結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2003−30347(T2003−30347/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第1756810号商標(以下「本件商標」という。)は、「トリメック」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和57年1月22日に登録出願、第1類「除草剤、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和60年3月25日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。
被請求人は、本件商標の指定商品「化学剤及びそれに類似する商品」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者自ら使用していないものであり、また、商標登録原簿(甲第2号証)に専用使用権又は通常使用権のいずれの登録もなされていないので、専用使用権者又は通常使用権者のいずれの使用もされていない。
よって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、請求に係る商品についての登録を取り消す、との審決を求める。
(1)訴えの利益と商標権侵害について
我が国商標法は、平成8年の法改正において不使用取消審判の請求人適格を「何人」と規定したものであるから、請求人に何ら利害関係を求めるものでもなければ、請求人が審判の請求に係る商標を使用可能か否かを要件とするものではない。
被請求人が提出した乙第2号証には、「(補説)不使用取消審判の請求人適格について」の項の記載が存在し、公益的観点から不使用商標を排除する手段を与えるものであって、利害関係や、使用可能であることを要件とするものではなく、その点の欠如により権利濫用とされるものではないことは明らかである。請求人は、被請求人を害する目的を以て本件審判を請求したものではないから、本件審判請求が被請求人を害することを目的とするような場合にあたらないことは明白である。
また、被請求人は、花王株式会社が「トリメックス」を登録出願している、旨等を主張しているが、請求人とは何ら関係のない事実であり、不知である。
(2)本件商標の使用について
被請求人の提出に係る乙第6号証ないし乙第9号証について精査するものの、本件商標は「除草剤」に使用されていることは認められるが、「化学剤」として使用されている点は全く見出せない。
(ア)乙第6号証について
乙第6号証は、アリスタライフサイエンス株式会社の作成に係る「製品安全データシート(2002年11月27日作成)」であって、被請求人の主張によれば、「本件商標『トリメック』と『混合物』、化学剤としての『メコプロップ』、『ダイカンバ』、『ジメチルアミン』、『界面活性剤』の表示がある。」旨主張している。
被請求人の主張の如く確かに、同号証には、「トリメックF液剤」が「混合物」に該当するものであって、その成分が記載されている。被請求人は、化学剤として、「トリメックF液剤」の成分として「メコプロップ」、「ダイカンバ」、「2,4‐D」、「水、界面活性剤等」の記載がある点をもって化学剤としての使用の論拠としている。
しかしながら、被請求人は、あくまで、「メコプロップ」、「ダイカンバ」、「2,4‐D」、「水、界面活性剤等」を成分とする「トリメック」を販売しているものであって、「メコプロップ」等の成分単体を販売しているものではない。
被請求人は、乙第6号証に関連して、判例(乙第10号証)を提出しているが、本件の事案とは全く異なるものである。
また、被請求人の提出に係る乙第各号証から、明らかであるように、被請求人が除草剤について使用する「トリメック」は、農薬取締法の適用対象となっている農薬に該当するものである。
農薬取締法は、農薬の危険性に鑑み、農薬について登録制度を設け、販売及び使用の規制を行うものである(農薬取締法第1条:甲第5号証)。
農薬取締法の適用対象となる農薬は、「農薬について、農林水産大臣の登録を受けなければ、これを製造し若しくは加工し、又は輸入してはならない。」旨規定されている(農薬取締法第2条:甲第5号証)。
しかして、被請求人の主張によれば、「東洋グリーン株式会社」及び「株式会社ニチノー緑化」が商品「トリメック」を販売しているとのことであり、農薬取締法の適用対象である以上、農林水産大臣の登録を受ける必要があるものであって、東洋グリーン株式会社は、登録番号第16862号「種類名:MCPP・MDBA・2,4−PA液剤」、「商品名:トリメックF液剤」、「用途:除草剤」及び日本農薬株式会社(株式会社ニチノー緑化については、日本農薬株式会社がトリメックの製造を行っているものであり、登録も同社が行っているものである。)は、登録番号 第16861号「種類名:MCPP・MDBA・2,4−PA液剤」、「商品名:日農トリメックF液剤」「用途:除草剤」として登録している(乙第3号証及び乙第4号証)。
