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Trademark Appeal Case

著名な略称と人格権

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2004−35072(T2004−35072/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4666864号商標(以下「本件商標」という。)は、「シオン」の文字を標準文字により現してなり、平成14年5月21日に登録出願、第14類「貴金属製喫煙用具,身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品,宝玉の原石」を指定商品として、同15年4月25日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証(枝番を含む。)を提出している。

1 請求の理由

本件商標は、証拠(甲第1号証の1ないし甲第4号証の2)により明らかなように、商標法第4条第1項第7号、同第8号及び同第15号に該当するにも拘らず商標登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効とされるべきものである。

(1) 商標法第4条第1項第8号該当性

本件商標は、請求人の名称及び請求人の代表を務める「中島真由美」の著名な「占い師」としての営業名(芸名)「天紫苑」(アマシオン)との関係において、その略称である「紫苑」(シオン)の片仮名文字表示「シオン」を含むものである。

(ア) 「中島真由美」は、「天紫苑」(アマシオン)としてテレビ出演等により著名な「占い師」であり、その「占い師」としての営業名(芸名)「天紫苑」(アマシオン)は、「占い」の分野では世人に広く認識されるに至っているものである。特に、2001年(平成13年)6月から9月にかけて毎週「わぁでぃTV」(埼玉・神奈川・千葉の各テレビ局にて、毎週土曜日深夜24:30より放送。)に「占い師」として出演し、番組出場者(女性)及び視聴者(一般)に向け、「占い」の役務を提供していた(甲第2号証の1ないし13)。よって、その「占い師」としての営業名(芸名)「天紫苑」(アマシオン)は勿論のこと、その略称である「紫苑」(シオン)も、番組内では「紫苑(シオン)先生」と親しく呼ばれ、これを通じて視聴者、ひいては世人に広く認識されるに至ったものである。

したがって、本件商標「シオン」は、「中島真由美」の著名な「占い師」としての営業名(芸名)「天紫苑」(アマシオン)の略称であり、かつ、請求人の名称「有限会社紫苑」の略称である「紫苑」(シオン)の片仮名文字表示の商標であり、人格権を毀損するものとして、商標法第4条第1項第8号に該当するにも拘らず登録されたものである。

(イ) また、商標法第4条第1項第8号は、商品の区分及び商品との関連性を検討することなく適用される条項であるが、指定商品との関係を考慮し、さらに詳述すれば、本件商標は、占いの分野で「開運品」と称され配布される可能性のある「身飾品,宝玉及びその模造品,宝玉の原石」をその指定商品中に包含してなり、これらの商品が商標「シオン」として販売されたとき、世人が、著名な「占い師」である「天紫苑」(アマシオン)が選定し、請求人が販売した「開運品」であるかの如く誤認することは明らかである。

(ウ) 商標法第4条第1項は、商標登録を受けることができない商標を掲げ、同項第8号は他人の「著名な略称」を含む商標を規定している。その趣旨は、他人の人格権の保護、すなわち、自己の名称等が無断で商標に使用されることにより、その者の人格権が毀損されることを防止することにある。略称が著名である場合には、氏名と同等に特定人を示すことが明らかとなり、その場合には、氏名と同様に略称が保護されるのであるから、ここにいう著名とは、その略称が特定人を表示するものとして世間一般に認識され、機能していることをいい、有名という意味での著名性ではない。本号所定の著名性は、特定人が主として活動する分野において、その略称の著名性が顕著であり、かつ、その分野が世間一般に知られやすい分野であれば、その略称は著名なものということができる。

そして、「天紫苑」(アマシオン)こと「中島真由美」は、既述のとおり請求人の代表者であり、また、請求人は、広く雑誌に「占い」に関する広告を掲載し、その広告の頁には必ず「有限会社/紫苑 Sion」の広告であることの表示と、「本当にみえてくるので、鑑定には自信があります。天紫苑より」との広告文を頻繁に表示している。

よって、請求人の名称「有限会社紫苑」の略称であり、その代表者である中島真由美の「占い師」としての営業名(芸名)「天紫苑」(アマシオン)の略称でもある「紫苑」(シオン)は、特定人を表示するものとして世間一般に広く知られており、商標法第4条第1項第8号に規定する「著名な略称」に該当するものと確信する(甲第3号証の1ないし23)。

