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Trademark Appeal Case

著名商標の類否判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2003−35160(T2003−35160/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4433499号商標(以下「本件商標」という。)は、「Gray Style」の欧文字を横書きしてなり、平成11年7月15日に登録出願、第35類「広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,財務書類の作成,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約講読の取り次ぎ,書類の複製,速記,筆耕,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,文書又は磁気テープのファイリング,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与」を指定役務として、平成12年11月17日に設定登録されたものである。

2 引用商標

請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第4386716号商標(以下「引用商標」という。)は、「GREY」の欧文字を横書きしてなり、平成7年5月2日に登録出願、第35類「広告」を指定役務として、平成12年5月26日に設定登録されたものである。

3 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第87号証を提出した。

(1)請求の理由

(ア)引用商標の著名性について

引用商標は、請求人が1917年の創業以来、長年使用している著名商標である(甲第3号証ないし甲第18号証)。

請求人であるグレイ グローバル グループ インコーポレイテッドは、コミュニケーション及びマーケティング関連会社10社あまりを傘下におさめるグループ企業であり、グループ会社のうち、広告会社グレイ アドバタイジングは米国を代表する大手広告会社のひとつである。2000年7月1日に同社は、グレイ ワールドワイドに社名変更し、米国のみならず、日本においても広く新聞・雑誌に報道がされた(甲第3号証ないし甲第18号証、甲第27号証ないし甲第52号証、甲第70号証ないし甲第75号証及び甲第83号証ないし甲第87号証)。日本においては、1963年にグレイ アドバタイジングと日本の大手広告会社である株式会社大広との合弁事業として、グレイ大広を設立し、日本の広告業界において活発な活動を行ってきたが、2000年7月にグレイ アドバタイジングが株式会社大広の持ち株を買取ったことに伴い、株式会社グレイ ワールドワイドに社名変更した。

請求人は創業以来、広告、メディア、PR、ダイレクトマーケティング、インタラクティブなどグローバルにその活動分野を拡大し、広告業界において著名な世界企業に成長した。米国の広告雑誌「Advertising Age」の発表したところによれば、2000年における世界トップ10の広告会社のうち、グレイ ワールドワイドは6位にランクインし、取扱い高では1999年及び2000年の2年連続で、全米1位にランクされている(甲第21号証及び甲第22号証)。また、これまでグレイ ワールドワイドの業績については数多くのメディアに注目されてきた(甲第3号証ないし甲第20号証)。

グレイ ワールドワイドと日本の株式会社大広との合弁企業グレイ大広についてもその活動は1963年の創業以来、日本の広告業界において着実に実績を残し、数々の広告が賞を受賞しその業績が新聞・雑誌・TVなどでも紹介された(甲第54号証ないし甲第87号証)。1998年には、国内における外資及び外資系広告会社の売上高のランキングでグレイ大広は、5位にランクインされ、名実ともに広告会社グレイの名は広く業界内のみならず一般需要者にとっても著名となるに至っている(甲第57号証)。

グレイ大広がグレイ ワールドワイドに社名変更した際には、大々的な記者発表を行い、このニュースは広く一般新聞・雑誌、業界新聞・雑誌にとり上げられ、世界企業であるグレイ グループを背景にグレイの名が広告業界において、いかに関心が高く著名であるかを示すものとなっている(甲第23号証ないし甲第54号証、甲第70号証ないし甲第75号証及び甲第83号証ないし甲第87号証)。また、社名変更の報道と相俟って、30年間もの間、グレイ ワールドワイドのトップを務めてきたエドワード・マイヤーの有能な経営者としての側面にスポットをあてた新聞・雑誌記事も数多く、世界企業グレイとともに、グレイを統率するトップの顔として広く紹介された(甲第3号証ないし甲第48号証)。

以上より、引用商標は、本件商標の出願時である平成11年(1999年)7月15日当時において、請求人に係る商品又は役務を表示するものとして、既に我が国において著名であった。