農薬取締法において、登録を受けるにあたっては、一定の事項を記載した一定の書類を提出する必要があるものであるが(農薬取締法第2条第2項)、当該事項には、農薬の種類(用途)も当然に含まれているものであって(甲第5号証及び甲第6号証)、登録は、該登録の対象となった農薬の用途にのみ与えられるものであって、登録の対象外の用途に使用することが出来ない点は言うまでもないところである。
しかして、東洋グリーン株式会社及び株式会社ニチノー緑化の登録に係る用途は何れも「除草剤」であって、何ら他の用途を見出し得ないものである。
即ち、被請求人の主張の如く「除草剤」としてのみならず、「化学剤」としても使用しているのであれば、「除草剤」以外の何らかの用途を有するものであるが、登録事項から判断するに、「除草剤」以外の使用は農薬取締法違反に該当し、三年以下の懲役等の罰則の対象となるものである(農薬取締法第17条第1号、農薬取締法第2条第1項)。
即ち、被請求人は、我が国法制上、商品「除草剤」以外に本件商標「トリメック」を使用することができないものである。
また、被請求人の主張の如く「除草剤」のみならず、「化学剤」としても使用しているのであれば、「除草剤」以外の何らかの用途を見出し得るはずである。
しかしながら、被請求人は商品「トリメック」を「メコプロツプ」、「ダイカンバ」、「2,4‐D」、「水、界面活性剤」を成分とする農薬として販売しているものであって、これら4種の成分の混合物である「トリメック」を購入し、他の成分等と調合して他の用途に用いることは通常ありえないものであって、それらの他の用途への使用は農薬取締法違反に該当するものであり、ありえないものである。
さらに、被請求人の提出する商品「トリメック」は、「トリメック」を「メコプロップ」、「ダイカンバ」、「2,4‐D」を成分中に含むことを特徴とするものであって、当該3種の成分自体何れも、甲第7号証ないし甲第9号証からも明らかであるように、「除草剤」以外に用途が存在しないものであって、それらがその成分自体に着目され「除草剤」以外の「化学剤」等として使用されることはあり得ないものである。
従って、甲第6号証からは、農薬取締法上及び化学分野における何れの観点から見ても、被請求人は、「除草剤」についてのみ本件商標「トリメック」を使用しているものであって、「化学剤」等の「化学品」について使用しているものでないことは明らかである。
(イ)乙第7号証ないし乙第9号証について
乙第7号証ないし乙第9号証においては、乙第6号証とは異なり、何れの証拠の何れの箇所からも「除草剤」のみならず「化学剤」として使用している事実を全く見出すことができない。また、我が国においては商品「トリメック」を「除草剤」以外の他の用途に使用出来ない以上、被請求人が「除草剤」についてのみ使用していることが明らかである。
また、被請求人は、「もともと、化学剤である本件商標の使用に係る商品が、除草の効能もあるために、除草剤としても製造・販売されているものである」旨主張しているが、被請求人は、除草剤以外の用途も有する「化学剤」として本件商標を使用している証拠を全く挙げていないものであって、挙証責任が被請求人にある以上、それらの事実は認められないばかりか、我が国においては、「除草剤」以外の用途に係る使用は農薬取締法上、認められないものである。
また、被請求人は、「混合物である『化学剤』が『除草剤』であり、原材料及び品質、生産部門、販売部門が一致するから、『化学剤』と『除草剤』は類似商品の関係にあることは明らかである」旨主張しているが、登録商標を指定商品に使用することを取消の要件とし、類似商品が取消の判断に何ら影響を与えるものではないとする点を失念したものであり、何らの意味を有するものではない。
(3)結び
以上のように、被請求人は、本件商標を「除草剤」にのみ使用していることが明らかであって、「化学剤」に使用するものでないことは明白である。
被請求人は、本件請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。
請求人村野親は、被請求人の調査によると、「特許資料各種撮影及び複写」等を業とする有限会社エム・ディー・エスの代表取締役である(乙第1号証)。
本件審判請求に係る商品「化学剤及びそれに類似する商品」は、大掛かりな装置がないと製造できない商品であるから、請求人が商品「化学剤及びそれに類似する商品」について、本件商標を使用することは考えられないところである。
