Trademark Appeal Case
資格名称の誤認性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 昭和63年審判第8188号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別紙記載のとおり「特許管理士会」の文字を横書きしてなり、第26類「書籍、雑誌、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和58年12月20日に登録出願されたものである。
2 原査定の理由
原審は、登録異議の申立てがあった結果、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして、本願について拒絶すべき旨の査定をしたものである。
3 請求人の主張
請求人は、「原査定を取り消す。この出願の商標は、これを登録すべきものとする。」との審決を求め、その理由を次のとおり主張している。
(1) 本願商標を構成する「特許管理士会」の文字が「特許を管理する業務をなす者の団体の名称」を表示したものと理解せしめるものであるところ、該名称は、法律等によってその使用に一定の規制が設けられている名称に該当するものではなく、また、該文字自体が、矯激な文字や卑猥な図形等の表現を伴うものでないことは明らかである。
(2) 一方において、工業所有権の手続きの代理、鑑定等を業務とする「弁理士」及びその団体である「弁理士会」が、法律によってそれぞれ国家資格、法人格を有し、社会に定着していることに異論はないが、本願商標をその指定商品、例えば「印刷物」について使用したとしても、本願商標からは「特許管理士会」以外の団体が発行したものと看取されることはないから、取引者、需要者に直ちに国が「特許管理士」という制度を新たに設けたと誤認を生じさせたり、該印刷物が弁理士会によって発行されたものと誤認させるなど社会の流通秩序を乱すものとは思料し難い。
(3) 原査定においては、特許法第8条で在外者の特許管理人を定めてあることと相俟って誤認を生ぜしめると言うが、▲1▼「特許管理人」という名称と「特許管理士会」という団体の名称は、同法において「特許管理人」の法人格ないし団体としての人格を規定していないので、互いに誤認、混同を生ぜしめるとは言い難く、▲2▼「特許管理人」とは日本国内に住所又は居所を有しない者が我が国において工業所有権等の手続きをする際に該手続きを代理するものであって、この「特許管理人」と法文上定められた者はその名称をもって取引を行うのが実情であって、外国人等が、「特許管理人」と「特許管理士会」という文字及びその名称を該手続きの代理と商品としての印刷物における使用という互いに相容れない流通ルートにおいて、両者を誤認、混同して取引にあたるとはとうてい想到し得ない。
(4) 公序良俗に関する審判決例、例えば、昭和37年抗告審判第1236号は、財団法人主婦会館が旧66類図書、写真、及び印刷物に「全国主婦会館」の商標を使用しても公序良俗に反しないとしており、同53年審判第14766号は、出願人らが「日本冷凍食品管理士会」の商標を、第25類紙類、文房具類に使用しても、公序良俗を害するおそれはないとしている。他方、同55年(行ケ)第95号判決をはじめとする「特許建築学博士」等一連の判決は、「博士」という学校教育法に定められた正規の名称をその標章の構成文字に含有するが故に明らかに公序良俗を害する恐れがあるとされたが、これらを考慮しても、本願商標が「特許」、「特許管理」又は「特許管理士」の文字を含むことをもって、その指定商品への使用によって社会の秩序を乱し、善良の風俗を害するおそれがあるとは認め難い。
(5) 本願商標中の「特許管理士」については、早くから民間資格として創設され、そのための資格試験は、昭和39年より毎年行われ、同47年にはその団体たる「特許管理士会」が正式に発足し、現在では年2回実施される資格試験を通して、登録会員は約6300名にのぼり、当初より延べ人数で約15000名が該資格を帯びてきた。
「特許管理士」の資格名称の周知をはかるため、「特許管理士のすべて」(ダイヤモンド社刊)が昭和53年の初版より昭和60年までに実に16度にわたる版を重ね、資格試験に向けた「特許管理士に合格する本」(日本法令刊)も昭和58年の初版より同62年までの4年弱のわずかな期間に12度版を重ね、出版物を通じた方法のみをとっても、「特許管理士」の名称は、「弁護士」や「弁理士」等と相紛れることなく、現在は広く社会一般に知られている。
工業所有権についての高度の専門的知識を必要とし、報酬を得る目的をもって手続きの代行をすることを業務とする「弁理士」と、各企業や個人において、工業所有権に関する基本的知識をもとに特許管理の一助として、また、弁理士の業務を助けて工業所有権の手続き等に関する知識を普及せしめる役割を担う「特許管理士」とが相異なるということは、高度の専門的知識の修養でなく、初歩的、入門的な知識の養成という目的をもって多くの企業が新人研修などの内容の中に、特許管理士の資格取得のためのゼミナールを導入している事実に徴すれば、より明らかである。
