結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2003−35363(T2003−35363/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4626006号商標(以下「本件商標」という。)は、平成
13年9月13日登録出願、「CAPFLOW」の欧文字を標準文字で横書きしてなり、第42類「機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらにより構成される設備の設計,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守、機械器具に関する試験又は研究,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与」を指定役務として、同14年11月29日に設定登録されたものである。
1.請求人が引用する登録第4248513号商標(以下「引用商標1」という。)は、平成8年8月2日登録出願、「CASHFLOW」の欧文字を横書きしてなり、第42類「自動販売機及び自動貨幣両替装置並びにあらゆる種類の貨幣及びクレジットの自動処理装置の製造及び供給に関する技術的コンサルティング,硬貨・紙幣・模造貨幣・切符・カード又はその他の価値媒体によって作動する自動貨幣処理装置の貸与」を指定役務として、同11年3月12日に設定登録されたものである
2.同じく登録第4624810号商標(以下「引用商標2」という。)は、平成11年5月27日登録出願、別掲に示すとおり「CASHFLOW 」の文字と簡略な背景図形よりなり、第9類「現金又はキャッシュレスによる支払いに使用する磁気カード及び記録担体の処理用装置,現金又はキャッシュレスによる支払い処理用装置に使用する磁気カード及び記録担体,硬貨・模造硬貨・切符及び紙幣の分類・識別・金額表示・検査・分配・排出・配置及び両替装置,自動販売機,金銭登録機,電気通信機械器具」、第16類「印刷物,文房具類,電子的データ・コンピュータプログラム及び金融取引の電子的会計検査(監査)の記録用紙テープ及びカード,その他の紙類」、第37類「コンピュータその他の電子応用機械器具の設置・修理又は保守,貨幣取引装置・硬貨処理機構及び紙幣両替装置の設置・修理又は保守,自動販売機の設置・修理又は保守」、第42類「自動販売機の貸与,電子応用機械器具の試験・検査又は研究,金融取引・紙幣の鑑別・鑑別装置その他に関する電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,自動販売機・硬貨及び紙幣の鑑別装置・自動貨幣両替装置並びにあらゆる種類の貨幣及びクレジットの自動処理装置の設計に関する技術的コンサルティング」を指定商品又は指定役務として、同14年11月29日に設定登録されたものである。
請求人は、本件商標の指定役務中の「機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)またはこれらにより構成される設備の設計,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。
請求の理由
1.本件商標と引用商標1及び2の類似性
(1)外観上の類似性
本件商標と引用商標1及び2とは、ともに横文字で「C」から始まる欧文字からなり、そのうち「C」「A」「F」「L」「O」「W」の五文字を共通にしており、わずかに中間で欧文字の「P」と「S・H」とを異にするにすぎない。
したがって、両商標は、外観上同一ではないものの、具体的な取引の実際においては、需要者・取引者がかかる些細な相違は見過ごして、両者の欧文字のそれぞれ全体を取り違えるおそれが多分にあり、商標全体を一体としてみれば外観上類似するものと考えられる。
なお、引用商標2については、文字以外に帯状の図形が表されているという点で「CAPFLOW」とは同一ではないが、「CASHFLOW」の文字部分が中央部分に強く太字で構成されているので、需要者・取引者は該文字部分に特に注目して商標を把握し、帯状の図形は単なる背景としか認識しないのが通常であると考えられる以上、外観上の類似性を否定するに値するほどの相違ではないことは明らかである。
(2)称呼上の類似性
本件商標は「CAPFLOW」の標準文字からなり「キャップフロー」の称呼が生じ、一方、引用商標1及び2は「CASHFLOW 」の文字から「キャッシュフロー」との称呼が生じる。
