Trademark Appeal Case
著名商標と人名の混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年審判第2998号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「BERNARDO VALENTINO」の欧文字を横書きしてなり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」を指定商品として、平成8年3月19日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由(要旨)
原査定は、「本願商標は、その構成中に『VALENTINO』の文字を有するところ、該文字は1967年にファッション業界の最高栄誉とされる『ファッション・オスカー』を受賞して以来、世界的に著名となったファションデザイナー『ヴァレンティノ・ガラヴァーニ』がその取扱いに係る商品に使用し世界的に著名な商標『valentino』に酷似するものであるから、これを出願人がその指定商品に使用するときは、あたかも前記デザイナーの取扱いに係る商品または前記デザイナーと何らかの関係にある者の取扱いに係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」と認定・判断して本願を拒絶したものである。
3 職権証拠調べ通知(要旨)
本願商標が、商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて職権により証拠調べを行ったところ、下記の証拠により以下のとおりの事実を発見した。
(1)「世界の一流品大図鑑ライフカタログVOL.1」(昭和51年6月5日株式会社講談社発行)において、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」が、「イタリアファッション界の旗手と呼ばれ、女性を最高に美しく見せるデザイナーとして高く評価されている。」こと、及びその経歴等を紹介する内容とともに「ブラウス、セーター、ネクタイ」の商品の写真が掲載されていること。
(2)「EUROPE一流ブランドの本(講談社MOOK第2巻)」(昭和52年12月1日株式会社講談社発行)において、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の所有する店舗の紹介と簡単な経歴が「婦人服」の商品と共に掲載されていること。
(3)「服飾辞典」(昭和54年3月5日第1刷文化出版局発行)の、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」[Valentino Garavani、1932〜]の項に、「イタリア北部の都市(ヴォゲラ)に生まれる。17才でリセオ(中学)を中退、パリに行く。スチリストになるため、パリのサンジカ(パリ高級衣装店組合の学校)で技術を身につける。1951年、ジャン・デッセ(オート・クチュール)のもとで5年間アシスタントとして仕事をする。その後2年間、ギ・ラローシュのアシスタントをし、1958年独立、ヴァレンティノ・クチュールの名でローマに店を開いた。このころ、イタリアのモードは世界的に有名になりつつあった。彼の最初の仕事は、フィレンツェのピッティ宮殿でのコレクションである。このコレクンョンは、〈白だけの服〉という珍しい演出であったが、その美しさはジャーナリストの間で評判となり、「ニューズ・ウィーク」「ライフ」「タイム」「ウィメンズ・ウェア・デイリー」各誌紙で取材、モードのオスカー賞を獲得した。1967年、ヴァレンティノの名は世界に知れわたった。1972年には紳士物も始め、その他アクセサリー、バッグ、宝石類、香水、化粧品、家具、布地、インテリアと、その仕事の幅はたいへん広いが、すべて「ヴァレンティノ」独特のセンスを保っているのはみごとである。「ヴァレンティノ」の洋服に対する考えは、まず個性が第一で、彼のコレクションからは、デテールでなくそのエスプリをくみ取ってもらうことに重きをおく。ローマの高級住宅地、アッピア・アンティカに母親とたくさんの犬と暮らしている。仕事でパリとローマを行き来するが、世界中を旅行するなど忙しい日々である。物をつくる人は誰でも波があって、いつも傑作が続くとはかぎらないが、ヴァレンティノは現在、ローマのオート・クチュール界で最も好調なデザイナーといえる。以前から東洋風なエキゾティシズムが好きで、時によってトルコ風、アラブ風の特色がみられるが、最近はキモノのセクシーさを1950年代のハリウッドの雰囲気に表現、あやしく美しいヴァレンティノの世界をつくり出している。」との紹介記事が掲載されていること。
(4)「朝日新聞」(昭和57年11月20日夕刊第3頁)において、世界の服をリードする3人のうちの1人として「ヴァレンティノ」の紹介記事が掲載されていること。
(5)「男の一流品大図鑑’85年版」(昭和59年12月1日株式会社講談社発行)において、「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の文字とともに、「スーツ、ブルゾン、シャツ、ネクタイ、ベルト及びバッグ」の商品が掲載されていること。
