Trademark Appeal Case
e-ingとINGの類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2003−90642(T2003−90642/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4688305号商標(以下「本件商標」という。)は、「e−ing」の文字を標準文字により表してなり、平成13年7月12日に登録出願され、第35類「広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,財務書類の作成,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,書類の複製,速記,筆耕,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,文書又は磁気テープのファイリング,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与」及び第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定著物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,割賦購入あっせん,前払式証票の発行,ガス料金又は電気料金の徴収の代行,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,商品市場における先物取引の受託,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,企業の信用に関する調査,慈善のための募金」を含む第7類、第9類、第10類、第11類、第37類、第38類、第39類、第40類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿のとおりの商品及び役務を指定商品又は指定役務として、平成15年7月4日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由の要旨
本件商標は、その指定商品及び指定役務中第35類及び第36類に属する役務については、次の理由により商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきであると、要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第23号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する国際登録第729149号商標(以下「引用商標」という。)は、「ING」の文字を横書きしてなり、1999年12月23日に国際登録、我が国については、2000年3月14日に事後指定され、第35類「速記,筆耕(電子形式のものを含む。),競売の運営」、第36類「保険契約の締結の仲介,保険に関する助言,保険の引受け,保険情報の提供,保険に関する助言,生命保険の引受け,投資基金及び退職金基金の財務管理,企業の財務管理,金融・財務分析,財務調査,金融又は財務に関する助言,保険・金融・土地又は建物に関する財務の評価,金融又は財務に関する情報の提供,資産形成に関する資金計画の立案,両替,外国通貨の両替,預金の受入れ・資金の振替・分割払い購入資金の貸付け・資金の貸付け・土地及び建物担保資金の貸付け・資金の貸付け・信託の引受け・資金の振込み並びに投資(電子手段によるものを含む。),有価証券の売買の媒介・取次ぎ又は代理,株式投資及び債券投資,株券・債券その他の有価証券の売買における代理又は媒介,証券投資信託受益証券の募集・売出し,株式市況の調査,株式市況に関する情報の提供,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,貴重品の保護預かり,金銭債務の保証,旅行者用小切手の発行,クレジット利用者に代わってする支払代金の清算及び前払式証票の発行,クレジットカード利用者に代わってする支払代金の清算,金融に関する個人信用情報の提供,デビットカード利用者に代わってする支払代金の決済,小切手の検証,手形交換,ファクタリング,課税額の査定,宝石の評価,美術品の評価,古銭の評価,骨董品の評価及びその他の貴重品の評価,土地又は建物の鑑定評価,切手の評価,債権の回収の代行,質屋による資金の貸付け,退職金の支払いの代行,土地・建物の売買又は賃借の代理又は媒介,事務所の貸与の媒介又は取次ぎ,土地・建物の管理,アパートの管理,土地・建物の貸与,賃貸料の徴収の代行,アパートの貸与,事務所の貸与」(国際登録原簿のサービスの和訳)の役務を指定役務として平成15年3月28日に設定登録されたものである。
(2)甲立人の著名性
申立人アイエヌジー・グループ・エヌ・ヴイ(ING GROEP N.V.)(以下「INGグループ」という。)は、オランダのアムステルダムに本社をもつ法人である。INGグループは誕生以来、合併・買収などを繰り返し、その資産・地域・業種について規模を拡大し続けている。
