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Trademark Appeal Case

著名商標と混同のおそれ

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第4432号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1.本願商標

この商標登録出願に係る商標(以下「本願商標」という。)は、後掲のとおり、上部にレタリングされた欧文字「V」を2個、その下に片仮名文字「バレンティノ ネルビーニ」及び欧文字「Valentino Nervini」とを二段書きした構成よりなり、指定商品を第25類「コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着」として、平成6年8月9日に登録出願された。

2.原査定の拒絶理由

本願商標に対し原査定は、「本願商標は、その構成中に『バレンティノ』『Valentino』の文字を有するところ、該文字は1967年にファッション業界の最高栄誉とされる『ファッション・オスカー』を受賞して以来世界的に著名となったファションデザイナー『ヴァレンティノ・ガラヴァーニ』がその取り扱いに係る商品に使用し世界的に著名な商標『valentino』に酷似するものであるから、これを出願人がその指定商品に使用するときは、恰も前記デザイナーの取り扱いに係る商品または前記デザイナーと何らかの関係にある者の取り扱いに係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」と認定、判断し、その登録出願を拒絶した。

3.当審の証拠調べ通知

平成13年11月20日付で、本願商標について商標法第4条第1項第15号に該当するか否かに関して、請求人(出願人)に対し意見を述べる機会を与えて、その事実を示した証拠調べ通知は、要旨次のとおりである。

(1) 「世界の一流品大図鑑ライフカタログVOL.1」(昭和51年6月5日株式会社講談社発行)において、「ヴァレンティノ・ガラバーニ」が、「イタリアファッション界の旗手と呼ばれ、女性を最高に美しく見せるデザイナーとして高く評価されている。」こと、及びその経歴等を紹介する内容とともに「ブラウス、セーター、ネクタイ」の商品の写真が掲載されていること。

(2) 「EUROPE一流ブランドの本(講談社MOOK第2巻)」(昭和52年12月1日株式会社講談社発行)において、「ヴァレンティノ ガラバーニ」の所有する店舗の紹介と簡単な経歴が商品「婦人服」と共に掲載されていること。

(3) 「服飾辞典」(昭和54年3月5日第1刷文化出版局発行)の、ヴァレンティーノ ガラヴァーニ[Valentino Garabani、1932〜]の項に、「イタリア北部の都市(ヴォゲラ)に生まれる。17才でパリに行く。1951年、ジャン・デッセ(オート・クチュール)のもとで5年間アシスタントとして仕事をする。その後2年間、ギ・ラローシュのアシスタントをし、1958年独立、ヴァレンティーノ・クチュールの名でローマに店を開いた。彼の最初の仕事は、フィレンツェのピッティ宮殿でのコレクションである。このコレクンョンは、〈白だけの服〉という珍しい演出であったが、その美しさはジャーナリストの間で評判となり、「ニューズ・ウィーク」「ライフ」「タイム」「ウィメンズ・ウェア・デイリー」各誌紙で取材、モードのオスカー賞を獲得した。1967年、ヴァレンティーノの名は世界に知れわたった。1972年には紳士物も始め、その他アクセサリー、バッグ、宝石類、香水、化粧品、家具、布地、インテリアと、その仕事の幅はたいへん広いが、すべてヴァレンティーノ独特のセンスを保っているのはみごとである。・・・ヴァレンティーノは現在、ローマのオート・クチュール界で最も好調なデザイナーといえる。・・・最近はキモノのセクシーさを1950年代のハリウッドの雰囲気に表現、あやしく美しいヴァレンティーノの世界をつくり出している。」との紹介記事が掲載されていること。

(4) 「朝日新聞」(昭和57年11月20日夕刊第3頁)において、世界の服をリードする3人のうちの1人として「バレンチノ」の紹介記事が掲載されていること。

(5) 「男の一流品大図鑑'85年版」(昭和59年12月1日株式会社講談社発行)において、「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」の文字とともに、「スーツ、ブルゾン、シャツ、ネクタイ、ベルト及びバッグ」の商品が掲載されていること。

(6) 雑誌「non-no」1989年 No23号(平成元年12月5日株式会社集英社発行)及び「marie claire」(1996年2月1日中央公論社発行)において、「ヴァレンティノ ガラバーニ」が単に「ヴァレンティノ」と略称され、商品「婦人服」等と共に掲載されていること。

