結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2002−35234(T2002−35234/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4297206号商標(以下「本件商標」という。)は、後掲(1)のとおり「CALRO」及び「VALENTINO」の欧文字を上下二段に書し、その右側に立ち上がる馬に騎乗する姿をシルエット風に描いてなる図形を配した構成よりなり、平成10年6月16日登録出願、第18類「原革,原皮,なめし皮,毛皮,革ひも,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類、第24類「織物(畳べり地を除く。),畳べり地,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,織物製テーブルナプキン,ふきん,かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製いすカバー,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,テーブル掛け,どん帳,シャワーカーテン,織物製トイレットシートカバー,布製ラベル,ビリヤードクロス,のぼり及び旗(紙製のものを除く。)」及び第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」を指定商品として、平成11年7月23日に商標権の設定登録がされたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第71号証(枝番号を含む。)並びに参考資料1ないし7を提出した。
請求人は、請求の理由として、本件商標は商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきである、と述べている。
1.商標法第4条第1項第8号について
(1)請求人は、イタリアの服飾デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)氏の同意を得て、同氏のデザインに係る各種の商品を製作、販売しており、「VALENTINO GARAVANI」或いは「VALENTINO」の欧文字からなるそれぞれの商標を上記各種商品について使用している者であるところ、上記の「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)氏の氏名は単に「ヴァレンティノ」(VALENTINO)と略称されており、この略称も本件商標の登録出願日前より著名なものとなっている。
(2)「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)は、1967年にはザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウイーク誌等の新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーとして知られている。我が国においても、ヴァレンティノ・ガラヴァーニの名前は、1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、同氏は我が国においても著名なデザイナーとして本件商標が出願された当時には、既に我が国においても著名であった。同氏の名前は「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)とフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられたことの多いことは甲第7号証の1ないし同32、甲第8号証、甲第9号証ないし甲第12号証(審決謄本写し)をはじめとして、甲第13号証の2、甲第15号証の2、甲第15号証の3、甲第16号証の2、甲第22号証の2、甲第25号証の3、甲第30号証の2、甲第30号証の3、甲第35号証の5、甲第48号証(報知新聞)によっても明らかである。
(3)しかるところ、本件商標は、その構成が後掲(1)のとおり、乗馬と思しき図形を右に描き、左に「CALRO」と「VALENTINO」の欧文字を上下二段に横書きしてなるところ、文字と図形とが観念及び構成上、一体として認識しなければならない格別事由はないので、該図形部分及び文字部分はそれぞれ独立して自他商品の識別機能を果たすものである。そして、大きく横書きされた「CALRO」と「VALENTINO」の文字の下段部分である「VALENTINO」の文字が「ヴァレンティノ」と称呼されるものであることは明らかであるから、本件商標は「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)氏の氏名の著名な略称を含む商標であり、その者(他人)の承諾を得ずに登録出願されたことは明らかである。
(4)したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してなされたものである。
2.商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標は、上記ないし後掲(1)のとおり「CALRO」と「VALENTINO」の欧文字を上下二段に横書きしてなり、上記のとおりの第18類、第24類及び第25類に属する商品を指定商品とするものである。これに対して、請求人が引用する登録商標は、以下のとおりである。
(ア)登録第1297389号商標(以下「引用A商標」という。)は、後掲(2)のとおり「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を書してなり、昭和49年10月1日登録出願、第16類「織物、編物、フエルト、その他の布地」を指定商品として、昭和52年9月5日に設定登録されたものである。