(イ)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、「Gray Style」の文字に相応して、「グレイ」或いは「グレイスタイル」の称呼が生じる。

これに対して、引用商標は、「GREY」の文字に相応して、「グレイ」の称呼が生じる。

本件商標の欧文字「Gray」と引用商標の欧文字「GREY」は外観において小文字「a」及び大文字「E」の差異しかなく、共に「グレイ」の称呼を有することについて差異はない。

また、「Style」の文字部分は、「〜のスタイル、〜流」といったように形容詞として使われる語であることから識別力は弱く、請求人の使用にかかる「GREY」の文字部分の著名性に鑑みると本件商標のうち「Gray」部分が商標としての識別力を有する部分であり、その文字に相応して「グレイ」の称呼が生じる。

したがって、「グレイ」と称呼される本件商標と引用商標とは、称呼において同一のものである。

また、「Style」の文字部分は、「やり方、流儀、方式、様子」といった意味内容を有する外来語として一般需要者において容易に理解されるところ、かかる語は、広告対象となる商品等のイメージを効果的にターゲット層に伝達するためにどのような「方法・方式・やり方」で行うかを検討することを業とする広告業界においては、広く頻繁に使われている語のひとつである。すなわち、対象商品とターゲット層を踏まえ、どのような「スタイル」の広告を仕上げていくか、また、それを各広告会社独自の「スタイル」でどのように形作っていくか等が検討される業界に鑑みて、指定役務「広告」との関係で識別力が弱い。

さらに、「スタイル」の意味内容及び広告制作における「スタイル」の重要性、請求人の使用にかかる商標「GREY」の著名性に鑑みると、本件商標は、全体として広告会社として著名な「GREY」が「表現する・得意とする(広告の)スタイル」或いは「GREYスタイル(流)の広告」といった観念を生じさせるものである。

したがって、全体としてみれば、本件商標は引用商標と外観、称呼、観念上類似する。

以上より、本件商標は引用商標と類似するものであり、その指定役務も類似する。

(ウ)商標法第4条第1項第10号について

本件商標は著名商標である引用商標に類似し、その指定役務と同一又は類似する商品について使用するものである。

(エ)商標法第4条第1項第15号について

請求人の業務に係る役務を表示するものとして著名な引用商標と同一又は類似する本件商標がその指定役務に使用された場合、取引者・需要者をして、その役務が請求人の提供に係るものであるかのごとく、あるいは、請求人と何等かの経済的・組織的関連があるかのごとく認識され、出所・混同を生ぜしめるおそれがある。

(オ)商標法第4条第1項第7号について

世界的な広告・コミュニケーション企業である請求人のグループ企業の使用に係る著名な引用商標と相紛らわしい本件商標を、前記著名商標と何ら関係のない他人が自己の商品について商標として採択し使用することは、本来、自らの営業努力によって得るべき業務上の信用の維持を図る商標法の目的に反し、該名称の著名性にフリーライドするものであり、また、著名商標「GREY」に化体した莫大な価値を希釈化させるおそれがあるといわざるを得ない。特に、本件商標は著名商標「GREY」の欧文字のうち、識別力を有する「GREY」の部分を「Gray」と小文字で表し、さらには第三音について「E」と「a」の差異のみをもって変更を加えたものである。また、「Style」の形容詞を加えることで、著名な「GREY」の「スタイル」による広告あるいは「GREY」流の広告という観念を生じさせるとともに、全体として著名商標「GREY」と一見非類似と見せかけたがごとくの態様からなることから、当該著名商標に只乗りする意図が見受けられる。

したがって、本件商標は、公正な競業秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであり、商標制度の趣旨に則しないものである。

(カ)むすび

以上の理由により、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号及び同第7号に該当するものであるから、本件商標は商標法第46条第1項の規定により無効にされるべきものである。

