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Trademark Appeal Case

著名商標と使用による混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第30876号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

I 本件商標

本件登録第1493631号商標(以下「本件商標」という。)は、別紙(A)に示した構成よりなり、第25類「ティシュペーパー、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和53年9月22日登録出願、同56年12月25日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

II 請求人の引用する商標

本件商標は取り消されるべきであるとして請求人が引用する商標(以下「引用商標」という。)は、別紙(B)に示した構成よりなり、主として商品「雑誌」に使用されているものである。

III 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第31号証を提出した。

1.(1)別紙(C)(D)(E)に示した構成よりなる商標(以下、順に「使用商標イ」、「使用商標ロ」、「使用商標ハ」という。)は、請求人の著名商標である引用商標と類似するものであるから、被請求人(本件商標の商標権者)が、使用商標イ、ロ、ハを本件商標の指定商品である「ティシュペーパー、トイレットペーパー」に使用すると、あたかも請求人の業務に係る商品と誤認されるおそれがある。

よって、本件商標は、商標法第51条の規定によりその登録を取消されるべきものである。

(2)被請求人は、使用商標イ、ロ、ハが引用商標と類似しない旨の主張するが、引用商標は、わが国において極めて著名なものであり、「バッグ」「サングラス」「眼鏡フレーム」「カフスボタン」「ネクタイ止め」「ガスライター」「灰皿」「財布」「定期入れ」「キーケース」「名刺入れ」について登録商標「ELLECLUB」を使用した企業に対し、引用商標と類似する商標であるから「ELLECLUB」を使用してはならないとの判決もある(甲第30号証)。

本件における使用商標ハなどは、「elle」と「moi」の間に点を記入し、「elle」の部分が顕著に表示されている。

したがって、当該判例の趣旨に照らし使用商標ハをティシュペーパー、トイレットロールに使用した場合には、引用商標と類似すること極めて明らかである。

なお、被請求人は、本件商標と引用商標との類否について述べているが、商標法第51条に基づき請求している本件審判では、両者の類否を問題にする必要は全くないものである。

2.被請求人による使用商標の使用状況は次のとおりである。

(1)ティシュペーパー400枚入りの箱の表面中央部分に使用商標イを、また、箱の底面の使用注意書きの付近に使用商標ハを付したものが、例えば、雑貨店「マルフジ」(東京都豊島区駒込6−27−10所在)において販売された(甲第2号証、別紙(F)に示す)。

(2)トイレットペーパー6本入りの包装紙の表面に使用商標ロ、及び底面に使用商標ハを表示したものが、例えば、「ココスナカムラ麹町店」(東京都千代田区麹町3−1−8所在)において販売された(甲第3号証、別紙(G)に示す)。

(3)被請求人は、使用商標イ、ロ、ハに関し、自ら乙第2号証ないし乙第5号証を提出して論じているが、乙第4号証(カタログ)には、甲第2号証及び甲第3号証により、その使用状況を証明したティシュペーパー(乙第3号証、カタログ第1頁上から2つ目欄、エルモア・コンパクト5個ポリ)及びトイレットロール(同カタログ第3頁下から3欄、エルモアフラグランス ピンクダブル)と同じものが記載されている。したがって、請求人が提出した証拠を、被請求人は自分のものではないというわけではないものと認める。

そうであるならば、請求人が混同を生ずるとして提出した証明に基づいて、吟味されるべきであって、被請求人が自己に都合の良い資料を持ち出して議論する筋合いのものではない。

(4)被請求人は、使用商標イ、ロ、ハが本件商標と同一平面に表示されているから「エルモア」の称呼のみが生じるので社会通念上、本件商標と同一のものであると主張する。

しかし、社会通念上同一という概念は、商標法第50条にのみ適用のある概念であることは、条文上明らかである。さらに、引用商標がわが国において「エル」の称呼をもって、著名である状況下にあっては、たとえ同一平面に本件商標が表示されていても、看者は引用商標と類似する使用商標イ、ロ、ハに目を引かれ、これを引用商標の権利者である本請求人の業務に係る商品と誤認するおそれがあることは論をまたないものである。

