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Trademark Appeal Case

混同を生ずる行為の判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2000−31423(T2000−31423/J2)
審判種別取消
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第2634277号商標(以下「本件商標」という。)は、「インディアンモーターサイクル」の片仮名文字を横書きしてなり、平成3年11月5日に登録出願、第17類「被服、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成6年3月31日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張

請求人は、「商標法第51条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第144号証(枝番号を含む。)を提出し、本件商標の登録は、前記した法条により、取り消すべきものであると述べた。

3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、証拠方法として乙第1号証ないし乙第30号証(枝番号を含む。)を提出し、被請求人による上記法条に該当する行為(他人の業務に係る商品と混同を生ずる行為)が行われた事実は存在せず、本件商標は同規定に基づき取り消されるべきものではないと述べた。

4 当審の判断

(1)商標法第51条第1項は、商標権者が故意に指定商品について登録商標に類似する商標を使用し、他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる旨定めているが、本件審判の争点は、被請求人による被請求人使用商標の使用行為が、上記規定に該当するか否かである。

被請求人の提出証拠(審決注:証拠番号については、判決書における表示をそのまま記載した。以下同じ。)(甲39ないし50、58、乙1の(27)ないし(30)、(51)ないし(53)、(56))及び主張の全趣旨によれば、被請求人は、請求人会社の設立日(平成5年(1993年)6月3日)以前に本件商標の登録出願(平成3年(1991年)11月5日)をし、その設定登録(平成6年(1994年)3月31日)を待って、「INDIAN MOTORCYCLE」商標につき、カナダ国の商標権者「カナダインディアン社」(INDIAN MANUFACTURING LTD.)と提携し、平成7年(1995年)5月頃から、同社の商品である革製ジャケット、Tシャツ、帽子等を輸入して販売を開始したこと、その輸入商品には被請求人使用商標AないしGの商標が付けられており、被請求人は、この商標を付したまま、これを販売し、その後も、平成8年(1996年)12月頃まで、被請求人使用商標を付した革製ジャケット、Tシャツ等の製造又は販売、広告を継続して行ったことが認められ、また、被請求人使用商標が本件商標と類似するものであることは当事者間に争いがない。

(2)被請求人が被請求人使用商標を商品である革製ジャケットやTシャツ等に使用した上記行為が、商標法第51条第1項に規定する「故意に他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたとき」に該当するか否かについて判断するに、上記の「他人の業務に係る商品と混同を生ずる」か否かは、当該商標と他人の表示の類似性の程度、他人の表示の周知著名性の程度、当該商標に係る商品と他人の業務に係る商品との性質、用途等における関連性の程度並びに商品の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らして、当該商標に係る商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきである。

(3)そこで本件についてみると、文中に掲記の証拠及び主張の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(ア)1901年(明治34年)創立のインディアン社(以下「旧インディアン社」という。)は、、ジョージ・エム・ヘンディーが、設計者のオスカー・ヘドストロムを迎えて、マサチューセッツ州スプリングフィールドに設立したオートバイのメーカーである。旧インディアン社は、マン島のレースや、デイトナビーチ(DAYTONA BEACH)でのレースで優勝するなどして、その品質とデザインにより、米国はもとよりヨーロッパや日本でも極めて有名であった。旧インディアン社の商号は、当初は、「ヘンディー・マニュファクチュアリング・カンパニー」であったが、1923年(大正12年)に「インディアン・モトサイクル・カンパニー」に変更された。

(イ)旧インディアン社のオートバイには、特徴ある書体の筆記体の「Indian」(「インディアンロゴ」)、羽根飾りを冠した右向きのインディアンの酋長の図形(「右向きのインディアンの図形」)に「インディアンロゴ」を配したもの(「ヘッドドレスロゴ」)が主に商標として使用され(その他に「左向きのインディアンの図形」や活字体の欧文字「INDIAN」や「インディアンロゴ」と類似した筆記体の「Indian」等も使用された。)、これらの「インディアン商標」は、旧インディアン社の製造販売するオートバイの商標として米国はもとよりヨーロッパや日本でも周知であった。

