結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2003−30857(T2003−30857/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4387933号商標(以下「本件商標」という。)は、平成11年1月26日に登録出願され、「正木流万力鎖術」の文字を準文字で表してなり、第16類「印刷物」及び第41類「武道の教授,武道の演技の興行・企画又は運営」を指定商品・役務として、平成12年6月2日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べている。
(1)本件商標における全指定商品及び全指定役務については、請求人が鋭意調査した限りにおいて、継続して3年以上日本国内において使用されているという事実がない。即ち、商標権者自身による使用はもとより、商標登録原簿を確認しても設定登録された専用使用権はなく、また、許諾を受けた通常使用権者等による使用の事実もないと共に、その不使用についての正当な理由があるものとも認められない。
よって、本件商標における全指定商品及び全指定役務については、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録の取消を請求するものである。
(1)被請求人が提出した答弁書における答弁の理由及び乙号証の何れからも、被請求人が本件商標を確実に使用していることの確証は得られない。
例えば、「川越市武道場で行われている柴田孝一氏(通常使用権者)の稽古会に於いて不定期に正木流万力鎖術の指導を行っている。」旨を主張しているが、
(イ)「川越市武道場」が何処に所在するのか、請求人の調査した限りにおいては存在しないので、詳細な住所を明示されたい。
(ロ)「柴田孝一氏(通常使用権者)」とあるが、被請求人と柴田孝一氏とは本商標権につき、何時、どの様な内容の通常使用許諾をしているのかを書面で明示されたい。
(ハ)天神真楊流柔術者である柴田孝一氏が通常使用権者として、如何なる内容において正木流万力鎖術を通常使用しているのかの立証が全くない。
(ニ)被請求人は「川越市武道場で行われている柴田孝一氏(通常使用権者)の稽古会に於いて不定期に正木流万力鎖術の指導を行っている。」旨を主張しているが、極めて抽象的に「不定期」なる言葉を用いており、実際に指導を行った具体的事実を証明されたい。
以上の事実が具体的に明示されない限り、被請求人の「答弁の理由」は全く信憑性を欠いたものであり、本商標権を使用していることには成り得ないことは明らかである。
次に、各乙号証について反論する。
(a)乙第1号証及び同第2号証について
この両乙号証は、隔年に開催される埼玉県伝統武術演武大会の第二回及び第三回のパンフレットであり、この大会に被請求人は、大会役員中の顧問としては掲載されているが、演武においては「大会式次 四 演武 陣具術 オ 正木流万力鎖術」と掲載されているのみで、被請求人自身が正木流万力鎖術の演武者であることの明示はなく(被請求人が、答弁の理由において通常使用権者が存在することを主張している事情から見ても、誰が演武したかの明確性を必要とする。)、実際に誰が演武したのであるかの事実の確証を得ることが出来ない。
また、この埼玉県伝統武術演武大会は、埼玉県伝統武術連盟の主催であって被請求人の開催ではなく、且つ、2年に一度開催されたものであり、極めて単発的なものであると共に社会通念上事業の遂行と言える程度の反復継続性がなく、商標法上における業としての役務性が認められない。
(b)乙第3号証ないし同第5号証について
乙第3号証は「2001年版 武道&武術 全国道場ガイド前編」であり、乙第4号証は「2002年版 武道・武術 全国道場ガイド後編」であり、そして乙第5号証は「2003年版 武道&武術 全国道場ガイド前編」であるが、被請求人はこれらの乙号証をもって何を立証するために提出したのかの説明が一切なく、提出目的が不明確である。なお、何れの乙号証にも被請求人の氏名は掲載されておらず、乙第3号証と乙第4号証は表紙こそ相違するが、内容はページを含めて全くの同一であり、且つ、何れの乙号証にも奥付がないため編集人、発行人、発行日が不明で証拠能力を認めることができない。
(c)乙第6号証について
通常使用権者である柴田孝一氏が行っている稽古会の場所が、川越市営の武道館であることは、この乙号証により判明したが、果して通常使用権者である柴田孝一氏がこの川越市営武道館の会場を確かに借用して使用しているのかが立証されていない。川越市武道館は使用者に対し武道場使用許可証を発行しているのであるから、その借用事実の証として使用許可証を提出されたい。
(d)乙第7号証について
提出された通常使用権許諾証書における許諾日は、本商標権の設定登録日と同じであり、これが平成12年6月2日に当事者間のもとで作成されたものとは到底理解することができない。すなわち、商標権の設定登録日を、その当日に被請求人が確認して本商標権についての通常使用権を許諾し、その証書を作成することは、特許庁登録課の事務処理上からしても不可能である。
