sokuhyo

Trademark Appeal Case

地名と一般名称の結合の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35269号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第2721569号商標の登録を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第2721569号商標(以下、「本件商標」という。)は、別紙(1)に表示したとおりの構成よりなり、平成2年6月13日に登録出願、第28類「ぶどう酒」を指定商品として同9年5月23日に、登録第2305418号商標と連合する商標として登録され、現在、有効に存続しているものである。

2 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の概略を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第64号証(枝番を含む)を提出している。

(1)利害関係

請求人は、被請求人より、本件商標及び本件商標に連合する登録第2305418号商標(以下、「連合商標」という。)の商標権を侵害するとして、商標の使用差止及び損害賠償請求の訴を提起され、現在、平成9年(ワ)第5752号として大阪地方裁判所において係争中である。

よって、請求人は本件審判を請求する利害関係を有するものである。

(2)本件商標は、商標法第3条第2項の適用を受けることのできない商標であるから、商標法第3条第1項第3号又は同法第3条第1項第6号に該当する。

本件商標は、「河内」の文字を毛筆書により縦書し、その下部に「ワイン」の文字を横書してなり、「ぶどう酒」を指定商品とするものである。この「河内」の表示は、大阪の河内地方を指称するために地名として普通に使用されているものであり、また、「ワイン」は「ぶどう酒」を表すものとして普通一般に使用されているものであって、いずれの文字も商標法第3条第1項第3号にいう普通に用いられる方法での表示の域を脱しない態様で表されたものである。

ところで、河内の旧国名で指称される河内地方は、古くから、生駒山地の南西麓から南方の丘陵地帯にかけての傾斜面にぶどうが栽培され、古くから国内有数のぶどうの特産地として知られると共に、この「河内ブドウ」は大阪府の名産品の一つに挙げられており、生産される生食ぶどうを使用して大正時代にワイン造りが始められた(甲第4号証、昭和52年10月17日東洋経済新報社発行「日本の名産事典」)。そして、この河内地方のワインが大阪府のワインとして広く知られるに至っており、この大阪府のワインの出荷量(課税移出数量)は、国産ワインの中で、山梨県・神奈川県に次いでいる(甲第5号証、平成3年1月21日日本テレビ放送網株式会社発行「世界のワイン5」)。

また、河内地方のぶどう栽培業者は、古くから地域ぐるみでぶどう酒の普及に努め、被請求人が本件商標を出願する以前から、「河内」の文字を有するぶどう酒の表示が使用されていた。現在、河内地方には、下記の(a)ないし(e)の5社のワイン製造業者があり、各社ともぶどう酒に「河内」の文字を冠した表示をもってぶどう酒を製造及び販売してきた。そして、5社のうち4社が昭和53年代というほぼ同時期に「河内ワイン」などの「河内」の文字を冠した表示の使用を開始した。特に、羽曳野市の3社に対しては、羽曳野市産業課より河内地方で産する地ワインを「河内ワイン」の統一名にしようという呼びかけがあり、この呼びかけによって、羽曳野市の3社が、地ワインを「河内ワイン」の統一銘柄で売り出す計画を進め、地元の羽曳野市商工会及び羽曳野市が側面から支援する方針で「河内ワイン」振興計画が動き出した(甲第6号証及び同第7号証)。

(a)蝶矢洋酒醸造株式会社「大阪府羽曳野市駒ケ谷160−1」(以下、単に「蝶矢」という。)は、本件商標の出願日である平成2年6月13日よりはるか前の昭和53年8月頃から地ワインとして「河内ワイン」の販売を開始した。その当時、同社は梅酒において日本一の売上を誇り、その販売網を利用して大々的に「河内ワイン」の販売活動を展開し、販売開始当時において、被請求人の地ワイン「河内ワイン」の10倍以上の売上があった。その後、1.8l入りのワインについては、「河内ワイン」の表示を「河内産わいん」に変更したが、720ml入りワインについては「河内ワイン」の表示のまま今日に至っている(甲第8号証ないし同第12号証)。甲第13号証及び同第14号証は、蝶矢の使用している「河内ワイン」及び「河内産わいん」のラベルである。

