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Trademark Appeal Case

著名名称の無断登録

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2003−35395(T2003−35395/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4190495号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4190495号商標(以下「本件商標」という。)は、「CHROME HEARTS」の文字を横書きしてなり、平成8年12月11日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として平成10年9月25日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第55号証(枝番を含む。)を提出した。

1 請求の利益について

本件商標は、その出願前において、既に請求人の名称又は略称として著名であった標章と同一であるとともに、現に、該標章を指定商品第9類「眼鏡」として商標登録出願(商願平11−83712)したところ、本件商標を引用されて拒絶査定がなされ、現在、拒絶査定不服審判が継続中のものであり、請求人は、本件審判請求をするについて利害関係を有するものである。

2 登録無効の理由について

本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第15号に該当するにもかかわらず登録に至ったものである。さらに、本件商標は、上記各号に該当するのみならず、同法第4条第1項第19号にも該当するものである。よって、本件商標は、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とされるべきものである。

(1)本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当する理由

本件商標は、以下に詳述するとおり、請求人の名称又はその著名な略称よりなるものであって、かつ、請求人の承諾を得ることなく出願されたものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当するものである。

(ア)請求人「クロム ハーツ インコーポレイテッド(Chrome Hearts,Inc.)」は、1989年に米国において設立された法人であり、請求人の名称(の略称)である「CHROME HEARTS」(以下「引用標章」という。)のブランドネームの下に、レザーウエアとシルバーアクセサリの製造・販売を軸に、事業を展開してきたものである。この引用標章の語句は、請求人の創業者の一人であり、創業以来の代表者であるリチャード・スタークによって創案された造語であって、請求人の名称として採用されると同時に、請求人のハウスマークとして機能しているものである。

(イ)請求人の製造・販売するレザーウェア、各種アクセサリは、引用標章ブランド創設直後より、エアロスミス、ガンズ&ローゼズ、レニー・クラビッツ、シェール、ミッキー・ローク、ナオミ・キャンベル、シンディ・クロフォード等、有名ミュージシャンや俳優、スーパーモデルを中心に圧倒的な支持を得たのであり、この米国ハリウッドにおける評判により、ロサンゼルスの一流ブティック、マックスフィールドでの販売が開始され、一気に人気ブランドとしての地位を確立することとなった。

(ウ)さらに、その人気の高まりと共に、取扱商品もバッグ、ベルト、時計、ブーツ、ステーショナリー、パイプ、ファニチャー等急速に増加していった。

これらの商品は、極上の素材を用いた一流のクラフツマンによるハンドメイドであるため、即、量産とはならなかった。しかし、高級品として、ロサンゼルスのマックスフィールド、ニューヨークのバーグドルフ・グッドマン、パリのレクレルール、ロンドンのブラウンズといった名立たる一流ブティックのみで扱われたため、かえって評判となり、人気拡大に拍車がかかったのである。こうして、当業界はもとより、一般需要者においても広く認知され、設立からわずか数年で、「神話的」とすら形容されるブランドへと成長したのである。

(エ)各種雑誌においても、いわゆる広告としてばかりではなく、例えば、注目の商品や流行に関するグラビアの中で、他の有名ブランドの商品と合わせて引用標章商品が紹介される形で取りあげられており(例えば甲第34号証では、”ノーマカマリ”のスカートとの組み合わせが見られる)、これは米国ファッション業界において、引用標章が既に高い知名度を得ていることを示すことに他ならない。そのごく一部を甲第29ないし第37号証として提出する。

(オ)さらに、請求人は、1992年全米のファッション業界で最も権威のあるCFDA(アメリカ ファッションデザイナー協議会)のアクセサリー部門でデザイナー・オブ・ジ・イヤー賞(最優秀賞)を受賞しており、これにより、引用標章の名が米国のみならず、各国のファッション業界にも広く知れ渡ったことは明白である。

なお、引用標章商品が米国のみならず、欧州でも販売されてきたことの一例を、甲第40号証の1ないし6のインボイスにより示す。

(カ)次に、日本においても、引用標章が本件商標の出願時において、著名であったことを明らかにする。

(a)日本においては、パリコレクションにも参加している著名デザイナー川久保玲氏率いるコム・デ・ギャルソンの東京・青山店で、1991年に展示・販売されたのが最初である。なお、川久保氏が着目したこと自体、引用標章が米国当業界において既に相当の知名度を得ていたことを裏付けるものである。

