Trademark Appeal Case
著名人名略称の混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年異議第90673号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4231225号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成8年11月27日に登録出願、第26類「編みレース生地,刺しゅうレース生地,テープ,リボン,房類,針類,腕止め,頭飾品,造花(「造花の花輪」を除く。),造花の花輪,漁網製作用杼」を指定商品として、平成11年1月14日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきである。
3 本件商標に対する取消理由の要点
当審が、平成13年8月24日付で商標権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)の主張の趣旨及び甲第7号証ないし同第62号証によれば、次の事実が認められる。
「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァニ)は1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーと呼ばれ国際的なトップデザイナーとして知られている。
我が国においても、ヴァレンティノ ガラヴァニの名前は1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品は「Vogue(ヴォーグ)」誌などにより継続的に日本国内にも紹介されている。
昭和49年には三井物産株式会社の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノヴティックジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品は我が国のファッション雑誌にもより数多く掲載されるようになり、同氏は我が国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。
以上のとおり、ヴァレンティノ・ガラヴァニは、世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された平成8年11月当時には、既に我が国においても著名であったものと認められる。
同氏の名前は「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァニ」とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられており、ファッションに関して「VALENTINO」「ヴァレンティノ」といえば同氏を指すものと広く認識されるに至っているというべきである。
(2)さらに、当審において調査するに、「ヴァレンティノ ガラヴァニ」「VALENTINO GARAVANI」は、我が国においては、「ヴァレンチノ」、「ヴァレンティーノ」あるいは「VALENTINO」とも略されて表示されていることは、田中千代「服飾辞典」同文書院1981年p550、山田政美「英和商品辞典」(株)研究社1990年p447、金子雄司外「世界人名辞典」岩波書店1997年p84)において裏付けられるばかりでなく、雑誌における表現においても、たとえば、「marie claire」1996年2月1日号、「non‐no」1989年 No23号等からも認められる。
(3)以上の事実よりすると、「VALENTINO」又は「VALENTINO GARAVANI」よりなる商標(以下、これら商標をまとめて「引用商標」という。)は、VALENTINO GARAVANI氏がデザインした婦人服、紳士服、アクセサリー、バッグ、香水等の商品におけるデザイナーブランドとして使用され、本件商標の登録出願の時には、既に我が国において、取引者、需要者間に広く認識されていたものといえる。
(4)他方、本件商標は、その構成中に「VALENTINO」の文字を有するものであり、その指定商品は、引用商標が使用されている被服等と密接な関係を有する「編みレース生地、刺しゅうレース生地、テープ、リボン」等の商品である。
以上を総合すると、本件商標を、商標権者がその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をして、その商品があたかも上記デザイナーあるいは、同人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
4 商標権者の意見の要点
イタリアの服飾デザイナー「ヴァレンティノ ガラヴァニ」が使用する商標「VALENTINO GARAVANI」は、「VALENTINO」あるいは「バレンチノ」と略称されて、その略称において本件商標が登録出願された平成8年11月当時既に著名となっている事実は、全く認められない。
また、本件商標は、外観構成上、前半の「GIORGIO」と後半の「VALENTINO」に特に軽重の差を見出すことのできない商標であり、観念上も、全体としてある欧米人の氏名を表したものと認識されるものである。加えて、本件商標より生ずる「ジョルジオバレンチノ」の称呼も、格別冗長なものではなく、よどみなく一連に称呼し得るから、本件商標は、後半部のみで「バレンチノ」と略称されることはあり得ない。したがって、本件商標は、称呼上も、引用商標とは十分に区別し得ることが明らかである。
