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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35110号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第3329755号商標(以下、「本件商標」という。)は、別紙(1)に表示したとおり、「パワープロ」の片仮名文字を横書きしてなり、平成6年7月1日登録出願、第9類「理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。),レコード,ロケット,回転変流機,調相機,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気式ワックス磨き機,電気掃除機,電気ブザー,事故防護用手袋,消防車,消防艇,防火被服,防じんマスク,防毒マスク,磁心,自動車用シガーライター,抵抗線,電極,溶接マスク,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,計算尺,犬笛,家庭用テレビゲームおもちゃ,メトロノーム」を指定商品として、平成9年7月4日登録されたものである。

2 請求人の主張

請求人は、本件商標の指定商品中「電池、レコード、映写フィルム、スライドフィルム、スライドフィルム用マウント、録画済みビデオディスク及びビデオテープ、家庭用テレビゲームおもちゃ」についての登録を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を概要以下のように主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第110号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)請求の理由

本件商標は、登録第3219791号商標「パワプロクン」に同一又は類似し、その商標登録に係る指定商品中「電池、レコード、映写フィルム、スライドフィルム、録画済みビデオディスク及びビデオテープ、家庭用テレビゲームおもちゃ」と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである。

よって、商標法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきものである。

登録第3219791号商標(以下、「引用商標という。)は、片仮名文字「パワプロクン」を左横書きしてなり、第9類「遊園地用機械器具、家庭用テレビゲームおもちゃ、レコード、録画済みビデオディスク及びビデオテープ、映写フィルム、スライドフィルム、電子応用機械器具及びその部品、電池、電気通信機械器具」を指定商品として、平成5年12月22日登録出願、平成8年2月16日出願公告、平成8年11月29日登録されたものである(甲第2号証)。

本件商標は、「強さ、能力、動力、精力、迫力」などを意味する英語「POWER」の表音「パワー」と「職業選手」などを意味する英語「PROFESSIONAL」の略語の表音「プロ」を左横書きに一連に表した構成からなるものであり、その構成に相応して「パワープロ」の称呼を生ずる。これに対して、引用商標「パワプロクン」の文字中「パワ」の文字部分は「POWERFUL」を「パワフル」と読むと同様に、「パワ」に長音がなくても英語「POWER」の表音を表したものと理解されるものであり、「プロ」の文字部分は、「PROFESSIONAL」の略語の表音であり、そして「クン」の文字部分は、「パワプロ」の文字部分が「パワーのある職業選手」などの抽象的人名を意味するところから、「友達や目下の人の姓や名、または姓名などに付けて敬意を表す接尾語」である漢字「君」を意味するものと理解するを経験則に照らして相当とする。

してみると、引用商標は、「パワプロ君」を表したものと容易に認識されるから、引用商標はその構成に相応して「パワプロクン」の称呼と、敬意を表す接尾語に注意を払うことなく、その主要部たる「パワプロ」の文字部分を捉えて取引にあたる場合も決して少なくないものとみるのが相当である。

更に、引用商標の接尾語である片仮名「クン」が、漢字「君」を認識せしめる取引事情にある事実について以下のとおり挙証する。

即ち、請求人は、「家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させたROMカートリッジ、その他の家庭用テレビゲームおもちゃ、業務用テレビゲーム機専用のゲームプログラムを記憶させた電子回路、その他の遊園地用機械器具およびこれに関連する商品」に使用する商標として甲第3号証ないし甲第8号証の各件外商標を所有する。そして、引用商標「パワプロクン」は、甲第3号証「パワフル プロ野球」を表題とするテレビゲーム(ROMカートリッジ)に登場する主人公のキャラクターの名称として、前記「パワフル プロ野球」の表題から、その略称として採択したものである。他方、関連する商品として、第28類においては、片仮名と平仮名からなる「パワプロくん」(甲第7号証)も「パワフル プロ野球」(甲第5号証)の略称をキャラクターの名称として本件商標より先願に係る商標として登録されているものである。

