結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2004−35034(T2004−35034/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4569305号商標(以下「本件商標」という。)は、「MAXIM」の文字を標準文字で書してなり、第10類「移植用の膝組織片及び人工膝,その他の整形用移植片及び補綴物,その他の医療用機械器具」を指定商品として、平成13年3月26日登録出願、同14年5月17日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4238141号商標(以下「引用商標」という。)は、「MAXIMA」の文字を標準文字で書してなり、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、平成9年9月2日登録出願、同11年2月12日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
(1)本件商標は、「MAXIM」の文字を横書きしてなるものであるから、「マキシム」の称呼をもって取り扱われることは明らかである。
これに対し、引用商標は、「MAXIMA」の文字を横書きしてなるものであるから、「マキシマ」の称呼をもって取り扱われることは明らかである。
本件商標と引用商標とは、「マキシ」の音を共通にし、わずかに「ム」と「マ」の音とが相違するにすぎない。この「ム」と「マ」の音は、共に子音「m」を共通にする近似した音である。そして、「ム」と「マ」の音は、両唇を密閉し、有声の気息を鼻腔を通じて発する鼻音であるが故に本来的に響きの弱い音であり、加えて、聴者の最も注意を惹きにくい語尾に位置している。そのため、これらの音は、本件商標と引用商標の全体称呼に殆ど影響を与えることができない。
以上述べたことからして、本件商標と引用商標とは、一連に称呼された場合には語調、語感が近似し、称呼上相紛らわしい類似の商標となる。
(2)「ム」と「マ」の音のみが相違する商標同士を類似商標としている審決例が以下のように存在する。
(a)商標「Arome」(称呼:アローム)と商標「アローマ」とは類似する(甲第3号証)。
(b)商標「PERMA−LOK」(称呼:パーマロック)と商標「パームロック」とは類似する(甲第4号証)。
(c)商標「Nova Farma」(称呼:ノバファーマ)と商標「NAVO−FERM」とは類似する(甲第5号証)。
これら事例中には、「ム」と「マ」の音とが語尾に位置しないものであっても、類似するとされているものがあることからすれば、より「ム」と「マ」の音とが聞き取り難い語尾に位置する本件商標と引用商標とは当然類似するものとされるべきである。
(1)被請求人は、「マ」と「ム」の音が相違する商標の類否が争われたケースは多くなく、審査で非類似と判断されていることが容易に推測できる旨主張し、審決例を挙げる。
しかしながら、「マ」と「ム」の音の相違に基づき非類似のものと判断された例があるならば、現在では、特許庁の電子図書館でそのような非類似と判断された結果、「マ」と「ム」の音の相違がある商標同士の併存例を容易に検索できるはずであるが、わずか2件の審決例しか挙げられないことからすれば、「マ」と「ム」の音の相違に基づき非類似のものと判断された審査例はなかったと容易に推測できる。
しかも、乙第1号証及び乙第2号証における商標も3音からなるものである。
3音からなる商標は、極めて少数音であるが故に取引の経験則上相違音の相違が小さいものであっても聞き分けられるものである。現に、商標審査基準においても、「〔注7〕基準(1)ないし(8)に該当する場合であっても、つぎに挙げる(イ)ないし(ハ)等の事由があり、その全体の音感を異にするときには、例外とされる場合がある。」として、3音からなるときは例外として非類似のものとなるとしている。乙第1号証及び乙第2号証の審決例は、この例外的な基準に沿ったものである。
一方、4音からなる本件商標と引用商標にはこの例外的な基準は適用されない。
以上述べたことから明らかなように、乙第1号証及び乙第2号証の審決例は、4音からなる本件商標と引用商標との類否が問題となる本件審判とは事案を異にし、両商標が非類似と主張する被請求人の主張を何ら根拠付けるものではない。
(2)被請求人は、本件商標及び引用商標は、語義を有する語であるから、より一層明確に聞き分けられると主張する。
しかしながら、有名な漫画の主人公の名前であるが故に平均的な日本人であれば誰でも知っている「アトム」と「MAXIM」、「MAXIMA」とを同列に取り扱うことができない。
被請求人は、「MAXIM」及び「MAXIMA」は、日本人に馴染みがあると主張するが、その事実を裏付ける資料は何ら提出していない。確かに、被請求人は「広辞苑」及び「プログレッシブ英和中辞典」(乙第3、4号証)を提出しているが、辞書は、勉学及び仕事において自分の意味の知らない単語を引けるようになるべく多くの単語を掲載するものであることからすれば、問題の語が辞書に掲載されていることが平均的な日本人に知られている根拠とはなり得ない。一方、請求人が中学生向けの辞書である「フレンド英和辞典」を引いたところ、「MAXIM」及び「MAXIMA」のいずれも掲載されていなかった(甲第6号証)。この中学生向けの辞書に掲載されている英単語を全て平均的な日本人が知り得てはいない。そうであるとすれば、この辞書にすら掲載されていないこれらの語を平均的な日本人が知り得ているとは到底いえない。
また、被請求人は、「MAXIM」は有名なフランスレストランの名称として知られていると主張するが、その事実を立証する資料は何ら提出していない。請求人が調査したところ、「MAXIM」はフランスの高級レストランの名前であり、日本には銀座に「マキシム・ド・パリ」が1店あることが判った。平均的な日本人にとって、もともと高級フランス料理は馴染みの薄いものであり、全国的にチェーン店で事業展開している店ならともなくも銀座に1店あるだけの店の名前が広く知られていることは考え難い。
さらに、本件商標及び引用商標の指定商品の需要者が取引上「MAXIM」「MAXIMA」を知り得る特段の事情は存在しない。
以上述べたことから明らかなように、本件商標及び引用商標とは意味の相違を認識されることによって、本来相紛れるものであっても聞き分けることができる状況は発生しない。