(2) 商標法第4条第1項第7号該当性

被請求人は、請求人(有限会社紫苑)の名称及び請求人の代表者である「中島真由美」の著名な「占い師」としての営業名(芸名)「天紫苑」(アマシオン)の略称である「紫苑」(シオン)にフリーライドする不正の目的をもって、本件商標の登録を受けている。

(ア) 請求人は、平成14年7月22日に代理人弁護士を通じ、被請求人が雑誌「an.an」に「zion」(シオン)の表示で「占術の宣伝」を行ったことに対し、「占い及びそのカウンセリング業」における「zion」(シオン)の使用の停止を求め、不正競争防止法に基づく通知書を発送した。これに対し、被請求人は、平成14年7月25日付けで「今後『占いによるカウンセリング業』のサービスマークとして『シオン』の名前を使用致しません」との回答を行っている(甲第4号証の1及び2)。

(イ) しかしながら、占いの分野で「開運品」と称されて配布される「身飾品,宝玉及びその模造品,宝玉の原石」をその指定商品とする本件商標は、そのまま登録となり、これにより被請求人は、再び「シオン」の表示で占い関連品の販売を企てていることは明白である。

かかる不正競争の意図のもとに商標登録を受けた本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するにも拘らず登録されたものである。

(3) 商標法第4条第1項第15号該当性

本件商標は、請求人(有限会社紫苑)の業務に係る商品「開運品」と広義の混同を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。そして、本号所定の混同には、本件商標の付された商品について他人の商品と誤認混同を生じさせる狭義の混同に限らず、他人と本件商標を使用する者との間に経済的又は組織的に何らかの関係が存すると誤認させる広義の混同を含むものである。

(ア) 請求人の代表者である「中島真由美」は、既述のとおり「占い師」として「天紫苑」(アマシオン)の営業名(芸名)で活動しており、その略称「紫苑」(シオン)は著名であり、かつ、請求人の名称の略称でもある。そして、請求人は、「有限会社/紫苑 Sion」として、雑誌に「占い」に関する広告を掲載しており、需要者においては「天紫苑」(アマシオン)から「シオン」の略称が、そして「シオン」の略称からは「有限会社/紫苑 Sion」が想起され、それぞれ関連的な認識を生じているものである。そうであるからこそ、既述の不正競争防止法に基づく通知書に記載のとおり、請求人は、利用者から「シオンの二号店を出したのか」との問い合わせを受けているのである(甲第4号証の1)。

(イ) また、請求人は、頻繁に雑誌に広告を掲載しており、広告の該当頁及び表紙等とともに「株式会社フレイア」(広告代理店)による広告掲載リストを提出し、その事実を立証する(甲第3号証の1及び22)。

このように「占い」に関する業界において、著名表示と同一又は類似の表示を使用することは、両表示の使用者間に「経済的又は組織的に何らかの関係が存すると誤認する」関係を生じ得るものである。

商標法第4条第1項第15号は、指定商品の類否を要件とせずに混同を防止する規定である。商品・役務の種別が異なることは、本号該当性を否定する理由とはならない。なお、指定商品の類否を要求されると解釈しても、商標法第2条第5項が、「この法律において、商品に類似するものの範囲には役務が含まれることがあるものとし、役務に類似するものの範囲には商品が含まれることがあるものとする」と規定することから、「占い」の役務と「(占いに関連する)開運品」たる商品とは、類似関係にある役務と商品であるといわなければならない。

(ウ) 請求人が著名性を獲得し、また、「占い」以外にも「開運品」の提供等を行っていることからすれば、本件商標がその指定商品に使用された場合、請求人から許諾を受けて使用しているのではないか、との広義の混同のおそれが生ずることは明らかである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するにも拘らず登録されたものである。

2 答弁に対する弁駁

(1) 本件商標と請求人の営業表示との類似性について

請求人の別称が「天紫苑」(称呼アマシオン)というフルネームであっても、占の分野で「シオン」先生と略称され、自他共に「シオン」(先生)の認識で活動する以上、その略称をもって比較すべきことは当然である。例えば、外国歌手の「マドンナ・チコネ」(フルネーム)であっても、「マドンナ」の略称をもって認識される例に徴しても明かである。