このように、自ら本件商標と同一または類似の商標を使用する意思のない者が、本件商標に不使用取消審判を請求することは、被請求人を害することを目的とした行為と認められるから、権利濫用にあたり許されるべきでない(乙第2号証)。
不使用取消審判を請求する者は、通常、本件商標と類似する商標を出願している者であるから、本件商標と類似する商標の出願を調査したところ、花王株式会社が「トリメックス」を出願していること(乙第3号証)、また、商標「トリメックス」を長年にわたり、商品「化学品」に使用していることが判明した(乙第4号証及び乙第5号証)。請求人と花王株式会社との関係は明らかではない。
本件商標は、本件商標の使用に係る商品「化学剤、除草剤」の日本の輸入代理店であるアリスタライフサイエンス株式会社(東京都中央区明石町8−1聖路加タワー)、販売店である東洋グリーン株式会社(東京都台東区寿3丁目14番11号)、株式会社二チノー緑化(東京都中央区日本橋小伝馬町14番4号)により、本件審判請求予告登録前3年以内に商品「化学剤,除草剤」に使用されているものである。
その事実を証明する証拠として以下の証拠を提出する。
(1)アリスタライフサイエンス株式会社作成にかかる「製品安全データシート(2002年11月27日作成)」写し(乙第6号証)には、本件商標「トリメック」と「混合物」、化学剤としての「メコプロップ」、「ダイカンバ」、「ジメチルアミン」、「水、界面活性剤等」の表示がある。
(2)東洋グリーン株式会社2000年5月10日作成の商品カタログ写し(乙第7号証)及び株式会社二チノー緑化2001年1月作成の商品カタログ写し(乙第8号証)には、本件商標が、以下の化学剤からなる化学剤及び除草剤に使用されていることが示されている。
・2−メチル−4クロルフェノキシンプロピオン酸ジメチルアミン
・2−メトキシ−3、6−ジクロル安息酸ジメチルアミン
・2、4ジクロルフェノキシ酢酸ジメチルアミン
・界面活性剤
(3)東洋グリーン株式会社発行株式会社東海グリーン宛2003年4月1日付納品書写し(乙第9号証)には、「トリメックF液剤」、「単価45,000」、「金額90,000」と、本件商標の使用に係る商品が実際に他社に納入されたことが示されている。
本件商標に係る商品は、乙第6号証にあるように、化学剤として輸入され、販売されるときに、化学剤・除草剤として販売されるものである。
一つの商品が、2つの商品概念に属する2面性を有することがあることは、判例も認めるところである(乙第10号証)。
本件商標の使用に係る商品も、化学剤として、また、除草剤として、製造・販売されているものであり、化学剤及び除草剤両方の商品概念に含まれるものである。すなわち、もともと、化学剤である本件商標の使用に係る商品が、除草の効能もあるために、除草剤としても製造・販売されているものである。
混合物である「化学剤」が「除草剤」であり、原材料及び品質、生産部門、販売部門が一致するから、「化学剤」と「除草剤」は類似商品の関係にあることは明らかである。
商標法第50条の規定には、不使用取消審判の請求人適格を「何人」と規定していることから、請求人は、利害関係人であることを立証する必要はなないものと解釈するのが相当である。
そうして、請求人適格を「何人」とすることとしても、当該審判の請求が被請求人を害する目的としていると認められる場合には、その請求は権利の濫用として認められないことがあるとしても、本件審判請求においては、請求人が被請求人を害することを目的として請求されたとする証左は見あたらないから、本件審判請求は権利の濫用ということはできない。
また、花王株式会社が「トリメックス」を登録出願している事実(乙第3号証)及び使用の事実(乙第4号証)は、本件審理に影響を与えるものではない。
(1)被請求人の提出した乙第6号証ないし乙第8号証によれば、下記の事実が認められる。
(ア)被請求人の製造、販売する商品の輸入代理店と推認されるアリスタライフサイエンス株式会社作成の「製品安全データシート」によれば、製品及び会社情報の項において、「製品名:トリメックF液剤」と記載されていること。さらに、組成、成分情報の項において、単一製品・混合物の区別:混合物として、種類名:MCPP・MDBA・2,4‐PA液剤、有効成分化学名(一般名):・α(2−メチル−4‐クロルフェノキシ)プロピオン酸ジメチルアミン(メコプロップ)・2−メトキシ−3,6−ジクロル安息香酸ジメチルアミン(ダイカンバ)・2,4ジクロルフェノキシ酢酸ジメチルアミン(2,4‐PA‐ジメチルアミン)と記載されていることが認められる(乙第6号証)。