したがって、この通常使用権許諾証書は、請求人が平成15年10月30日付で提出した審判事件弁駁書における疑問点に対して迂闇にもその後に作成されたものと推測できると共に許諾内容においても、通常使用権の範囲における期間が「無期限」となっているが、商標法に基づき設定の登録により発生した商標権は、存続期間の更新登録制度を採用している上からしても、妥当な許諾期間とは言えない。よって、この通常使用権許諾証書は信憑性を具備せず、証拠能力を認めることはできない。
(e)指定商品の印刷物につて
被請求人は、「〜正しい指導書の執筆を行うべく、現在は構想を練っている段階であり、〜」と主張しており、使用の事実を全く立証していないのであるから、これが不使用であることは被請求人自身が認めたものであり、未だもって不使用であることは明らかである。
(2)結び
被請求人が主張する答弁の理由及び提出された乙号証のいずれからも、被請求人が本件商標を本件審判請求の予告登録前3年以内に使用している事実を確認することができない。
よって、本件商標における指定商品の「印刷物」及び指定役務の「武道の教授,武道の演技の興行,企画又は運営」については、使用の事実がないので、商標法第50条第1項の規定に該当することは明らかである。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第8号証を提出している。
被請求人は、平成12年10月29日開催の第二回埼玉県伝統武術演武大会及び平成14年10月27日開催の第三回埼玉県伝統武術演武大会について、大会顧問として本演武大会の興行・企画・運営に参画し、正木流万力鎖術の公開演武を行った。本演武会は埼玉県教育委員会・さいたま市教育委員会・埼玉新聞社・テレビ埼玉の後援を得て開催されている。本演武大会の模様は「武神」よりビデオが市販されている。
また、川越市武道場で行われている柴田孝一氏(通常使用権者)の稽古会に於いて不定期に正木流万力鎖術の指導を行っている。
これらの活動を踏まえて、今後正木流万力鎖術の普及拡大を行うべく、指導書の発行、出版等を企画している。
(1)川越市武道場の所在
川越市武道場とは川越市武道館のことであり、川越市郭町2丁目30番地1に所在する公共施設である。
(2)通常使用権者柴田孝一氏について
柴田孝一氏(通常使用権者)は、乙第3号証ないし同第5号証の道場案内で紹介されているように、
(ア)文京区総合体育館 所在地 文京区湯島4−7−13
毎週土曜日 15:30〜18:00
(イ)埼玉市浦和駒場体育館 所在地 さいたま市駒場2−5−6
毎週金曜日 19:30〜21:00
(ウ)川越市武道館 所在地 川越市郭町2−30
毎週土曜日 9:00〜12:00
において正木流方力鎖術の教授と共に、天神真楊流・浅山一伝流体術・神道夫心流拳法等の日本伝武術の指導を行っている。
また、第二回埼玉県伝統武術演武大会及び第三回埼玉県伝統武術演武大会において被請求人と共に正木流方力鎖術の演武を行い、大会実行委員長として大会の企画、運営を行った。
(3)乙第1号証及び同第2号証について
正本添付の乙第1号証及び第2号証パンフレット8P(第二回埼玉県伝統武術演武大会及び第三回埼玉県伝統武術演武大会)に演武者として表示されている。また当日に撮影されたビデオ、見学者からも被請求人が演武をしたことは明白な事実である。
埼玉県伝統武術演武大会は平成10年に第1回を開催してから、平成16年10月開催決定された第4回大会まで、6年に亘って開催される、武術大会としては大変に有用で意義あるイベントである。正木流方力鎖術は日本伝承文化を追求するものであり、コマーシャルベースによる興行と同一に考えることはできない性格のものではあるが、この種の興行としては大なるものであると言える。
請求人は本大会を単発的で反復継続性がないと主張するが、オリンピックをみても4年に一回の開催であり、その他の大会の開催例を見ても決して2年に一回の開催が単発的であるとは言えない。ましてや本年10月31日開催決定の第4回大会を入れて4回連続して開催して行われることは、その反復継続性を否定することは出来ない実績である。
(4)乙第3号証ないし同第5号証について
乙第3号証ないし同第5号証は柴田孝一氏(通常使用権者)が掲載の場所において正木流方力鎖を教授していることを証明するために提出したものである。これらの資料は武道専門誌「秘伝」(発行所:株式会社BAB ジャパン/〒1 51一0073東京都渋谷区笹塚1ー30一11)の付録情報として発行されたもので、一般書店で発売されたものである。表紙には当資料の表示がしてあり、出典は一目瞭然である。なお乙第4号証については錯誤による提出のため、乙第8号証として再提出する。
(5)印刷物の制作について
正木流方力鎖術は江戸初期に創始された武道の武術名に由来するが、日本の武道流派の多くが長い年月の中で真伝は失われ、近年になってあたかも正当に継承しているかのように称している者もいる。しかしながらそれを証明する物もなく、自称によってあたかも真実であるかの様に振る舞う事は日本で独自に発展した武道文化をないがしろにするものであり、本来あってはならないことである。