(7) 「英和商品名辞典」(1990年株式会社研究社発行)[Valentino Garavani]の項において、「イタリア RomaのデザイナーValentino Garavani(1932−)のデザインした婦人・紳士物の衣料品・毛皮・革製バッグ・革小物・ベルト・ネクタイ・アクセサリー・婦人靴・香水・ライター・インテリア用品など。Roma,Firenze,Milanoなどにあるその店の名称はValentino(vは小文字でかくこともある)。・・・ 」との記事及びデザイナーとしての紹介記事が掲載されていること。

(8) 「世界の一流品大図鑑'93年版」(平成5年5月20日株式会社講談社発行)において、「VALENTINO」ブランドの香水が掲載されていること。

(9) 「岩波=ケンブリッジ世界人名辞典」(1997年11月21日株式会社岩波書店発行)の[ガラヴァーニ]の項において「ヴァレンティノ Garavani,Valentino通称ヴァレンティノ Valentino(伊 1933−)服飾デザイナー・・・・」との紹介記事が掲載されていること。

同じく、[ヴァレンティノ Valentino]の項において、「ガラヴァーニ、ヴァレンティノ」を見よとの表示があること。

4.証拠調べ通知に対する請求人の意見

請求人(出願人)は、当審における上記通知に対し、以下のとおり意見を述べた。

(1) 証拠調べ通知書において、(1)「世界の一流品大図鑑ライフカタログVOL.1」 (2)「EUROPE一流ブランドの本」 (3)「服飾辞典」 (4)「朝日新聞」 (5)「男の一流品大図鑑'85年版」 (6)雑誌「non‐no」1989年NO.23号及び「marle claire」 (7)「英和商品名辞典」 (8)「世界の一流品大図鑑'93年版」 (9)「岩波=ケンフリッジ世界人名辞典」にファッションデザイナー「ヴァレンティノ ガラバーニ/Valentino Garavani」の経歴、デザインされた商品等が記述されているものであるところ、これには、デザイナー名として「ヴァレンティノ ガラバーニ/Valentino Garavani」のフルネームで記述されているものであり、また、「バレンチノ」「Valentino」と略称されて記述されているとしても、それが、明らかに「Valentino Garavani」の特定の氏姓を指称するものであると読者に理解され、認識されるものとの前提のもとに表示されているといえるものである。

(2) 審判請求の理由で述べたとおり、「Valentino」は、イタリア国内においては、ありふれた氏であって、「Valentino」といえば、直ちにファッションデザイナーの「Valentino Garavani」を指称するものではない。

本願商標は、「バレンティノ ネルビーニ」の片仮名文字と「Valentino Nervini」の欧文字とを上下二段に表示してなるものであるから、かかる構成文字からなる商標においては、これに接する取引者、需要者は特定人の氏姓を表示したものと理解、認識するものであるとするのが自然であって、上記の「Valentino Garavani」とは、全く別異の氏姓(別異の人格)を表したものとして認識されるものであり、本願商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはないものである。

(3) 請求人は、イタリア国において「VALENTINO NERBINI」商標を第25類「衣料用品、履き物、25類に含まれる帽子」を指定商品とし、登録番号「N.00650122」(甲第1号証)として登録されているものであって、該商品を我が国に輸入し販売するため本件商標登録出願に及んだものである。

(4) 請求人は、既に次の(ア)ないし(ク)に示すところの商標権を有する者である。

(ア) 登録第4246185号商標 第25類「バレンチノ ネルビーニ/

VALENTINO NERVINI」(甲第9号証の1、2)

(イ) 登録第4209923号商標 第25類「バレンチノ ネルビーニ/

VALENTINO NERVINI」(甲第10号証の1、2)

(ウ) 登録第3370907号商標 第25類「バレンチノ ネルビーニ/

VALENTINO NERBINI」(甲第11号証の1、2)

(エ) 登録第3370906号商標 第25類「バレンチノ ネルビーニ/

VALENTINO NERBINI」(甲第12号証の1、2)

(オ) 登録第3264727号商標 第18類「バレンチノ ネルビーニ/

VALENTINO NERVINI」(甲第13号証の1、2)

(カ) 登録第3035655号商標 第18類「VALENTINO NERBINI/バ

レンチノ ネルビーニ」(甲第14号証の1、2)