その後、販路に変更はあったものの、引用標章ブランドは、度々雑誌等で紹介され、急速にその人気が高まっていったものである。甲第7ないし第28号証は、日本で発行された雑誌に掲載された、請求人の商品等に関する記事・広告等の関連頁の写しである。これらの雑誌においては、商品の紹介のみならず引用標章の成立ち、制作方針等が頁を割いて紹介され、いわゆる特集記事として取りあげられることも多く、これは日本においても、請求人の引用標章ブランドを備える商品が急速に人気を集め、その名を広めていることを裏付けるものである。

これら各甲号証からも、当業者のみならず、一般消費者においても、本件商標の出願時において、引用標章が既に著名であったことは明らかである。

(b)次に、引用標章を使用して販売された商品の、日本への販売金額であるが、1993年こそ約13万米ドル(約1500万円)であったが、翌1994年には約82万米ドル(約8700万円)を示し、さらに急激な人気の広がりにより、1995年には約307万米ドル(約3.1億円)、1996年にはクリスマス商戦前の11月の時点で既に約224万米ドル(約2.5億円)と、飛躍的な売上を示している。これらの内訳としては、1994年は、レザーウェア等の被服類が約1400点、約3500万円、アクセサリ類が約1500点、約4100万円、ベルト及びバッグ類が約170点、約970万円であり、1995年は、被服類が約4800点、約4600万円、アクセサリ類が約7800点、約2億3200万円、ベルト及びバツグ類が約560点、約2400万円であり、1996年は、被服類が約3200点、約2960万円、アクセサリ類が約9800点、約1億9400万円、ベルト及びバッグ類が約480点、約2260万円である。これらの販売に関するインボイスの一例を甲第41号証の1ないし9として提出する。

なお、上記金額は、請求人が日本の正規販売店に対して販売した金額であって、同時期、インターネットの普及もあって、並行輸入あるいは個人輸入が盛んとなっており、上記金額以外にも相当量の商品が日本において出回っていたものと推測される(甲第17号証は、独自ルートで入荷、販売している事例である。)。

(c)さらに、日本における広告宣伝費は、1992年度約1億円、1993年度約9770万円、1994年度8100万円、1995年度約1億1800万円、1996年度約1億6300万円に上っている。これらの販売金額、広告宣伝費からも、引用標章ブランドは、日本において短期間で確固たる地位を築き、当業界及び一般需要者の間で著名となっていた事実が理解される。

(キ)以上のように、引用標章は、本件商標の出願時に、既に米国及び日本、さらに欧州等の多くの国で請求人の名称(の略称)として著名となっていたものであり、その後も引用標章ブランドを付された請求人の商品は、継続して広く販売され、本件商標の登録査定時においても、著名であったことは、例えば、甲第38及び第39号証にみられるように、「CHROME HEARTS」の特集を組んだ雑誌が発行されていることからも明らかである。

(ク)なお、付言するに、同法第4条第1項第8号は、その立法趣旨が、人格権の保護にある(特許庁「工業所有権法逐条解説」)ことに鑑みれば、出所の混同のおそれとは関係しないものであり、本来、指定商品に関わらず、いずれの商品を指定する出願にも適用されるべきものである。よって、本審判事件においても、後述のごとく請求人の取扱商品である被服類、装身具、バッグ類と、コーデイネイトの対象として相互に関連が深く、共にファッションに関連する商品として密接な関係を有するとされる「眼鏡」はもとより、その他の本件商標に係る指定商品(例えば、「写真機械器具、望遠鏡類、電気通信機械器具」)についても、同号が適用されて然るべきである。

(2)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由

本件商標は、以下に詳述するとおり、その指定商品について使用するときは、請求人又は請求人に関連する者の製造販売に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

(ア)上記(1)において述べたように、請求人は、1989年の米国における会社設立時より、引用標章を使用して、レザーウェア及びシルバーアクセサリを製造・販売してきたものであり、会社設立後わずか数年で、米国において、引用標章は、レザーウェア及びシルバーアクセサリを始め、バッグ、ベルト、時計、ブーツ、ステーショナリー、パイプ、ファニチャー等、請求人の各種商品に付された商標として著名となったものである。なお、商標の態様としては、ゴシック体等の活字体や、甲第3号証に記載の態様ほか、飾り文字によって「CHROME HEARTS」と書されたものなど複数あるが、いずれも「クロムハーツ」の称呼が生じるものである。