保護されるべき「著名性」は、活動している範囲における著名性(本件の場合は「占い」)を認定すべきである。しかる後に、関連商品(例えば「占いに関係する商品」)との関係をもって判断すべきものである。提出した広告宣伝活動の資料には一部日付が不明なものはあるとしても、その他の印刷物における雑誌広告による宣伝は、日付が明確である。それらを総合勘案した場合、占の分野で「天紫苑」(称呼アマシオン)は、「シオン」(先生)と略称されており、提出した資料により、占の分野では著名なものとして審理・判断されるべきものである。このような争いを想定して資料を保管しているわけではなく、これに遭遇して保管資料を提出する以上、一部の日付の不明確さをもって資料の信憑性及び本号の保護要件としての「著名性」が否定されるべきではない。

(2) 商標法第4条第1項第7号について

請求人は、自ら商標「シオン\Sion」を平成14年8月9日に第45類「占い,身の上相談」に出願し、平成15年6月20日に第4682675号として商標登録されている。

被請求人である本件商標の権利者は、請求人より商標に関するクレームを受けてから、請求人の使用商標「シオン\Sion」と類似の商標「シオン」を平成14年(2002)10月22日に第45類「占い,身の上相談」に出願(商願2002−89322)したが、請求人の前記登録商標を引用されて平成16年(2004)1月16日に拒絶査定となっている。

被請求人の出願日は、請求人の出願日から2ヶ月半の差であって、いわゆる、先願商標を検索できない範囲であり、請求人の未出願の可能性を踏まえての出願である。

このような被請求人の商標「シオン」の出願の経緯は、「不正の目的」の証左にほかならず、不正・不当な商標登録である。

(3) 商標法第4条第1項第15号について

最高裁は、商標法第4条第1項第15号に係る出所の混同についても広義の混同を含めて解釈すべきであること及びその判断基準について判示している(平成12年7月11日最高裁平成10年(行ヒ)第85号判例時報1721号141頁)。本号においては、商標が同一で商品が非類似の場合の広義の混同の例である。そして、他人の業務が実際には存在しない場合も適用することをも明らかにしている。

本件商標「シオン」を、指定商品である「貴金属製喫煙用具,身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品,宝玉の原石」に使用した場合、請求人と「経済的又は組織的に何等かの関係」があると思われるものであるといわなければならない。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証(枝番を含む。)を提出している。

1 商標法第4条第1項第8号該当性

(1) 本件商標と請求人の営業表示との類似性について

本件商標は「シオン」の片仮名文字を横書きしてなり、他方、請求人の営業表示は、請求人の代表者である「中島真由美」の芸名「天紫苑」(称呼アマシオン)及び請求人の名称「有限会社紫苑」である。

(ア) 本件商標「シオン」と請求人の芸名「天紫苑」(称呼アマシオン)との類似性ついては、前記芸名は「天」と「紫苑」とが一体不可分に結合したものであり、その称呼も「アマシオン」と滑らかに発音され、称呼及び外観上も両者は相違する。

よって、本件商標「シオン」と請求人の「天紫苑」とは非類似というべきである。

(2) 略称の著名性について

請求人は芸名「天紫苑」に関し、その略称として「紫苑」(称呼:シオン)が使用され著名であると主張しているが、そのような事実は請求人が提出した証拠(甲第2号証の1ないし甲第3号証の21)を参酌しても著名性が見受けられない。

(ア) 甲第2号証の1ないし13は、「わぁでぃTV」の出演画面であるが、その内、甲第2号証の2及び4の画面には、請求人の略称「紫苑」(シオン)を営業表示した使用がされていない。

甲第2号証の5、7、9、12及び13は、放送日が不明であり、請求人の略称「紫苑」(シオン)を営業表示した画面は、甲第2号証の1、3、6、8、10及び11にすぎない。

(イ) 甲第3号証の2ないし21は、雑誌に掲載した広告であるが、これについても、芸名「天紫苑」を営業表示とする使用であり、芸名の略称「紫苑」の使用は殆どされてない。

(ウ) 甲第3号証の22及び23は、本件商標の出願日(平成14年5月21日)後に発行された雑誌の広告であり、本審判事件の証拠には該当しないと思料する。

(エ) 前記証拠(甲第2号証ないし甲第3号証)に関し、それが最初に宣伝・広告された日は、本件商標の出願日の僅か約1年前からにすぎず、そのような短期間に宣伝・広告されただけで、著名性が確保される筈がない。

しかも,TVの放送による宣伝・広告においては、放送時間帯が深夜24時30分というものであり、そのような放送時間帯においては当然視聴率も悪く、放送地域も埼玉、神奈川、千葉の各県にすぎず、狭い地域で全国的な放送ではない。