(2)答弁書に対する弁駁

本件商標は「Gray」と「Style」の間にスペースを有するだけでなく、「Style」の「S」の文字は大文字となっていること、「Style」の語は本件商標の指定役務との関係で識別力が弱い文字というべきであること、さらには「Gray」の文字が請求人の著名な商標「Grey」と称呼上類似することから、本件商標は分離判断されるべきであり、その場合要部となる「Gray」と引用商標とは類似するというべきである。そして、被請求人の商標法第4条第1項第10号及び同第11号の該当性に対する反論は、両者が非類似であることが前提となっているが、両者は類似する商標である以上、かかる反論は成り立たない。

なお、両者は指定役務「広告」において同一であるから、かかる「広告」について商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当する。

また、被請求人は、請求人の引用商標の著名性について種々反論するが、請求人が提出した甲第3号証ないし甲第67号証より、引用商標の著名性は明らかである。

そして、かかる著名性を考慮した場合、著名な引用商標を含む本件商標がその指定役務に使用された場合、出所混同が生ずることは明らかである。

4 被請求人の主張

被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。

(1)本件商標について

本件商標は、「Gray Style」の欧文字を横書きし、その構成各文字は全体としてまとまりよく構成されており、これから生じる「グレイスタイル」の称呼も格段冗長というべきものでなく淀みなく一連に称呼し得るもので、本件商標「Gray」部分に限定して称呼、観念しなければならないとする特段の事由があるとはいえないものと思料する。また、本件商標は全体として特定の観念を生じない一連の造語である。

すなわち、本件商標は、「Gray」と「Style」とを軽重なく結合させてなる結合商標で、構成全体として語呂・語感・語調がよいことから被請求人が採択した単なる一連の造語にすぎないものである。したがって、本件商標より生ずる称呼は「グレイスタイル」のみであり、外観的にも「Gray」と「Style」をあえて分離させることもなく、また特定の観念を生ずることもないのであり、称呼、外観、観念の点から総合的に判断して本件商標は全体として一連不可分なものである。

(2)商標法第4条第1項第11号について

前記(1)で述べたように、本件商標は全体として一連一体の商標であり、称呼的にも「グレイスタイル」の称呼のみが生じ、外観的にも分離されることなく、また観念的にも特定の観念が生じない一連の造語である。

一方、引用商標は、「GREY」の欧文字から構成されており、これより生じる称呼は「グレイ」であり、英和辞書によれば昔の英国の政治家「Charles Grey」等の人名の略称等を意味する語であるが、取引者・需要者がそのような意味内容であるとは認識、理解できない造語的な語であるものと考えられる。

そこで、本件商標と引用商標とを対比すると、本件商標からは「グレイスタイル」の称呼のみが生じるのに対し、引用商標からは「グレイ」の称呼のみが生じるので、両商標が称呼上類似していないことは明らかである。また、外観については両商標は明確に相違し、観念については、本件商標は造語であるから両者は観念上比較し得ないものである。

したがって、本件商標は、引用商標と類似しないことは明らかである。

(3)引用商標の著名性について

本来、ある商標が著名であるというためには、永年継続的かつ独占的に使用され、需要者の間に広く、かつ、周知を超える程度に広く認識されていなければならないのであるが、請求人の提出する証拠を見る限りにおいて、そのようなものは全く見当たらない。すなわち、甲第3号証ないし甲第22号証の各証拠は、米国の新聞又は雑誌の英文記事のようであるが、甲第3号証以外のものには訳文がなく、正確な内容が不明であるうえ、その内容は請求人の代表者の言動、名称変更及び会社組織等へ言い及ぶのみであり、引用商標に関する記述はないに等しく、引用商標のわが国での著名性を立証するものではない。また、甲第23号証ないし甲第26号証については、グレイ大広からグレイ ワールドワイドへの社名変更の記者発表用資料であり、その中に若干引用商標の使用が見られるものの、これは請求人の主観的な資料であり、これに関連する客観的な資料であると思われる甲第27号証ないし甲第87号証には殆ど引用商標の使用例が見当たらないので、引用商標がわが国で著名であることは何ら立証されていない。

