結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2003−35184(T2003−35184/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4636849号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示した構成よりなり、平成14年2月5日に登録出願、第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」を指定役務として、平成15年1月17日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第4451008号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)に表示した構成よりなり、1999年7月29日にリヒテンシュタイン公国においてした出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して平成11年12月27日に登録出願、第1類、第6類、第7類、第8類、第9類、第13類、第17類及び第37類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成13年2月2日に設定登録されたものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第303号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標1を比較するに、本件商標は、上段に大きく顕著に横書きされた「HILT」の欧文字の方が下段に小さく横書きされた「ヒルト」の仮名文字より看者の注意を強く惹くものであることは明らかであり、この「HILT」の欧文字と引用商標1を構成する「HILTI」の欧文字は、語頭から「H」「I」「L」「T」の4文字を同じくし、僅かに末尾の「I」の文字の有無の差異があるにすぎないから、両者は、その外観が極めて相紛らわしいものである。
また、本件商標は、「HILT」及び「ヒルト」の文字を書してなるものであるから、「ヒルト」の称呼を生ずるものであり、引用商標1は、「HILTI」の文字を書してなるものであるから、「ヒルチ」又は「ヒルティ」の称呼を生ずることは明らかである。
しかして、本件商標から生ずる称呼「ヒルト」と引用商標1から生ずる称呼「ヒルチ」又は「ヒルティ」は、ともに3音中、語頭から「ヒ」「ル」の2音を同じくし、末尾において「ト」と「チ」又は「ティ」の音の差異があるにすぎず、しかも、この「ト」と「チ」又は「ティ」の音は五十音図の同行音に属する近似した音であるから、両称呼は、彼此相紛らわしいものである。
したがって、本件商標と引用商標1は、その外観及び称呼上類似する商標である。
そして、本件商標の指定役務は、引用商標1の指定役務と同一又は類似するものであることは明らかである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、引用商標1の他に、下記の登録商標を所有している。
(ア)登録第685282号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)に示すとおり、「HILTI」の欧文字を横書きしてなり、第9類「産業機械器具、動力機械器具、風水力機械器具、事務用機械器具、その他の機械器具で他の類に属しないもの、これらの部品及び附属品、機械要素」を指定商品とするものである。
(イ)登録第963997号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(4)に示すとおり、「HILTI」の欧文字を横書きしてなり、第9類「産業機械器具、動力機械器具、風水力機械器具、事務用機械器具、その他の機械器具で他の類に属しないもの、これらの部品及び附属品、機械要素」を指定商品とするものである。
(ウ)登録第965499号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(4)に示すとおり、「HILTI」の欧文字を横書きしてなり、第13類「手動利器、手動工具、金具」を指定商品とするものである。
(エ)登録第1877612号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(3)に示すとおり、「HILTI」の欧文字を横書きしてなり、第13類「手動利器、手動工具、金具」を指定商品とするものである。
(オ)登録第2703396号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲(2)に示すとおり、黒く塗り潰した横長矩形内に白く抜いた如く「HILTI」の欧文字を表してなり、第9類「火薬作動鋲打銃、その他本類に属する商品」を指定商品とするものである。
(カ)登録第2703395号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲(5)に示すとおり、「ヒルティ」の仮名文字を横書きしてなり、第9類「火薬作動鋲打銃、その他本類に属する商品」を指定商品とするものである。
しかして、請求人(ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト)は、リヒテンシュタイン公国に本社を、また、我が国には1968年4月12日に設立の「日本ヒルティ株式会社:住所:横浜市都筑区茅ヶ崎南2−6−20」(以下「日本ヒルティ」という。)を置く、世界100ヶ国以上にセールスネットワークを持つ会社であって、世界中の土木・建築・製造業及びその関連業界に対し、ファスニング(留付け)関連製品、例えば、ロータリーハンマードリル、電動ハツリ機、安全鋲打機、接着系・金属系・プラスチックアンカー、ウレタンフォーム等及びその技術ノウハウを提供するリーディングサプライヤーを目指し、地球規模で事業を展開しており、世界及び日本で最先端のファスニングシステムとサービスを提供しており、「ファスニングを語るとき、ヒルティ(HILTI)を抜きには語れない」といわれているところである。