「INGグループ」の資産規模は、2002年フォーブス誌「THE GLOBAL 500」(総合ランキング)において、世界第10位の評価を得ている。2002年フォーチュン誌「GLOBAL 5 HUNDRED」生命保険(株式会社)部門では第1位となっている。グループ各社のうち、「アイエヌジー生命保険株式会社(以下「ING生命」という。)」は、日本における「INGグループ」の活動の中心的役割をになっている。そして「ING生命」の株は、「INGグループ」の「アイエヌジー インシュアランス インターナショナル B.V.」が100%保有している。
「ING生命」は、日本での営業開始以来12年目で、米国スタンダード&プアーズ(S&P)社より格付け「AA−」を取得して以来、現在(2003年11月)までその格付けは変わらない。更にS&P社発行の「保険会社プロフィール」によれば、「安定した業績」「極めて強固な自己資本」及び「健全な資産内容」と評価されている。
「ING生命」の提供する保険業務サービスについては、特に「変額年金」サービスが周知であり、このサービスを1999年4月に我が国で初めて取扱いを開始し、現在に至るまで提供し続けている。
(3)引用商標の著名性
上記のとおり、甲立人は、保険業、銀行業の金融業において世界的に周知・著名な事業者であり、そのハウスマークとして、引用商標は、すべての商品・サービスにその誕生以来使用され、現実に使用され続けている。したがって、の周知・著名性に比例して、引用商標は、世界的に周知・著名な商標であるといえる。
我が国においては、引用商標及び引用商標にこれら各社を標章する他の文字を結合した商標(各社のハウスマーク)を、本件商標の登録出願日(2001年7月12日)前から提供するサービス、その宣伝広告などに使用し、現時点でも継続して使用している。なお、各社のハウスマークは、申立人の一員であることをも標章するものとして「ING」の文字のみを分離して看取でき、「アイエヌジー」のみの称呼、「ING」のみの観念をも生ずるものである。
また、各社の使用する引用商標及び各社のハウスマークについて、更にライオンの絵柄の図形を結合した商標が含まれるが、「ING」と該図形を常に一体として見なければならない理由はなく、かかる結合商標からも、引用商標は容易に看取できる。申立人は、引用商標の他、「ING」を構成要素に含む複数の登録商標を我が国に有している。
そして、申立人の提供するホームページ上では、ハウスマーク「ING」の下、「INGグループ」及びそのサービスが紹介されており、当該ホームページのドメイン名は、「ing.com」であるため、申立人のホームページをアクセスしようとする需要者は、「ing」を識別標識とすることは明らかである。
加えて、「ING生命」は「ing−lif e.co.jp」、「アイエヌジー投信信託会社」は「ingfunds.co.jp」、「アイエヌジー・プリンシパル・ペンションズ株式会社」は「ing−principal.com」のドメイン名をそれぞれ有し、これらは、各社及びそのサービスを紹介するホームページにリンクしている。これらの各ホームページをアクセスしようとする需要者も、「ing」を識別標識とすることは明らかであり、更にこれらのホームページは我が国需要者向けの内容で、日本語で作成されているため、需要者のアクセス回数は一層高くなり、これによって「ing」の識別力も高くなる。この他、「ING生命」では、2001年11月1日から、インターネットサービス「ING Link」の提供を行っている。
(4)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、欧文字「e−i ng」を左横書きしてなり、引用商標は欧文字「ING」を左横書きしてなる。商標審査基準〔改訂第7版〕によると「指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形などを結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする」とあるが、引用商標は本件商標の登録出願時に指定役務について需要者の間に広く認識されたものとなっていったため、本件商標がたとえ欧文字「e」と「ing」がハイフンにより結合し一体に表されたものであっても、申立人の周知・著名な登録商標「ING」の小文字にすぎない「ing」を構成要素に含む以上、引用商標と類似する。
また、本件商標の指定役務のうち、第35類の「競売の運営,速記,筆耕」が引用商標の第35類に属する指定役務と同一又は類似であり、第36類の「中古自動車の評価,慈善のための募金」を除く全ての指定役務が、引用商標の第36類に属する指定役務と同一又は類似の関係にある。加えて、引用商標は本件商標の先願・先登録に係るものである。
よって、本件商標は、引用商標と類似し、その指定役務も同一又は類似の関係にあるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第15号について
申立人は、銀行、保険、資産運用の業務に従事する者であり、世界60数カ国でその業務を展開する法人である。また、引用商標は、そのハウスマークとして、その役務の提供に現実に使用され、少なくとも金融業界において、申立人を表示するものとして、本件商標の出願時(平成13年7月12日)、すでに周知・著名なものになっている。