以上の事実から、蝶矢は、昭和53年8月から「河内ワイン」の表示で河内産のぶどう酒の販売を開始し、百貨店等で好評を得ていたことが明らかである。

(b)カタシモワインフード株式会社「大阪府柏原市太平寺2−9−14」)(以下、単に「カタシモワインフード」という。)は、昭和53年3月に「河内ワイン」の表示でぶどう酒の販売を開始し、5社の中で1番早く「河内ワイン」の表示を使用した。販売量は地元柏原市を中心としており、平成9年6月に「KINGSELBY/河内ワイン」が商標登録されている。甲第15号証は、カタシモワインフードのラベルを印刷した印刷会社の納品証明書及び売上帳であり、カタシモワインフードが被請求人よりも早くから「河内ワイン」のラベルで河内産ぶどう酒を製造販売していた事実を証するものである。昭和53年3月、大阪道頓堀の中座にて山城新伍主演で「河内ワイン」という演題の芝居が上演された。芝居の内容は河内地方のぶどうからワイン造りが行なわれた苦労をテーマとするものであった。そのモデルとなったのが、カタシモワインフードである。この芝居においても「河内ワイン」は、あくまで河内地方の地場産のワインという前提で構成されている。この芝居の上演に合せてカタシモワインフードが「河内の地ワイン」の販売促進を願い「河内ワイン」のラベルを貼付したワインを中座で販売したのである。甲第16号証は、「河内ワイン」の芝居他の宣伝パンフレットであり、前記甲第15号証は、その際に使用したラベルの作成に関する証拠である。甲第17号証ないし同第20号証の刊行物は、カタシモワインフードのぶどう酒が「河内ワイン」の表示と「キングセルビー」の名称で製造販売されていることを明らかにするものである。甲第21号証ないし同第24号証は、カタシモワインフードが使用している「河内ワイン」の胴ラベルである。甲第25号証ないし同第28号証は、同社が使用している「河内ワイン」に関する商品のPR用パンフレット・カタログ類である。

以上の事実から、カタシモワインフードは、本件商標の出願日より前の昭和53年3月から「河内ワイン」の表示で河内産のぶどう酒の製造販売を開始していたことが明らかである。

(c)金徳屋洋酒醸造元(現在、被請求人「河内ワイン株式会社」が営業を継承、以下、単に「金徳屋」という。)は、昭和53年7月頃から、「河内ワイン」の表示でぶどう酒の販売を開始した。

(d)請求人である飛鳥ワイン株式会社は、昭和53年9月から「河内飛鳥ワイン」の表示でぶどう酒の製造販売を開始した。平成2年3月「国際花と緑の薄覧会」を機に「河内ワイン」に表示を変更してぶどう酒の販売を継続する。博覧会開催期間中、会場に於いて全国から集まる人々に河内産ぶどうを使用したぶどう酒をアピールするために「河内ワイン」を販売して広告・宣伝に努めた。なお、上記博覧会の開催時、被請求人は博覧会会場に商品を出品しており、その表示は「河内ワイン」ではなく「花ずきんちゃんワイン」の別表示であった。したがって、被請求人は、請求人が上記博覧会のときに「河内ワイン」の表示でぶどう酒を製造販売していることを十分認識していたはずである。甲第29号証は、ギフト製品のパンフレット「いきいき・阪神」であり、これに示すように、請求人はデパートに対しても販売してきた。また、請求人の「河内ワイン」は、蝶矢、金徳屋、神田屋の各「河内ワイン」と並列して、刊行物(甲第5号証)や3Eマーク食品のポスター等(甲第34号証及び同第35号証)に紹介されている。甲第30号証は、請求人がぶどう酒に使用していた「河内ワイン」の胴ラベルである。

(e)株式会社神田屋「大阪府八尾市恩智南町5−38」(以下、単に「神田屋」という。)は、昭和60年頃より「河内産ワイン」の商品名で販売を開始しており、最近まで同商品名を使用したワインを製造販売していた。甲第31号証は、神田屋が使用してきた「河内産ワイン」の胴ラベルである。

