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Trademark Appeal Case

ESPRITの著名性と類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2003−35162(T2003−35162/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1.本件商標

本件登録第4333037号商標(以下「本件商標」という。)は、平成10年12月24日に登録出願され、「ESPRITMUR」の文字を標準文字とし、第14類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成11年11月12日に設定登録されたものである。

第2.請求人の引用商標

請求人が本件商標の登録の無効理由に引用する登録商標は以下のとおりである。すなわち、「エスプリ」の文字を横書にしてなり、昭和38年3月27日に登録出願され、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、昭和39年9月21日に設定登録された登録第653754号商標(以下「引用商標1」という。)、「ESPRIT」の文字を横書にしてなり、昭和53年12月11日に登録出願され、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和57年12月24日に設定登録された登録第1558196号商標(以下「引用商標2」という。)、別掲に示すとおりの構成よりなり、昭和61年8月8日に登録出願され、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和63年11月30日に設定登録された登録第2097119号商標(以下「引用商標3」という。)、別掲に示すとおりの構成よりなり、昭和61年8月8日に登録出願され、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成1年11月28日に設定登録された登録第2187153号商標(以下「引用商標4」という。)、「ESPRIT」の欧文字を横書にしてなり、平成9年2月20日に登録出願され、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成11年9月3日に設定登録された登録第4312235号商標(以下「引用商標5」という。)、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成9年2月20日に登録出願され、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成11年9月3日に設定登録された登録第4312236号商標(以下「引用商標6」といい、これら6件を一括して「引用各商標」という。)である。

第3.請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第63号証を提出した。

本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号及び同第7号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。

1.請求の理由

(1)引用商標の著名性について

エスプリグループは、1968年米国サンフランシスコでの創業以来、カジュアルウェアを主とするファッションメーカーとして著しい発展を遂げてきた。1974年には香港に生産拠点を確保しアジア進出、1970年代後半には、ヨーロッパ、スカンディナビア、オセアニアへの進出を果たし、80年代にはいると、アクセサリー、バッグ、靴等次々に品目を増やし、世界的なトータルファッションブランドとしての地位を不動のものにした(甲第6号証乃至甲第61号証)。

日本においては、1984年エスプリジャパン設立後、衣類、バッグ等の輸入販売を開始し、その後、日本有数の寝装具メーカーである株式会社内野と提携し、パジャマ、バスローブ、タオル、シーツ、ハンカチ等の販売を開始した。さらに、1994年には日本各地に直営店を開き、カジュアルウェア、アクセサリー、バッグ、靴等、非常に好調な売れ行きを呈した。

商標「ESPRIT」は、エスプリグループが1976年に衣類について使用して以来、カジュアルウェア、アクセサリー、バッグ、靴等に長年使用され、エスプリグループの商品であることを表示するものとして広く知られている。当該商標を付した商品は、日本を含め世界中で一流品としての信用が形成されており、数々の刊行物によって紹介されている(甲第7号証乃至甲第53号証)。

また、1970年以来、エスプリグループの各企業は、取引業者、新聞雑誌、消費者の間で、単に「ESPRIT」または「エスプリ」と略して称されてきており、「ESPRIT」または「エスプリ」が請求人を含むエスプリグループの各構成企業を表す略称であることは広く知られている(甲第7号証乃至甲第63号証)。

さらに、特許庁においも、第三者の登録商標に対する登録無効審判事件における審決理由において、少なくとも昭和61年(1986年)4月11日以前に、エスプリ社が世界的な大企業であって、その商標「三SPRIT」の文字は、わが国において一般に広く認識されていたと認め得ると判断されている(甲第54号証)。さらに、近年の商標登録異議申立の決定理由においても、商標「三SPRIT」が、著名商標であると判断されている(甲第57証乃至甲第58号証)。

なお、エスプリ社が世界的な大企業であって、その商標「三SPRIT」は、上記の通り、わが国において一般に広く認識されていたと認められるのみならず、世界においてもその著名性は認められている。この点を証するものとして、近年では、フランスの工業所有権庁及び裁判所において、第三者の商標「L‘ESPRIT DU SUD−OUEST」、「L’ESPRIT PROVENCE」、「ESPRIT FRANCE」、「ESPRIT SUD」、「L’ESPRIT CATALAN−ESPRIT CATLAN」が、審判請求人の著名商標「ESPRIT」に類似するとして異議申立により取消し、或いは裁判所において商標権侵害が認められている(甲第59号証乃至甲第63号証)。

