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Trademark Appeal Case

TIGER商標の類否と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2003−35472(T2003−35472/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4548628号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4548628号商標(以下「本件商標」という。)は、「TIGER ORTHO」の文字を標準文字により表してなり、アメリカ合衆国2001年1月16日の優先権を主張して平成13年5月7日に登録出願、第10類「歯科矯正用器具,その他の医療用機械器具」を指定商品として平成14年3月1日に設定登録されたものである。

2 引用商標

請求人が引用する登録第2724163号商標(以下「引用商標」という。)は、「TIGER」の文字を横書きしてなり、平成3年7月12日に登録出願、第10類「医療機械器具」を指定商品として平成10年9月11日に設定登録されたものである。

3 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とするとの審決を求める。」と申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第11号証(枝番を含む。)を提出している。

(1)引用商標について

(ア)請求人は、引用商標の商標権者であり、スウェーデン国法人アストラゼネカ アクチボラグのグループに属する会社の一つである。請求人は以下に述べる商品「ドリル」を含む歯科用器材の世界的なメーカーで、当該商品のわが国における輸入販売元は上記アストラゼネカ アクチボラグの日本法人アストラゼネカ株式会社で、発売元は株式会社デニックス(現株式会社デニックス・インターナショナル)である。これら三者は、本件商標の登録出願前から、また現在においても、医療用機械器具中の歯科用機械器具に属する商品「ドリル」について引用商標を使用している。

(イ)歯科の分野にインプラント治療と称されるものがある。これはインプラントという人工歯根に人工の歯を装着して欠損した歯を補う治療法である。インプラントはフィクスチャー、カバースクリュー及びアバットメントの三部品からなる。治療に際して、まず、上記フィクスチャーを顎の骨に埋め込む。そのために、埋入窟と称される穴を歯骨にドリリング形成する。このドリリング(穴開け)のために、工具である各種のドリル(錐)が用いられる。

引用商標は、このドリル又は複数のドリルを集めたドリルセットのカタログ類に「Tiger

TM

」の形態で付され(甲第3及び第4号証)、また取引書類中売上伝票には「TIGER」の形態で付されている(甲第5号証の1ないし7)。

このドリル又はドリルセットは、医療用機械器具(第10類)中の歯科用機械器具に属する商品で、該ドリルには、パイロットドリル、ツイストドリル、コーティカルドリルと称されるものがあり、また該ドリルセットには、パイロットドリル、ツイストドリル及びコーティカルドリルの一部又は全部を含み、サージカルドリルセットと称されてもいる。なお、引用商標の一使用形態である「Tiger

TM

」に係る商品「ドリル」を使用してのインプラント治療の例が甲第6号証の390頁以下に示されている。

(ウ)輸入販売元であるアストラゼネカ株式会社及び発売元である株式会社デニックス(現株式会社デニックス・インターナショナル)による「Tiger

TM

」又は「TIGER」を使用しての上記ドリル及びドリルセットの販売は、平成8年(1996)9月に始まり、本件商標の登録出願前の販売数量(1996年から2000年までの販売数量)は、2,010本を超え(甲第7号証)。その販売先数は、537を超えている(甲第8号証)。なお、参考ながら、2003年4月末現在の販売数量は3,647本であり、2003年8月現在の顧客数は1,033である(甲第7及び第8号証)。

インプラントを使用しての歯科治療は自費診療であるため1本の歯の治療に比較的高額の治療代を要し、また比較的長期の治療期間を要し、さらに高度な外科的治療であることから限られた歯科医によって実施されているにすぎない。

したがって、わが国においては未だ広く普及しているとはいえない状況にあることから、上記の販売数量及び顧客数の伸びは驚異的ということができる。これは、主として、引用商標に係る商品「ドリル」が品質において極めて優れていることによる。