(イ)日本においても、1991年にコム・デ・ギャルソン青山店で紹介されて以来、請求人及び請求人の商品について、度々雑誌等で特集記事が組まれ、本件商標の出願時には、既に「神話的」ブランド、あるいは、その商品の高級さから「憧れのブランド」として定着したと称されるまでになっている。日本における、販売数量、販売金額及び広告費用は、上記のとおりである。

すなわち、引用標章が付された商品(例えば、甲第2及び第3号証に示される商標を付した商品を含む。)及び「CHROME HEARTS」のブランド名で販売される商品は、その商標(ブランド名)とともに、本件商標の出願時には、既にファッションに関連する商品の取引者、需要者の間において著名となっていたものである。

なお、平成2年審判第3624号(甲第52号証)によれば、「日本において、服飾等流行を先取りする分野にあっては、それに関連する取引者、デザイナー等は、流行の最先端といわれるフランス、イタリア、米国などの流行をいち早く知り、取り入れ、日本の消費者等に紹介するということは、ごく普通に行われているばかりでなく、近時、海外への旅行者の増加、多種多様の情報体の発展等に伴い、一般消費者自ら、海外の流行に直接触れる機会が多いことからすれば、米国において著名な商標は、日本においても、よく知られているとみて差し支えないといえる」とされている。請求人の引用標章にあっても、米国・欧州において著名であることは前述したとおりであるから、上記審決例に照らし、この一事のみをもってしても、引用標章が、日本においても著名であると認められるべきことは明らかである。

(ウ)上記のように、請求人による造語であるとともに、請求人のハウスマークでもある引用標章は、引用標章ブランドのレザーウェアやシルバーアクセサリが世界的にその名を博し、著名になったものである。したがって、第三者が、これと同一商標を使用するときは、その出所の混同を生ずるおそれが極めて大きいものである。よって、被請求人がその商品に請求人の引用標章と同一の商標を付して販売した場合、取引者、消費者が、これを請求人の業務に係る製品、あるいは請求人と関連のある者の製品であると誤認することは必至である。

さらに、本件商標の指定商品中の「眼鏡」は、服飾品或いは装身具としての性格を有し、被服類等とコーディネイトして用いられる、いわば、ファッションに関係する商品であって、請求人が広くその商標を使用する被服類、装身具、時計、バッグ類と、関連が深いものである。

すなわち、古くから「伊達眼鏡」なる語句が、さらに近年は「ファッショングラス」なる語句が使用されてきたように、眼鏡は、本来の使用目的にとどまらず、装飾のために身に付ける装身具としても用いられることは、周知の事実である。また、その際、衣服等に合わせて用いられることは少なくないから、請求人が広くその商標を使用する被服類と眼鏡とは、使用状態、使用目的等において密接な関係を有するといえるものである。

また、眼鏡とバッグ類が、何れもファッションに関連する商品であって、その需要者層を共通にし、互いに密接な関係を有するものであることは、例えば、異議2000−90171においても、認められているところである(甲第55号証)。

よって、本件商標をその指定商品中「時計」(審決注:「時計」は本件商標の指定商品には含まれていない。)について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その商品が請求人の業務に係る商品、あるいは請求人と関連のある者の商品であるかのように認識し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものである。

(3)本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当する理由

本件商標は、以下に詳述するとおり、請求人の著名な引用標章と同一の商標であって、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。

(ア)上記(1)及び(2)において述べたように、引用標章は、本件商標の出願時において既に、米国、日本及びその他欧州において著名となっていたものである。

さらに、引用標章は、請求人が創案した造語よりなるものであって、被請求人が、それを真似ることなく、独自にさらに偶然に、全く同一の商標が採択されることはあり得ない。

(イ)請求人は、本件商標の出願前である平成3年4月に、引用標章と同一の商標を、旧区分第17類の「被服、布製身回品、寝具類」及び第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」について出願し、両者共に平成5年に登録を得ている。

(ウ)請求人の引用標章ブランドの商品が、平成4年(1992年)以来、日本で本格的に販売され、そのブランドは、本件商標の出願時点においては、既に、取引者、需要者間において広く認知され著名となっていたものであり、さらに、その後加速度的に人気を得ていった事実に鑑みれば、本件商標が、引用標章の顧客吸引力に便乗し、不正の目的をもって、被請求人によって出願されたものであることは疑う余地のないものである。