(イ)登録第852071号商標(以下「引用B商標」という。)は、後掲(3)のとおり「VALENTINO」の欧文字を書してなり、昭和43年6月5日登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和45年4月8日に設定登録されたものである(なお、指定商品については、一部放棄がされて当該商標登録原簿の記載商品のとおりである。)。
(ウ)登録第1415314号商標(以下「引用C商標」という。)は、後掲(2)のとおり「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を書してなり、昭和49年10月1日登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和55年4月30日に設定登録されたものである。
(エ)登録第972813号商標(以下「引用D商標」という。)は、後掲(4)のとおり「VALENTINO」の文字を横書きしてなり、昭和45年4月16日登録出願、第21類「宝玉、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和47年7月20日に設定登録されたものである(なお、指定商品については、一部放棄、商標権一部取消し審判、並びにその書換登録がされて当該商標登録原簿の記載商品のとおりである。)。
(オ)登録第1793465号商標(以下「引用E商標」という。)は、後掲(2)のとおり「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を書してなり、昭和49年10月1日登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、昭和60年7月29日に設定登録されたものである。
(カ)登録第1786820号商標(以下「引用F商標」という。)は、後掲(2)のとおり「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を書してなり、昭和49年10月1日登録出願、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、昭和60年6月25日に設定登録されたものである。
(2)本件商標と引用各商標とを比較検討するに、本件商標は、構成後掲(1)のとおり図形と文字からなるところ、図形と文字とが観念及び構成上、一体として認識しなければならない格別の事由はないので、該図形部分及び文字部分はそれぞれ独立して自他商品の識別機能を果たすものであることは既に述べた。そして、その構成中の「CALRO VALENTINO」の欧文字は、一つの語として知られているものではなく、その全体を称呼するときは「カルロヴァレンティノ」の8音にも及ぶ冗長なものとなるばかりでなく、外観構成上「CALRO」の文字と「VALENTINO」の文字とが上下二段に表示されていることもあって、「カルロ」と「ヴァレンティノ」とがそれぞれ段落をもって称呼されるものであり、しかも、上記のデザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)の氏名「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称されて著名なものとなっていることとも相俟って、これに接する取引者、需要者に親しまれている「VALENTINO」の文字に相当する「ヴァレンティノ」の称呼をもって、取引に当たる場合が決して少なくないものとみるのが簡易迅速を尊ぶ取引の経験則に照らして自然である。
したがって、本件商標は、「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものといわざるを得ない。
(3)一方、引用各商標は、引用A商標ないし引用F商標が何れもその指定商品に使用された結果、全世界に著名なものとなっていることは甲第9号証及び甲第10号証(審決謄本写し)をはじめとして、甲第62号証までの書証によっても明らかなところであって、引用B商標及び引用D商標は、いずれも「VALENTINO」の文字よりなるものであり、その構成上「ヴァレンティノ」の称呼を生ずるものであることは明らかである。
また、引用A商標、引用C商標、引用E商標及び引用F商標は「VALENTINO GARAVANI」の文字を書してなるところ、その全体を称呼するときは「ヴァレンティノガラヴァーニ」の称呼を生ずるが、この称呼は冗長なものであるので、上記デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)の氏名が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称されて著名なものとなっていることとも相俟って、引用A商標、引用C商標、引用E商標及び引用F商標は、その構成文字中、前半の「VALENTINO」の文字に相応する「ヴァレンティノ」の称呼をもって取引に資されている場合も決して少なくないのが実情である。すなわち、引用A商標、引用C商標、引用E商標及び引用F商標は、何れも「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものであるといわざるを得ない。
(4)してみると、本件商標は、引用A商標ないし引用F商標と「ヴァレンティノ」の称呼を共通にする類似の商標であり、また、本件商標の指定商品は引用各商標のそれと抵触するものであることは明らかである。結局、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものである。
3.商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人は、上記の引用各商標の指定商品以外の商品についても、多数の登録商標を使用しているところであって、これらのうち登録第1402916号商標(以下「引用G商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を書してなり、昭和49年10月1日登録出願、第27類「たばこ、喫煙用具、マッチ」を指定商品として昭和54年12月27日に設定登録されたものである。