更に、甲第9号証ないし甲第11号証は、請求人の広告宣伝雑誌「KONAMl/magazine」であり、甲第12号証は「パワフル プロ野球」のゲーム取扱説明書であり、甲第13号証の「毎日小学生新聞」、甲第14号証の「毎日中学生新聞」はいずれも毎日新聞社発行に係るものである。そして、甲第9号証は、「パワフル プロ野球」の表題と共に、「パワプロ君」のキャラクター図形を表示した商品「家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させたROMカートリッジ」であり、その他、甲第10号証ないし甲第13号証の各証のいずれにおいても、当該キャラクター図形と「パワプロ君」の文字とは一体不可分の関係において使用されている事実を窺い知ることができるものである。

このようにみてくると、娯楽産業を支配する昨今のテレビゲーム時代において「パワプロ君」の表示は、そのキャラクター名称として取引者はもとより、その数約2000万人といわれる全国津々浦々のテレビゲーム愛好者の周知する著名商標として認識されるに至っているものである。

してみると、引用商標「パワプロクン」の接尾語「クン」は、むしろ漢字「君」を意味するものではないとする合理的な理由を発見できないものである。

加えて、「君」「ちゃん」「様」などの接尾語たる敬語は、その表示方法が、漢字、片仮名文字、平仮名文字はもとより、ローマ字のいずれであったにせよ、敬語として認識され、商品取引においては接尾語たる敬語を略して、その前半部の称呼によって取引に資されることも決して少なくないものと説示する幾多の審決事案(甲第15号証ないし甲第31号証)があり、かかる見解は、商標類否についての経験則として、今や通説ともいえるところであるから、叙上の出願人論旨には決して無理はない。

以上のとおり、引用商標よりは「パワプロクン」及び「パワプロ」の称呼をも生ずることは明らかである。

そこで、引用商標より生ずる称呼のうち、「パワプロ」の称呼と本件商標より生ずる「パワープロ」の称呼を比較するに、その差異は中間音における「ワ」と「ワー」の長音の有無に過ぎないものであり、かつ両者の長音の差異は簡易迅速を旨とする商品取引においては、必ずしも正しく発音されるとすべき格別の理由はなく、「ワ」は「ワー」、そして「ワー」は「ワ」の酷似音として相互に相紛らわしく、両者を全体としてそれぞれ一連に称呼したときは語調、語感が相似たものとなり聴別しがたく、聴き誤るおそれがあるものといわねばならない。

ひるがえって、中間音における長音の有無は称呼全体に及ぼす影響は微弱であり、そのため音数の少ない称呼においても聴き誤るおそれがあるものと説示する審決事案は甲第32号証ないし甲第38号証のとおりであるから、この点に関する請求人の論旨にも決して齟齬はない。

これを要するに、甲第3号証ないし甲第38号証の各証に照らせば、本件商標は引用商標に称呼が類似する商標であり、かつ引用商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである。

よって、請求人は本件商標の存在によって重大な利害関係を有するものである。

(2)被請求人の答弁に対する弁駁(第一回)

請求人が本件審判を請求するについての重大な利害関係は、請求人所有に係る引用商標「パワプロクン」に対して本件商標「パワープロ」が類似し商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあることはもとより、本件商標をこのまま放置してこれを無効としない限りにおいては、請求人登録出願に係る商願平9−19023号「パワプロくん/パワプロ君」(甲第8号証)が本件商標「パワープロ」を引用して拒絶されることが火をみるよりも明らかに予測され、かつ本件商標の除斥期間経過後においては、いわゆる「商標の蹴り合い」となり企業の商標管理として憂慮すべき事態を招きかねないからである。

しかるに、請求人の上記予測に違わず「拒絶理由通知書」(甲第39号証の1)のとおり、請求人登録出願(商願平9−19023)に対して、登録第3022614号「パワープロ」(甲第39号証の2)並びに本件商標たる登録第3329755号商標「パワープロ」(甲第39号証の3)の両者を引用して商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、拒絶すべきものと認める、との拒絶理由通知の送達がなされたものである。

そうだとすれば、接尾語たる敬称が一連にのみ称呼されると断定するよりも、むしろ接尾語たる敬称は略称される場合も決して少くないものとするほうが経験則に叶い合理的である。

