Trademark Appeal Case
著名氏名「Valentino」との混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2001−12269(T2001−12269/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1.本願商標
本願商標は、別掲に示すとおり、「BV」「Bianca Valentino」の欧文字を表してなり、平成12年8月23日登録出願、第21類「ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類(貴金属製のものを除く。),アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,魚ぐし,携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,家事用手袋,化粧用具,デンタルフロス,ブラシ用豚毛,洋服ブラシ,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,ガラス製又は陶磁製の包装用容器,アイロン台,霧吹き,こて台,へら台,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,犬のおしゃぶり,小鳥かご,小鳥用水盤,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ,紙タオル取り出し用金属製箱,靴脱ぎ器,せっけん用ディスペンサー,寝室用簡易便器,トイレットペーパーホルダー,貯金箱(金属製のものを除く。),湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴,香炉,コッフェル」を指定商品とするものである。
第2.原査定における拒絶の理由及び当審においてした証拠調べ
1 原査定は、商標法第4条第1項第15号該当を理由に本願を拒絶したものである。
2 当審において、職権により証拠調べ(平成13年12月21日付証拠調べ通知書)を行ったところ、次の事実が認められる。
(1)「世界の一流品大図鑑ライフカタログVOL.1」(昭和51年6月5日株式会社講談社発行)において、「ヴァレンティノ・ガラバーニ」が、「イタリアファッション界の旗手と呼ばれ、女性を最高に美しく見せるデザイナーとして高く評価されている。」こと、及びその経歴等を紹介する内容とともに「ブラウス、セーター、ネクタイ」の商品の写真が掲載されていること。
(2)「EUROPE一流ブランドの本(講談社MOOK第2巻)」(昭和52年12月1日株式会社講談社発行)において、「ヴァレンティノ ガラバーニ」の所有する店舗の紹介と簡単な経歴が「婦人服」の商品と共に掲載されていること。
(3)「服飾辞典」(昭和54年3月5日第1刷文化出版局発行)の、ヴァレンチィーノ ガラヴァーニ[Valentino Garabani、1932〜]の項に、「イタリア北部の都市(ヴォゲラ)に生まれる。17才でリセオ(中学)を中退、パリに行く。スチリストになるため、パリのサンジカ(パリ高級衣装店組合の学校)で技術を身につける。1951年、ジャン・デッセ(オート・クチュール)のもとで5年間アシスタントとして仕事をする。その後2年間、ギ・ラローシュのアシスタントをし、1958年独立、ヴァレンティーノ・クチュールの名でローマに店を開いた。このころ、イタリアのモードは世外的に有名になりつつあった。彼の最初の仕事は、フィレンツェのピッティ宮殿でのコレクションである。このコレクンョンは、〈白だけの服〉という珍しい演出であったが、その美しさはジャーナリストの間で評判となり、「ニューズ・ウィーク」「ライフ」「タイム」「ウィメンズ・ウェア・デイリー」各誌紙で取材、モードのオスカー賞を獲得した。1967年、ヴァレンティーノの名は世界に知れわたった。1972年には紳士物も始め、その他アクセサリー、バッグ、宝石類、香水、化粧品、家具、布地、インテリアと、その仕事の幅はたいへん広いが、すべてヴァレンティーノ独特のセンスを保っているのはみごとである。ヴァレンティーノの洋服に対する考えは、まず個性が第一で、彼のコレクションからは、デテールでなくそのエスプリをくみ取ってもらうことに重きをおく。ローマの高級住宅地、アッピア・アンティカに母親とたくさんの犬と暮らしている。仕事でパリとローマを行き来するが、世界中を旅行するなど忙しい日々である。物をつくる人は誰でも波があって、いつも傑作が続くとはかぎらないが、ヴァレンティーノは現在、ローマのオート・クチュール界で最も好調なデザイナーといえる。以前から東洋風なエキゾティシズムが好きで、時によってトルコ風、アラブ風の特色がみられるが、最近はキモノのセクシーさを1950年代のハリウッドの雰囲気に表現、あやしく美しいヴァレンティーノの世界をつくり出している。」との紹介記事が掲載されていること。
(4)「朝日新聞」(昭和57年11月20日夕刊第3頁)において、世界の服をリードする3人のうちの1人として「バレンチノ」の紹介記事が掲載されていること。
(5)「男の一流品大図鑑’85年版」(昭和59年12月1日株式会社講談社発行)において、「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」の文字とともに、「スーツ、ブルゾン、シャツ、ネクタイ、ベルト及びバッグ」の商品が掲載されていること。
(6)雑誌「non−no」1989年 No.23号(平成元年12月5日株式会社集英社発行)及び「marie claire」(1996年2月1日中央公論社発行)において、「ヴァレンティノ ガラバーニ」が単に「ヴァレンティノ」と略称され、商品「婦人服」等と共に掲載されていること。
(7)「英和商品名辞典」(1990年株式会社研究社発行)[Valentino Garavani]の項において、「イタリア RomaのデザイナーValentino Garavani(1932?)のデザインした婦人・紳士物の衣料品・毛皮・革製バッグ・革小物・ベルト・ネクタイ・アクセサリー・婦人靴・香水・ライター・インテリア用品など。Roma,Firenze,Milanoなどにあるその店の名称はValentino(vは小文字でかくこともある)。・・・ 」との記事及びデザイナーとしての紹介記事が掲載されていること。
(8)「世界の一流品大図鑑’93年版」(平成5年5月20日株式会社講談社発行)において、「VALENTINO」ブランドの香水が掲載されていること。
(9)「岩波=ケンブリッジ世界人名辞典」(1997年11月21日株式会社岩波書店発行)の[ガラヴァーニ]の項において「ヴァレンティノ Garavani,Valentino通称ヴァレンティノ Valentino(伊 1933〜)服飾デザイナー・・・・」との紹介記事が掲載されていること。