しかして、請求人提出の甲第9号証ないし甲第12号証(審決謄本写し)、甲第13号証ないし甲第62号証によって、引用C商標ないし引用F商標は、婦人服、紳士服、ネクタイ等の被服、バンド、ベルト、靴等について使用されていること及び引用G商標がライターについて使用されていること、各引用商標が本件商標の登録出願日前より全世界に著名なものとなっていることは明らかである。
そして、本件商標と引用A商標ないし引用F商標がその称呼において類似の商標であることは上述のとおりであるから、同様の理由により、本件商標と引用G商標とは、類似する商標である。また、本件商標の指定商品と各引用商標が使用されている上記の商品は、何れも服飾品の範疇に属する密接な関係にある商品、いわゆるファッション関連の商品である。
(2)したがって、本件商標は、これを商標権者がその指定商品に使用した場合、その商品があたかも請求人の製造、販売等の業務に係る商品であるか又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係にある者、すなわち姉妹会社等の関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ぜしめるおそれがあるものであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第54号証(枝番号を含む。)を提出した。
1.商標法第4条第1項第8号について
(1)本件商標は、乙第1号証に添付したように、キリスト教の聖人、聖カロロと聖バレンチノの名前に由来して考案された商標である。
(2)請求人は、「VALENTINO」「ヴァレンティノ」を含む商標はヴァレンティノ・ガラヴァーニ氏の著名な略称を含む商標であるとするが、本件商標の由来するキリスト聖人の名前にも見られる事から始まり、ハリウッド無声映画時代の映画俳優ルドルフ・ヴァレンティノや、イタリア出身のマフィアの著名なボスのヴァレンティノなども存在したように、イタリア人の氏ないし名として極めて一般的なかつありふれたもので、日本に引き直していえば、鈴木、田中、佐藤、十郎、太郎などに該当する。
(3)バレンティノ・ガラヴァーニ氏が特定の分野、例えばオートクチュールの分野で著名であることは認めざるを得ないが、他人の氏名の構成の一部として商標中に採択される「VALENTINO」を含む商標について、著名な略称を含むものとするには当たらないものである。
姓及び氏名が共通する有名デザイナーを新ファッションビジネス基礎用語辞典から抜き出すと「valentino garavani」「mario valentino」以外にも次の人物がいる(乙第2号証)。
クリスチャン ディオール(Christian Dior) 1905〜1957 仏
クリスチャン ラクロワ(Christian Lacroix) 1951〜 仏
ピエ一ル バルマン(Pierre Balmain) 1914〜1982 仏
ピエ一ル カルダン(Pierre Cardin) 1922〜 伊
カルバン クライン(Calvin Klein) 1943〜 米
アン クライン(Annen Klein)1923〜1974 米
(4)請求人は「VALENTINO」(ヴァレンティノ)が略称として著名であることは甲第8号証ないし甲第12号証で明らかとし、確かに審決「VALENTINO」が著名な略称であると判断している。しかし、一方、請求人及びその関係者以外の商標で、次のとおり前記審決とは反対の審査例及び審判例が存在する(乙第3号証ないし乙第7号証)。
MARIO VALENTINO(登録第1459366号)
RUDOLPH VALENTINO(登録第2097892号)
GIANNI VALENTINO(登録第2682254号)
ルドルフ ヴァレンティノ(登録第2677126号)
VALENTINOARDINO(登録第2721309号)
(5)甲第13号証の2は、世界の一流品図鑑 '81で、商品「メッシュのショルダーバッグ」で「V.GARAVANI/ヴァレンティノ ガラバーニ」と表記されている。商品の紹介に「ヴァレンティノ」と表記しているが、これは先の表記を前提にして略称したものと認められる。
甲第15号証の2は、世界の一流品図鑑 '85で、商品「婦人用スーツ」商標は「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」と表記されている。
甲第15号証の3では、商品は「紳士用革靴」で商標は「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」と表記されている。
甲第16号証の2は、男の一流品大図鑑 '85で、掲載されている商品は「衣服用ベルト」で、商標は「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」と認められる。
甲第22号証の2に掲載された商品は「婦人用スーツ、手袋、衣服用ベルト」等で商標は「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」で商品の紹介文に「ヴァレンティノ」と表記しているが、これは自らの広告頁であり商標「VALENTINO GARAVANI」を前提とするものである。
甲第25号証の3に掲載された商品は「婦人用スーツ、婦人用ブーツ、スカーフ」等で商標は「ヴァレンテイノガラバーニ」である。ただ右下に「さすがヴァレンティノです」との記述があるが、これは自らの広告文で同じ頁の「ヴァレンティノガラヴァーニ」を前提とするものである。
甲第30号証の2は、ミス家庭画報に掲載された「ヴァレンティノ ガラヴァーニ ヴティック」の公告で、幅狭のスペースの関係で「ヴァレンティノ」「ガラヴァーニ」「ヴティック」が三段に配置されているにすぎない。
甲第30号証の3及び同第30号証の5については、添付がない。
