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Trademark Appeal Case

不使用取消の立証責任

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2003−31177(T2003−31177/J2)
審判種別取消
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第778048号商標の指定商品中「薬剤」については、その登録は取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第778048号商標(以下「本件商標」という。)は、「SPAXIN」及び「スパキシン」の文字を上下二段に横書きしてなり、昭和41年4月20日に登録出願、第1類「化学品、薬剤、医療補助品」を指定商品として、昭和43年4月12日に設定登録され、その後、3回にわたり商標権存続期間の更新登録がされているものである。

2 請求人の主張の要点

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証の1ないし甲第3号証を提出した。

(1)請求の理由

本件商標の権利者である「マルコ製薬株式会社」は、本件商標の使用に係る「鎮けい剤」(腰痛や筋肉痛の症状をやわらげるハップ薬)(以下、「本製品」という。)を病院・診療所等に納入していたが、平成10年9月25日に同製品の製造・販売を中止し、パンフレット等を廃棄した。

その他、請求人による調査では、商標権者・専用使用権者・通常使用権者のいずれも、本件商標を、過去3年以上の間、指定商品中「薬剤」について使用してはいない。

したがって、本件商標は第1類「薬剤」に関する登録を取り消されるべきである。

(2)弁駁の理由

商標法第50条第2項の規定から、登録商標の使用ないし不使用の正当理由については、被請求人が主張責任・立証責任を負うことが明らかである。

しかるに、被請求人は、答弁書において、単に、登録商標の使用をしていたと述べるのみで、何ら使用の具体的な事実を明らかにせず、また、同事実を裏付ける証拠資料も提出してはいない。

被請求人のいう「本製品」が「鎮けい剤」(塩酸エペリゾン錠剤)であることは、明白であるところ、被請求人の陳述は、「平成10年9月25日以後の本製品の販売中止(すなわち、同日以後は、本製品の取引には応じないこと)」を自白するものである。

被請求人は、上記販売中止の案内の後であっても、本製品を販売したとの趣旨の陳述を行っているが、かかる陳述に該当する具体的な事実を何ら主張・立証していない。被請求人の「...販売中止意図があっても、医療機関、患者の了解が得られなければ、厚生労働省の指導により薬価収載を取り消すことが出来なく、販売を継続する場合もある。」との陳述は、単に、医薬品の販売中止の際に生じることがあり得る事態について、その一般論を述べたにすぎない。本製品について、実際に生じた事態を述べたものではない。もし係る事態が実際に生じたのであれば、いかなる医療機関が販売中止に応じず、これに基づき、厚生労働省のどのような指導があり、これに応じて、いかなる卸売り会社に、いかなる日付にて、本製品を販売したのか、その事実を具体的かつ明確に主張し、かつ、その証拠資料を提出できるはずである。本件審判の予告登録日は平成15年10月1日である。したがって、被請求人は、平成12年10月1日ないし平成15年9月30日の期間内における本製品の販売事実を具体的に明らかにし、かつ、証明すべきである。しかるに、答弁書には、かかる陳述は一切ない。本製品は、上述のように、「鎮けい剤」として使用される「塩酸エペリゾン錠(50mgl錠)」である。同薬剤は、技術的に製造困難その他の事情のために単独の製薬会社のみが製造・販売しており、同製薬会社が販売を中止した場合、代替薬品がないため、医療行為に支障を来すといった特殊な事情のあるものではない。同薬剤は、多数の製薬会社が製造・販売していた普遍的な薬剤であって、本製品の代替品は市場に多数存在した(20社程度の製薬会社の製品)(乙第2号証)。したがって、被請求人及びその子会社によって本製品の販売中止が平成10年9月25日に案内され、それから2年もの期間が経過した平成12年10月1日以降、本製品の提供を医療機関によって求められ、また、厚生労働省の指導が行われたとは信じがたい。販売中止から2年もの期間が経過した後に販売が復活したとは到底考えられない。

被請求人は、「...本製品は平成10年9月25日もって販売、使用中止ではなく、特約店では本製品の使用期間中(3年間)は販売可能であり、医療機関も使用可能であった。当然、特約店は在庫分の販売を継続している。」と陳述する。