(2)本件商標について

(ア)本件商標は、「タイガーオーソ」、「タイガーオルト」、「オーソ」、「オルト」のほか、以下に述べるとおり、「タイガー」の称呼をも生ずるものである。

(イ)本件商標中「TIGER」の部分は「タイガー」の称呼を生じ、「虎」の観念を有する。「TIGER」をタイガーというも、虎又はトラというも、等しく日本人にとって極めて親しみのある特別な動物を指していることに変わりはない。日本人にとってのその親しみは、幼少の頃から絵本、動物園、サーカス団の檻の中等に「虎」を見ていることに始まる。球団名で名高いタイガース、プロレスラーのタイガー・マスク、酔っ払いを意味する「大虎」、何れにも人気や強さや笑いがあり、人々に「虎」との近しさ、親しさを表している。また、多数の「虎」が故事ことわざにみられる。たとえば、「虎に翼」、「虎になる」、「虎の威を借る狐」、「虎の尾を踏む」、「虎は死して皮を留め人は死して名を残す」、「虎は千里往って千里還る」、「虎を描いて狗に類す」、「虎を野に放つ」などである。それらは日本人の日々の暮らし又は人生に対し故事に習った教訓を与えているものである。このように、TIGER、虎又はトラが、日本人にとって特別な動物であることは他に例を見ないことからも明らかである。

(ウ)他方、本件商標中「ORTHO」の部分は、意味のない語ではないが、わが国において普通に用いられている語ではないため、その意味の知られ度合は「TIGER」に遠く及ばない。

「ORTHO」は、「オーソ」又は「オルト」の称呼を生じ、英和辞典によれば、英語の接頭語として、「真直ぐ、正常、真実」を意味し、「オルト 相隣るベンゼン核の1及び2の位置関係」を示す(甲第9号証)。また「ORTHO」は、これが歯科の用語dentの派生語と結合すると、その本来の意義に基づき矯正の意味をもつ。たとえば、orthodentist 矯正歯科医、orthodontia 矯正歯科学、orthodontics 矯正歯科学、orthodontist 矯正歯科医、orthodontology 矯正歯科学、orthodonture 矯正歯科学のごとくである(甲第9号証)。

したがって、「ORTHO」は、わが国において一定の観念を有するとはいえないが、少なくとも指定商品の属する分野におけるメーカー、販売者、需要者(歯科医師、歯科医院、歯科クリニック、病院)らに矯正歯科を想起させるものであるということはできる。参考ながら、YAHOO ヤフーで調べたところでは、「ORTHO」は、登録サイト8件中5件が「矯正歯科」を表すものとして検索される(甲第10号証)。

矯正歯科が歯科治療のために歯科矯正用器具を必要とし、これを実際に使用するところであることはいうまでもない。このため、歯科矯正用器具について使用する本件商標の構成に「ORTHO」の語を含ませたのは、その語の表す商品の用途ゆえであったと推測するに何らの困難もない。それは、英語を国語とする米国のニューヨークに所在の本件商標の商標権者にとっては、意図的なことであったというべきである。

(エ)以上のとおり、本件商標中「ORTHO」の文字は、矯正歯科を想起させ、本件商標が使用される商品が歯科矯正用器具であることを指しているにすぎないから、本件商標が医療用機械器具中の歯科矯正用器具に使用されるとき、自他商品の識別力は「TIGER」にのみあるということができる。このことから、明らかに、本件商標から「タイガー」の称呼が独立して生ずるということができる。

(オ)次に、本件商標における「TIGER」の文字と「ORTHO」の文字との間には2文字弱の間隔があり、外観上一体不可分に構成されているとはいえない。

しかも、「TIGER」の文字は、称呼・観念ともに日本人に極めて馴染みが深いため、取引者、需要者の注意を惹くのに対し、「ORTHO」の文字は全くそのようなものではない。

さらに、「TIGER」の文字と「ORTHO」の文字とを結合したことによって新たな何らかの意味合い又は熟語的意味を形成するものとはなっていないから、常に一連にのみ読まれるという格段の事情が生じたということはできない。すなわち、「虎」に付加する観念を生ずるものではない。また、「TIGER」は日本語化しているのに対して「ORTHO」はわが国において一般に広く用いられているものであるとはいえないから、全体を常に一体不可分のものとして把握しなければならない格別の理由があるとはいえない。