また、雑誌による宣伝・広告においても、「占い」の広告ページには多数の占い師が同時に列挙して広告を掲載しており、しかも「占い」の専用雑誌には殆ど全ページに亙って多数の「占い師」が隈なく列挙された状態であり、請求人の広告自体の効果が周りの広告群により希釈され印象も薄くなる。

(3) このように、請求人の芸名、名称等の略称「紫苑」に関し、請求人の前記証拠を参酌しても著名性がないというべきである。

したがって、請求人の略称「紫苑」が仮に多少の需要者に知名度を有するとしても、前述したように一般人に知名度があることの証拠がなく、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当しないと思料する。

2 商標法第4条第1項第7号該当性

(1) 開運品について

請求人が主張するところの「開運品」に関し、あたかも本件商標の指定商品が必然的に該当する旨の主張をしているが、そもそも「占い」或いは「宗教」の分野において、「開運品」なるものは、その主体者(占い師、宗教者等)により千差万別に選択されるものであり、必ずしも本件商標の指定商品が「占い」の分野と必然的に結び付けられるものではない。

このことは、例えば「水」についても「ご神水」と称していることも良く知られていることであり、また、甲第3号証の18に表示されている「口紅」さえも「開運品」として販売されている事実からして、「開運品」なるものは千差万別に主体者により任意選定されるだけのことである。

(2) 商標登録例

本件商標の商標名「シオン」と同一又は類似する商標登録が多数存在する(乙第2号証の1ないし12)事実からして、請求人の略称「紫苑」(シオン)の営業表示は奇抜性、新規性、独創性に欠けている以上、これらが初めから失われないのであるから、被請求人の行為は何らフリーライドに当らず、かつ、本件商標の出願当時においては請求人の知名度もなく、請求人の営業表示である「紫苑」のことは全く知らなかったのであるから、被請求人に不正の目的もない。

なお、被請求人の平成14年7月25日付回答書(甲第4号証の2)に関し、その内容はあくまで「占い及びカウンセリング業」の役務に対してのものであり、同業での無用な紛争を避ける意味での回答をしたものである。

また、請求人から被請求人宛ての平成14年7月22日付通知書(甲第4号証の1)は、本件商標の出願日後に送達されたものである。

(3) 以上のことからして、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しないと思料する。

3 商標法第4条第1項第15号該当性

前述したように、請求人の営業表示である略称「紫苑」は全国的に周知或いは著名ではなく、かつ、請求人の営業表示「天紫苑」及び「有限会社紫苑」においても同様である。

また、請求人の営業表示である略称「紫苑」(シオン)は、登録商標(乙第2号証の1ないし12)が多数存在している事実からして、創造性がなく、又、全国的な周知性及び著名性もないものである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しないと思料する。

4 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号及び同第15号に該当しないというべきである。

第4 当審の判断

本件商標は、平成14年5月21日に登録出願(同15年4月25日設定登録)されたものであり、商標の構成を標準文字による片仮名文字で「シオン」と現し、指定商品を第14類「貴金属製喫煙用具,身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品,宝玉の原石」とするものであって、これに対し請求人は、大旨、証拠(甲第1号証の1ないし甲第4号証の2)により、「紫苑」(シオン)は、請求人(有限会社紫苑)の名称、及び「中島真由美」の「占い師」としての芸名「天紫苑」の著名な略称であるとして、本件商標が商標法第4条第1項第7号、同第8号及び同第15号に該当するにも拘らず商標登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効とされるべきである旨述べている。

ところで、「しおん」及び「シオン」の仮名遣いとする、例えば、「子音」「師恩」「紫苑」「歯音」等、及び「Sion ラテン・フランス」の見出し語が存するところであって(広辞苑 第五版)、一般世人にはこの内「淡紫色の優美な花を多数つけるキク科の多年草」の意味の「紫苑」(シオン)が比較的に想起、観念し易いものといえる。

以下、本件商標が商標法第4条第1項第7号、同第8号及び同第15号に該当するものであるかについて判断する。

1 「紫苑」(シオン)の著名性について

請求人(有限会社紫苑)は、甲第1号証ないし甲第4号証(枝番を含む。)を提出し、請求人の名称の略称であり、かつ、請求人の代表者である「中島真由美」の「占い師」としての営業名(芸名)「天紫苑」の略称である「紫苑」(シオン)が著名である旨主張しているので、その点について検討する。