以上より、引用商標1乃至4は、本件商標の出願時である平成10年(1998年)12月24日当時において、エスプリグループの業務に係る商品を表示するものとして、また、エスプリグループの各構成企業を表す略称として、既に我国において著名であったものと確信する。

(2)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、欧文字「ESPRITMUR」から成り、その文字に相応して「エスプリミュール」或いは「エスプリ」の称呼が生じる。ここで、本件商標は、看者の注意を喚起しやすい接頭部において「ESPRIT」の文字を構成してなり、かかる語は、「才気、機知」を意味し親しまれた外来語であること、さらには、「ESPRIT」が著名商標であることに鑑みれば、「エスプリ」の称呼を容易に生じさせるものである。

一方、引用商標1乃至6からも、それらの文字に相応して「エスプリ」の称呼が生じることは明らかである。

そして、本件商標の指定商品は引用商標1乃至6の指定商品と同一又は類似のものである。

以上より、本件登録商標は引用商標1乃至6に類似するものであり、その指定商品も同一又は類似することから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第10号について

本件商標は著名商標である引用商標1乃至4に類似し、その指定商品と同一又は類似する商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。

(4)商標法第4条第1項第15号について

エスプリグループの各構成企業を表示するものとして著名な引用商標1乃至4と類似する本件商標がその指定商品に使用された場合、取引者・需要者をして、その商品がエスプリグループの提供にかかわるものであるかのごとく、あるいは、エスプリグループと何等かの経済的・組織的関連があるかのごとく認識され、出所混同を生ぜしめるおそれがある。

特に、請求人及び請求人の関連企業グループは、商品「被服、アクセサリー、かばん」等をはじめとしたファッション関連商品に広く引用商標1乃至4を使用し、かかる商標が著名となっていることが明らかなところ、本件商標登録にかかる第14類の指定商品「貴金属、貴金属製のがま口及び財布、金属製靴飾り等」及び第18類の指定商品「かばん類、傘、ステッキ等」とはいずれも、前述した請求人が提供する商品と需要者、販売場所、商品提供者等が共通し、近似する商品であることから、本件商標は、引用商標1乃至4と出所混同を生じさせるものである。

この点、請求人は、本件商標と同一の文字からなる商標登録出願「ESPRIT MUR/エスプリミュール」2件(商願平06−051037号(第14類)及び商願平06−051038(第18類))に対して商標登録異議申立を過去に行っているが、いずれの事件についても、『・・・前半の「ESPRIT」の部分が、請求人等の取扱いにかかる商品を表示するものとして広く認識されている「ESPRIT」と構成文字、称呼を同一にするものであるから、引用商標の著名性、請求人の使用にかかる商品と本願商標の指定商品との近似性並びに請求人企業グループの経営の多角化等を勘案すると、本願商標をその指定商品について使用するときは、該商品が、恰も請求人若しくは請求人と何等かの関係ある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。』として(甲第56号証乃至甲第57号証)、申立にかかる商標登録出願「ESPRIT MUR/エスプリミュール」は取り消されている。

このたびの登録無効審判事件についても、前記2件の商標登録異議申立事件と事案を異にするものではなく、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

(5)商標法第4条第1項第7号について

世界的なトータルファッションブランドとして著名な引用商標1乃至6と相紛らわしい本件商標を、エスプリグループとは何ら関係のない他人が自己の商品について商標として採択し使用することは、本来みずからの営業努力によって得るべき業務上の信用の維持をはかる商標法の目的に反し、該名称の著名性にフリーライドするものであり、また、著名商標「ESPRIT」ないし「三SPRIT」に化体した莫大な価値を希釈化させるおそれがあるといわざるをえない。

従って、本件商標は、公正な競業秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであり、商標制度の趣旨に則しないものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

(6)むすび

以上、述べた理由により、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号及び同第7号に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により無効にされるべきものである。