前記したところにより、河内地方は国内有数のぶどうの特産地であり、同地方で生産されるぶどう酒について、複数のワイン製造業者が「河内ワイン」あるいは「河内産ワイン」の表示を昭和53年頃から現在まで使用していることは明らかである。そして、河内地方における前記ワイン製造業者の「河内ワイン」の表示をしたぶどう酒が専門書、雑誌及び新聞等の刊行物等に紹介され、テレビ放映にても紹介されている。

日本のワインカタログやワイン事典等に、カタシモワインフード、蝶矢、請求人及び金徳屋の「河内ワイン」が並列して紹介されている(甲第5号証、同第32号証及び同第33号証)。

また、大阪府は、平成8年3月に河内地方4社(請求人、カタシモワインフード、神田屋、金徳屋)のワインを地元の優良農産物「3Eマーク食品」に認定し、「なにわワイン」の愛称で河内産ワインを選出した。甲第34号証及び同第35号証は、その際に大阪府の発行した「なにわワイン」のPR用ポスターとPR用リーフレットであり、甲第36号証は、大阪府農林水産部流通対策室青果食品係長松井敬一が請求人に宛てた平成10年2月3日付事務連絡書であり、上記ポスターは1000部、リーフレットは6万部が作成され、羽曳野市・柏原市・八尾市の市役所や商工会、商工会議所並びに食博覧会やなみはや国体の食品イベント会場で配布されたことが示されている。

そして、昭和59年10月8日発行「日本経済新聞」(甲第37号証)、昭和60年10月5日発行「大阪民主新報」(甲第38号証)、昭和61年6月6日発行「毎日新聞」(甲第39号証)、平成5年6月1日発行「産経新聞」(甲第40号証)、平成9年11月18日発行「読売新聞」(甲第41号証)の各新聞には、「河内ワイン」が地ワインの名称として使用されている。

さらに、昭和60年9月コミュニティ企画発行の「ザ・淀川」9月号(甲第42号証)、昭和62年8月3日近畿郵政局発行の「YOU−say」Vol.7(甲第43号証)、平成3年9月28日発行の「リビング東大阪」(甲第44号証)及び平成5年発行「水だより」No.8冬季号(甲第45号証)には、それぞれ、カタシモワインフードの「河内ワイン」がその歴史及び特徴と共に紹介されている。そして、その一部にはカタシモワンフードの「河内ワイン」を表示した胴ラベルを貼付した瓶詰ワインの写真、樽詰ワインの写真が掲載されている。

また、1983年12月29日NHK「ニュースワイドぶらり訪問」、1984年9月5日関西テレビ「ホットタイム10時です」、1984年10月25日大阪テレビ「まいどワイド30分」、1992年10月28日朝日テレビ「ニュースリポート」、1992年11月19日朝日テレビ「朝日テレビOH天気」、1993年10月19日NHK「おはよう日本」、日時不明「大阪ふるさと味」提供大阪府(甲第60号証)及び1984年2月11日NHK「飛鳥への道」、1989年10月5日NHK「ちょっといい旅」、1993年6月5日毎日テレビ「大阪メモ」大阪府提供(甲第61号証)のテレビ放送にも、「河内ワイン」なる文字が表示され、また「カワチワイン」なる称呼が用いられているが、それは「河内産のぶどうで作られたワイン」あるいは「河内地方で醸造されたワイン」という意味として用いられており、また、同地の他のワイナリーと共に請求人の製造、販売にかかるワインも「河内ワイン」として紹介されている。

以上述べてきたように、「河内ワイン」の表示は、河内地方に存するぶどう酒製造販売業者の全てが、本件商標の出願日のはるか前より今日に至るまで、河内産のぶどうをもって製造したワインに使用しており、専門書、新聞、雑誌及びテレビ放映並びに各種の宣伝広告をみても、被請求人の製造販売に係るぶどう酒を紹介するものではなく、あくまで河内地方で生産されるワインの名称として紹介されているのである。したがって、このような「河内ワイン」の表示の使用状況において、「河内ワイン」なる表示は、単に河内産のワインであることを意味するものであって、商標としての自他商品識別機能を果たさないものといわざるを得ない。