したがって、上記拒絶理由に徴しても、引用商標と本件商標とが類似しないものとすることは、我が国の先願主義制度に著しく反するものといわねばならない。

被請求人は、引用商標構成の接尾語「クン」よりは「訓」「薫」「勲」等の異なる語義を有する漢字も存在するから、特に「君」のみに限定しなければならない理由はないと主張する。

しかし、これらの漢字は1宇だけが独立して使用されるというよりも、語尾に位置するときは「特訓」「余薫」「叙勲」等の如く熟語として使用されるものであるから、「パワプロクン」の称呼を生じる親しまれた漢字の熟語がある場合は格別として、そうでない場合は「パワプロ訓」「パワプロ薫」「パワプロ勲」のこれらの意に解することは極めて不自然であり、例外中の例外といえるものであるからこの点に関する被請求人の主張は自己中心の議論も甚だしいものといわねばならない。

更に、被請求人は乙第1号証の1ないし乙第8号証の合計8件の審決事案を提出して両商標は称呼のうえで類似しないものとする証拠としている。

しかし、乙第1号証の7の審決事案「ツーライン」と「ツーちやん」とは本件事件の争点とはその事案を著しく異にするから結局のところ非類似とする審決事案は合計7件に過ぎないものであり、また、被請求人は上記審決事案以外に非類似審決事案が多数存在すると主張するところであるけれども、請求人の調査したところによれば、残りは2件程度であるから叙上の被請求人の主張は事実無根の論議である。

一方、上記非類似審決事案(合計7件)に対して、類似審決事案は合計17件(甲第15号証ないし甲第31号証)提出中のところ、その後精査したところ、合計19件の類似審決事案(甲第40号証及び甲第41号証)の存在を確認することができたものである。

このようにみてくると、接尾語を敬称とする審決については、類似審決事案の方が通説であるとはいえないまでも、圧倒的多数を占めて判示されていることに疑を容れる余地はない。

「クン」「くん」「君」などの接尾語は、一般家庭、職場、学校、親友関係等において親しく使用され、そして時としては親しさの余り敬称を無視して呼び捨てにするなどのことは広く社会共通の認識にあるものとするのが相当であり、更には、「家庭用テレビゲームおもちゃ」の「ROMカートリッジ」は一見の客として店頭において商標を直接みたうえで購入するというよりも、テレビによる広告宣伝あるいは業界雑誌「ファミ通」などにより予め人気情報を知った上で圧倒的多数の若者によって購入される商品であることに徴すれば、キャラクター名称である引用商標「パワプロクン」をして単に「パワプロ下さい」などと呼び捨てにして取引にあたることは極々自然な取引事情である。そうだとすれば、引用商標「パワプロクン」の接尾語「クン」は、被請求人主張の如く「パワプロ訓」「パワプロ薫」及び「パワプロ勲」のいずれでもなく、その接尾語「クン」の文字部分は敬称の「君」を意味するものであることは社会通念のうえからしても社会共通の認識にあるものとわねばならない。

このようにみてくると、商標の構成において接尾語が敬称として認められるときは略称されるものとするには、それなりの合理的な理由があるものといえるけれども、接尾語が敬称であることが認められる商標において、ただ外観のうえで「一連の構成」であることのみの理由を以て、一連にのみ称呼されるものと断定することは、接尾語の敬称は略して称呼される場合も決して少くないものとする商標類否についての経験則に対して何等説得力のある合理的な理由とはいえないものである。

更に、被請求人は、「POWER・PRO」(乙第3号証の1)及び「POWER PRO」(乙第3号証の2)の存在するにもかかわらず引用商標が登録されたから引用商標は一連不可分のものである旨主張する。

しかしながら、うえにみてきた如く、審決事案においてすらその類否については見解を異にするところであるから、いわんや下級審である一審査官の判断においては多言を要しないところである。引用商標は請求人において、非類似のものとして争って登録されたものでもなく、一審査官の独自の判断によって平穏無事に登録されたまでのことである。