(ウ)また、「Indian Motocycle」、「インディアンモトサイクル」は、旧インディアン社、すなわち、インディアン・モトサイクル・カンパニーの略称として、米国はもとより、ヨーロッパや日本においても広く知られ、周知著名性を獲得していた。

(エ)しかし、旧インディアン社は、1953年(昭和28年)に操業を停止し、後に解散した(甲28ないし30、乙1の(1)ないし(4))。

(オ)フィリップ・ザンギ(以下「ザンギ」という。)は、インディアンモトサイクル商標(「インディアン商標」との関係は明らかでない。)の100%所有者である第三者との間で新たにインディアン・オートバイを製造し市場に出して販売する共同事業を行うことを約束し、同商標について50%の持分権の譲渡を受けた。そして、平成2年(1990年)6月頃、解散消滅した旧インディアン社と同一の商号「Indian Motocycle Co.,Inc.」、「インディアン商標」である本件引用商標A等を採用し、所在地を旧インディアン社と同じく「Springfield」として、米国法人「インディアン社」(以下「新インディアン社」という、具体的には、「Indian Motocycle Company Inc.」)を設立した。

(カ)新インディアン社は、旧インディアン社とは全く関係のない別法人であったが、ザンギによる新インディアン社、すなわち、「インディアン・モトサイクル・カンパニー・インク」の設立は、「『インディアン』の復活」として米国の一般紙「ザ・デイリー・ニュース」1991年(平成3年)7月1日号及び「U.S.A TODAY」同年7月5日号により報じられた。

(キ)ザンギは、平成4年(1992年)1月頃、上記インディアンモトサイクル商標について、残余の持分を取得し、単独所有者となり、同年6月頃、「Indian Motocycle Apparel and Accessories Co.,Inc.」、「Indian Motocycle Manufacturing Co.,Inc.」の2つの会社を設立した。ザンギは、これらの会社経営のためとして、多数の投資家から資金を集めた(甲33、乙1の(5)、(6))。

(ク)しかし、ザンギは、新インディアン社を設立し、投資家から資金を集めたものの、オートバイの製造などの企業本来の事業活動をほとんど行わず、そのため、新インディアン社は設立後間もなく倒産した。

(ケ)ザンギは、新インディアン社及び同社商標に関連して国内外200人にも及ぶ人々から金員等を詐取したとされ、その詐欺行為等に関し、平成8年(1996年)6月5日頃逮捕され、拘禁された。そして、ザンギは、米連邦地方裁判所により、投獄7年6ヶ月に処するとともに、百万ドルを超える弁償金等の支払を命ずる旨の判決を受けている(甲31ないし36)。

(コ)スコット・エス・カジヤ(以下「カジヤ」という。)は、「インディアン」のブランドとしての将来性に着目し、平成3年(1991年)12月、新インディアン社との間で、同社は、「インディアン商標」の出願、登録を受ける地位、その第三者へのライセンスを付与する地位を含め、「インディアン商標」に関する日本での全ての権利をカジヤに譲渡する旨の契約を締結した。

(サ)カジヤは、上記権利の譲渡を受け、平成4年(1992年)2月、特許庁に対し、旧施行令別表17類等を指定商品として「ヘッドドレスロゴ」及び特徴ある筆記体の「Indian Motocycle Co.,Inc.」よりなる商標(「モトサイクルロゴ」(本件引用商標A))の登録出願をした。

(シ)平成4年(1992年)の米国の新インディアン社名義のカタログには、カジヤが企画した商品であるレザージャケット、Tシャツ、帽子、眼鏡、ペンダント、キーホルダー等が掲載されており、それらの商品には「インディアンロゴ」及び「ヘッドドレスロゴ」、「『インディアンロゴ』/Motocycle」、筆記体の「I」等の商標が使用されている(甲6、乙1の(9)ないし(11))。