甲第48号証は、1991年7月29日の報知新聞であるが、ここに掲載された「バレンチノ」が「VALENTINO GARAVANI」であるはいえない。例えば乙第8号証ないし乙第10号証に示すように、イタリア人の「マリオ ヴァレンチーノ」であった可能性もあり、またマリオ ヴァレンチィノ氏の息子であった可能もあるからである。
このように請求人のいう甲各号証を仔細に検討しても「VALENTINO」(ヴァレンティノ)が略称として著名であるとの根拠とはなり得ない。
(6)甲第3号証の2(引用C商標)の旧第17類の「VALENTINO GARAVANI」商標は、甲第3号証の1(引用B商標)の旧第17類の「VALENTINO」商標とは非類似として登録されている。また、甲第4号証の2(引用E商標)の旧第21類の「VALENTINO GARAVANI」商標も、甲第4号証の1(引用D商標)の旧第21類の「VALENTINO」商標とは非類似として登録されている。さらには、甲第4号証の2(引用E商標)の出願に対してマリオ・バレンチーノ氏よりの異議申立に対する答弁書で請求人(ヴァレンティノ・ガラヴァニ氏)は「本願商標は『VALENTINO GARAVANI』からなるものであるが、これを一連に発音した『ヴァレンティノ ガラヴァニ』の呼称は全体で冗長ではないし、全体として語感も不自然ではなくまとまって印象づけられる。したがって、本願商標は『VALENTINO』及び『GARAVANI』が不可分一体に構成され、連続して発音されるものであってこれを分離するものとして把握するのは適当でない。さらに、本願商標の前半部『VALENTINO』はイタリア人の名前をして認識されるところから、本願商標はその全体で初めて強い識別力を発揮し、この意味からも本願商標は常に一体として呼称されるものである」とし、さらに「氏名から採択したものであって、本願商標はこのデザイナーとの関連からも不可分一体のものとして認識される」とする。加えて「『バレンチーノ』、『ヴァレンティノ』の呼称を生ずる引用商標とは明確に区別される。さらに両商標が観念及び外観においても非類似の商標であることはいうまでもない。」旨述べている(乙第11号証)。
この主張は異議決定(乙第12号証)でも支持されている。
(7)請求人は、この過去のヴァレンティノ・ガラヴァニ氏の異議答弁書での主張と本件審判請求での主張との整合性がない。請求人は、一般にイタリア人の名前として認識される「VALENTINO」が著名な略称として保護されるとするが、将来出現するであろう「VALENTINO」を含むイタリア等のデザイナーは自らの氏名の使用、登録もままならない不合理な結果となることから考えてもその主張の正当性を有しないことは明らかである。
2.商標法第4条第1項第11号及び同第15号について
(1)本件商標は「CALRO」と「VALENTINO」の欧文字をバランスよく上下2段に横書きしてなるもので全体として図形と人名が一体のものとして把握でき、図形部分と文字部分はそれぞれ独立して認識することはなく、構成文字に相応して「カルロ バレンチノ」の称呼を生ずるといえる。
引用商標と称呼について比較した場合、「ヴァレンティノ」を共通にするとはいえ前半部の「カルロ」と後半部に位置する「ガラヴァーニ」というこれらの差が全体に及ぼす影響が少ないとはいえず、全体として一連に称呼した場合においては、それぞれの語調、語感が異なり、両者は互いに聞き誤るおそれのない商標というべきである。
(2)また、外観上も、見る者に異なった印象を与え、たとえ時と処を異にし隔離的に観察しても相紛れるおそれはないと判断できると思われる。
しかし、請求人は、引用A商標ないし引用F商標、旧第16類、旧第17類、旧第21類、旧第22類及び旧第27類についての登録商標「VALENTINO GARAVANI」を使用しているとし、「ヴァレンティノ」の称呼も生じるとする。
これに対して、被請求人は、上記分類に加えて現行分類の一部についての「VALENTINO」関係商標の公告登録されている一覧を提示する(乙第13号証)。また、請求人所有以外の「バレンチノ」の称呼が生じる商標公報及び商標登録原簿を乙第14号証ないし乙第19号証として提出する。
加えて、最近の審判事例を明示するために、本件商標と同じ第18類、第24類及び第25類の商品を含み、その商標構成態様中に「VALENTINO」を含む商標公報を乙第20号証ないし乙第37号証として提出する。
これらの登録されている商標の存在自体、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当しないことを明かす証拠方法であるといえる。
(3)なお、請求人が主として「VALENTINO GARAVANI」商標を使用している服飾品の範疇に属する密接な関係にある商品、いわゆるファッション関連の商品について「VALENTINO」商標を使用すると他人の商標権(登録第852071号:引用B商標、登録第972813号:引用D商標)の侵害ということになる。してみると、請求人の主張は奇妙にも、自らの登録商標「VALENTINO GARAVANI」は他人の登録商標「VALENTINO」と呼称において類似するものであると主張するに等しい。
(4)請求人は「VALENTINO GARAVANI」は冗長で「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称されて著名なものとなっているとするが、甲各号証を仔細に検討してもそのような事実は認められない。
また、乙第38号証ないし乙第54号証のとおり付与後異議申立に関する商標登録異議決定では、いずれも「VALENTINO」の文字を含む氏名は商標としては一体として判断されるべきとされている例が多い。なお、このなかで乙第38号証ないし乙第49号証は、本件商標の登録と同じ第18類、第24類及び第25類の審査例である。
これらの審査例の存在自体が直接、本件審判請求の理由のないことを雄弁に物語るといえる。
請求人は、本件商標の無効理由の一に商標法第4条第1項第15号該当違反を述べているので、この点について判断する。