従って、両者は印象の強い語頭音の「キャッ」を共通にし、さらに後段部の「フロー」については完全に一致しており、中間音の「プ」と「シュ」のわずか一音を異にするにすぎない。
そして、「プ」と「シュ」とを抜き出して極めて精度の高い学理的観点から検討すれば、前者は破裂音、後者は摩擦音に属するという相違こそあるが、一般の需要者・取引者が日常何気なく一体的に発音した場合には、子音を共通にするものである以上、類似する印象こそあれ、両者を非類似といえるほどの相違があるとはいえない。しかも、両商標において聴者の受ける印象の比較的弱い中間に位置するものであるから、極めて些細な違いと言わざるを得ない。
さらに、両者は、ともに一連に称呼しても語調や抑揚に違いはない。両者はともに欧文字で表されアクセントを示す記号もなく、「プ」と「シュ」を異なるアクセントで称呼されなければならない根拠はないためである。
今日の多忙な商品取引の実際においては、商標の称呼をことさら−音一音強調して発音したり、その異同を吟味して聴取されることなく、むしろ全体を何気なく発音し、その称呼から受ける一体的な印象により異同を識別するのが一般的である。それ故、上述の事実を総合して取引の実情にてらせば、本件商標の称呼「キャップフロー」によって取引したときは、聴者は直感的に引用商標1及び2の称呼「キャッシュフロー」と全体としてまぎらわしいものとして混同する恐れを免れない。
(3)観念上の類似性
引用商標1及び2の「CASHFLOW」とは、ビジネス英和辞典(研究社)によると「1.キャッシュフロー(税引純利益に減価償却費など現金支出を伴わない費用を加えた金額)2.現金流出入,現金収支」という意味を有する会計用語である(甲第7号証)。
一方、本件商標の「CAPFLOW」は、何ら観念を生じない創造語である。従って、両者の観念が直ちに類似するということはないかもしれないが、上述したように、本件商標の外観や称呼が引用商標1及び2に類似していることに鑑みれば、本件商標に接した需要者や取引者は、本件商標が特有の観念を生じない創造語である以上、引用商標1及び2と観念上なんらかの関連ある印象−例えば、姉妹品に関するサービスであるとか、同一事業者が提供するサービスであるなどを生ずる可能性は否定できない。
(4)役務の類似性
引用商標1の指定役務中、「自動販売機及び自動貨幣両替装置並びにあらゆる種類の種類の貨幣及びクレジットの自動処理の製造及び供給に関する技術的コンサルティング」は、本件商標の指定役務中、「機械・装置若しくは機器(これらの部品を含む。)またはこれらにより構成される設備の設計」と類似する。
また、引用商標2の指定役務中、第42類「金融取引・紙幣の鑑別・鑑別装置その他に関する電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」及び「自動販売機・硬貨及び紙幣の鑑別装置・自動貨幣両替装置並びにあらゆる種類の貨幣及びクレジットの自動処理装置の設計に関する技術的コンサルティング」については、前者と本件商標の指定役務中「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」とは類似し、後者と本件商標の指定役務中「機械・装置若しくは機器(これらの部品を含む。)またはこれらにより構成される設備の設計」とは類似するものと考える。
2.引用商標の周知・著名性について
請求人は、「CASHFLOW」の文字を有する商標をすでに日本国内
で使用しており(甲第8号証)、需要者・取引者の間では「CASHFLOW」を構成態様とする商標は日本国内ですでに周知又は著名となっている。 すなわち、Cash Flow 550 Executiveという機種は、2001年から2002年にかけて約35,000台が日本国内で販売されており、Cash Flow 130という機種は、約6000台が自動販売機に搭載されて日本全国で稼動している。
そして、これらの「CashFlow」製品の日本での売り上げは過去5年間で約2億円にも達している。
さらに、「CASHFLOW」を構成態様とする商標は、甲第9号証の一覧表に示すように世界84ヶ国で登録されており、当業界においてはもはや「CASHFLOW」ブランドは世界的にも周知・著名な商標となっていると考えられ、我が国でも特に強く保護されるべきである。