すなわち、本件商標は、請求人の著名な名称(の略称)であるとともに、周知著名な引用標章と同一であって、請求人が本件商標の指定商品について商標登録出願をしていないことを奇貨として、前記著名性に便乗し不正な利益を得るか、あるいは、請求人に高額で買い取らせるため、又は顧客吸引力を希釈化して請求人に損害を加える等の目的のもとに出願されたものであるといわざるを得ないものである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、何ら答弁していない。

第4 当審の判断

1 請求人の提出に係る甲号各証によれば、以下の事実が認められる。

(1)請求人「クロム ハーツ インコーポレイテッド(Chrome Hearts,Inc.)」は、1989年に米国において設立された法人であり、請求人の名称の略称である「CHROME HEARTS」の文字からなる引用標章を用いて、レザーウエアとシルバーアクセサリの製造・販売を軸に、事業を展開してきた。引用標章を構成する「CHROME HEARTS」の語句は、請求人の創業者の一人であり、創業以来の代表者であるリチャード・スタークによって創案された造語であって、請求人の名称の一部として採用されると同時に、請求人のハウスマークとして使用されている(以上、甲第6ないし第10、第12、第13、第15、第16、第19ないし第26、第30,第35、第38及び第39号証)。

(2)請求人は、1992年全米のファッション業界で最も権威のあるCFDA(アメリカ ファッションデザイナー協議会)のアクセサリー部門でデザイナー・オブ・ジ・イヤー賞(最優秀賞)を受賞し、米国ファッション業界で高い知名度を得た(甲第21、第24及び第38号証)。

(3)請求人の製造・販売するレザーウェア、各種アクセサリは、エアロスミス、ガンズ&ローゼズ、レニー・クラビッツ、シェール、ミッキー・ローク、ナオミ・キャンベル、シンディ・クロフォード等、有名ミュージシャンや俳優、スーパーモデルを中心に圧倒的な支持を得、この米国ハリウッドにおける評判により、ロサンゼルスの一流ブティック、マックスフィールドでの販売が開始され、引用標章は一気に人気ブランドとしての地位を確立することとなった。その人気の高まりと共に、取扱商品もバッグ、ベルト、時計、ブーツ、ステーショナリー、パイプ、ファニチャー等に増加していった。

これらの商品は、極上の素材を用いた一流のクラフツマンによるハンドメイドであるため、量産はされなかったが、高級品としてロサンゼルスのマックスフィールド、ニューヨークのバーグドルフ・グッドマン、パリのレクレルール、ロンドンのブラウンズといった一流ブティックのみで扱われたため、かえって評判となり、人気拡大に拍車がかかり、需要者間に広く認知され、設立からわずか数年で、「神話的」とすら形容されるブランドになった(以上、甲第9、第10、第20、第21、第24、第26及び第27号証)。

(4)各種雑誌においても、いわゆる広告としてばかりではなく、注目の商品や流行に関するグラビアの中で、他の有名ブランドの商品と合わせて引用標章を使用した商品が紹介される形で取りあげられた(甲第29ないし第37号証)。

(5)日本においては、パリコレクションにも参加しているデザイナー川久保玲氏率いるコム・デ・ギャルソンの東京・青山店において、請求人の引用標章を使用した商品が1991年に展示・販売されて以来、該商品は、請求人及び請求人代表者リチャード・スタークと共に度々雑誌等で紹介され、急速にその人気が高まっていった(甲第7ないし第28号証、第38及び第39号証)。

(6)引用標章を使用した商品の日本への販売金額は、インボイスによれば、1994年が約10万米ドル、1995年が約4万米ドル、1996年が約77万米ドルになっている(甲第41号証)ほか、インターネットの普及もあって、上記以外にも並行輸入又は個人輸入により該商品が日本において出回っていた(甲第17号証)。

2 以上の事実によれば、引用標章は、本件商標の登録出願時には既に、請求人の取扱いに係る商品に使用する商標であると同時に請求人の略称として我が国の需要者間に広く認識されていたというべきであり、その状態は登録査定時においても継続していたものというべきである。

他方、本件商標は、請求人の著名な略称たる引用標章を構成する「CROME HEARTS」の文字と同一の綴りからなるものであり、請求人の承諾を得たものとは認められないものである。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してされたものといわざるを得ないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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