2.弁駁の理由

(1)被請求人は、引用商標1乃至4が著名であることについては不知であるとしている。しかし、請求人の所有する引用商標1乃至4は、カジュアルウェア、アクセサリー、バック、靴等に長年使用され、請求人の製造にかかる商品であることを表示するものとして日本及び世界において広く知られていることはすでに審判請求書に添付の証拠において示した通りである。

中でも、特許庁における登録商標に対する登録無効審判事件における審決理由及び、登録異議申立事件における決定理由において、請求人の商標が著名商標であるということを判断されている事実は明らかであり(甲第54号証、甲第57号証乃至甲第58号証)、被請求人の主張は失当である。

(2)被請求人は、答弁書において、本件商標「ESPRITMUR」と引用商標「ESPRIT」、「エスプリ」ないし「三SPRIT」が非類似である旨を主張している。中でも、引用商標3及び4は、「エスプリ」の称呼は生じ難いものであると主張している。しかし、請求人の商標「三SPRIT」の著名性に鑑みれば容易に「エスプリ」の称呼が生じるものと認められ、被請求人の反論は成り立たないものである。

次に、被請求人は、本件商標は、一体として「思慮に富んだ人」「おとな」の意を有し、このことにより、本件商標から一体不可分の「エスプリミュール」の称呼のみが生じると主張している。しかし、当職らの調べた限りにおいて、「ESPRITMUR」なる語が「思慮に富んだ人」あるいは「おとな」の意味を有する語として日本において一般に理解されている事実は見出すことはできなかった。また、そもそも、仏語において、「思慮に富んだ人」あるいは「おとな」を意味する言葉として、「Esprit mur」と表すことはあるが、「ESPRITMUR」と一連に書して表すことはない。従って、「思慮に富んだ人」あるいは「おとな」の意味を直ちに想起させるものではない。仮に、「思慮に富んだ人」あるいは「おとな」の意味を有するとしても、「思慮に富んだ人」あるいは「おとな」の意味を持つためには、むしろ「Esprit」と「mur」の二つの語が組み合わさって初めてそのような意味内容が生まれることから、たとえ本件商標が「ESPRITMUR」として一体的に書してなるものであっても、観念上「Esprit」と「mur」とを分離して捉えることが自然であるといえる。

そして、審判請求書でも述べた通り、本件商標は、看者の注意を喚起しやすい接頭部において「ESPRIT」の文字を構成してなり、かかる語は「才気,機知」を意味する親しまれた外来語であること、さらには、請求人の商標「ESPRIT」が著名商標であることに鑑みれば、「エスプリ」の称呼を容易に生じさせるものである。一方、引用商標からも、それらの文字に相応して「エスプリ」の称呼が生じることは明らかである。

従って、本件商標は、引用商標に類似するものであり、その指定商品も同一又は類似することから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

以上より、本件商標から一体不可分の「エスプリミュール」の称呼のみが生じ、引用商標とは非類似であるとの被請求人の反論は成り立たない。

(3)被請求人は、審判請求書における、「商標法第4条第1項第15号」に関連して、本件商標は、引用商標1乃至4と称呼、観念につき相違するので、市場において使用された場合、引用商標1乃至4と何ら混同するおそれがないと主張している。しかし、請求人の引用商標1乃至4は、上記の通り、本件商標と類似することは明白であり、これらの引用商標は、請求人の保有する著名商標であることに鑑みると、本件商標がその指定商品に使用された場合、取引者・需要者をして、その商品が請求人の提供にかかるものであるかのごとく、あるいは、請求人と何等かの経済的・組織的関連があるかのごとく認識され、出所混同を生ぜしめるおそれがあるといわざるをえない。

(4)被請求人は、審判請求書における、「商標法第4条第1項第7号」に関連して、引用商標1乃至4は日本国内において著名ではなく、また、本件商標を指定商品に使用した場合でも引用商標1乃至4と出所につき混同を生じるものではなく、本件商標の登録が商標制度の趣旨に則しないものであると主張している。

しかし、審判請求書および上述した通り、請求人の有する引用商標は日本国内及び外国において著名であり、本件商標を指定商品に使用した場合に引用商標と出所につき混同を生じるものであることから、請求人とは何ら関係のない他人が自己の商品について、本件商標を商標として採択し使用することは、請求人の有する著名商標にフリーライドするものであり、また、かかる著名商標に化体した莫大な価値を希釈化させるおそれがあるものである。 従って、審判請求書において述べた通り、本件商標は、公正な競業秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであり、商標制度の趣旨に則しないものであることから、被請求人の主張は失当である。