叙上の諸点からしてみれば、本願商標をその指定商品につき使用しても、何らその登録を拒絶する程度にまで社会公共の利益に反し、善良の風俗を害するおそれを招来させるものと解することはできない。
4 当審の判断
本願商標は、別紙記載のとおり「特許管理士会」の文字を横書きしてなるところ、これは「特許管理士」の文字に団体の名称を表すものとして広く使用されている「会」の文字を結合させてなる商標と認められるものである。
ところで、弁理士法は、弁理士の業務について「弁理士ハ特許、実用新案、意匠若ハ商標又ハ国際出願ニ関シ特許庁ニ対シ為スベキ事項及特許、実用新案、意匠又ハ商標ニ関スル異議申立又ハ裁定ニ関シ通商産業大臣ニ対シ為スベキ事項ノ代理並ニ此等ノ事項ニ関スル鑑定其ノ他ノ事務ヲ行フコトヲ業トス」と規定し(第1条)、弁理士の資格は弁理士試験に合格するなど所定の条件を具える者が有する旨規定している(第2条及び第3条)。そして、同法は、弁理士でない者が、報酬を得る目的をもって上述した弁理士の業務を業として行えないこと(第22条ノ2)及び利益を得る目的をもって弁理士、特許事務所その他これに類似する名称を使用できないこと(第22条ノ3)を規定している。上記の弁理士のみがなしうる業務は、特許管理の概念に包含されるものである。また、特許法が、在外者の特許に関する代理人であって日本国内に住所又は居所を有するものを「特許管理人」と称し、在外者は特許管理人によらなければ特許に関する手続をし、同法又は同法に基く命令の規定により行政庁がした処分を不服として訴えを提起することができない旨規定している(第8条)ことからみると、特許法においても、特許に関する手続をもって「特許管理」の一としていることが窺える。さらに、○○士と名称の末尾に「士」の文字を付けたものは、法律が資格要件を定めている名称として前記「弁理士」の外、弁護士法の定める「弁護士」、公認会計士法の定める「公認会計士」など多数存在しているところから、一般に法律の定める資格を有する者の名称と理解されるものである。
これらのことからすれば、本願商標構成中の「特許管理士」の語は、法律の定める正しい資格名称及びその業務内容の全てを具体的に認識していない一般の国民にとって、「法律の定めにより特許管理を業として行える資格を有する者」又は「弁理士法が定める弁理士の業務を業として行える者」の意を想起、連想させるものであり、この意味において「弁理士」と相紛らわしいものである。
もっとも、この点について請求人は、「特許管理士」の名称が長年に亘りその資格試験を通じ民間資格として多数の者に付与されており、また出版物により普及されたので、現在「弁理士」などと相紛れることなく広く社会一般に知られている旨主張するが、例えば、原審において登録異議申立人が提出した昭和50年10月12日付け毎日新聞(甲第3号証)によれば、「特許管理士」が実用新案登録出願を代行し報酬を受け取るなど業として出願代行業務を行ったとして東京地検が弁理士法違反で略式起訴した旨報道されており、この記事からすれば、「特許管理士」の肩書きを使用する者を弁理士と同等の資格を有する者と誤認する者が多数いると推認されるから、この点についての請求人の主張は採用できない。
さらに、弁理士会は、弁理士法に基づき、弁理士の使命及び職責に鑑み弁理士の品位の保持及び弁理士業務の改善進歩を図るため弁理士の指導及び連絡に関する事務を行うことを目的として(第11条)、設立され(第10条)、政令の定めにより弁理士を会員とするものである(第12条ノ2、同法施行令第3章)。このことと「特許管理士」の語が弁理士に類似していることを併せ考慮すれば、本願商標は、「特許管理士」を会員とする団体を認識させ、ひいては「弁理士会」と同一の機能を有する社団を想起させるものである。
そうすると、本願商標をその指定商品「書籍、雑誌、その他本類に属する商品」に使用するときは、該商品は、取引者・需要者に、弁理士会又は実質的にその会員である弁理士が取り扱っているかのような印象を与えるというべきである。
したがって、弁理士法が弁理士に関しその資格、業務などを定める一方、弁理士会を設置して弁理士の品位を保持するなどの厳格な規定をして公共の福祉に適うよう弁理士制度を定めているところ、本願商標は、「弁理士」と紛らわしい「特許管理士」の語を構成の主要部とし、「弁理士会」と紛らわしい「特許管理士会」の語よりなるものであるから、その指定する商品に使用することは、特許制度の利用者である一般の国民が特許管理などの専門家である弁理士及び弁理士を会員とする弁理士会に寄せる信頼を害することとなり、社会公共の利益に反するものである。
なお、請求人は、公序良俗に関する審決例を挙げ、それらの例からすれば本願商標が社会の秩序を乱し善良の風俗を害するおそれはない旨主張するが、引用審決例は本件と事案を異にするものであるから本件審判事件の参考とするには適切でなく、この点に関する被請求人の主張は採用できない。
以上のとおり、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとしてなした原査定は、妥当であって、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
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