(イ)東洋グリーン株式会社発行のカタログによれば、被請求人の製造、販売する商品「芝生用除草剤」に「トリメックF液剤」の商標(請求人の商標である旨が記載されている。)を使用し、トリメックは、アメリカPBIゴードン社が開発した広葉雑草専用の除草剤です、と記載されていること。さらに、そのカタログ中の〈成分〉の項には、MCPP〔α−(2−メチル−4‐クロルフェノキシ)プロピオン酸ジメチルアミン〕、MDBA〔2−メトキシ−3,6−ジクロル安息酸ジメチルアミン〕、2,4PA〔2,4ジクロルフェノキシ酢酸ジメチルアミン〕、水、界面活性剤等と記載されていることが認められる(乙第7号証)。
(ウ)株式会社ニチノー緑化発行のカタログによれば、被請求人の製造、販売する商品「(芝生用)生育期広葉雑草防除剤」に「日農」「トリメックF液剤」の商標を使用し、販売していることが認められる。
そして、そのカタログ中の〈有効成分〉の項には、MCPP〔α−(2−メチル−4‐クロルフェノキシ)プロピオン酸ジメチルアミン〕、MDBA〔2−メトキシ−3,6−ジクロル安息香酸ジメチルアミン〕、2,4PA〔2,4ジクロルフェノキシ酢酸ジメチルアミン〕、その他の成分 水、界面活性剤等と記載されていることが認められる(乙第8号証)。
(2)さらに、請求人の提出した、社団法人日本植物防疫協会の農薬登録検索結果によれば、「商品名:トリメックF液剤」「用途:除草剤」「登録業者:東洋グリーン株式会社」「有効成分:MCPP・MDBA・「2‐4PA液剤」「水、界面活性剤等」及び「商品名:日農トリメックF液剤」「用途:除草剤」「登録業者:日本農薬株式会社」「有効成分:MCPP・MDBA・「2‐4PA液剤」「水、界面活性剤等」等が記載された除草剤が農薬として登録されていることが認められる(甲第3号証及び甲第4号証)。(3)そうして、上記のように記載された事実、各証拠における関連性及び請求人の提出した農薬取締法(甲第5号証)等を勘案すれば、日本の輸入代理店であるアリスタライフサイエンス株式会社が輸入している製品「トリメックF液剤」の成分は、東洋グリーン株式会社及び株式会社ニチノー緑化が販売する成分と一致していることより、アリスタライフサイエンス株式会社が輸入している商品は、除草剤として取り扱われる「トリメックF液剤」であり、混合物として記載されている「メコプロップ」、「ダイカンバ」、「2,4‐D」、「水、界面活性剤等」の表示は、製品名「トリメックF液剤」の組成、成分を表示しているものと認められる。アリスタライフサイエンス株式会社は、その成分の化学物質(化学剤)を輸入しているものではないものとみるのが相当である。
さらに、東洋グリーン株式会社及び株式会社ニチノー緑化が本件商標を使用している商品は、明らかに「芝生用除草剤」であって、成分の項に記載された、化学剤(化学物質)を販売しているものということはできない。
(4)ところで、本件審判請求に係る指定商品「化学剤」は、昭和35年政令第19号(昭和35年3月8日公布、昭和35年4月1日施行)で規定する商品の区分(別表)第1類に属していて、化学的製品を用途的にとらえたものであり、例えば、薬剤、染料、顔料、せっけん類等のように第1類又は他の類における概念の用途に使用される商品は含まないものと解されている(「商品区分解説」昭和55年3月31日財団法人発明協会発行)
そうしてみると、輸入代理店であるアリスタライフサイエンス株式会社、販売店である東洋グリーン株式会社及び株式会社ニチノー緑化らが使用する商標「トリメックF液剤」の使用する商品は、上記した化学物質を成分とした芝生用の「除草剤」であって、化学物質として販売しているものとは認められない。
そして、商品「除草剤」は、農薬の一種であって、農業用の薬剤であることから、第1類「薬剤」に属すべき農業用薬剤に含まれる商品と認められる。また「除草剤」と「化学剤」とはその用途、用法、規制法等が相違し、その生産部門、販売部門、需要者が異なることから、両商品は類似しているものということはできない。
その他、本件商標は、本件取消請求に係る「化学剤及びそれに類似する商品」について使用されていることを認めるに足る証拠の提出がない。
以上からすると、本件商標は、本件取消請求に係る商品「化学剤及びそれに類似する商品」について使用がされているものということはできない。
そうとすれば、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その請求に係る指定商品「化学剤及びそれに類似する商品」について使用されていないものであり、また、使用されていないことについて正当な理由があるともいえないから、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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