これに対して、本件商標は、「e−ing」の文字及びハイフンからなり、「ING」の小文字「ing」を明瞭に含むものであるから、本件商標がその指定役務中、第35類及び第36類に属する指定役務に使用されると、近年、金融業界においてもインターネットを通じた取引が世界的に一般化しつつある状況下、本件商標と引用商標とは、需要者において出所の混同を生じさせるおそれが高い。すなわち、「e」は、「electronic(電子の)」の意味を有し、一般に他の言葉と「一(ハイフン)」で組み合せ、「e−○○○」として、インターネット上で各種サービスの提供などに広く使用されている。引用商標と非類似の商標と判断された場合であっても、「e−ing」を第35類及び第36類の役務に使用する場合、申立人のインターネット上でのサービスに係わるものであるとか、申立人と本件商標の権利者とが経済的又は組織的に何等かの関係にあると需要者に看取され、具体的出所の混同が生じるおそれが高い。
よって、本件商標は、商標第4条第1項第15号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第19号について
申立人の引用する周知・著名商標は、世界60数カ国で、本件商標の登録出願日のかなり以前より使用されており、申立人と何ら関係のない本件商標権者が、これに類似する本件商標を、同一の役務を指定役務として登録出願及び設定登録しようとするのは、申立人の商標の信用をフリーライドしようとするものに他ならず、不正の目的によって出願・登録されたものであることは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号にも該当する。
(7)商標法第4条第1項第10号について
上記したとおり、本件商標は、他人の金融業務及びこれに付随する業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標「ING」と類似する商標であって、その役務又はこれに類似する役務について使用するものであるため、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(8)商標法第4条第1項第8号について
「ING(アイエヌジー)」は、本件商標登録出願時において、申立人の名称や、「アイエヌジー生命」の著名な略称となっていた。これに対して、本件商標は「e−ing」からなる商標である。よって、本件商標は他人の著名な略称を含む商標に該当し、かつ、本件商標登録出願時に申立人の承諾を得たと認められるものでもないので、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(9)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当し、同法第43条の2第1号により取り消されるべきである。
3 当審の判断
(1)本件商標は、「e−ing」の文字よりなるものであって、小文字で表された本件商標に接した者は、「e」の文字に、英語において現在分詞、動名詞を作る際に使用される「ing」の文字をハイフンで連綴したものと理解され、さらに、構成する各文字が同じ書体、同じ大きさでハイフンを介し一体的に表わされ、その全体をもって「イーイング」と称呼しても格別冗長なものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。したがって、かかる構成においては、全体をもって一体不可分のものと認識し把握されるとみるのが自然である。
してみれば、本件商標は、全体の構成文字に相応して「イーイング」の称呼のみを生ずるものというのが相当である。
他方、引用商標は、「ING」の文字よりなり、「アイエヌジー」の称呼のみを生ずるものというべきであって、本件商標は、引用商標と称呼において類似しないものである。
また、両商標は、特定の観念を認識し得ないものというべきであるから、観念においては比較できないものであり、さらに、それぞれの構成も上記のとおりであるから、外観においても類似するものではない。
(2)本件商標が引用商標と外観、称呼、観念のいずれの点においても類似しないこと上述のとおりであり、本件商標を第35類及び第36類の指定役務に使用した場合、取引者、需要者がこれを申立人の著名な略称を含むものと認識するとはいい難く、これより直ちに引用商標を連想、想起し、該役務を申立人又は申立人と関係のある者の業務に係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生じるおそれがあるものともいうことはできない。
(3)以上からすると、本件商標は、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的など不正の目的をもって使用するものということもできないものである。
(4)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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