同じく、[ヴァレンティノ Valentino]の項において、「ガラヴァ ーニ、ヴァレンティノ」を見よとの表示があること。
第3.証拠調べ通知に対する意見
(1)証拠調べ通知書で示された9件の書籍、新聞に「VALENTINO GARAVANI」についての記事の掲載があるとの事実については、特段の反論はない。
しかしこのことは、広くファッション業界における取引の実情のほんの一部を示しているにすぎず、いぜん本願商標は「VALENTINO GARAVANI」の商品とは出所の混同を生じないものと思料する。
(2)「VALENTINO」とは、ありふれた姓又は名である。これの前後に名か姓が結合して氏名を構成するのが通常である。イタリア国トリノ及びローマの電話帳のコピーでも明らかである(資料1)。
(3)審査における意見書および審判請求書の理由において繰り返し述べたとおりであるが、改めて特許電子図書館(IPDL)で検索したところによれば、現在「VALENTINO」の文字を含む登録商標は、実に632件が認められている。拒絶理由通知で示された「バレンチノ グローブベスローテン フェンノート シャップ」が商標権者であるものは、このうち50件。すなわち、残りの582件は、「GARAVANI」ではない「VALENTINO」の登録商標であるということになる。
(4)登録の有無にかかわらず、実際に、一般需要者の生活の周辺に存在するいろいろな「VALENTINO」の例の一部を示す(資料2)。ここに提示するものはいずれも、インターネット上に日本語で露出するページであって、誰しもが容易に見ることができ、また、たとえその意思がなくても頻繁に目にすることがあるものである。
(5)このように、非常に多数の様々な「VALENTINO」商標が登録され、市場に流通している、この事実を抜きにしては「VALENTINO」商標の出所誤認の判断をすることはできない。「VALENTINO」の文字を見たときに「GARAVANI」のみを思い起こす一般需要者がいったいどれほどいるか、上示の事実から推認できようものと考える。
つまり、「『VALENTINO』すなわち『GARAVANI』」ではなく、「VALENTINO」といえば、「たくさんある」、と思うのが通常の需要者の感覚である。このような実情のもとでは、ある「VALENTINO」は他の「VALENTINO」とは互いに識別されて受け取られている。「VALENTINO ○○」又は「○○ VALENTINO」の「○○」の部分は、需要者によって必ず確認されている。
(6)平成11年6月に改正された周知・著名商標の保護等に関する審査基準の基本方針によれば、「周知・著名商標と他の文字又は図形と結合している商標は、原則として、拒絶することとする。」とされ、第15号該当の例として「パー ソニー」と「ソニー」の例などが上げられている。
しかし、周知商標と他の文字や図形とが結合して、膨大な数の登録がされ、市場に出回っている商標というのは、「VALENTINO」以外にはあまり例がなく、例えば「○○ renoma」や「○○ SONY」という他人の商標は、何百件も存在するものではない。第15号の判断における「VALENTINO」は、この点で特殊な商標であるといえる。前示の事実は「VALENTINO」に特有の事情である。
本号の判断に際しては、この事実を充分に考慮されなければならない。現に大々的に使用されて活動している多数の既存商標がかえりみられず、「GARAVANI」のみに過大な保護を与えることは、非常に合理性を欠くものである。
(7)「○○ VALENTINO」は、「GARAVANI」の商標「VALENTINO」を希釈するであろうか。他の商標ならばいざ知らず、こと「VALENTINO」の文字を含む商標に関しては、これがあり得ない。なぜならば、既に多くの「VALENTINO」の文字を含む商標が存在し、需要者は(取引者ならばなおさら)そのことを知っているという取引の現状があるからである。
「○○ VALENTINO」という商標については、「○○」の部分に識別力があり、「VALENTINO」たる商標の商品と出所の混同が生じることはありえない。従って、本願商標に拒絶理由はなく、登録されて然るべきものと思料する。
第4.当審の判断
本願商標は、別掲のとおり、「BV」「Bianca Valentino」の欧文字よりなるものである。
ところで、上記第2.2の事実よりすると、デザイナーとして著名な「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)は、「VALENTINO」又は「VALENTINO GARAVANI」よりなる商標を婦人服を始めとし、紳士服、アクセサリー、バッグ、香水等の商品に使用しており、その結果、これらの商標は、本願商標の登録出願の時には、既に我が国において、取引者、需要者間に広く認識されていたものといえる。
同氏の名前は「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられており、ファッションに関して「VALENTINO」「ヴァレンティノ」といえば同氏を指すものと広く認識されるに至っているというべきである。
そうとすれば、著名な「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の著名な略称「Valentino」の文字を有する本願商標を、請求人(出願人)が、その指定商品について使用するときは、その商品があたかも上記デザイナーあるいは同人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認める。
そして、これに対する上記第3.の商標権者の意見は、以下の理由により採用することができない。
すなわち、「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ」について、「VALENTINO」(Valentino)との略称表示が使用されてきた実情が存在するから、「VALENTINO」の文字を含む商標が登録されていることが、「VALENTINO」がヴァレンティノ ガラヴァーニ氏又はそのデザインに係る商品のブランドの略称を表すものとして取引者、需要者間に広く認識されていたことを認め得る妨げとはならないものであるばかりでなく、そもそも、具体的事案の判断は、過去の登録例に拘束されることなく個別具体的に検討されるべきものである。
また、「VALENTINO」が、日本においては、ありふれた氏姓ないし名であるとは認め難いものであり、イタリアにおいてありふれた男性の名前であるとしても、そのことが、日本において、商標として機能することを否定することにはならないから、申請人(出願人)の主張は採用することができない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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