そして、請求人のこれらの事業に係る商品及び役務について、「HILTI」の欧文字からなる引用商標1ないし6及び「ヒルティ」の片仮名文字からなる引用商標7が永年に亘り継続して使用されてきた結果、引用商標1(引用商標2、引用商標5及び6は引用商標1と文字部分の書体を全く同一にする商標である。)は、本件商標の登録出願の日前より、我が国においては勿論のこと、全世界の土木・建築・製造業及び当該関連業界の需要者間において、請求人のハウスマークとして広く認識されている(甲第9号証ないし甲第302号証)。
そして、本件商標と引用商標1とが、互いに類似するものであることは、前記(1)で述べたとおりである。
さらに、著名な引用商標1が使用されている商品、例えば、ロータリーハンマードリル、電動ハツリ機、安全鋲打機等は、本件商標の指定役務「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」の提供に不可欠な密接な関係にあることはいうまでもない。
したがって、本件商標は、その指定役務に使用された場合、これに接する需要者は、その役務が恰も請求人又は日本ヒルティの業務に係るものであるか、あるいは、請求人又は日本ヒルティと経済的又組織的に何らかの関係がある者の業務に係るものであると誤認し、その役務の出所について混同を生ずるおそれがある。
してみると、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものである。
(3)被請求人の答弁に対する弁駁
(ア)商標法第4条第1項第11号について
被請求人は、本件商標と引用商標1とが類似しない旨主張し、審決例を挙げ、縷々述べている。
しかしながら、本件商標と引用商標1とが類似する商標であることは、既に述べたとおりであり、被請求人が挙げた審決は、本件とは事案を異にするものであって、本件商標と引用商標1の類否判断に影響を及ぼすものでない。
(イ)商標法第4条第1項第15号違反について
被請求人は、請求人の提出に係る甲第9号証ないし甲第109号証、甲第125号証ないし甲第141号証及び甲第201号証ないし甲第302号証については、いずれも日本ヒルティが発行したと思われるカタログ・パンフレットであることを示すのみで、これがいつ発行され、どの程度の部数がどこの地域に頒布されたのか不明であると述べ、各引用商標が周知、著名であるとはいえない旨主張している。
しかしながら、請求人の提出に係る甲第9号証ないし甲第109号証、甲第125号証ないし甲第141号証及び甲第201号証ないし甲第302号証は、被請求人も認めるとおり、日本ヒルティの発行に係るカタログ・パンフレット等であり、これらの発行年月日は、一般に発行されるカタログ・パンフレットに表示されるのと同様に、それぞれの裏表紙の右下方に、例えば、甲第10号証は、2002年の総合カタログの表紙と裏表紙のコピーであって、裏表紙の右下方に「01・11・50D」と示されており、これは西暦2001年11月に5万部D会社(これは会社名を符号であらわす。)の印刷によることを、また、例えば、甲第50号証は、パンフレットの表及び裏のコピーであって、裏の右下方に「94・6・30C」と示されており、これは西暦1994年6月に3万部C会社の印刷によることを、そして、例えば、甲第100号証は、パンフレットの表及び裏のコピーであって、裏の右下方に「01・2・80D」と示されており、これは西暦2001年2月に8万部D会社の印刷によることを表しているように、請求人提出の書証のほとんどに発行年月日が示されていて、その部数も極めて多く、これらのものが我が国の主として、土木・建築・製造業及び当該関連業界のファスニング(留付け)に関する製品群、例えば、ロータリーハンマードリル、電動ハツリ機、安全鋲打機、プラスチックアンカー等及び当該技術ノウハウ(役務)に関する需要者の間に広く頒布されてきたところである。
したがって、引用商標1は、その指定商品及び指定役務に使用されてきた結果、本件商標の登録出願の日前より外国においてはもとより、我が国の土木・建築・製造業及び当該関連業界のファスニング(留付け)に関する製品群及び当該技術ノウハウ(役務)に関する需要者間に広く認識されるに至り、周知、著名な商標となっていることは明らかである。
したがって、本件商標は、仮に、引用商標に類似するとはいえないとしても、これがその指定役務に使用された場合、本件商標に接する需要者は、その出所について混同を生ずるおそれがある。
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)先ず、本件商標と引用商標1の外観についてみると、本件商標が「HILT」の欧文字と「ヒルト」の片仮名文字とを上下二段に書した文字からなる構成であるのに対し、引用商標1は、「HILTI」の欧文字のロゴマーク的な図柄と看取させる構成よりなるから、この点において著しく相違し、明確に区別して認識されるものであり、両者は、外観において、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(イ)次に、称呼について比較すると、本件商標からは、その構成文字に相応して「ヒルト」の称呼を生ずるのに対し、引用商標1からは、その構成文字より「ヒルチ」又は「ヒルティ」の称呼を生ずるものである。
そこで、「ヒルト」と「ヒルチ」の称呼とを比較すると、両称呼は、第3音において「ト(to)」と「チ(t∫i)」の差異音を有するもので、ともに「t」の子音を共通にするが、「ト(to)」の音が歯茎による破裂音であるのに対し、「チ(t∫i)」の音は、歯茎による摩擦音「∫」を伴った破裂音であり、これらの音は、その発音方法を著しく異にするものである。
また、「ヒルト」と「ヒルティ」の称呼とを比較すると、これも第3音において、前者が「ト(to)」の音であるのに対し、後者は「ティ(ti)」の音であって、帯同する母音が「o」と「i」において相違するばかりでなく、その発音方法も著しく相違するものである。