(ス)カジヤは、上記「モトサイクルロゴ」の登録出願をする一方で、広告宣伝等の業を営む株式会社サンライズ社(以下「サンライズ社」という。)と合弁し、平成5年(1993年)6月3日、請求人会社を設立し、代表取締役に就任した。

(セ)カジヤは、「モトサイクルロゴ」の商標(本件引用商標A)の設定登録を受け、その後、同商標に係る商標権を請求人に譲渡した。

(ソ)平成5年7月24日、繊研新聞及び日経流通新聞で、請求人会社の設立、「インディアン」ブランドの輸入、ライセンスビジネスの展開の開始が報じられた。

(タ)請求人会社の設立後、請求人はライセンサーとして、サンライズ社はマスターライセンシーとして、「インディアン」ブランドの広告宣伝及びライセンスビジネスを展開した。

(チ)なお、「ヘッドドレスロゴ」は、上記繊研新聞上で「『インディアン』のロゴマーク」として報じられた。

(ツ)請求人は、若者向けの広報誌である月刊誌「DICTIONARY」に、平成6年(1994年)1月頃から平成7年(1995年)2月頃にかけて、定期的に広告をし、「インディアンロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」等の「インディアン」ブランドの宣伝に務めた(甲64、乙1の(10)、(12)ないし(19))。

(テ)平成6年初め、サンライズ社は、マルヨシとの間で、バッグについて「インディアン商標」のサブライセンス契約を締結した。マルヨシは、平成6年(1994年)5月中旬展示会を行い、「インディアン商標」のバッグへの使用を開始した。マルヨシは、バッグについて、「ヘッドドレスロゴ」、「インディアンロゴ」、「左向きのインデイアン図形」(本件引用商標E)を使用した。さらに、同年中、マルヨシのバッグ及びサンライズ社の輸入に係るTシャツ、トレーナー等が雑誌等で広告された(乙1の(20)ないし(22)、(25)、(26))。

(ト)請求人のライセンスビジネスは順調に推移し、請求人は、平成7年(1995年)、西澤株式会社(以下「西澤社」という。)と、サンライズ社経由で、革製ジャケット及び革製ズボン(パンツ)について、サブライセンス契約を締結した。

(ナ)西澤社は、同年10月から平成8年(1996年)1月にかけて、積極的に「『インディアンロゴ』/Motocycle」及び「『ヘッドドレスロゴ』/Motocycle」を使用して広告宣伝をし、本件引用商標の一部を付した革製ジャケット及び革製ズボンを販売した(甲17、乙1の(32)ないし(41))。

(4)請求人らと被請求人との間では、商標の登録、使用をめぐって対立が生じ、この紛争に関して多数の審判請求、訴訟が提起されることになった。その一部の経過は次のとおりである。

(ア)カジヤが平成4年2月6日にした本件引用商標Aの登録出願について、特許庁が、平成6年2月10日、「本件引用商標Aは、本件商標に類似する。」旨の拒絶理由通知書を発したことを受けて、カジヤは、本件商標について、商標法第46条により登録の無効を求める審判(平成6年審判第13787号)を請求した。なお、特許庁は、上記審判の結果を待たず、本件引用商標Aの登録出願につき、平成7年3月30日に登録査定をし、同年9月29日に設定登録した。

(イ)請求人らは、被請求人使用商標等の使用が本件引用商標Aに係る商標権を侵害するとして、平成8年5月21日、上記商標権に基づく商標権侵害差止等請求訴訟(平成8年(ワ)第9391号)を東京地方裁判所に提起した。

(ウ)また、請求人は、本件引用商標Aに係る商標権に基づき東京地方裁判所に商標権侵害差止の仮処分命令の申請をし(平成8年(ヨ)第22126号事件)、平成8年12月16日、被請求人使用商標等の差し止めを命ずる本件仮処分命令を得た。被請求人は、その後、この仮処分決定に従い、被請求人使用商標の使用を中止した。