(キ) 登録第3241700号商標 第14類「バレンティノ ネルビーニ

/Valentino Nervini」(甲第15号証の1、2)

(ク) 登録第3293578号商標 第28類「バレンティノ ネルビーニ

/Valentino Nervini」(甲第16号証の1、2)

そうして、これらの商標が登録されたことをふまえ、該商標権に基づいて、盛んに営業活動を行い(甲第17号証ないし甲第22号証)、また、上記の商標権に係る商品と同一或いは同種の商品に商標等の使用許諾を締結する(甲第23号証、甲第24号証)等、事業の拡大の途を図っている者である。

(5) しかして、取引きの実際においては、引用された上記の商標「ヴァレンティノ ガラバーニ/Valentino Garavani」或いは「バレンチノ」、「Valentino」商標と、全く混同されることはなく、取引市場において、両者は明確に区別され、平穏に商活動がなされているものである。

このように、商取引の実際の事実からすると、本願商標は、これをその指定商品に使用した場合、取引者、需要者は、上記の引用の商標と明確に区別して、取引に当るものというべく、何等出所の混同を生ぜしめるおそれはないものというべきである。

5.当審の判断

(1) 商品出所の混同を生ずるおそれについて

(ア) 当審においてした証拠調べによれば、「Valentino Garavani」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)は、イタリア・ファッションの第一人者として、フランスのサンローランなどと並んで、国際的なトップデザイナーとして知られており、昭和50年代の初めには、同人のデザインに係る被服、ネクタイ、ベルト等が「Valentino Garavani」又は「VALENTINO GARAVANI」及び片仮名表記した「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」等の表示と共に、我が国のファッション雑誌などに取り上げられ紹介され、「Valentino Garavani」又は「VALENTINO GARAVANI」及びその片仮名表記である「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」は、世界有数のフッションデザイナーとして、また、同人のデザインに係る商品群を表示するためのデザイナーズブランドとして、本願商標の登録出願日である平成6年8月9日には、既に、我が国の需要者間においても著名であったというべきであって、その著名性は現在も継続しているとみて差し支えないものである。

そして、「Valentino Garavani」又は「VALENTINO GARAVANI」及び「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の表示をもって、同人のデザインに係る商品群を表示するためのデザイナー名又はデザイナーズブランドとして紹介されることが多いが、同時に雑誌等の記事や見出し中には、単に「Valentino」又は「VALENTINO」及び「ヴァレンティノ(バレンチノ)」と表示して紹介していることも決して少なくないところであり、その状況を窺うことができる。

(イ) そうすると、デザイナー「Valentino Garavani」は、我が国において「VALENTINO GARAVANI」及びその片仮名表記である「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の表示をもって紹介されることのある世界のトップデザイナーであって、かつ、同氏がデザインした婦人服、アクセサリー、バッグ、靴等のファッション関連商品におけるデザイナーズブランドを表示するものとして、本願商標の登録出願時には既に、我が国において著名であったものと認められばかりでなく、単に「Valentino」又は「VALENTINO」及び「ヴァレンティノ(バレンチノ)」の表記にあっても、前記デザイナーを指し又はそのデザイナーズブランドないしはその作品群を容易に想起させるものであるとの状況は、本願商標の登録出願時前において、既に我が国の取引者、需要者間に広く認識せられていたものというべきであり、その状況は現在に至るまで継続しているものというのが相当である。

(ウ) 本願商標は、後掲のとおり、上部にレタリングされた欧文字「V」を2個、その下に片仮名文字「バレンティノ ネルビーニ」及び欧文字「Valentino Nervini」とを二段書きした構成よりなるところ、外観において、該レタリングされた欧文字部分と、二段書きされた片仮名文字及び欧文字部分とは、自ずと分離して看取し得るばかりでなく、観念上からも、両者を一体のものとして認識し得るような格別の事情は見出せず、これらを常に一体不可分のものとしてのみ把握しなければならないとはいい難いから、該レタリング文字部分と二段書きされた文字部分は、それぞれ独立して認識し把握されるものである。