以上の理由から、本件商標は、構成中に「VALENTINO」の文字を含んでいても、デザイナー「ヴァレンティノ ガラヴァニ」又は同デザイナーと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生ずるおそれは、全く認められないと判断されるべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではないから、その登録は維持されるべきである。
5 当審の判断
本件商標は、その指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者をしてイタリアの服飾デザイナーVALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ ガラヴァニ)が婦人服、紳士服、アクセサリー、バッグ、香水等の商品に使用して取引者、需要者に知られる引用商標を連想、想起させるから、上記デザイナーあるいは、同人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。したがって、商標法第4条第1項第15号に該当するとの理由により、本件商標の登録を取り消すべきものとした先の取消理由(上記3)は妥当なものであって、これについて述べる商標権者の意見(上記4)は、以下の理由により、採用することができない。
(1)商標権者は、「VALENTINO」の文字は、一般に欧米においてしばしば見られる男子の姓又は名を表したと容易に理解し得るものであり、「VALENTINO」を姓又は名とする多数のデザイナーが存在する現状では姓名を特定して初めてどのデザイナーズブランドを指すかが我々に判るというべきである。したがって、我が国においても外国においても「VALENTINO 〜 」あるいは「 〜 VALENTINO」よりなる商標が、「ヴァレンティノ」とのみ略称されることはなく、姓名として一体に把握、観察されるのが自然であると主張する。
しかしながら、「VALENTINO」が欧米人に多い氏姓であるからといって(そのことは必ずしも我が国では周知ではない。)、また、「VALENTINO」の文字を含む商標が多数存在する実情があるからといって、我が国における「VALENTINO(ヴァレンティノ)」との表示の使用等のされ方によっては、取引者、需要者の間で特定のブランドの略称としての認識が成立し得ないわけでもない。そして、実際、本件各証拠によれば、先の取消理由(上記3)のとおり、「VALENTINO GARAVANI」について「VALENTINO(ヴァレンティノ)」との表示が使用されてきた実情が存在し、他のデザイナーではこのような事実が認められないことも相俟って、我が国において、「VALENTINO(ヴァレンティノ)」がイタリアの服飾デザイナーVALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ ガラヴァニ)氏又はそのデザインに係る商品群に使用されるブランド(VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ ガラヴァニ)商標)ないしその略称を表すものとして取引者、需要者の間に広く認識されていたことを認め得るのであるから、商標権者の上記主張は採用の限りでない。
(2)また、商標権者は、本件商標は、外観構成上、前半の「GIORGIO」と後半の「VALENTINO」に特に軽重の差を見出すことのできない商標であって、観念上も全体としてある欧米人の氏名を表したものと認識されるものであるから、構成中の「VALENTINO」の文字部分のみが分離して把握されるおそれはなく、引用商標と誤認混同される余地はないものである。加えて、本件商標より生ずる「ジョルジオバレンチノ」の称呼も格別冗長なものではなく、よどみなく一連に称呼し得るから、本件商標は、後半部のみで「バレンチノ」と略称されることはあり得ないとも主張する。
しかし、申立人ブランドの表示として、「VALENTINO」、「ヴァレンティノ」の語がそれぞれ単独で用いられ、我が国において取引者、需要者の間に周知となっていることは先の取消理由(上記3)認定のとおりである。また、本件商標は、その下段部分の構成上、明らかに「GIORGIO」と「VALENTINO」とに二分されており、これに接する者が「VALENTINO」の部分を可分なものとして認識することはごく自然なことであって、上方に付加されている「G」と「V」のモノグラム図形も上記認定を左右するものではないと認められる上、その指定商品と申立人ブランドの表示に係る商品とに共通するファッション関連商品の取引者、需要者は、外観及び称呼の比較的長い商標については、そのデザイナーの氏名の略称等により簡易迅速に表記ないし呼称することが少なからずあるというのが取引の実態であるから、このような取引者、需要者において、上記「VALENTINO」の部分に着目することは、十分にあり得ることといわなければならない。したがって、商標権者の上記主張も採用することができない。
(3)商標権者は、上記各主張を裏付ける証拠として審査例、登録異議の決定例を挙げるが、過去にされた審査例等は具体的、個別的な判断が示されているものであって、必ずしも確立された統一的な基準によっているものとはいえず、仮にその中に矛盾や誤りがあるとしても、具体的事案の判断においては、過去の審査例等の一部の判断に拘束されることなく検討されるべきものであるから、本件に関する上記判断を左右するものではない。
以上のとおりであって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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