論及するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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