(6)雑誌「non-no」1989年 No23号(平成元年12月5日株式会社集英社発行)及び「marie claire」(1996年2月1日中央公論社発行)において、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」が単に「ヴァレンティノ」と略称され、商品「婦人服」等と共に掲載されていること。
(7)「英和商品名辞典」(1990年株式会社研究社発行)[Valentino Garavani]の項において、「イタリア RomaのデザイナーValentino Garavani(1932ー)のデザインした婦人・紳士物の衣料品・毛皮・革製バッグ・革小物・ベルト・ネクタイ・アクセサリー・婦人靴・香水・ライター・インテリア用品など。Roma,Firenze,Milanoなどにあるその店の名称はValentino(vは小文字でかくこともある)。・・・ 」との記事及びデザイナーとしての紹介記事が掲載されていること。
(8)「世界の一流品大図鑑’93年版」(平成5年5月20日株式会社講談社発行)において、「VALENTINO」ブランドの香水が掲載されていること。
(9)「岩波=ケンブリッジ世界人名辞典」(1997年11月21日株式会社岩波書店発行)の[ガラヴァーニ]の項において「ヴァレンティノ Garavani、Valentino通称ヴァレンティノ Valentino(伊 1933−)服飾デザイナー・・・・」との紹介記事が掲載されていること。同じく、[ヴァレンティノ Valentino]の項において、「ガラヴァーニ、ヴァレンティノ」を見よとの表示があること。
4 請求人の意見(要旨)
本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとした職権証拠調べ通知の証拠からは、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」が著名なデザイナーであることと、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の説明において「VALENTINO」と略されることがあること、及び「VALENTINO」ブランドの商品が販売されていることが推認できるだけで、「VALENTINO」の文字を含む全ての商標が「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」と混同を生ずることを示すものではない。よって本願商標「BERNARDO VALENTINO」が「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、出所の混同を生じされるおそれはない。
したがって、本願商標は一体不可分の構成からなるものと認識し把握されるものであり、「VALENTINO」の文字部分のみを抽出しなければならない特段の理由はない。そして、本願商標はあくまでも「ヴェルナルド ヴァレンティノ」として理解され、称呼される。
特に、衣料の分野においては商品の柄ゆきを考案したデザイナーの氏名を出所表示標識としてフルネームで表すことが取引界の実情としてしばしば行われている。そうすると、本願商標は、商品を考案したデザイナーの名が「BERNARDO VALENTINO」であることが強く印象づけられる。
よって、本願商標「BERNARDO VALENTINO」から後半部の「VALENTINO」が直ちには分離抽出されないため、拒絶査定の理由に係る「商標『VALENTINO』に酷似するもの」には該当しない。
また、提示された証拠からは、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」という人物がデザイナーであること、「VALENTINO GARAVANI」のデザイナー名を「ヴァレンティノ」と略すことがあること、「VALENTINO」という名前の店舗が存在すること、「ガラヴァーニ ヴァレンティノ」の通称が「ヴァレンティノ」であることが示されているに過ぎない。証拠を総合的に見ても「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」が著名なデザイナーと同一であることと、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」を「ヴァレンティノ」と略すことまでは推察されるが、「ヴァレンティノ」、「VALENTINO」が著名なデザイナー「VALENTINO GARAVANI」を一義的に示すまでは立証されていない。
他方、「VALENTINO」といえば、ファッションの先端を行くイタリアにおいては、靴製造を起源とし、服飾を始めトータルファッションブランドとして著名であるデザイナー「MARIO VALENTINO」の姓としても知られている。イタリアにおいて最もありふれた姓氏である「VALENTINO」が、直ちに「VALENTINO GARAVANI」だけに帰属するものとはいえず、普段氏名の一方を略する場合には姓だけで表現する事実が多く見られることを考慮すると、ここから「MARIO VALENTINO」を示しているようにも看取される。
このように、本願指定商品にはファッション性が要求され、デザイナーの氏名が出所表示標識として頻繁に採用されるという取引における特殊事情を考慮すると、各々の氏名を表記したものは全体が一体となってデザイナー等のフルネームを表示すると判断されるのが妥当であり、本願商標の要部が「VALENTINO」とされるものではない。