(エ)一方、被請求人は、請求人らの上記審判請求及び訴訟の提起等に対抗して、平成7年12月28日、特許庁に本件引用商標Aの登録の無効を求める審判(平成7年審判第28124号)の請求をするとともに、平成8年7月15日、請求人ら及び西澤社による別掲2の(1)ないし(7)記載の商標の使用が本件商標権を侵害するとして、本件商標権に基づく商標権侵害差止等請求訴訟(平成8年(ワ)第14026号)を東京地方裁判所に提起した。

(オ)カジヤが請求した前記無効審判事件(平成6年審判第13787号)について、特許庁は、平成9年9月30日、「インディアンモトサイクル」、「インディアン」は、本件商標の出願時及び査定時において、インディアンオートバイ社(1901年設立の米国法人)の著名な略称及び商標であったものということはできず、本件商標は、その指定商品について使用しても、同社若しくは同社と何らかの経済関係にある者の業務に係る商品であるかの如くその出所について混同を生ずるおそれがないものというべきであるなどと認定判断した上、「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決をした。

(カ)一方、被請求人が請求した本件引用商標Aに係る前記無効審判事件(平成7年審判第28124号)について、特許庁は、平成10年4月10日、本件引用商標Aは、商標法第4条第1項第7号(公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標)に違反するものであるとし、同商標の登録を無効とするとの審決をした(なお、平成8年5月27日に本件引用商標Aに係る商標権につき請求人への移転登録がされたことに伴い、請求人はカジヤから本件引用商標Aに係る商標権者の地位を承継した。)が、同審決は、東京高等裁判所の判決により取り消され、同判決に対する上告受理申立てに対する最高裁判所の上告不受理決定により、同判決は確定した。これを受けて、特許庁は、更に審理をし、平成14年2月28日、本件引用商標Aは、本件商標に類似する(商標法第4条第1項第11号に該当)とし、再び同商標の登録を無効とする旨の審決をした。請求人は同審決に対し、その取消請求訴訟を提起した(平成14年(行ケ)第140号)が、東京高等裁判所は、平成14年12月27日、その請求を棄却する判決をした。同判決に対する上告受理申立てについて、最高裁判所は、平成15年6月12日(審決注:本件審判の差戻し前審決日後)、上告不受理の決定をしたことから、上記審決は確定し、これによって、本件引用商標Aの登録無効は確定した。

(キ)被請求人が提起した商標権侵害差止等請求事件(平成8年(ワ)第14026号)について、東京地方裁判所は、平成14年8月22日、中間判決をした。同判決は、別掲2の(1)ないし(7)記載の各標章は、いずれも本件商標に類似する。また、別掲2の(4)記載の標章(本件引用商標Aに酷似する標章)は、本件引用商標Aに係る請求人の商標権の専用権の範囲に属するが、別掲2の(5)ないし(7)記載の各標章は、いずれも同商標権の専用権の範囲に属さないとするものであった。

(ク)請求人らが提起した商標権侵害差止等請求事件(平成8年(ワ)第9391号)について、東京地方裁判所は、平成15年8月28日(審決注:本件審判の差戻し前審決日後)、本件引用商標Aの登録は無効であることが確定したから、同商標に係る商標権は当初から存在しなかったことになるとして、請求人らの請求をいずれも棄却する旨の判決をし、上記の東京地方裁判所平成8年(ヨ)第22126号事件の仮処分決定もその根拠を失った(甲4ないし7、10ないし13、64、66、乙1の(47))。

(5)前記(1)及び前記(3)(4)で認定した事実に基づき検討すると、被請求人使用商標AないしGと、本件引用商標A、B、D及びFないしHとを、その外観、称呼、観念において対比するときには、両各商標は互いに類似するものと認められ(被請求人使用商標AないしGが本件引用商標A、FないしHと類似することについて、被請求人は、これを争わない。)、また、被請求人による被請求人使用商標を付した商品と請求人らの本件引用商標を付した商品とは、バッグを除き、類似するものと認められる。