このため、本件商標において、「TIGER」の文字と「ORTHO」の文字とは、一体不可分に結合されているというべきではなく、それぞれが分離独立して表示されているというべきである。

(カ)引用商標は、現に、歯科用機械器具に属する商品「ドリル」について使用されているため(甲第3ないし第8号証)、引用商標に類似する本件商標が、指定商品である歯科矯正用器具に使用されるときは、両商標ともタイガーの称呼を独立して生ずることから、取引者、歯科医等は引用商標に係る商品と本件商標に係る商品について誤認混同を生ずるおそれがある。ために、商標権利者間に紛争が生じるおそれがある。

一定の商標を使用した商品は一定の出所から提供されるという取引の秩序を維持することは、消費者等の利益を保護することになるとの観点から、引用商標に類似する本件商標の登録を無効にすることは、商標法の目的に叶うものである。

(3)むすび

以上のとおり、本件商標は、称呼「タイガー」を共通にする引用商標と類似し、商標法第4条第1項第11号の規定により、商標登録を受けることができないものであり、その登録は同法第46条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。

4 被請求人の答弁

被請求人は何ら答弁していない。

5 当審の判断

本件商標と引用商標との類否について検討するに、本件商標は、上記のとおりの構成からなるところ、「TIGER」の文字と「ORTHO」の文字との間には1文字分程の間隔があり、「TIGER」と「ORTHO」の2語をもって構成されているものと認識されるものである。

しかして、「TIGER」の語は「タイガー」と称呼され、我が国において親しまれた動物の一つである「虎」を意味する語として知られているものといえるのに対し、「ORTHO」の語は「真直ぐ、正常、真実」を意味する英語の接頭語であるものの、我が国においては一般にさほど知られた語ではなく、その意味合いの周知度は上記「TIGER」に比べはるかに低いことからすれば、自ずと両語間には親しみ易さという点において軽重の差があるというべきである。

また、請求人の提出に係る証拠によれば、「ortho」の語は、歯科用語の「dent」ないしは「dont」と結合することによって、例えば「orthodentist」が「矯正歯科医」を、「orthodontia」が「矯正歯科学」を、「orthodontics」が「矯正歯科学」を、「orthodontist」が「矯正歯科医」を、「orthodontology」が「矯正歯科学」をそれぞれ意味するように、「矯正」の意味合いを有する複合語を形成するものであることが認められる(甲第9号証)。さらに、インターネットで「ortho」を検索すると「矯正歯科」関連のホームページが多く検索されることが認められる(甲第10号証)。

加うるに、本件商標の指定商品である「歯科矯正用器具,その他の医療用機械器具」は、歯科医を初めとする医師や医療従事者が主たる需要者というべきであることからすると、本件商標の構成中の「ORTHO」の文字部分は「矯正」ないしは「矯正歯科」に関係のある語として認識し理解される場合が少なくないというべきである。

これとは逆に、本件商標が常に一連不可分のものとして認識されるべき格別の理由は、見出し難い。

かかる事情の下において本件商標をその指定商品に使用するときは、「矯正歯科」に関係のある語として自他商品の識別力がないか又は極めて弱いといい得る「ORTHO」の文字部分は捨象されて親しみ易い「TIGER」の文字部分のみが捉えられ、これより生ずる称呼及び観念をもって取引に資される場合が決して少なくないというべきであるから、本件商標は単に「タイガー」の称呼及び「虎」の観念をも生ずるというのが相当である。

他方、引用商標は、その構成文字に相応して「タイガー」の称呼及び「虎」の観念を生ずること明らかである。

してみれば、本件商標と引用商標とは、その称呼及び観念を共通にする類似の商標といわなければならず、また、両者の指定商品も同一又は類似のものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録を無効にすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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