3.引用商標の著名性について

(1)請求人は、フランスの法人であり、女性向けファッション雑誌「ELLE」の出版を中心として、各種商品のファッションを創作、紹介しているものである。

雑誌「ELLE」は、被服、身回品、化粧品、家具、食品等に関する記事を掲載する週刊誌でありフランスにおいては第2次世界大戦前から発行されていたが、現在までに約2300号を数えており、発行部数は、フランス語版が毎週555,000冊に達している。雑誌「ELLE」は、現在ライセンス契約をし、あるいは、合弁事業として活動している企業が各国において姉妹誌「ELLE」(アメリカ合衆国で「エルパブリッシング」が「ELLE」を、イギリスで「ニューズインターナショナルハシエッテ」が「ELLE」を、スペインで「エドサ」が「ELLE」を、アラブで「アル シャルキアインターナショナルエスタブリツシュメント」が「ELLE SHARKIAH」)をそれぞれ発行している。

これらのうち、フランス版、アメリカ版、イギリス版は日本国内においても販売されている。その他、イタリア版、ホンコン版、スエーデン版、中国版、ギリシャ版、フィンランド版、ドイツ版、オランダ版、ブラジル版、ポルトガル版、カナダ版、スペイン版、チェコ版、ポーランド版、トルコ版、チリ版、アルゼンチン版、メキシコ版、オーストラリア版、シンガポール版、台湾版、韓国版が発行されている(甲第4号証)。

(2)わが国でも、後述の(株)マガジンハウス(以下「マガジンハウス」という。)が昭和57年以来雑誌「ELLE」の日本語版を発行してきたが、現在は、株式会社タイム アシェット ジャパンがこれを承継して発行している(甲第5号証)。

これらの雑誌に掲載されるファッションは現代感覚にあふれた「ELLE」誌独自の特徴を有し、「ELLE」ファッション、「ELLE」カラーと呼ばれて全世界の女性間に広く支持者を持っている。このように、雑誌「ELLE」は、ファッンヨンの世界的中心地たるフランスにおいて発行され世界各国に輸出されており、日本においても「ELLE」誌及び「ELLE」ファッションは、古くから広く知られ、わが国のファッションに多大な影響を与えている。

(3)請求人は、昭和57年にマガジンハウスを通じて日本語版「ELLE」を発行する以前から、わが国に「ELLE」誌及び「ELLE」ファッションの紹介を積極的にしてきたので、「ELLE」はよく知られていた。

すなわち、マガジンハウスは、請求人の許諾の下に昭和45年3月に雑誌「アンアン(an.an)」を日本版「ELLE」誌と位置づけて創刊し、以来昭和57年に至るまで「アンアン」には毎号本国版「ELLE」誌の記事を一部そのまま掲載するなど「ELLE」ファッションの紹介、普及を図り、その表紙には必ず「ELLEJAPON」の商標を付してきた。

なお、「アンアン」誌が若い女性間の爆発的な指示を受け、わが国で最も人気のある雑誌の一つであることは周知のとおりである。

また、マガジンハウスは「アンアン」誌のみに止まらず、その発行に係る「クロワッサン」誌等他の出版物にも、多数「ELLE」誌の記事を「ELL」の名の下に記載したが、昭和57年4月に至り、マガジンハウスから雑誌「ELLE」を発行し、さらに、株式会社タイム アシェット ジャパンがこれを承継し、現在に至るまで、日本における女性向け雑誌の中でも最も人気の高い雑誌となっていることは周知の事実である。

(4)わが国における、雑誌「ELLE」は、昭和57年4月から同60年4月までは月に1回、以後は現在に至るまで月2回刊行しているが、毎号の発行部数は20万冊から24万冊に達している。

その内容は、被服、身回品、化粧品その他のファッションの紹介の記事、あるいは、これに関連する広告の掲載であり、いわゆる「ELLE」ブランド、「エル」ブランドの国内における源