(6)次に、本件引用商標の周知性についてみるに、1953年(昭和28年)当時、「インディアンモトサイクル」は、旧インディアン社の略称として、また、「インディアン商標」は、旧インディアン社の製造販売に係るオートバイ等を表示する商標として、我が国においても周知著名であったと認められるが、同社は、1953年に操業を停止し、後に解散しており、同社が、その後、営業活動したことを窺わせる証拠は存在しない。

そして、平成2年6月頃に「新インディアン社」が設立され、それが「『旧インディアン』の復活」として米国の一般紙に報じられたことが認められる。

しかしながら、その設立者であるザンギは、インディアンモトサイクル商標(「インディアン商標」との関係は明らかでない。)の100%所有者である第三者との間で新たにインディアン・オートバイを製造し市場に出して販売する共同事業を行うことを約束し、同商標について50%の持分権の譲渡を受け(その後、残余の持分も取得して、単独所有者となった。)、平成2年6月頃に新インディアン社を設立し、多数の投資家から資金を集めたものの、オートバイ等の製造などの企業本来の事業活動をほとんど行わず、そのため、新インディアン社は設立後間もなく倒産するに至った。これらのことに加え、ザンギが詐欺罪により処罰を受けた経緯を考慮すれば、新インディアン社は、投資家から資金を集めて、これを詐取するため、旧インディアン社と同一会社であるかのように、あるいは、同社と何らかの関係又は継続性があるかのように装ったにすぎない会社で、営業活動の実体のない会社であったと認められ、これが旧インディアン社の周知著名であった略称、「インディアン商標」の使用権の正当な承継者とは到底いえない。

したがって、カジヤが新インディアン社から日本をテリトリーとする「インディアン社」関連商標に関する権利を有効に譲り受けたものとしても、旧インディアン社の周知著名であった略称、「インディアン商標」の使用権限を有するということはできず、カジヤより本件引用商標Aに係る商標権を譲り受けた請求人、そのマスターライセンシーのサンライズ社、請求人より本件引用商標A等の使用許諾を受けた西澤社及び株式会社マルヨシ(以下「マルヨシ」という。)がその使用権限を有しないことも明らかである。

請求人は、マスターライセンシーのサンライズ社を通じて平成5年秋より、新インディアン社の製造に係る商品(ライダージャケット、Tシャツ、帽子、眼鏡、ペンダント、キーリング、ブレスレット、バッグ)を輸入し、「インディアンロゴ」(本件引用商標B)、「ヘッドドレスロゴ」(本件引用商標D)、「『インディアンロゴ』/MOTOCYCLE」(本件引用商標FないしH)等を付して販売を行った旨主張するが、証拠(乙1の(11)、(15))だけからは、その事実は必ずしも明らかでなく、販売実績について主張立証がないことからして、仮に上記販売が行われたものとしても、その販売実績はさしたるものではなかったと推認するのが相当である。

(7)請求人らが、実際に本件引用商標の使用をしたと認められるのは、早くとも平成5年秋頃であるが、その販売実績がさしたるものではなかったと推認すべきことは上記認定のとおりである。

その後、マルヨシが本件引用商標E等を使用した「バッグ」の雑誌広告(平成6年(1994年)12月20日発行「フィールド・ギア」。乙1の(26)等)をし、そのバッグの販売を始めたものであるが、この商品「バッグ」は、被請求人使用商標を使用した被請求人の商品である革製ジャケット、Tシャツ等とは非類似の商品である。

請求人らが、ジャケット等の衣服について、本格的に本件引用商標を使用し始めたのは、平成7年(1995年)後期(10月ないし11月)に、西澤社が革製ジャケット、革製ズボン(パンツ)を販売した時であると認められる。