そうとすると、3音という極めて短い音構成からなる両称呼において、上記の差異が称呼全体に与える影響は大きく、それぞれを一連に称呼した場合、その語調・語感が著しく相違し、明確に区別して聴取されるものであるから、両者は、その称呼においても、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(ウ)さらに、観念についてみると、本件商標の「HILT」「ヒルト」の語は、「(刀の)つか、(つるはしなどの)柄、(ピストルなどの)握り」を意味する英語(乙第1号証)であるのに対し、引用商標1は、特定の意味合いを有しない造語であるから、両者は、その観念において比較すべくもない非類似の商標である。
(エ)以上のとおり、本件商標と引用商標1とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても相違し、互いに紛れるおそれのない非類似の商標である。
なお、上記した主張が正当であることは、例えば、平成2年審判第11035号審決(乙第2号証)からも明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人提出の甲第9号証ないし甲第109号証、甲第125号証ないし甲第141号証及び甲第201号証ないし甲第302号証は、いずれも日本ヒルティが発行したと思われるカタログ・パンフレットであることを示すのみで、これがいつ発行され、どの程度の部数、どこの地域に頒布されたのかが不明である。
また、甲第110号証ないし甲第124号証の1は、ニュースリリースの原稿と思われる書類であり、甲第124号証の2ないし甲第124号証の14については、新聞社名の一覧と思われる表と認識されるのみで、これが何を示すのか不明である。
僅かに甲第142号証ないし甲第200号証のみが日本ヒルティによる新聞・雑誌広告と認識されるが、この程度の広告資料によっては、引用商標1ないし7が本件商標の出願日前より、我が国を含め全世界の需要者の間に広く知られるものとなっていることを立証することはできないものであり、それらの商標が周知・著名とはいえない。
さらに、本件商標と引用商標1とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標をその指定役務のいずれに使用しても、これに接する需要者・取引者は、請求人の業務に係る役務であると誤認することはなく、その役務の出所について混同を生ずるおそれもない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「HILT」「ヒルト」の文字よりなるから、該文字に相応して「ヒルト」の称呼を生ずるものである。
他方、引用商標1は、黒塗りの横長方形の図形内に「HILTI」の文字を白抜きしてなるから、該文字に相応して「ヒルチ」又は「ヒルティ」の称呼を生ずるものである。
そこで、本件商標より生ずる「ヒルト」の称呼と引用商標1より生ずる「ヒルチ」又は「ヒルティ」の称呼を比較するに、それらの称呼は、第3音において「ト(to)」と「チ(t∫i)」又は「ティ(ti)」の音の差異を有するものであり、その子音において近似又は同一であるとしても、母音において相違する「o」と「i」は、比較的明瞭に聴取されるものと認められる。
そうすると、ともに短い音構成よりなる「ヒルト」の称呼と、「ヒルチ」又は「ヒルティ」の称呼とは、上記差異音が称呼の全体に及ぼす影響も大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、その語調、語感が相違し、互いに聴き誤るおそれはないというのが相当である。
次に、本件商標を構成する「HILT」の文字と引用商標1を構成する「HILTI」の文字の外観を比較するに、両者は「H」「I」「L」「T」の4文字を同じくし、末尾において「I」の文字の有無の差異を有するものである。
しかして、両者の欧文字の差異は、末尾における「I」の文字の有無の差異であるとしても、前者が4文字、後者が5文字の綴りからなる欧文字にあっては、「I」の有無の綴りを区別することが極めて容易であることは社会通念に照らし相当であるばかりでなく、両者の全体としての構成態様も著しく相違するものである。
してみれば、本件商標と引用商標1とは、外観において、互いに区別し得る差異を有し、相紛れるおそれのないものというのが相当である。
さらに、それぞれの観念についてみるに、本件商標は、当該構成文字に相応して「(刀の)つか、(つるはしなどの)柄、(ピストルなどの)握り」等の観念を有するのに対し、引用商標1は、特定の意味合いを看取し得ない造語よりなるから、これについては比較することができない。
そうとすれば、本件商標と引用商標1とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても非類似の商標といわざるを得ない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人提出の甲第9号証ないし甲第302号証によれば、被請求人及び日本ヒルティは、引用商標1をファスニング(留付け)関連商品、例えば、ロータリーハンマードリル、電動ハツリ機、安全鋲打機等に使用した結果、本件商標の登録出願時には、我が国において、この種の商品関連の業界における取引者、需要者の間において請求人らの商標として広く認識されているとしても、そして、請求人が引用商標1を使用する商品と本件商標の指定役務との関連性ないし実情等を考慮したとしても、本件商標と引用商標1とは、前記(1)のとおり、非類似の商標であるから、被請求人(商標権者)が本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、これより請求人の引用商標1を連想、想起するものとは認められず、なおかつ、これが請求人らと経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、その出所について誤認、混同を生じさせるおそれはないというのが相当である。
(3)結語
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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