流となっている。

4.請求人の営業活動について

(1)請求人は、雑誌「ELLE」の刊行を続けるのみではなく、「ELLE」ファッションの普及を図るために、ライセンシーにこれらのファッションを商品化させる活動も行ってきた。

このために、請求人は、日本を含め世界各国こおいて各種商品について商標「ELLE」の登録をなしている。各国において管理をしている引用商標の数はおよそ1700余りあるといわれている(甲第6号証)。

(2)わが国においては、昭和39年以来、帝人株式会社(大阪市東区南本町1丁目11番地、以下「帝人」という。)に対し、引用商標の独占的使用を許諾するとともにかかる活動を推進してきた。帝人は、自ら「ELLE」ファッションに係る洋服を製造、販売する一方、その独占的使用権に基づき、婦人服につきイトキン株式会社(大阪市東区北久太郎町2丁目37番地)、スカーフ・ハンカチ類につき川辺株式会社(東京都新宿区新宿1丁目28番14号)、水着につき株式会社岸田(東京都新宿区四谷2丁目11番地)、エプロンにつき中西縫製株式会社(東京都墨田区領国3丁目21番5号)、寝装寝具類につき西川産業株式会社(東京都中央区日本橋富沢町8番8号)、手袋につき株式会社三大(大阪市福島区福島3丁目12番20号)の各社に引用商標の再使用権を許諾した。帝人とこれら各再使用権者は、共同して「ELLE」ファッションの宣伝、販売、普及に努め、その製造、販売に係る商品に引用商標を使用していた。

その後、昭和59年7月に至り、請求人は、前記帝人との関係を解約し、自ら東洋ファッション開発株式会社を設立し、「ELLE」ファッションの市場開発、市場調査、企画、利用をはかり、帝人の再使用権者を引き継ぎ使用権者として引用商標の普及に努めている。また、その間新たな再使用者として、添付のサブライセンシーリスト記載の企業が「ELLE」ファッションの事業に加わり、その活動範囲は益々ひろがりを見せている。

(3)平成6年(1994年)中における上場各企業が引用商標を付して販売した商品の総売上額は34,236,832,000円である(甲第7号証)。これらの商品に付されている商標は、いずれも引用商標の構成からなるものである。それ故、これら商品を通しても、引用商標はわが国においてよく知られるところとなっている。(甲第8号証ないし甲第24号証)。

5.以上述べたところがら、明らかなとおり、引用商標は雑誌「ELLE」による著名性、「ELLE」ファッション、商標「ELLE」のブランド活動により、わが国においても遅くとも昭和59年迄には「エル」の称秤をもって著名商標となっていることは疑いのないところである。

6.商品の出所の混同について

(1)本件商標は、前記に表示されるとおり、ブロック体の片仮名文字を左から右に「エルモア」と書してなるものである。

これに対し、使用商標イ、ロ、ハは、引用商標と同じローマ字の綴り「elle」をデザインした表示に「moi」を加えてなるものである。

特に、使用商標ハは「elle」の文字と「moi」の間にハートの図形を配置しており、看者をして「elle」部分と「moi」の部分を区分して認識させる表示となっている。

したがって、著名商標を眼にしているわが国の国民は各引用商標(「使用商標」の誤記と思われる。)を目にすると「elle」の部分に注意を向け、これを「elle」、「エル」と認識し、著名商標と同一の、あるいは、著名商標の権利者と関係する業務に係る商品と混同するおそれが多分にある。

(2)被請求人は、請求人の著名商標に係る商品と被請求人の商品は品質、用途、用法、流通系統、販売系統が異なるから、引用商標の効力が使用商標に及ぶことはないと主張する。

しかし、現在の著名ブランドビジネスにおいては、その経営が多角化する傾向が強いのであるから、一般の消費者が使用商標をみて、請求人の事業に関係し、または、そのグループの関係する商品と誤信するおそれがあると言わなければならない。

7.故意について

(1)請求人は、被請求人のかかる行為に対し警告を発しているが、被請求人は、何ら反省のない回答をしている(甲第29号証)。

したがって、被請求人には、かかる行為について商標法第51条第1項に言う故意があるものと言わざるをえない。

(2)被請求人は、商標法第51条にいう故意がないと主張するが、付記・変更のある商標が引用商標と類似しているがぎり、その商標の存在を認識していたものと推認しうるから、故意の存在も推認できる(昭和14年審判第257号、昭和15年10月10日審決)。