(1) テレビ出演

甲第2号証の1ないし13は、「占い師」としての「天紫苑」のテレビ出演画面であるが、その画面には、番組内で「天紫苑」が「紫苑先生」と呼ばれていたとしても、占い師としての営業名「天紫苑」の略称と認められる「紫苑」と表示されているのは甲第2号証の1のみであり、それ以外の甲第2号証の2ないし13は、略称ではなく占い師としての営業名とする「天紫苑」と表示されていることが認められるに止まるものである。

(2) 広告頁掲載

甲第3号証の1は、広告頁掲載記録であるが、具体的な商標の使用等の広告の内容が何ら示されていない。

そして、甲第3号証の2ないし23の「MISTY」、「SAY」等の雑誌に掲載された広告によれば、甲第3号証の2及び3に「紫苑」及び「Sion」の文字が住所、電話とともに表示されているほか、占い師(霊能師)としての「天紫苑」「天紫苑(アマシオン)」及び「天紫苑先生」や、請求人の名称が表示されている事実は認められるが、これらの雑誌はいずれも購読者が限られた、いわゆる女性雑誌であって、その掲載頁には請求人(有限会社紫苑)のみによらず、他の占いに関する会社とともに掲載広告され、かつ、その紹介される占い師も多数掲載されているものである。

してみると、これらの女性雑誌への広告掲載をもって、占い師(霊能師)としての「天紫苑」ないし所属する有限会社紫苑(請求人)が知られる範囲は自ずと限られるというべきである。

(3) まとめ

そうすると、たとい、請求人の名称又は占い師として略称として「紫苑」及び「Sion」が占いに関するものに使用されていたことを認めるとしても、それは限られた範囲にあるばかりでなく、甲第4号証の1によれば、請求人が有限会社を設立したのは平成13年5月とみられ、本件商標の登録出願日の僅か1年前である。

したがって、請求人提出に係るこの程度の証拠によっては、請求人の名称又は占い師の営業名(芸名)「天紫苑」の略称であるとする「紫苑」(シオン)が本件商標の登録出願時には、一般世人の間に広く知られ、そのように認識されていたものとするに充分なものということはできないし、まして「シオン」の片仮名表示から当該の占い師(霊能師)やその所属会社までを想起するものといえないものである。

2 商標法第4条第1項第8号該当性

上記1のとおり、請求人の名称又は占い師の営業名(芸名)「天紫苑」の略称として「紫苑」(シオン)が本件商標の登録出願時には、広く知られていたものとはいえないから、本件商標は、他人の名称若しくは著名な芸名等、若しくはその著名な略称を含む商標に該当するものとすることはできない。

3 商標法第4条第1項第7号該当性

本件商標は、片仮名文字により「シオン」と現したものであるところ、これより「紫苑」(しおん)の語が想起されるとしても、請求人提出に係る甲各号証からは、被請求人が本件商標の登録出願に際して、請求人の名称又は占い師の営業名(芸名)「天紫苑」の略称である「紫苑」(シオン)を剽窃的にしたとするような確たる証拠は見出せないから、被請求人が本件商標を登録出願し、当該商標権を取得することについて、不正の目的をもってなされたとまではいい得ない。

4 商標法第4条第1項第15号該当性

請求人は、請求人の名称又は占い師の営業名(芸名)「天紫苑」の略称として「紫苑」(シオン)が広く認識されていたことを前提としているが、上記1のとおり、請求人の名称の略称である「紫苑」(シオン)が本件商標の登録出願時には、一般世人の間に広く認識されていたものとは認められないばかりでなく、本件商標の指定商品「貴金属製喫煙用具,身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品,宝玉の原石」と請求人の業務に係る役務「占い」又は開運についての付加的要素(厄払い、祈願を念じたもの等)をもつ「開運品」とする商品とは、その需要者の目的や商品の販売場所と役務の提供場所、及び商取引に係る行為等の取引事情を異にするものというべきであるから、本件商標をその指定商品に使用した場合、一般需要者が請求人の名称の略称である「紫苑」(シオン)を直ちに連想又は想起するとは認められず、該商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。

5 結語

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号及び同第15号のいずれにも該当するものでなく、これに違反して登録されたものといえない。したがって、本件商標について商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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