このように、「CASHFLOW」を構成態様とする商標が日本をはじめ世界各国で周知・著名であるところに「CAPFLOW」と称する類似の役務が日本国内で出回れば、需要者・取引者は該役務の提供者を請求人であるかのごとく誤って認識したり、または、役務の提供者自体を誤って認識しないまでも請求人と人的・資本的に何らかの関連ある業務に係る役務の提供であるものと認識するおそれがあることは否めない。
そして、このような出所の混同を生ずることが予め予想される商標については、かかる出所の混同を生ずる範囲が商標の類似範囲と認定されるべきと解されるので、上述の外観・称呼・観念の類似性と相俟って、両商標の類似の程度はますます近づくものと考えられる。
3.以上より、本件商標は引用商標1及び2より後に出願されたものであり、本件商標の指定役務のうち「機械・装置若しくは機器(これらの部品を含む。)またはこれらにより構成される設備の設計」及び「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」の役務は、引用商標1及び2の指定役務と類似し、さらに、両商標が類似していることから、本件商標は、上記役務については商標法第4条第1項第11号に該当するにも関わらず登録されたものとして無効理由を有する。
なお、仮に両商標を非類似と認定したとしても、上述したように、本件商標は、その周知・著名性より、引用商標1及び2と出所の混同のおそれのある商標であると解されるので、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
1.本件商標と引用商標1及び2との類否について
本件商標の「CAPFLOW」は、英単語の「CAP」と「FLOW」とを一体化したもので、「CAP」は「キャップ」の称呼を有し、主として「帽子」、「キャップ」等の意味を有する極めて周知の英単語である。
また「FLOW」は、「流れ」を意味する英単語である。しかしながら、「CAP」と「FLOW」とは観念としては何の関連もない英単語であるので、これらを一体的に結合した「CAPFLOW」は具体的な観念を有さない造語である。
これに対して、引用商標1及び2の「CASHFLOW」は、英単語の「CASH」と「FLOW」とを一体化したもので、「CASH」は「キャッシュ」の称呼を有し、主として「現金」、「お金」等の意味を有する。
また「CASH」と「FLOW」からなる句「CASH FLOW」は、甲第7号証に示されているように、「現金」、「現金の収支」、「現金の流れ」等の意味を有する。またインターネットの「YAHOO!JAPAN」のサイトでの「CASH FLOW」の検索結果(乙第1号証及び乙第2号証)から、「CASH FLOW」は「CASHFLOW」と一語で表示されることも多いことが分かる。すなわち、「CASH FLOW」と「CASHFLOW」とは、多くの場合、「現金」、「現金の収支」、「現金の流れ」等を意味する用語としては区別されていない。
以上の通り、「CASHFLOW」は「現金」、「現金の収支」、「現金の流れ」等の観念を明確に生じさせるので、具体的な観念を生じさせない「CAPFLOW」と混同するおそれはない。すなわち、一方の商標が具体的な観念を生じさせず、他方の商標が明確な観念を生じさせる場合、観念上の相違は著しいと言える。
観念上の著しい相違を有する商標が称呼上非類似となる例として、東京高等裁判所の平成2年4月18日判決(平成元年(行ケ)245号)がある。
そして、称呼上の類比判断をする場合、商標を構成要素に分解して個々に比較するだけでなく、観念も考慮に入れて、全体的に類似する印象を与えるか否かを判断する必要がある。「CAPFLOW」と「CASHFLOW」の比較の場合、称呼上の相違点が「プ」と「シュ」だけであるとしても、上記の通り観念上の相違が顕著にあるので、上記東京高裁の判決文に示されているように、一般の需要者・取引者は両者を称呼上明確に識別することができる。すなわち、「CAPFLOW」と「CASHFLOW」は称呼上非類似である。
2.引用商標1及び2の周知性について