引用商標がわが国において著名である状況の下においては、被請求人に故意があったろうと推認して誤りではない。

IV 被請求人の主張

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。

1.本件商標と引用商標が非類似であることについて

両者は、その構成前記のとおりであり、これらの外観は一見して異なり、かつ、ともに特定した意味合いを有しない造語であるから、観念上も別異であること明らかである。

そこで、両者を称呼につき比較検討すると、本件商標は「エルモア」全体で認識される1つの文字商標であって、この密接不離構成を分離して観察しなければならない格別した理由はない。しかも、「エルモア」の称呼自体4音という短綴音であることからして、これを「エル」と「モア」とに分離して観察する必然性は全くなく、本件商標はあくまで「エルモア」とのみ淀みなく一連に称呼されるとするのが極めて自然であって、現実の取引に際しても、「エルモア」を「エル」と略称して取引に資されていることは皆無である。

2.使用に係る商標について

(1)使用商標イ、ロは、本件商標と必ず同一面にて使用され、これの単独使用はなく、その称呼も「エルモア」のみである。

すなわち、被請求人は、本件商標をその指定商品中の「ティシュペーパー、トイレットペーパー」等に使用しており、例えば、トイレットペーパーのカタログ(乙第2号証及び乙第3号証)によれば、「エルモア」の文字を大きく中央に書し、その真上や左上に「Ellemoi」の欧文字を書してなるが、これも「エルモア」の片仮名文字に相応して「エルモア」と称されており、「エル」と称して取引されていることは皆無である。

同じく、エルモア総合カタログ(乙第4号証)のティシュペーパーやポケットティシューの欄を見ても、必ず同一面にて「エルモア」と「Ellemoi」が使用されており、「Ellemoi」は「エルモア」とのみ称されている。

この事実を裏付けるものとして、現実に使用しているトイレットペーパーの包装フィルムを添付する(乙第5号証)。

確かに、「Ellemoi」の構成中には「Elle」の文字を含んでいることは首肯するが、本件商標と必ず一緒に使用している「E11emoi」はあくまでこの構成全体で認識される1つの文字商標であって、どのような見地から見ても、これより生ずる自然な称呼は「エルモア」以外は考えられないし、かかる称呼自体何ら冗長ではなく、語呂も良いなどを総合的に勘案すれば、これを単に「エル」と略称されることは絶対にないし、「Elle」の部分が浮かび上がることもあり得ないのである。

(2)ティシュペーパー、トイレットペーパーの箱の裏面に「楕円形内に使用商標ハがあるとしても、これとて構成全体で「エルモア」または「エルモアマーク」と理解されており、殆ど見られることのない裏面よりも看者の最も目に付く正面に書された「エルモア」の文字により、単に「エル」と称されたり、「elle」の部分が浮かび上がることは皆無である。

(3)「エルモア」というのは、被請求人がティシュペーパー、トイレットペーパー、紙製手ふき等に使用している登録商標で、これら商品は日本全国で販売に供され、この種業界では広く知られている周知性を確立しているから、現実の取引に際して、「エルモア」及び「Ellemoi」「ellemoi」を「エル」と略して取引に資されていることは全くない上に、被請求人は独自の技術開発並びに誠実さと信用をモットーとする製紙メーカーであって、他商標のフリーライドをする意図は毛頭ない。

被請求人は、本件商標を指定商品中の「ティシューぺ一パー、トイレットペーパー」等につき正当に使用しており、かつ、「エルモア」と同一面にて使用されている「Ellemoi」「ellemoi」からも「エルモア」のみの称呼が生ずるから、片仮名文字と欧文字の使用とはいえ、社会通念上同一と認められるものである。