結局、本願商標に接する需要者・取引者は、現実の取引において、ここから容易に「ヴァレンティノ ガラバーニ」を想起し、同人の業務に係る商品または同人と何らかの関係にある者の取扱いに係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
5 当審の判断
本願商標は、「BERNARDO VALENTINO」の欧文字を横書きしてなるものである。
そして、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)は、前記2(職権証拠調べ通知)で認定したとおり、世界的に著名な服飾デザイナーであり、我が国においても、単に「VALENTINO」、「ヴァレンティノ」と略称されて著名となっていた。そして、同デザイナーのデザインに係る商品である「婦人服,紳士服,アクセサリー,バッグ」等に表示される「VALENTINO GARAVANI」、「VALENTINO」、あるいはその片仮名表記である「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」、「ヴァレンティノ」は、本願商標の登録出願前より、我が国のファッション関連商品の需要者の間に広く認識されていたと認めることができる。
そうすると、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)のデザインに係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている「VALENTINO」の文字を含む本願商標は、これをその指定商品について使用するときは、その需要者が、該商品があたかも「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)のデザインに係る商品であって、同人又は同人と何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるとみるのが相当である。
請求人は、「『ヴァレンティノ ガラヴァーニ』が著名なデザイナーであること、『ヴァレンティノ ガラヴァーニ』が『VALENTINO』と略されることがあること、『VALENTINO』ブランドの商品が販売されていることは推認できるが、『VALENTINO』の文字を含む全ての商標が『ヴァレンティノ ガラヴァーニ』と出所の混同を生ずることを示すものではない。
また、本願商標は、一体の『BERNARDO VALENTINO』と把握され、『VALENTINO』の文字部分のみを抽出しなければならない特段の理由はない、あくまでも『ヴェルナルド ヴァレンティノ』として理解され、称呼される。
『VALENTINO』といえば、靴製造を起源とし、服飾を始めトータルファッションブランドとして著名であるデザイナー『MARIO VALENTINO』の姓としても知られている。このデザイナーの氏名にあっても、姓である『VALENTINO』を抽出して『ヴァレンティノ』と略して称されるものである。イタリアにおいてありふれた姓である『VALENTINO』が直ちに『VALENTINO GARAVANI』だけに帰属するものとはいえない。このように、各々の氏名を表記したものは全体が一体となってデザイナー等のフルネームを表示すると判断されるのが妥当であり、本願商標の要部が『VALENTINO』とされるものではない。そして、イタリア語で最も多く現れる姓である『VALENTINO』の表記が直ちに『VALENTINO GARAVANI』の略称と認識されることはない。本願商標に接する需要者・取引者は、現実の取引において、ここから容易に『ヴァレンティノ ガラヴァーニ』を想起し同人の業務に係る商品または同人と何らかの関係にある者の取扱いにかかる商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれはない。」旨主張する。
しかしながら、本願商標の指定商品は、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」のデザインに係る商品である「婦人服,紳士服」を含むファッション関連の商品である。
そうすると、本願商標をその指定商品について使用したときは、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「VALENTINO」の文字部分に極めて強く印象づけられ、著名なデザイナーである「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)ないしその取扱いに係る商品に使用される商標を想起し、該商品が「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」または同人と何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同するおそれがあると判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標といわざるをえず、上記に係る請求人の主張は採用できない。
以上のとおりであるから、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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