以上に述べたとおり、請求人は被請求人の答弁に対し弁駁し、請求の趣旨のとおりの審決を求めるものである。

第4.被請求人の主張

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判の費用は請求人の負担とする。との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べている。

(1)本件審判請求書の6.請求の理由中、「(1)請求の理由の要約」の表に示された本件商標についての商標の態様、指定商品、区分、手続の経緯の記載、および、引用商標1から6までの登録商標の態様、指定商品、区分、手続の経緯の記載は、これを認めるが、表に示された「理由の要点」および「2)の請求の根拠」については争う。

(2)審判請求書の6.請求の理由の6枚目以下の「3)具体的理由」のうち「(1)本件商標について」の記載および「(2)引用商標について」の甲第2号証から甲第7号証に示された引用商標1から6についての記載は認める(但し引用商標5の商標の欄は「ESPRIT」と推定する。)が、引用商標1乃至4が著名であること及びその他の主張については不知である。

(3)請求人は、「商標法第4条第1項第11号について」において、本件商標から「エスプリミュール」あるいは「エスプリ」の称呼が生じる、と主張しているが、本件商標は「ESPRITMUR」の欧文字を同一書体で一体不可分に表示したものであり、これから自然に生じる称呼は「エスプリミュール」のみであって、冗長ではなく、その前半のみを取り出して観察することは極めて不自然である。また、「ESPRITMUR」は一体として「思慮に富んだ人」「おとな」の意を有し、このことは一般に用いられる仏和辞典に示されており、このことも本件商標から一体不可分の「エスプリミュール」の称呼のみが生じることを示している。

これに対して引用商標1から4を観察すれば、引用商標1、2は片かな「エスプリ」又は欧文字「ESPRIT」であることから「エスプリ」の称呼は生じるが、引用商標3、4は「エスプリ」の称呼は生じ難いもので、仮に百歩を譲っても、その称呼は「エスプリ」で、前記した本件商標の称呼とは後半の差異により充分に取引上区別できるものであり、本件商標は引用商標1から4のいずれとも類似しないものである。

従って、本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号の規定に反するものではない。

(4)請求人は「商標法第4条第1項第10号について」において、本件商標が引用商標1から4に類似し、指定商品も類似すると主張しているが、前記した通り、引用商標1から4と本件商標は、称呼、観念につき相違するので、請求人の主張は失当である。

(5)請求人は「商標法第4条第1項第15号について」において、引用商標1から4が著名であるため、本件商標が指定商品に使用された場合、出所の混同を生ぜしめるおそれがある、と主張している。

しかしながら、本件商標は引用商標1から4と称呼、観念につき相違するので、市場において使用された場合、引用商標1から4と何ら混同するおそれのないものである。

さらに、請求人が商標登録異議申立てを提出し、申立にかかる商標登録出願が取り消されている、と主張している商願平6−051037号(14類)、商願平6−051038号(18類)は、乙第1号証、乙第2号証として提出した審決公報平成10年審判第14347号、平成10年審判第704号に示す通り、「原査定を取り消す、本件商標は登録すべきものとする。」との審決がされており、拒絶査定の理由となった甲第56号証、甲第57号証の異議決定は取り消されている。

なお、甲第54号証として示された平成3年審判第21574号審決、甲第55号証の商願平5−53972号登録異議の申立てについての決定謄本は「エスプリ」・「ESPRIT」を要部とする商標に関するもので、本件とは事案を異にするものである。

請求人が甲第12号証から甲第53号証を提出して日本国内において使用していると主張する商標は、それら新聞、雑誌によればいずれも「三SPRIT」という語頭の文字が「三」を図案化したことを特徴とするものである。これに対し、本件商標はそのような特徴を有さず、しかも前記のように「エスプリミュール」の呼称と「思慮深い人」の観念を生じるので、市場において本件商標を指定商品に使用した場合、引用商標1から4と混同しないことは極めて明らかである。従って、本件商標の登録は商標法第4条第1項第15号の規定に違反しないものである。