一方、被請求人は、本件商標が公告され、登録されたことを踏まえ、カナダ国の「INDIAN MOTORCYCLE」商標の権利者である「カナダインディアン社」(INDIAN MANUFACTURING LTD.)と提携し、平成7年(1995年)の初めに商品をサンプル輸入し(甲58)、同年5月頃から、被請求人使用商標を付してこれらの販売を開始したものであり、同年6月25日発行の雑誌「ポパイ」(甲41)にその旨の広告がされている。

要するに、請求人ら又はそのライセンシーが本件引用商標を使用し始めたのは、本件商標の登録より少し前かその後であり、請求人らの本件引用商標を付した商品の販売実績及び広告実績に照らして、本件商標の設定登録時(平成6年3月)及び被請求人による被請求人使用商標の使用が開始された時点(平成7年5月頃)で、請求人らの本件引用商標が請求人らないしそのライセンシーの商品を表示するものとして取引者及び需要者の間に広く知られ、周知性を獲得するに至っていたものということはできず、他にこれを認めるべき的確な証拠はない。

(8)被請求人使用商標に係る商品及び本件引用商標に係る商品は、革製ジャケット等であり、その需要者は若者層が中心であると考えられるが、本件引用商標が周知性を獲得するに至っていなかったことからすれば、被請求人が敢えて本件引用商標を付した商品を販売している請求人ら関係の店舗に隣接して店舗を設け、被請求人使用商標を付した商品の販売を行ったなど特段の事情の認められない本件においては、被請求人使用商標を付した革製ジャケット等の商品に接した需要者が直ちに本件引用商標A、B、D、FないしHを想起するものとは考えにくく、他方、被請求人使用商標の周知性の程度が高いとする的確な証拠もないから、これらの商品に接した需要者は、その出所を明確には認識できず、その商品選択は、その製造販売会社、品質、商品の仕様その他の要素をも考慮して行われるのが通常であると考えられる。

したがって、被請求人が革製ジャケット等の商品に被請求人使用商標を使用したものとしても、取引者及び需要者がこれを請求人ら又は請求人らと経済的又は組織的に何らかの関連を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所につき混同を生ずるおそれがあったものということはできない。

(9)のみならず、被請求人は、請求人会社の設立日(平成5年(1993年)6月3日)以前に本件商標を出願(平成3年(1991年)11月5日)し、その設定登録(平成6年(1994年)3月31日)を受け、「INDIAN MOTORCYCLE」の商標につき、カナダ国の商標権者「カナダインディアン社」と提携し、平成7年(1995年)5月頃から、被請求人使用商標AないしGの商標を使用した革製ジャケット、Tシャツ等の販売を行っているものである。

そして、被請求人使用商標の使用開始前において、本件引用商標が請求人らないし請求人からその使用許諾を受けた者の商品を表示するものとして周知性を獲得していたと認められないことは前示のとおりである。かかる事情のほか、訴訟の経過を含む前記(3)(4)認定の事実を併せ考慮すれば、被請求人が本件商標ないし被請求人使用商標を被服等の商標として採択した動機は、請求人と同様、旧インディアン社とは無関係な立場で、旧インディアン社の略称又は「インディアン商標」を利用しようとしたことにあり、被請求人は、請求人が本件引用商標を被服等に使用していたことを認識しつつ、敢えて、被請求人使用商標を被服等に使用する行為を行ったとは認められず、他に上記事実を認めるに足りる的確な証拠はない。

したがって、仮に、被請求人が革製ジャケット等の商品に被請求人使用商標を使用した場合に、上記(5)ないし(8)記載の出所の混同を生ずるおそれがあったものとしても、被請求人がそのおそれがあることを認識しつつ、故意に、被請求人使用商標を革製ジャケット等に使用したと認めることは到底できない。

(10)以上のとおりであるから、被請求人による被請求人使用商標の使用は、商標法第51条第1項の要件に該当しないものといわざるを得ない。

よって、結論のとおり審決する

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