請求人提出に係る甲第7号証の4ないし32、甲第13号証ないし甲第53号証(各枝番号を含む。)、甲第55号証の1ないし5、甲第56号証の1及び2、甲第62号証ないし甲第71号証(各枝番号を含む。)によれば、次の状況が認められる。
1.Valentino Garavani(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)について
Valentino Garavaniは、1932年イタリアに生まれ、パリ洋裁学院でデザインの勉強をし、フランスの有名なデザイナー「ギ・ラローシュ」等の助手として働き、その後1959年にローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年(昭和42年)に、白一色のコレクションを発表して、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が大きく取り上げられ、一躍その名を高め、デザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、これ以来、同氏は、イタリア・ファッションの第一人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで、国際的なトップデザイナーとして知られるに至っていること。
2.「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」について
我が国において、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)」の名前は、前記1967年(昭和42年)の「ファッションオスカー」受賞以来知られるようになり、昭和49年に三井物産株式会社の出資により同人の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノヴティツクジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、昭和50年代の初めには、同人のデザインに係る被服、ネクタイ、ベルト等が「VALENTINO GARAVANI」及びこれを片仮名表記した「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」等の表示と共に、我が国の著名なファッション雑誌などに数多く取り上げられ紹介されたこと。その後も「VALENTINO GARAVANI」、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の名前及びそのデザインに係る被服等について使用される表示は、デザイナー名又はデザイナーズブランドとして紹介されたものであり、これらは本件商標の登録出願時に至るまでに継続的に紹介されていたことが窺える。
してみれば、「VALENTINO GARAVANI」及びその片仮名表記である「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」は、世界有数のフッションデザイナーとして、また、同人のデザインに係る商品群を表示するためのデザイナーズブランドとして、本件商標の登録出願日である平成10年6月16日には、既に、我が国の需要者間においても著名であったというべきであって、その著名性は登録査定時(平成10年6月16日)にも継続していたとみて差し支えないものである。
3.「VALENTINO」「ヴァレンティノ」について
(1)「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の表示をもって、同人のデザインに係る商品群を表示するためのデザイナー名又はデザイナーズブランドとして紹介されることが多いが、同時に雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ(バレンチノ)」と表示して紹介されていることも決して少なくないところであり、この点は、例えば、昭和51年9月から10月にかけて、我が国で同人のデザインに係る作品のファッションショーが開かれたことに関する記事が全国紙、地方紙等を通じて、「ヴァレンティノ・コレクション」、「ヴァレンティノのショーから」、「バレンチニ作品展から」、「無地が売り物のヴァレンティノ」などと紹介されていることのほか「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」に関する昭和51年発行の各種ファッション関連雑誌・同新聞広告のスクラップ記事(甲第7号証の4ないし32)、「世界の一流品大図鑑 1981年版」(甲第13号証の2)、「世界の一流品大図鑑 1985年版」(甲第15号証の2、3)、「男の一流品大図鑑 1985年版」(甲第16号証の2)、「25ans,ヴァンサンカン 1987年10月号」(甲第22号証の2)、「ミス家庭画報 1990年5月号」(甲第30号証の2)、「ミス家庭画報 1994年6月号」(甲第33号証の2)、「ヴァンテーヌ 1994年12月号」(甲第36号証の2)、「平成3年7月29日付報知新聞の取材記事」(甲第48号証)、「エル・ジャポン 1997年8月号」(甲第55号証の2ないし5)、「ドンナジャポーネ 1998年4月号」(甲第56号証の2)、「平成3年7月29日付FINANCIAL TIMES」(甲第62号証)、「服飾辞典 1981年発行」(甲第63号証)、「英和商品辞典 1990年発行」(甲第64号証)、「世界人名辞典 1997年発行」(甲第65号証)、「non-no 1989年12月5日発行」(甲第68号証)、「an-an 臨時増刊FALL&WINTER 1976−'77」(甲第69号証)及び「アイリスマガジン 1977年1月1日発行」(甲第71号証)等の記載に照らし、その状況を窺うことができる。