(4)引用商標は「ELLE」の欧文字構成から「エル」の称呼を生ずるものであるから、使用商標から生ずる「エルモア」と引用商標から生ずる「エル」とを一連に称呼するも、「モア」の有無が両称呼の類否に及ぼす影響は極めて大きく、その音構成、語音語調等の顕著なる相違により、聴者の聴感自から相異なり、称呼上決して彼此混同誤認を生ずるおそれのない別異のものである。

3.商品の出所の混同について

(1)引用商標が日本国において、需要者・取引者間に広く認識されている著名商標であるとしても、本件商標等と引用商標とが外観、観念及び称呼のいずれにおいても何ら関係のない非類似のものである以上、この両者間の出所につき混同を生ずるおそれは皆無である。

(2)引用商標が被服、身回品、化粧品、家具、食品等に関する記事を掲載する女性向けファッション週刊誌として知られていることは甲各号証よりある程度認められるとしても、これと本件商標の指定商品である第25類「ティシュペーパー、その他本類に属する商品」とは、その品質、用途、用法のみならず、流通系統、販売系統等を異にする別異のものであるから、引用商標が使用商標にまで権利範囲が及ぶとした請求人の論法には、到底納得できない。

いずれにせよ、請求人は「ELLE」商標の著名性を拡大解釈しており、構成中に「エル」「Elle」「elle」等を含む商標は、すべて自己の商標に類似するとか出所につき混同を生ずるとかの見解は、独断に基づくものと言わざるを得ない。

4.故意について

商標法第51条第1項は「商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用であって商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」(乙第6号証)と規定しているが、本件の場合は登録商標の「エルモア」と社会通念上同一と認められる「Ellemoi」「ellemoi」なる片仮名文字と欧文字の相互間使用であって、登録商標である「エルモア」を正当に使用している以上、何ら取り消されることはないと思料する。

前記した如く、商標法第51条第1項の規定による商標登録の取消には、他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずることについて故意の存することが要件であるが、被請求人は、登録商標である「エルモア」の範疇として「Ellemoi」「ellemoi」の欧文字を使用していることからして故意である筈はない。

V 当審の判断

1.本件商標

本件商標は、別紙(A)に示したとおり、「エルモア」の片仮名文字よりなるものであるから、その構成文字に相応して「エルモア」の称呼を生ずるものであって、造語よりなるものと認められる。

2.使用に係る商標及び使用に係る商品

(1)請求人が自己の業務に係る商品と混同を生ずるとする被請求人の使用に係る商標(使用商標イ、ロ、ハ)は、別紙(C)(D)(E)に示したとおりである。

(2)甲第2号証及び甲第3号証によれば、被請求人が、商品「ティシュペーパー、トイレットペーパー」に現実に使用している商標の態様は、別紙(F)(G)に示したとおりである。

(3)使用に係る商品

本件商標の指定商品は、前記したとおり、第25類「ティシュペーパー、その他本類に属する商品」であり、使用商標イ、ロ、ハの使用に係る商品は、「ティシュペーパー、トイレットペーパー」であるから、使用に係る商品は、本件商標の指定商品に包含されるものと認められる。

3.引用商標1

(1)甲第26号証(1972年2月1日、株式会社ダヴィッド社発行「日英仏独対照服飾辞典」)によれば、「エル」の項に「フランスのファッション・ブックを兼ねた大型女性週刊誌の名.現代感覚にあふれた若い女性向きの雑誌として知られ,ファッションに重点をおいた点に特徴がある.エル社は日本の帝人と提携し,1970年よりファッション産業のシステム化をはかる一方,平凡出版社ではその日本版として《アンアン・エル・ジャポン》を隔週刊で出版している.」の記載が認められ、また、甲第28号証(昭和54年7月20日増補版第2刷、文化出版局発行「服装大百科事典下巻」)によれば、「エル Elle」の項に「フランスの若い女性向きの週刊誌。この雑誌はファッション中心の編集で,フランスの若い女性のおしゃれに多大の影響を与えているが,最近では『エル・ファッション』といわれて,全世界の若い女性たちの間に支持者を持つようになっている。そのデザインは,現代感覚に満ちあふれ,しかも親しみやすい点が特徴である。」の記載が認められる。さらに、甲第27号証(昭和54年4月21日東京都立中央図書館受、文化出版局発行「服飾辞典」)には、「エル・ファッション」に関し、「フランスの女性週刊誌『ELLE』によって生み出されたファッション」であることの記載が認められるところである。