そして、二段書きされた「バレンティノ ネルビーニ」及び「Valentino Nervini」は、外国人の氏名であるかの如くに理解される場合のあることを必ずしも否定するものでない。しかし、請求人提出に係る甲各号証を徴しても、これが我が国の需要者間に特定の外国人氏名であり、かつ、よく知られているとの事情も不明というほかなく、かかる片仮名文字及び欧文字をそれぞれ一体のものとしてのみ印象付けて記憶するものとするような格別の事情に乏しい状況にあってみれば、これに接する需要者はその構成中の「バレンティノ」と「Valentino」又は「ネルビーニ」と「Nervini」の各文字のうち記憶、印象し易い文字部分により取引に資する場合も少なくないものというべきである。

(エ) してみると、本願商標の指定商品は、ファッション関連商品といえる第25類に属する商品「コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着」とするものであって、その需要者層は老若男女を問わないばかりか、いわゆるブランド品に詳しい者ばかりでないから、本願商標をその指定商品に使用した場合、上述した状況からしてその構成中の「バレンティノ」と「Valentino」の文字部分に着目し、これと本願商標の登録出願時には既に我が国においてその取引者、需要者の間に広く認識されていた国際的なトップデザイナー「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)」によるデザイナーズブランドないしはその作品群を容易に想起する「Valentino」、「VALENTINO」及び「ヴァレンティノ」とを関連付けて取引に資する場合があるというべきである。

そうすると、本願商標をその指定商品について使用した場合、その需要者をして当該商品が「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)」のデザインに係る商品、又は同人と組織的、経済的に何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれが少なからずあるものといわなければならない。

したがって、本願商標は、他人の業務に係る商品とその出所について混同を生ずるおそれのあるものというのが相当である。

(2) 請求人(出願人)の主張について

(ア) 請求人は、「Valentino」が、イタリアにおいてありふれた名前であると述べるているが、我が国においては、ファッション関連からみれば、上述のとおり国際的なトップデザイナー「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)」又は「VALENTINO GARAVANI」及びその片仮名表記である「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」によるデザイナーズブランドないしはその作品群を容易に想起するものであり、これ以外の「Valentino」をその氏名の一部にするデザイナーないしそのブランドが、これを越えて単に「Valentino」、「VALENTINO」又は「ヴァレンティノ(バレンチノ)」と略されている状況は見出せない。

(イ) 請求人は、イタリア国において「VALENTINO NERBINI」商標を第25類「衣料用品、履き物、25類に含まれる帽子」を指定商品として登録されているものであって、該商品を我が国に輸入し販売するため本願商標登録出願に及んだものである。また、 既に登録第4246185号商標「バレンチノ ネルビーニ/VALENTINO NERVINI」ほか7件(甲第9号証ないし甲第16号証)の商標権を有する者である。そうして、これらの商標が登録されたことをふまえ、該商標権に基づいて、盛んに営業活動を行い(甲第17号証ないし甲第22号証)、また、上記の商標権に係る商品と同一或いは同種の商品に商標等の使用許諾を締結する(甲第23号証、甲第24号証)等、事業の拡大の途を図っている者であるとし、しかして、取引きの実際においては、引用された上記の商標「ヴァレンティノ ガラバーニ/Valentino Garavani」或いは「バレンチノ」、「Valentino」商標と、全く混同されることはなく、取引市場において、両者は明確に区別され、平穏に商活動がなされているものであって、何等出所の混同を生ぜしめるおそれはないものというべきである旨主張する。

しかし、イタリア国における「VALENTINO NERBINI」商標及び我が国での「バレンチノ ネルビーニ/VALENTINO NERVINI」等の商標登録の存在は認めるとしても、それらの商標がデザイナー「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)」との関係で混同を惹起させるものかどうかは、個別・具体的に決せられるものであって、本件における混同可能性を否定する根拠とするのは適切でなく、前記認定を左右するに足りない。

また、「ヴァレンティノ ガラバーニ/Valentino Garavani」或いは「バレンチノ」、「Valentino」商標と、全く混同されることはなく、取引市場において、両者は明確に区別されている。との請求人の主張及びその提出に係る見積書写しや契約書写しからしては、本願商標の指定商品における取引きの実際は、不明というほかなく、むしろ、デザイナー「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)」と何らかの関連性のあるものと誤解している可能性も否定できないというべきである。このほか述べる請求人の主張及びその提出に係甲各号証をもってしては、前記認定を覆すことはできない。

(3) 結語

以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといわざるを得ないから、これと同趣旨をもってその登録出願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消す理由はない。

よって、結論のとおり審決する。

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