さらに加えれば、前記「(2)引用商標について」において「日本においては・・・1994年には日本各地に直営店を開き・・・・」の主張であるが、甲第11号証「エスプリ会社案内抜粋写し」にはJAPANの項では「STORES,FRANCHISES,SHOP IN SHOP,SHOWROOM」のいずれの項も0(ゼロ)であり、この請求人の主張は事実と反する疑いがある。

(6)請求人は「商標法第4条第1項第7号について」において、本件商標の登録が商標制度の趣旨に則しないものである。と主張しているが、前記のように引用商標1から4は日本国内において著名ではなく、また、本件商標を指定商品に使用した場合でも引用商標1から4と出所につき混同を生じるものではなく、まして、本件商標の登録が公序良俗に反しないことは当然である。

(7)以上の通り、請求人の主張はいずれも失当であり、本件商標の登録は商標法第46条第1項第1号の規定に該当しないものであり、答弁の趣旨通りの審決を求めるものである。

第5.当審の判断

1.商標法第4条第1項第10号及び同第11号について

本件商標は、前記したとおり「ESPRITMUR」の欧文字を同書、同大、同間隔に一連に表示してなるものであり、これより生ずると認められる「エスプリミュール」の称呼も冗長に亘ることなく、よどみなく一気に称呼し得るものであるから、その全体の構成文字をもって一連に「エスプリミュール」とのみ称呼される造語よりなるものと判断するのが相当である。

これに対し、引用商標1ないし引用商標6の引用各商標は、前記及び別掲に示す構成よりなるところ、別掲に示す商標は「ESPRIT」の文字をデフォルメ(変形して表現)したものと看取し得るものであるから、それぞれの構成文字に相応して「エスプリ」の称呼を生ずるものと認められる。

しかして、本件商標より生ずる「エスプリミュール」の称呼と引用各商標より生ずる「エスプリ」の両称呼は、音構成、構成音数において明らかな差異を有するものであるから、称呼において類似するものとは認められない。

また、観念においては、本件商標は上記のとおり造語と認められるから引用各商標とは比較し得ないものであり、さらに、両商標は、前記したとおりであって、外観上も十分に区別し得る差異を有する類似しないものである。

そうとすれば、本件商標と引用各商標は、外観、称呼及び観念のいずれからみても非類似の商標といわなければならない。

2.商標法第4条第1項第15号について

請求人より提出された証拠によれば、引用商標中、引用商標3、4、6の「ESPRIT」の頭文字の「E」の欧文字を「三」のような文字にデフォルメした別掲に示す商標が、請求人を中心とする企業グループによって被服、アクセサリー、バッグなどのファッション関連商品に使用され、雑誌等に広告宣伝し、記事でとりあげられるなどした結果、本件商標の登録出願時には、上記の引用商標がある程度知られるに至ったことが認められるとしても、請求人提出の証拠をもってしては、外国においてはともかく、日本国内については、例えば、甲第11号証として提出された「インターナショナル・セール・オペレーション」と題された表によれば、日本における店舗数が、「STORES」、「FRANCHISES」、「SHOPーINーSHOP」及び「SHOWROOM」のいずれも0(ゼロ)となっているほか、取引書類等はなく、日本国内での取引量等の状況も必ずしも定かになっていないものであり、上記別掲に示す商標ほか引用各商標が我が国において著名商標であることを立証する証拠としては不十分なものといわざるを得ない。

してみれば、本件商標は、前記認定のとおり引用各商標とは十分に区別し得る別異の商標といえるものであり、かつ、請求人の使用に係る商標の大半が前記別掲に示すとおり、その頭文字「E」に特徴を有する商標であることからすると、「ESPRITMUR」の文字を一連に普通に用いられる態様で表してなる本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が殊更に「ESPRIT」の文字部分に着目し、請求人ら企業グループと何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるとまでいうことはできない。

3.商標法第4条第1項第7号について

本件商標は、前記のとおりの構成よりなるところ、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形からなるものではなく、また、本件商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものでなく、さらに、本件商標と引用各商標との関係は、前記のとおり認識されるといえるものであるから、本件商標が公正な競業秩序を乱し、国際信義に反するものとは認められない。

4.むすび

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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