次に、本件商標が商標法第3条第2項の適用を受けるに足るものであるか否かについて検討するに、被請求人は、本件商標の審査及び審判において、商標法第3条第2項の適用を受けるべく種々の証拠を提出しているが、それらの証拠を総合的にみても、本件商標が商標としての識別力を備えていることを何ら立証し得るものではない。前述したように、河内地方におけるぶどう酒の製造販売業者5社が、本件商標の出願の10年以上前から商品「ぶどう酒」について「河内ワイン」あるいは「河内産ワイン」の表示を使用している実情からすれば、出願人は前記の実情を知りながら、他社の使用事実は隠し、自己に有利になると判断した資料のみを証拠として提出したことは、特許庁に対して本件商標に対する認定を誤らせようとしたものというほかはない。また、出願人は、本件商標を表示した商品の販売実績及びその広告実績を示す客観的な証拠は何ら提出しておらず、しかも、提出された証拠は、本件商標が識別力を有するに至っていることを立証するには、いずれも不適切なものというべきである。

以下、出願人が本件商標の審査及び審判において提出した各証拠を再度提出し検討する。

甲第46号証の「拒絶理由通知書」甲第47号証の「審決」は、いずれも本件商標の連合商標に関するものであるが、前記連合商標が文字、図形及び色彩を結合してなるものであるところ、本件商標の出願人は、これらの証拠を提出することにより、連合商標中の文字部分である「河内ワイン」のみでも識別力を有することを立証しようとしたものである。しかしながら、本件商標の拒絶査定においても認定されているように、連合商標は、文字、図形及び色彩を構成要素とするものであり、本件商標が連合商標中の文字部分のみからなるものであるから、それ自体で登録要件を有することが必要である。したがって、出願人は、連合商標の存在を前提に識別力があると主張するにすぎないのであって、本件商標それ自体が識別力を有していることの証左とはなり得ない。しかも、連合商標は、本来、その登録は認められるべきではなかった商標である。

甲第48号証ないし同第53号証は、連合商標について提出した証拠の一部をそのまま援用したものである。出願人は、本件商標については何ら独自の証拠は提出していないのである。そして、これらの証拠は、いずれも発行年月日が不明なもの、発行者が不明なもの、紙面の一部を切除して複写したもの、あるいは複写の程度が悪く不鮮明なものであり、本件商標が識別力を有することを立証し得るものとは認められない。請求人は、これら書証全ての原本提出を被請求人に要求する。

しかも、これらの証拠は、そのいずれの記事内容からみても、「河内ワイン」の表示が出願人の製造販売に係る商品「ぶどう酒」を指称するものとして認識されているとの証左には到底成り得ない。むしろ、単なる河内産のぶどう酒の紹介であって、河内産のぶどう酒を「河内ワイン」と称していることを明らかにするものである。

甲第54号証及び同第55号証の商標公報は、いずれも本件商標と何らの関係も有しないものであり、「河内ワイン」が商標法第3条第2項が適用されるための証拠とはなり得ない。

以上、出願人が使用の根拠として提出した証拠は、いずれも本件商標の出願日より10年以上も古い資料であって、本件商標の連合商標について提出したものを援用しただけのものにすぎず、本件商標についての独自の証拠は提出されていない。また、販売実績についての客観的資料や事実の裏付けとなる証明書等が皆無である。

そして、連合商標は、既に無効審判請求の除斥期間である5年を経過しているが、本来、その登録は認められるべきものではなかった。連合商標は、その登録に至るまでの審査及び審判において、出願人の事実に反する主張及び証拠に基づいて商標法第3条第2項の適用を受けて登録されたものといわざるを得ない。それにも拘わらず、出願人は、本件商標の審査において、連合商標における拒絶理由通知書及び審決(甲第46号証及び同第47号証)を提出し、かつ、出願人が本件商標の審査及び審判において提出した証拠は、連合商標の登録に至る過程において提出した証拠をほとんど援用するものである。

甲第56号証は、出願人の意見書における主張であるが、出願人が、商標の開始時期を昭和48年当時と主張することは明らかに事実に反する。また、出願人は、出願人が蝶矢にあたかも「河内ワイン」の使用を許諾し、蝶矢による商標の使用は出願人の許諾に基づくものであるかのような主張をしているが、そのような商標の使用許諾は全くなかったのである。