(4)商標法第4条第1項第10号について

前記(2)で述べたように、本件商標と引用商標とは非類似であり、しかも、前記(3)で述べたように引用商標はわが国において周知であるとは到底認められない。なお、百歩譲って仮に引用商標が周知であったとしても、本件商標と引用商標とは非類似であるので、本件商標は本号に該当しない。

(5)商標法第4条第1項第15号について

前記(3)で述べたように、引用商標は、わが国で著名であるとは到底是認できず、さらに、前記(2)で述べたように、本件商標はその外観、称呼、観念のいずれにおいても引用商標とは十分に区別し得る商標であり、さらに本件商標と引用商標とを関連づけてみなければならない特段の事由も存在しないため、本件商標をその指定役務に使用したとしても、取引者・需要者をして、その役務が請求人の提供にかかわるものであるかのごとく、又は請求人と何らかの経済的・組織的関連があるかの如く認識され、出所の混同を生ぜしめるおそれは全くないものと思料する。

(6)商標法第4条第1項第7号について

本号は商標審査基準(乙第1号証)からも明らかなように、請求人の主張するフリーライドすること及び希釈化されるおそれがあることという事由は本号に該当するものではない。

(7)まとめ

以上のとおり、本件商標が商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号又は同第7号に該当するとの請求人の主張は、いずれも理由がない。

5 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、「Gray Style」の欧文字よりなるところ、その構成文字は、全体としてまとまりよく表されており、これより生ずると認められる「グレイスタイル」の称呼も格別冗長というべきものでなく淀みなく一連に称呼し得るものである。そして、本件商標を構成する「Style」の文字がその役務の内容(品質)を具体的に特定して表示したものと認識、理解されるものとはいい難く、その証左も見当たらないから、本件商標は、「Gray」の部分に限定して称呼、観念しなければならないとする特段の理由があるとは認められない。

そうとすれば、本件商標は、「Gray Style」の文字に相応し、「グレイスタイル」の称呼のみを生ずるものと判断するのが相当である。

他方、引用商標は、「GREY」の文字に相応し「グレイ」の称呼を生ずるものである。

してみれば、本件商標より生ずる「グレイスタイル」の称呼と引用商標より生ずる「グレイ」の称呼とは、「スタイル」の音の有無の差異により、明らかに聴別し得るものである。また、本件商標は、全体として特定の意味を有しない一連の造語と判断するのが相当であるから、両商標は観念上比較し得ないものであり、それぞれの構成よりみて、外観上も互いに区別し得る差異を有するものである。

そうしてみると、本件商標と引用商標とは、その称呼、観念及び外観のいずれの点においても、非類似の商標といわざるを得ない。

(2)商標法第4条第1項第10号及び同第15号について

請求人の提出した甲第3号証ないし甲第87号証によれば、請求人らは、「GREY」、「グレイ」、「グレイ大広」等の文字を「広告」等の役務に使用していることは認め得るとしても、我が国において、「GREY」、「グレイ」のみを使用し、本件商標の登録出願時にその取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認め得るに足る証左は乏しいばかりでなく、本件商標と引用商標又は請求人の使用する商標とは、その称呼、観念及び外観のいずれからしても十分に区別し得る商標であり、別異の商標と看取、認識されるものであって、さらに両者を関連づけてみなければならない事由も認められないから、本件商標をその指定役務に使用しても、その役務が請求人又は同人と何らかの関係のある者の業務に係る役務であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれはないものというのが相当である。

(3)商標法第4条第1項第7号について

本件商標は、その構成自体が矯激、卑猥、差別的な印象を与えるような文字又は図形からなるものではなく、また、引用商標とは非類似の商標であって、請求人に係る商標にフリーライド若しくはそれに化体した価値を希釈化させるおそれがあるものでもないから、社会公共の利益、一般道徳観念、国際信義に反するものとは認められない。

(4)結語

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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