このような風潮の中、真実を追究するためには埋もれた資料を発掘し、その正しい姿を後世に伝承していくことが必要と考えている。日本の武道を探求していくと、そこには形而上において仏教との関連が深いものがある。日本の武道を理解するためには仏教文化の研究が不可欠であると考えるに至った。そこでより正確な知識と情報を得るため、被請求人は仏教大学文学部仏教学科仏教文化コースに入学し、仏教文化を学び研究を進めているところである。
誤った考察による出版物の発行は、日本伝来文化の喪失にもつながると思われる。その為には十分なる研究と資料及び情報の収集が必要と考える。それらの前提を踏まえて正しい指導書の執筆を行うべく、現在は構想を練っている段階であり、その発行まで長い年月を要することはやむおえないことと考える。
(6)結び
請求人は被請求人の商標使用に対し、その使用が確認できないと主張している。しかしながら請求人は被請求人の証拠に対しその弁駁内容を見ると、初歩的な調査行動さえも取っていないように見受けられ、その反証能力に疑問を感じるところである。答弁の内容にて述べたように、被請求人の当該商標使用の事実は明白である。
(1)「第二回及び第三回埼玉県伝統武術演武大会パンフレット」(乙第1号証及び同第2号証)によれば、その大会は、平成12年10月29日及び同14年10月27日に埼玉県立武道館で開催、主催者は「埼玉県伝統武術連盟」、大会会長は「奥田昌利」、顧問は「藤本修」(正木流万力鎖術)他6名、大会実行委員実行委員長は「柴田孝一」(天神真楊流柔術)との記載(表紙及び2〜3頁)があること、及び、「正木流万力鎖術」は、流儀解説に徴するに、「〜剣術指南である正木俊充が刀を抜けない場合に刀と渡りあえるような威力のあるものとして、長短種々の形の鎖分銅をつくり、使い方を工夫して完成したものが正木流万力鎖である。」との記載、演武者として「柴田孝一」「藤田修」他2名の記載(8頁)があること。
(2)雑誌「月刊秘伝」2月号付録として「武道&武術全国武道ガイド前編」【2001年版】(乙第3号証)、同【2002年版】(乙第8号証)及び同【2003年版】(乙第5号証)によれば、「天神真楊流柔術、浅山ー伝流体術、神道天心流拳法、正木流万力鎖術」「柴田孝一」「日時/場所 1、毎週日曜日10時〜12時 川越総合体育館柔道場 2、毎週土曜日15時30分〜18時 文京区総合体育館柔道場 3、毎週金曜日19時〜21時 浦和市民体育館 4、毎週土曜日9時〜12時 川越市武道館」「入会金5000円、月謝5000円」との記載があること。
(3)「川越市ホームページの川越市武道館の案内」(乙第6号証)によれば、施設として「弓道場」「柔道場」「剣道場」等、使用料として「団体使用料」「個人使用料」の記載があること。
(4)「通常使用権許諾書」(乙第7号証)によれば、平成12年6月2日付けで、商標権者「藤本修」は、「柴田孝一」に対し本件商標に係る商標権について通常使用権を許諾していること。
そこで、先ず、被請求人が本件商標をその指定役務第41類「武道の教授,武道の演技の興行・企画又は運営」について使用しているか否かについて検討するに、乙第1号証及び同第2号証に示す「第二回及び第三回埼玉県伝統武術演武大会」の主催者は、「埼玉県伝統武術連盟」(会長 奥田昌利)であって、被請求人は、その大会における顧問7人の内の一人であり、かつ、「正木流万力鎖術」の演武者4人の内の一人にすぎないものと認められる。
加えるに、この大会の興行・企画又は運営の役務が対価を伴う商標法上の役務に該当するものと認めるに足りる証拠は見出せない上、その大会の演目の一つである被請求人を含めた4人が演ずる「正木流万力鎖術」の演武が対価を伴う役務と認めるに足りる証拠も見出せない。
そして、他に、被請求人が本件商標の指定役務について使用している証左は見出せない。
次に、柴田孝一が通常使用権者の地位にあるか否かについて検討する。 乙第7号証によれば、通常使用権許諾書は、本件商標の商標権設定の登録日である平成12年6月2日付けでなされている。
しかながら、通常使用権許諾の内容はともかく、商標権設定登録の登録事務からみると、本件商標の商標権の設定登録日に本件商標の登録番号を知り得ることは、事実上不可能といわなければならない。
そうとすれば、乙第7号証は、極めて不自然な通常使用権許諾書といわざるを得なく、この書証をもって柴田孝一が通常使用権者の地位にあるものと認定することは困難といわなければならない
そして、他に、柴田孝一が通常使用権者の地位にあると認められる証左は見出せない。
してみれば、被請求人提出の乙各号証によって、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件商標の指定役務について使用した事実を認めることができない。
なお、本件商標の指定商品第16類「印刷物」について、被請求人は、不使用であることを自白しているところである。
したがって、以上のことから、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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