(2)甲第7号証(1988年販売高表)、甲第8号証ないし甲第25号証(カタログ)及び前出甲第26号証を総合すれば、請求人は、日本の企業を介して、引用商標について使用権を設定し、日本国内において1970年(昭和45年)頃より、1988年(昭和63年)における上記使用権の設定を受けた企業による引用商標を付した婦人服、子供服、アクセサリー、ハンカチ、婦人・子供用靴下、エプロン、婦人用水着、婦人用手袋、婦人・子供用ナイトウエア、婦人・子供用傘、婦人・子供用帽子、婦人用かばん類などの商品の総売上高は、56億円に達していることが認められる。

(3)上記(1)(2)の事情よりすれば、引用商標は、本件審判の請求日である平成10年9月時点はもとより、少なくとも平成1年(甲第7号証、「1988年販売高表」の事実よりすると)には、既にファッションを主として扱う女性週刊誌の商標としてわが国において取引者、需要者に広く認識され、婦人服、婦人用かばん類などの商標としても、取引者、需要者に知られていたものと認め得るところである。

4.使用商標の使用による商品の出所の混同のおそれについて

(1)使用商標イ、ロ、ハについて、

▲1▼使用商標イは、その構成中、顕著に書された左端部分は、極めて図案化されて表されてなるものであるから、全体として「Ellemoi」の文字を書したものとは理解されないとみるのが相当であり、使用商標イ中に「Elle」の文字が含まれていると認識されるものではない。

▲2▼使用商標ロは、欧文字の「Ellemoi」を書してなるものと理解されるものであるところ、同一の書体をもって外観上一体的に表されているのもであるから、これより「Elle」の文字部分のみが独立して看者の注意を惹くものとはみられないところであり、全体として1つの商標を表したと理解されるとみるのが相当である。

▲3▼使用商標ハは、「elle moi」、「mark」の各文字及び図形とが楕円輪郭内にまとまりよく表され、特に強調される部分も見出せないものであるから、全体として1つの商標を表したと理解されるとみるのが相当である。

仮に、その構成中の「elle moi」の文字部分についてのみ着目される場合があるとしても、該文字部分は、「elle」と「moi」との間の間隔は極めて僅かであること、同書同大の文字で表されていること、図形部分により該「elle moi」の文字部分と「mark」の文字部分とが分断され、「elle moi」の一体性がより強く看取されることなどよりすれば、「elle moi」全体で1語を表したと理解され、上記「Ellemoi」の場合と同様に、これより「elle」の文字部分のみが独立して看取されるものとは認め難いところである。

なお、使用商標イは、上記したとおり、その左端部分が極めて図案化されているものであるから、全体として「エルモア」の称呼は生じないものである。また、使用商標ロ、及び使用商標ハ中の「elle moi」に接する「ティシュペーパー」等の商品分野の取引者、需要者が、これより直ちに「エルモア」の称呼をもって取引に当たるものとは認め難いところであるから、使用商標ロ、ハからは「エルモア」の称呼は生じないとするのが相当である。さらに、使用商標イ、ロ、ハは造語と理解されるものである。

したがって、使用商標イ、ロ、ハと本件商標とは、称呼、観念上非類似の商標であるばかりでなく、それぞれの構成より外観上も非類似の商標である。

(2)別紙(F)(G)に示した被請求人が現実に使用している商標について

▲1▼甲第2号証(乙第4号証1頁上段、別紙(F))は、400枚入り「ティシュペーパー」の包装箱であるところ、該箱の上面及び向き合う2側面に、使用商標イ(色彩の有無は別にして)及びつづけ文字にした「エルモア」の片仮名文字を、それぞれ大きく表示してなるものである。また、他の向き合う2側面にはつづけ文字の「エルモア」を大きく表示してなるものである。さらに、箱の裏(底)面には、つづけ文字の「エルモア」を、他の文字に比べ大きく上部に表示し、該「エルモア」と距離を置いて使用商標ハを最下部に表示してなるものである。

