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Trademark Appeal Case

「工房」の識別力と要部認定

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2003−90675(T2003−90675/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4700999号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4700999号商標(以下「本件商標」という。)は、「古今工房」の文字(標準文字)を書してなり、平成14年10月30日に登録出願され、第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,ふきん,シャワーカーテン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製トイレットシートカバー,織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,ビリヤードクロス,布製ラベル」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品とし、同15年8月15日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立ての理由

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきであるとして、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第107号証を提出している。

(1)本件商標の「工房」の文字は、商品の作成・製造場所を表すのに普通に用いられている語であり、「織物・染物・きもの」等の商品については、商標としての機能の存しない部分であるから、本件商標の自他商品の識別機能を果たす部分は「古今」の部分に存する。

よって、本件商標は、登録第2663108号商標「古今/こきん」、登録第2687709号商標「KOKIN/コキン」、登録第2142567号商標「古今つれづれ」、登録第2021084号商標「古今つれづれ」、登録第2372354号商標「古今つれづれ」、登録第2093830号商標「こきんそしえ」、登録第2663109号商標「藍古今」及び登録第2437284号商標「江戸古今」と「古今(コキン)」の外観、観念及び称呼を共通にする類似のものであり、また、指定商品も互いに抵触するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(2)上記引用各商標は、「古今」ブランドとして、和装製品全般について申立人の商標として広く一般に知られているから、「古今」の文字を含む本件商標が、その指定商品に使用された場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがあり、また、現実にも混同を生じている。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

3 取消理由の要点

当審において、平成16年6月24日付で商標権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。

申立人の提出に係る甲第10号証ないし甲第103号証を総合勘案すれば、申立人は、「古今」、「古今つれづれ」、「藍古今」、「花古今」の文字からなる商標(以下、まとめて「引用商標」という。)を、「古今」シリーズの商標として、申立人の業務に係る商品「着物」「浴衣」等の和装品について使用しており、引用商標は、本件商標の登録出願時には取引者、需要者の間に広く認識されていたことが認められるものである。

そこで、本件商標をみると、本件商標は、前記のとおり「古今工房」の文字よりなるものであるところ、「古今」の文字を含むものであり、かつ、その構成中の「工房」の文字は、例えば、「染工房」(甲第104号証)「織(り)工房」(甲第105号証)、「きもの工房」(甲第106号証)のように、近時、製造販売場所を表す意味合いでしばしば用いられている語といえるものであるから、「古今」の文字部分が自他商品の識別機能を果たす部分ということができる。

また、本件商標の指定商品は、前記のとおり、着物・浴衣を含む被服関係及び織物関係の商品であり、申立人の業務に係る商品とは同一あるいは密接な関連を有するものである。

そうすると、本件商標を、その指定商品について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、直ちに引用商標を連想、想起し、その商品が「古今」シリーズの一つであるかのように誤認するおそれがあるものと判断するのが相当であるから、該商品が申立人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ない。

4 商標権者の意見

上記3の取消理由に対して、商標権者は、要旨次のように意見を述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第25号証を提出している。

本件商標は、あくまで「古今工房」全体として自他商品識別機能を果たすものである。

本件商標「古今工房」における「古今」は「今と昔」、「昔から今からまで」なる意味を、「工房」は「アトリエ」なる意味を有することから、「古今工房」全体として「古今のアトリエ」、「今と昔のアトリエ」といった観念(イメージ)を容易に連想させる。

また、本件商標は、「古今工房」の各文字を同書・同大・同間隔でまとまりよく一体的に書してなり、「コキンコウボウ(コキンコーボー)」又は「ココンコウボウ(ココンコーボー)」と極めて語呂よく発音されかつ特に冗長というべきものではなく、さらに、全体として「古今のアトリエ」、「今と昔のアトリエ」のように、一連の観念を容易に連想させることから、わざわざ「工房」の文字部分を分離して称呼することはない。