してみれば、請求人提出の甲第1号証ないし甲第40号証の各証の事実に徴すれば、本件商標は引用商標に類似し、本件商標の使用する商品も引用商標の指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、被請求人提出の乙第1号証ないし乙第3号証の2の各証の事実があるからといって、本件商標を無効とするには何等の妨げとなるものではない。

(3)被請求人の答弁に対する弁駁(第二回)

商品「家庭用テレビゲームおもちゃのプログラムを記憶させたROMカートリッジ」に使用する引用商標等は、甲第42号証ないし甲第110号証の各証「証明書」のとおり、接尾語たる敬称である「クン」「くん」及び「君」の文字に強い関心を払うことなく、単に「パワプロ」の4文字を捉えて取引に資される場合も決して少なくない。

これらの現実の取引事情に照らせば、商標より生ずる称呼は取引事情により決すべきであるとする過去幾多の判決例によるも、引用商標よりは「パワプロ」の称呼をも生ずることに疑を容れる余地はない。

3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を概要以下のように主張し、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証(枝番号を含む。)を提出した。

引用商標は、あくまで全体で一連不可分の「パワプロクン」のみから成るものとみるべきものであり、これを「パワプロ」と「クン」とに分離し「パワプロ」とも称呼されるとみるのは妥当とはいえないものと思料する。

即ち、引用商標に接する取引者、需要者は、引用商標「パワプロクン」の文字からこれが「パワプロ君」とも記載されていない限り、この「クン」が「君」を意味するなどとはとても言い切れないものと思料する。

取引者・需要者が「パワプロクン」の文字に接したときこの語は意味不明の全くの造語であるから、仮に分離して考えたとしても「パワ」・「プロクン」とか「パワプ」・「ロクン」と考えたとしても決して不自然ではないものと思料する。

仮に、引用商標から「パワプロ」・「クン」と分離すると考えたとしても「クン」に当てはまる漢字としては「訓」「薫」「勲」等数多くあり、特に「君」に限定しなければならない理由はいささかもないものである。

次に、一歩譲って仮に引用商標「パワプロクン」の「クン」の文字が「君」にあてはまると考えられたとしても本願商標「パワープロ」とは称呼上も非類似なものと思料する。

即ち、本件に極めて類似する案件で、「〇〇〇+くん」又は「〇〇〇+ちやん」と「〇〇〇」とが称呼上も非類似とされ登録異議の決定及び審決(乙第1号証)が数多くある。

したがって、引用商標についても「クン」の文字を捨象しあえて「パワプロ」のみを取り出す理由はないものであるから、これらの審決例と同様に「パワプロクン」全体で一連不可分の造語と判断するのが妥当なものであり、故に本件商標「パワープロ」とは称呼上も異なるものである。

更には、第9類に相当する旧第10類及び旧第11類において「〇〇〇+くん」又は「〇〇〇+ちゃん」と「〇〇〇」とが併存して登録となっているもの(乙第2号証)がある。

このことも「〇〇〇+くん」又は「〇〇〇+ちゃん」から構成される語は、全体で一連不可分のものと判断されたことを示すものである。

このことからも本件商標の称呼「パワープロ」と引用商標の称呼「パワプロクン」とは称呼上も異なるものといえるものである。

特許庁においては、本件商標「パワープロ」の他にも「パワープロ」の称呼を生じる「POWER−PRO」商標(登録第2562171号)が旧第9類に、又「POWER PRO」商標(登録第3167444号)が第9類において登録となっているが、これらの指定商品の一部は引用商標の指定商品の一部と併存して登録となっている。しかもこの2件の登録商標(乙第3号証)は引用商標の先願に係るものである。

このように、引用商標と登録第2562171号商標及び登録第3167444号商標が併存して登録となっている事実は、引用商標を「パワプロ」と「クン」とに分離し、「パワプロ」のみを取り出して「パワプロ」と称呼されるとすることは妥当ではなく、引用商標は「パワプロクン」全体で一連不可分の一種の造語とみなされ、その称呼も「パワプロクン」のみ生じるとみなされたことを明らかに示すものであり、この事実からいっても請求人の主張は全く認められないものである。

よって、本件商標と引用商標とは、外観、観念はもとより称呼においても全く異なるか又は比較することができないものであり、両商標は全く異なるものであることは明らかである。