▲2▼甲第3号証(乙第2号証、乙第4号証3頁、乙第5号証、別紙(G))は、12ロール入り「トイレットペーパー」と認められるところ、その包装袋の向き合う2側面には、つづけ文字にした「エルモア」の片仮名文字を大きく表示し、該「エルモア」の文字中の「ルモ」の部分の上に使用商標ロを小さく表示してなるものである。また、他の向き合う2側面には、使用商標ロを大きく表示し、使用商標ロの「emo」の上につづけ文字にした「エルモア」の片仮名文字を小さく表示してなるものである。さらに、手の付いた上面には、つづけ文字にした「エルモア」と使用商標ロとを2段に併記したものを左右(もしくは上下)にそれぞれ1つずつ表示してなるところ、片方は、「エルモア」を大きく、使用商標ロを小さく表示してなり、他の一方は、使用商標ロを大きく、「エルモア」を小さく表示してなるものであって、大きく表示された使用商標口の下に使用商標ハを3つ表示してなるものである。

▲3▼上記甲第2号証及び甲第3号証に示された被請求人が現実に使用している商標の使用状況によれば、商品の包装箱ないし包装袋の面に表示されている使用商標イ、ロ、ハには、「エルモア」の片仮名文字が必ず併用されていることが認められ、これらに接する取引者、需要者は、使用商標イ、ロ、ハの単独使用では「エルモア」と称呼することは困難であるとしても、「エルモア」の片仮名文字が併記されていることにより、「エルモア」を使用商標イ、ロ、ハの片仮名表記と、もしくは使用商標イ、ロ、ハを「エルモア」の英文字表記と理解し、使用商標イ、ロ、ハを「エルモア」と称呼するとみるのが相当である。

▲4▼してみると、別紙(F)(G)に示した被請求人が現実に使用している商標の態様からは、「エルモア」の称呼のみを生ずるものであり、その使用態様全体からみれば、使用商標イ、ロ、ハのそれぞれの構成中の「E11e」「elle」の文字部分のみを抽出して観念される余地はないものといわなければならない。

(3)請求人及び被請求人の使用に係る商品について

前記したとおり、被請求人が現実に使用している商標の態様は、本件商標そのものの使用ではなく、「エルモア」の称呼において類似する商標を使篤しているものと認められる。

しかしながら、前記3.の認定事実によれば、引用商標は、主として女性向けのファッション週刊誌の商標として、また、婦人服、婦人用かばん類などの商標として、取引者、需要者に知られていたものと認められるとしても、被請求人の使用に係る商品は、「ティシュペーパー、トイレットペーパー」であり、請求人の業務に係る商品とは、商品の用途、目的、品質等が著しく異なるばかりでなく、商品の生産者、流通系統をも異にする、商品の共通性が極めて少ないものといえること、前記したとおり、使用商標イ、ロ、ハ及び別紙(F)(G)に示した被請求人が現実に使用している商標より、「Elle」「elle」の文字部分のみが独立して把握、認識されないことを併せ考えれば、「ティシュペーパー、トイレットペーパー」等の商品の取引者、需要者1が、使用商標イ、ロ、ハ及び別紙(F)(G)に示した被請求人が現実に使用している商標に接した場合、女性週刊誌の商標である引用商標を想起するものとは認め難いところである。

したがって、使用商標イ、ロ、ハ及び別紙(F)(G)に示した被請求人が現実に使用している商標は、これをその使用商品である「ティシュペーパー、トイレットペーパー」について使用しても、請求人の業務に係る商品と出所について混同を生ずるおそれはないといわなければならない。

5.以上によれば、被請求人(商標権者)は、本件商標に類似する商標を使用しているものであるとしても、その使用は不正に変更するものではなく、また、被請求人が使用商標を使用することにより、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはないものというべきであるから、本件商標は、商標法第51条第1項の規定により、その登録を取り消すことはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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