従って、本件商標は、「古今工房」が一体不可分のものとして認識理解され、全体として自他商品識別機能を果たすことが明らかである。

かかる商標権者の主張が妥当であることは、本件商標と同様、「○○工房」なる商標と「○○」なる商標とが、それぞれ別人に多数登録されていることからも明らかである。登録例の一例を挙げただけでも、「メルヘン工房」と「メルヘン/MERHEN」、「酒落工房」と「酒落」、「未来工房」と「ミライ」、「WONDER FACTORY/不思議工房」と「フシギ」、「創作工房」と「創作」、「小町工房」と「こまち」、「ヒーロー工房」と「HERO/ヒーロー」、「自然派工房」と「自然派」、「秋桜工房」と「コスモス」、「はっぴい工房」と「ハッピー」、「匠工房」と「匠」及び「匠/TAKUMI」、「夢工房」と「ゆめ/夢」(乙第1号証ないし乙第25号証)など、枚挙に暇がない。

「染工房」「織工房」「きもの工房」のように、「○○工房」における「○○」部分が物乃至物に準ずる言葉であるなら、「工房」の文字は製造販売場所を表す語といえるから、該「工房」部分の識別力は弱いといえるかもしれない。

しかし、「○○工房」における「○○」部分が、物と関係の希薄な言葉である場合まで、一律に「工房」部分は識別力を欠くとするのは妥当でない。

もし、「○○工房」における「工房」の文字は、製造販売場所を表す語といえるから、残りの「○○」の文字部分が自他商品の識別機能を果たす部分であるとするならば、「○○工房」と「○○」とは自他商品の識別機能を果たす部分が同じとなり、それぞれ別人には登録されないはずである。

にもかかわらず、上記の乙第1号証ないし乙第25号証に示した如く、「○○工房」と「○○」とは、それぞれ別人に多数登録されているのである。このことは、乙第1号証ないし乙第25号証における「○○工房」なる商標は、あくまで「○○工房」が一体不可分のものとして自他商品の識別機能を果たしていることを示しているからに他ならない。本件商標「古今工房」も全くこれと同じである。

このように、本件商標はあくまで「古今工房」が一体不可分のものとして認識理解され、「古今工房」全体として自他商品の識別機能を果たすものである。

したがって、本件商標「古今工房」と引用商標「古今」とは明らかに区別し得る別異のものであり、商品の出所の混同を生ずるおそれはない。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。

5 当審の判断

本件商標は、「古今工房」の文字よりなるところ、上記3の取消理由は妥当なものであって、「古今」シリーズの商標として、取引者、需要者の間に広く認識されている引用商標の「古今」の文字を有するものであるから、本件商標を、その指定商品について使用するときは、その商品が「古今」シリーズの一つであり、申立人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認める。

そして、これに対する上記4の商標権者の意見は、以下の理由により採用することができない。

商標権者は、本件商標は「古今工房」の各文字を同書・同大・同間隔でまとまりよく一体的に書してなり、一連の称呼も語呂よく発音され、特に冗長ではなく、さらに、全体として一連の観念を容易に連想させるから、「古今工房」が一体不可分のものとして認識理解され、自他商品識別機能を果たすものである。また、本件商標と同様、「○○工房」なる商標と「○○」なる商標とが、それぞれ別人に多数登録されていることからも、本件商標は、引用商標とは明らかに区別し得る別異のものであり、商品の出所の混同を生ずるおそれはない旨主張している。

しかしながら、申立人の提出に係る甲各号証によれば、引用商標は、本件商標の登録出願時には、「古今」シリーズの商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたことが認められるものである。

そして、本件商標は、「古今」の文字を有するものであり、かつ、その構成中の「工房」の文字は、近時、製造販売場所を表す意味合いで用いられている語といえるものであるから、「古今」の文字部分が自他商品の識別機能を果たす部分ということができ、これに接する取引者、需要者は著名な「古今」の部分に着目し、商品の識別にあたる場合が少なくないものとみるのが相当である。

そうしてみると、本件商標は、常に一体不可分のものとして把握されるものであるということはできない。

また、商標権者は、過去の登録例を示しているが、そもそも、具体的事案の判断は、過去の登録例に拘束されることなく個別具体的に検討されるべきものであるから、商標権者の主張は採用することができない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その商標登録を取り消すべきものである。

なお、申立人は、証人尋問申出書を提出しているが、尋問事項書の提出がないばかりでなく、申立人の提出した各証拠により、上記のように認定、判断し得たから、証人尋問の申出は採用しない。

よって、結論のとおり決定する。

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