請求人は、「CASHFLOW」は日本国内ですでに周知又は著名となっていると主張しているが、CASH FLOW 550 ExecutiveやCASH FLOW 130の販売実績を示す証拠がない。また審判請求書中には、CASH FLOW 130が約6000台の自動販売機に搭載されていると述べているが、このように僅かな搭載台数だけでは、周知又は著名とは言えない。例えばインターネットで検索した日本自動販売機工業会の「自動販売機普及台数及び年間自販金額」に関するデータ(乙第3号証)によれば、2002年12月末時点での自動販売機の普及台数は5,524,700台であるので、CASH FLOW 130のシェアは僅か0.1%に過ぎない。また売り上げが過去5年間で約2億円では、部品又はソフトであるとしても、インターネットで検索した日本自動販売機工業会の「自販機過去5年間の出荷台数・金額」のグラフ(乙第4号証)からも明らかなように、ごく僅かであると言わざるを得ない。さらに世界各国で登録されていること自体は、「CASHFLOW」の日本国内での周知性の証拠にならない。
以上の通り、「CASHFLOW」は日本国内において何ら周知性を獲得した商標ではないので、類比判断において類似の幅が広がるということはない。
3.結論
以上の通り、本件商標は引用商標1及び2とは類似しないので、商標法第4条第1項第11号及び同法第4条第1項15号に該当せず、同法46条第1項第1号により無効にされるべきものではない。
1.商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、前記のとおり「CAPFLOW」の欧文字よりなるものであるから、その構成文字に相応して「キャップフロー」の称呼を生ずるものと認められ、かつ、特定の観念を有しない造語と判断されるものである。
他方、引用商標1及び2を構成する「CASHFLOW」の欧文字からは、その構成文字に相応して「キャッシュフロー」の称呼を生ずるものと認められる。
そして、該文字は、「税引純利益に減価償却費など現金支出を伴わない費用を加えた金額、現金流出入、資金繰り、現金資金」等の意味合いを有する成語であることは、請求人提出の甲第7号証(「ビジネス英和辞典」・株式会社研究社発行・初版 第1刷 1998年)又は「研究社新英和大辞典(株式会社研究社発行・第5版 第34刷 1998年)等により明らかである。
そこで、本件商標より生ずる「キャップフロー」の称呼と、引用商標1及び2より生ずる「キャッシュフロー」の称呼とを比較するに、両者は、共に4音構成からなり、中間における「プ」と「シュ」の音に差異を有するものであるが、該「プ」の音は「無声の破裂音で両唇音」、「シュ」の音は「無声の摩擦音で歯茎音」というように、その調音方法・調音位置において明確な差異を有するものであり、たとえ、その音の位置が中間音であるとしても、両者の称呼上におけるこの差異は決して小さいとはいえず、両商標をそれぞれ一連に称呼しても、互いに相紛れるおそれはないものと判断するのが相当である。
また、本件商標「CAPFLOW」は、欧文字7文字、引用商標1及び2の「CASHFLOW 」は、欧文字8文字からそれぞれ構成されているものであり、両者は、その構成文字数を異にするものであって、かつ、前者の第3文字目の「P」と後者の第3文字目と第4文字目の「SH」において明確な文字の差異を有するものであるから、これらの差異によって、たとえ両者を時と処を異にして離隔的に観察した場合でも、外観上、互いに相紛れるおそれはないものというべきである。
さらに、本件商標は、特定の観念を生じ得ない造語と判断されること前記したとおりであるから、両者は観念上比較し得ないものである。
してみれば、本件商標と引用商標1及び2とは、その称呼、外観及び観念のいずれからしても十分に区別し得る非類似の商標と認められる。
2.商標法第4条第1項第15号について
前述のとおり、本件商標と引用商標1及び2とは、その外観、称呼及び観念の何れの点においても別異の商標として認識されるものである。
また、請求人は引用商標1及び2の周知著名性を証する書面として、甲第8号証及び甲第9号証を提出して縷々述べているが、請求人の提出に係る甲第8号証及び甲第9号証及び審判請求書で指摘している硬貨識別装置等の取引額及び取引数量等(但し、これらの事実を裏付ける取引書類の提出はない。)によっては、未だ上記引用商標が、需要者・取引者間において広く認識された商標であるとは言えないものと判断するのが相当である。 してみれば、本件商標をその指定役務に使用しても、請求人若しくは請求人と関係のある者の業務に係る役務であるかの如くその出所について混同を
生ずるおそれはないものといわざるを得ない。
3.したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項により、その登録を無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。