しかしながら、被請求人及びその子会社は、答弁書において自白しているように、平成10年9月25日付にて本製品の販売中止を卸売り会社(特約店)に案内しており、この案内の後に、被請求人及びその子会社が本製品を卸売り会社に販売したとの主張・立証はない。さらに、販売中止の案内以前に被請求人及びその子会社が卸売り会社に販売した本製品が、販売中止の案内後、卸売り会社から医療機関に販売されたとの具体的な事実はない。答弁書では、一般論として、販売中止後に卸売り会社が在庫品を処分する可能性があることを述べるにすぎず、いかなる卸売り会社が、いかなる医療機関に対して、いかなる時期に、本製品を販売したといった具体的な事実を主張し、その立証を行っている訳ではない。また、仮に、係る事実があったとしても、卸売り会社は、本件商標の通常使用権者ではない。単に、卸売業者として、被請求人及びその子会社の本製品を購入し、医療機関に販売しているにすぎない。医療機関が本製品を使用する行為(すなわち、患者に本製品を投与する行為)も、医療行為であり、本件商標の通常使用権者として行うものではないし、そもそも、商標の使用とは関係ない行為である。

本製品が、平成12年4月版(平成12年3月20日発行)の保険薬事典に掲載されていたことは認めるが、他方、単にこの事実のみを根拠とした、本件商標の使用に関する被請求人の主張は明らかな誤りであり、これを争う。上記保険薬事典に本製品が収載されていたのは、平成10年9月25日付をもって被請求人及びその子会社が本件薬剤の販売を中止した後、未だ3年の期間を経過してはおらず、形式上、本件薬剤について保険請求があるかも知れないからにすぎない。すなわち、薬価収載された薬剤は販売中止後3年間は保険請求が可能であり、このため、平成10年9月25日に販売を中止した本製品が、平成12年4月1日実施の薬価基準では、社会保険の対象となる薬剤であったことを示すにすぎない。

乙第2号証は、平成12年10月1日以降、本製品に関する保険請求が実際にあったことを証するものではない。また、答弁書には、本製品の保険請求に関する具体的な事実の陳述はない。仮に、本製品の保険請求があったとしても、このことをもって、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって、本件商標が使用されたことにはならない。

ちなみに、薬価収載は2年毎に行われるところ、甲第3号証「社会保険 薬価基準 2002年4月版 平成14年4月1日実施(出版:薬事日報社)」には、本製品は収載されていない。この事実は、本製品について、平成10年9月25日に販売中止の案内があった後、医療機関による本製品提供の要求や厚生労働省による指導もなく、順調に、案内から3年を経て薬価収載を解かれたことを物語る。

3 被請求人の答弁の要点

被請求人は、請求人の申立は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由及び請求人の弁駁に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙2号証を提出した。

(1)答弁の理由

請求人は、平成10年9月25日に本件商標の製品の製造・販売を中止し、パンフレット等の廃棄をし、本件商標を過去3年間以上の間、指定商品「薬剤」に使用していないと主張するが、これは事実を誤認したものである。

確かに、本製品は被請求人の子会社である株式会社マルコが販売を行っていたが、平成10年9月25日をもって、特約店への販売中止を案内している(乙第1号証)。しかし、上記案内は卸売業者である特約店に対して新規の納品は行わないという案内であり、本製品の市場での販売は平成10年9月25日以降も行われている。つまり、本製品のような医療用医薬品は製造販売するためには、厚生労働省の承認、薬価の収載が必要であり、長期の安定供給を要求されたものである。そして、使用者である医療機関及び患者への十分な案内、了解を得るための準備期間があった後でないと販売中止が出来ないものである。そして販売中止意図があっても、医療機関、患者の了解が得られなければ、厚生労働省の指導により薬価収載を取り消すことができなく、販売を継続する場合もある。したがって、本製品は特約店への中止案内をもって販売中止したとはいえない。さらに案内文にも明らかなように本製品は平成10年9月25日もって販売、使用中止ではなく、特約店では本製品の使用期間中(3年間)は販売可能であり、医療機関も使用可能であった。当然、特約店は在庫分の販売を継続している。この点からも特約店への案内をもって、本製品の販売を中止したという、請求人の指摘は誤りである。