以上のように、被請求人の主張及び乙各号証によっては、本件商標が引用商標に類似しないことを何ら根拠付けられない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであり、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
そこで、本件商標から生ずる称呼「マキシマ」と引用商標の称呼「マキシム」とを比較すると、両者は、4音と短い称呼にあって、語尾の「マ」と「ム」が相違している。これらは、いずれもマ行音に属する同行音ではあるが、語頭に次いで聴者の印象に残りやすい語尾に位置していることと、全体が4音と短いことからして、両者を聴別させるには充分なものである。請求人は、相違音が「識者の最も注意を惹きにくい語尾に位置している」ことをその主張の根拠としているが、最も印象に残りにくいのは中間音であって、語尾音は語頭音に次いで注意を惹きやすいものである。
(a)商標「アトム」と「ATOMA」(称呼:アトマ)は類似しない(乙第1号証)。
(b)商標「DORMA/ドルマ」と「ドルム/Dorme」は類似しない(乙第2号証)。
これらの事案では、称呼がいずれも3音と短いことが指摘されているが、膨大な数の商標が採択され使用されている現在において、4音からなる商標も十分に短く、そのうちの1音(語尾音)において「マ」と「ム」が相違する本件商標と引用商標も、語感語調が異なり、明確に聴別され得るものとみるのが相当である。
また、引用商標は、「maximum」の複数形であるが、「maximum」は「最大(限)、最高」といった意味合いの英語として我が国でも馴染みがある(乙第3、4号証)。このように別異の観念を有する別の言葉であることが明確に理解される以上、上述した称呼の相違は、より一層際だって認識されるから、相紛れるおそれはない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反するものではない。
(1)「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」(最高裁第3小法廷、昭和43年2月27日判決言渡)ところ、本件商標及び引用商標が使用される「医療用機械器具」は、医師や看護士など医療分野における専門家を対象とした商品が多く存在するが、一方で、体温計、血圧計、体脂肪測定器、補聴器などのように、日常的に使用する商品であって、一般の消費者を対象とした商品も含まれる。
そうすると、本件商標と引用商標との類否判断に当たっては、医療の専門家のみならず、一般の消費者が払う注意力をも考慮して、商品の誤認混同をが生ずる商標であるか否かを判断の基準とすべきというのが相当である。
(2)本件商標は、前記したとおり、「MAXIM」の文字よりなるものであるから、「マキシム」の称呼を生ずるものである。
これに対し、引用商標は、「MAXIMA」の文字よりなるものであるから、「マキシマ」の称呼を生ずるものである。
そこで、本件商標より生ずる「マキシム」の称呼と引用商標より生ずる「マキシマ」の称呼を比較すると、両称呼は、いずれも4音よりなり、そのうちの「マキシ」の3音を共通にし、末尾における「ム」の音と「マ」の音の差異を有するものである。
そして、該「ム」の音と「マ」の音は、両唇を閉じておいて、開きながら、呼気を鼻に抜いて出す鼻子音「m」を共通にし、これに帯有する母音が「u」であるか「a」であるかの差異を有するにすぎず、これらの音は、それ自体やわらかい音として発音され、特に語尾に位置するときは、明瞭に発音され難く、聴取され難いというのが相当である。
そうすると、該差異音が両称呼に及ぼす影響は、決して大きいものとはいえず、それぞれの称呼を全体として称呼するときは、「マキシ」の音の部分に強く印象づけられ、全体の語調、語感が近似したものとして聴取され、互いに聞き誤られるおそれがあるものといわなければならない。
(3)乙第4号証によれば、本件商標を構成する「MAXIM」は、「格言、金言」などを意味する英単語であり、また、引用商標を構成する「MAXIMA」は、「最大(限)、最高」などを意味する英単語「maximum」の複数形であることが認められる。
しかしながら、これらの英単語は、上記意味を有するものとして、我が国の一般の消費者に広く知られているものとは認め難く、したがって、これらの英単語から、それぞれの意味を直ちに理解し、その差異を認識することは困難であるといわざるを得ない。
加えて、本件商標及び引用商標は、いずれも標準文字をもって、それぞれ前記したとおりの文字を書してなるものであるから、「MAXIM」の文字を共通にし、わずかに末尾において、「A」の文字の有無の差異を有するにすぎないものであって、前記したとおり、両商標は、称呼において類似し、観念も明確に区別することができないものであることを併せ考えると、これらの商標を時と所を異にして離隔的に観察するときは、「A」の文字の有無の差異に十分な注意が払われないというのが相当であるから、外観上も互いに紛れるおそれがあるというべきである。
(4)以上によれば、本件商標と引用商標は、称呼及び外観において相紛らわしく、また、観念において明確な差異を認識し得ないものであるから、これが両商標の称呼及び外観上の類似性を否定するものということはできない。そして、本件商標と引用商標は、前記したとおり、いずれも「医療用機械器具」について使用されるものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、その称呼、外観及び観念等を総合して全体的にみれば互いに紛らわしいものであるから、本件商標をその指定商品について使用した場合は、その需要者をして、引用商標を使用した商品との間に出所の誤認混同を生じさせる商標といわなければならない。
なお、被請求人は、審決例を挙げて、本件商標と引用商標は称呼上類似するものではない旨主張するが、請求人の挙げた審決における商標は、本件における類否判断の対象となる本件商標と引用商標とは、称呼における構成音、音数等において差異を有するものであるから、事案を異にするものである。そして、本件商標と引用商標とは、上記認定のとおり、称呼、外観及び観念等を総合して全体的に考察すれば、互いに紛れるおそれがある商標であるから、請求人の挙げた審決例によって、上記認定が左右されるものではない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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