以上から明らかなように、本件商標は商標法第4条第1項第11号の規定に該当せず登録適格性を具備した商標というべきである。

4 当審の判断

本件商標は、前記のとおり、「パワープロ」の片仮名文字を横書きしてなるものであって、「力、勢力、権力」等を意味する外来語の「パワー」と「プロフェッショナル」等の略である「プロ」の語を結合してなる一種の造語商標として認識され、「パワープロ」と称呼されるものと認められる。

一方、請求人が引用する登録第3219791号商標(以下、「引用商標」という。)は、別紙(2)に表示したとおり、「パワプロクン」の片仮名文字を横書きしてなるものある。そして、引用商標は、同じ書体、同じ大きさの文字をもって一連に前記の片仮名文字を表してなるその構成態様からみて、一連一体の意味不明の造語を表した商標として認識される場合が少なくないものと認められるが、その「クン」の文字部分より漢字の「君」を想起して、全体として「パワプロ君」の意味であって、パワプロと呼ばれる人物をいうものかとの認識をする余地もある商標と認める。ところで、パワプロなどという名前は現実に存在するとは考えられないため、引用商標は、その末尾に「クン」の文字があることによって初めてこれより前記のとおりパワプロと呼ばれる人物を認識できる余地があるものということができ、その意味で引用商標の「クン」の文字部分は重要な構成部分であるから、通常、取引に際し、この部分が略されて単に「パワプロ」と略称されるとは認め難く、「パワプロクン」と引用商標全体が称呼され取引に資されるものとみるのが相当である。

つぎに、引用商標が、通常とは異なり、「パワプロ」と略称されるものとすべき格別の根拠があるかについて検討する。

甲第9号証ないし甲第14号証及び甲第42号証ないし甲第110号証を総合すれば、請求人は、「実況パワフルプロ野球」という表題の「家庭用テレビゲームおもちゃのプログラムを記憶させたROMカートリッジ」(以下、「前記テレビゲームカートリッジ」という。)を製造販売し、前記テレビゲームカートリッジに登場する主人公ともいうべきキャラクターの名称が「パワプロ君」であり、請求人は、前記テレビゲームカートリッジの宣伝との関連で「パワプロ君」について出版物あるいは新聞紙上において紹介宣伝したものと認めることができる。また、請求人は、前記テレビゲームカートリッジを製造販売する以前にも「パワプロシリーズ」と称されるテレビゲームカートリッジを製造販売していた事実を窺うことができる。しかし、甲第9号証ないし甲第14号証はいずれも1997年(平成9年)以降に発行された出版物あるいは新聞と認められ、甲第42号証ないし甲第110号証の証明書にはいつ頃から「パワプロクン」又は単に「パワプロ」の称呼によって前記テレビゲームカートリッジが取引されていたかの記載がないから、これらの証拠によっては、本件商標の登録出願日である平成6年7月1日の時点において、前記テレビゲームカートリッジが、これに登場する主人公ともいうべきキャラクターの名称である「パワプロ君」により、通常「パワプロクン」又は単に「パワプロ」と称呼されて、取引されていたものと認めることはできない。また他に、引用商標が単に「パワプロ」の称呼により取引されていたと認めるに十分な証拠はない。

そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願の時に、商品「家庭用テレビゲームおもちゃのプログラムを記憶させたROMカートリッジ」に限っても「パワプロ」と略称されるものとみるべき格別の根拠があったとはいえない。

以上によれば、引用商標は、「パワプロ」と略称されることがなく、「パワプロクン」とのみ称呼される商標と認められ、本件商標の「パワープロ」の称呼と引用商標の「パワプロクン」の称呼では、語尾の「クン」の音の有無と第2音の長短の差異があり、紛らわしいものでないから、本件商標は、引用商標と称呼において類似する商標ということができない。

また、本件商標は、外観及び観念においても、引用商標と類似するといえなから、引用商標と非類似の商標といわなければならない。

したがって、本件商標は、請求に係る指定商品について商標法第4条第1項第第11号に違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべき限りでない。

よって、結論のとおり審決する。

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