また、請求人が主張するようにパンフレット等の廃棄の事実はなく、医療機関は薬価収載されている期間は保険請求が可能である。本製品が案内後も使用されていた事実は、平成12年4月版(平成12年3月20日発行)の保険薬事典に収載されることからも、明らかである(乙第2号証)。つまり本製品のような医療用医薬品は、薬価収載中、使用期間中は製造会社が法律により副作用等の調査、報告が義務付けされている。したがって、製造会社の情報収集伝達担当者(MR)が医療機関を直接訪問して、使用者の状況把握に努めなければならない。つまり、特約店への連絡をもって販売中止ではなく、特約店への連絡後にMRが、医療機関での使用中止のために情報伝達を開始し、十分な準備期間をもって製品の使用が中止されるのである。したがって、平成10年をもって本件商標の使用を中止したという請求人の主張は、医療用医薬品の特性、現状を無視したものである。

以上より明らかなように、本件商標は平成12年度においても薬剤に使用されていたことは明らかであり、過去3年以上使用していないとする請求人の主張は誤りである。

(2)弁駁に対する答弁の理由

請求人は答弁書には使用実態を示していないと主張するが、本件商標を使用した製品は医薬品のカタログともいえる保険薬辞典に収載されていたことは請求人も認めており、平成12年度において使用されていたことは明らかであり、それ以上の資料を要求することは不当なものである。

また、請求人は請求日平成15年10月1日を基準にして改めて3年間以上を主張するが、この点からも請求人が最初に設定した平成10年9月25日が誤認であったことを認めているといえる。

さらに本件商標はその使用実態から、日数をもって使用・不使用を述べることは不合理なものである。本件商標を使用した製品は後発医薬品のため、その医薬品としての承認は年に1回であり、年間をもって判断されるものである。ただ、請求人が引用した平成14年の保険薬辞典に収載されないことは被請求人も異議をとなえるものではない。しかし、請求人の主張する、請求日を基準として3年間とするのは不当な主張といえる。

4 当審の判断

被請求人は、乙第2号証として提出の「薬効別薬価基準 保険薬事典 平成12年4月版」(平成12年3月20日発行 薬業研究会編 発行所 株式会社じほう)に本件商標を使用した薬剤が掲載されているとして、これを根拠に、平成12年度において本件商標が使用されていたことは明らかであると主張する。

しかしながら、乙第2号証の52頁「124 鎮けい剤」の個所に「スパキシン錠(マルコ)」の記載が認められるものの、これにより直ちに本件審判の請求の登録(平成15年10月1日予告登録)前3年以内に「スパキシン錠」という鎮けい剤の標章(商標)について「マルコ」による商標法第2条第3項にいう使用行為があった事実を認めることはできない。そして、本件の場合、被請求人は、乙第1号証を提出して平成10年9月25日をもって被請求人の子会社である株式会社マルコによる特約店への「スパキシン錠」の販売を中止し、新規の納品を行わない旨案内した事実を自認しているのであり、また、被請求人は、この販売中止の案内に関わらず、その後の本件審判の請求の登録前3年以内に、被請求人又は被請求人の子会社である株式会社マルコが「スパキシン錠」という鎮けい剤の標章(商標)について商標法第2条第3項にいう使用行為(関係パンフレットの頒布もその一つ。)を新たに行った事実を具体的に主張、立証するものでもない。

そうしてみると、上記「薬効別薬価基準 保険薬事典 平成12年4月版」中の「スパキシン錠(マルコ)」の記載は、平成12年4月版の薬価基準では、これが社会保険の対象となる薬剤であったことを示すにすぎないものとみるのが相当であり、これによって平成12年度において被請求人又は被請求人の子会社である株式会社マルコが本件商標を薬剤について使用した事実を認めることはできないから、この点の被請求人の主張は採用することは出来ない。

その他、被請求人は、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件商標に係る指定商品のいずれかの商品について使用していたものと認めるに足りる証拠を提出しておらず、また、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしてない。

以上からすると、被請求人は、本件商標を本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品についての登録商標の使用をしていることを証明することができなかったものといわなければならない。

したがって、本件商標の登録は、請求に係る指定商品「薬剤」について、商標法第50条の規定により取り消すべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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