(2)そうすると、デザイナー「Valentino Garavani」は、我が国において「VALENTINO GARAVANI」及びその片仮名表記である「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の表示をもって紹介されることのある世界のトップデザイナーであって、かつ、同氏がデザインした婦人服、アクセサリー、バッグ、靴等のファッション関連商品におけるデザイナーズブランドを表示するものとして、本件商標の登録出願時には既に、我が国において著名であったものと認められばかりでなく、単に「VALENTINO」及び「ヴァレンティノ」の表記にあっても、前記デザイナーを指し又はそのデザイナーズブランドないしはその作品群を容易に想起させるものであるとの状況は、本件商標の登録出願時(平成10年6月16日)前において既に我が国の取引者、需要者間に広く認識せられていたものというべきであり、その状況は本件商標の登録査定時(平成11年4月15日)を含む現在に至るまで継続しているものとみて差し支えないものである。
4.出所混同のおそれについて
(1)本件商標は、後掲(1)のとおり、「CALRO」と「VALENTINO」の欧文字を上下二段に横書きし、その右側に立ち上がる馬に騎乗する姿をシルエット風に描いてなるものであるところ、外観において、文字部分と図形部分とは自ずと分離して看取し得るばかりでなく、観念上からも、両者を一体のものとして認識し得るような格別の事情は見出せず、これらを常に一体不可分のものとしてのみ把握しなければならないとはいい難いから、該文字部分と図形部分はそれぞれ独立して認識し把握されるものである。
そして、上下二段に横書きされた「CALRO」と「VALENTINO」の欧文字は上下を合わせみれば外国人の氏名であるかの如くに理解される場合のあることを必ずしも否定するものでない。しかし、被請求人提出に係る乙各号証を徴しても、これが我が国の需要者間に特定の外国人氏名であり、かつ、よく知られているとの事情も不明というほかなく、かかる欧文字を一体のものとしてのみ印象付けて記憶するものとするような格別の事情に乏しい状況にあってみれば、これに接する需要者はその構成中の「CALRO」又は「VALENTINO」の各文字のうち記憶、印象し易い文字部分により取引に資する場合も少なくないものというべきである。
(2)してみると、本件商標の指定商品は、ファッション関連商品といえる「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」等の第18類に属する商品、「織物,布製身の回り品」等の第24類に属する商品、及び「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類」等の第25類に属する商品とするものであってその需要者層は老若男女を問わないばかりか、いわゆるブランド品に詳しい者ばかりでないから、本件商標をその指定商品に使用した場合、上述した状況からしてそ構成中の「VALENTINO」の文字部分に着目し、これと本件商標の登録出願時には既に我が国においてその取引者、需要者の間に広く認識されていた国際的なトップデザイナー「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)」又は「VALENTINO GARAVANI」及びその片仮名表記である「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」によるデザイナーズブランドないしはその作品群を容易に想起する「VALENTINO(ヴァレンティノ)」とを関連付けて取引に資する場合があるというべきである。
そうすると、本件商標をその指定商品について使用した場合、その需要者をして当該商品が「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)」のデザインに係る商品、又は同人と組織的、経済的に何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、商品の出所について混同を生ずるおそれが少なからずあったものといわなければならない。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品とその出所について混同を生ずるものというのが相当である。
5.被請求人の主張について
(1)「VALENTINO」が、イタリアにおいてありふれた名前であるとしても、我が国においては、ファッション関連からみれば、上述のとおり国際的なトップデザイナー「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)」又は「VALENTINO GARAVANI」及びその片仮名表記である「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」によるデザイナーズブランドないしはその作品群を容易に想起するものであり、また、これ以外の「Valentino」をその氏名の一部にするデザイナーないしそのブランドが、単に「Valentino」、「VALENTINO」又は「ヴァレンティノ(バレンチノ)」と略されている状況は見出せない。
(2)「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)」の関係者以外の権利者であるところの「VALENTINO」の文字を含む商標登録の存在は認めるとしても、それらの商標がデザイナー「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」との関係で混同を惹起させるものかどうかは、個別・具体的に決せられるものであって、本件における混同可能性を否定する根拠とするのは適切でなく、前記認定を左右するに足りない。
(3)このほか述べる被請求人の主張及びその提出に係る乙各号証をもって前記認定を覆すことはできない。
6.結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、同法第46条第1項により、その登録は、これを無効とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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