甲第57号証は、蝶矢の代表者の陳述書であり、出願人の主張が事実に反することを証するものである。

甲第58号証は、出願人が連合商標の審判請求書理由補充書において行った「河内ワイン」は金銅一のみが生産するワインである旨の主張であるが、前述したように、複数の同業者が「河内ワイン」の表示をぶどう酒に使用しており、出願人がこの事実を知らないはずがないことからすれば、明らかに事実に反する主張をしたというべきである。

甲第59号証の取引先小売酒屋による証明書は、出願人が予め準備した同一文書のものに、出願人の取引先である小売酒屋が、出願人の求めに応じて証明したものである。しかも、その証明書中の「上記ラベルにかかるワインは、昭和53年の初めより当社で取扱い始め」の記載は、現実には、昭和53年7月以降であり事実に反する。また、「今では金徳屋(代表者金銅一)の『河内ワイン』として斯界においてラベルの図形とともに極めて著名であり」と「金徳屋以外に『河内ワイン』の名称を使用するものも居ない」との記載も、事実に反する。しかも、ほとんどの証明書には作成日が記載されておらず、一部には証明印がないものもある。したがって、これら証明書は、出願人の主張事実を立証し得るものではない。

以上のとおり、本件商標の出願人が提出した証拠からは、「河内ワイン」の表示が出願人の製造販売に係るぶどう酒を指称するに至っているものとは到底認められない。

また、被請求人は、答弁書において、商標法第3条第2項における特別顕著性の発生時期は、出願された商標が登録される時点である旨主張しているが、商標法第3条第2項に基づく使用による特別顕著性発生の判断は、登録時ではなく査定時又は審決時である。したがって、本件商標については、平成9年2月26日の時点で特別顕著性が発生していることが必要である。このことから、本件商標が平成9年5月23日の登録時点において出所表示機能を持つに至った、との被請求人の主張は、その時期の特定を明らかに誤っており、被請求人が証拠補充書をもって提出した使用による出所表示機能発生の証明書が全て平成9年5月頃を基準としている点に大きな影響を及ぼすものである。

したがって、本件商標は、産地を表示する「河内」の文字と商品を表す「ワイン」の文字とを普通に用いられる方法で表示しただけのものであり、依然、商品「ぶどう酒」の産地を表示するにすぎないものである。

よって、本件商標は、商標法第3条第1頃第3号若しくは同法第3条第1頃第6号の規定に該当し、同法第46条第1項第1号の規定によりその登録は無効とされるべきである。

3 被請求人の答弁

被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」旨の答弁をし、概略次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第7号証を提出している。

(1)商標法第3条第2項適用の登録商標

商標法の趣旨からすると、特別顕著性の発生時期は、出願された商標が登録される時点でそれに該当していれば、適用になるものである。

(2)本件商標の登録経緯

本件商標は、平成9年5月23日に登録になったものであるが、これと連合する登録商標として商標法第3条第2項適用の登録第2305418号商標(連合商標)がある。この連合商標は、本件商標と同一同大文字にありふれた山の風景を配したものであり、昭和53年に出願され、平成3年4月30日に登録になった。この事実から、連合商標は、平成3年4月の時点で使用により出所表示機能を持つに至り、特別顕著性が発生していたことになる。そして、本件商標が平成9年5月23日に登録になった理由として、連合商標と同じ時点に出所表示機能を持つに至った使用証明他の証拠により登録になったことから、本件商標も連合商標も商標法第3条第2項をクリアして登録になったことに異論が無い筈である。

請求人は、本件商標が商標法第3条第1項第3号又は同条項第6号に該当するとして、甲第4号証ないし同第45号証を提出しているが、その主張は、本件商標が登録になったのは、事情を知らない特許庁を錯誤に陥れたものであり、上記証拠によっては、商標法第3条第2項適用の特別顕著性が発生していなかったというものである。そして、具体的な無効原因として第1に河内ワインの表示は複数のメーカーが使用していたということ、第2は本件商標の審査審判において提出された証拠が、商標法第3条第2項の適用を受けるに足らない、ということである。

被請求人は、請求人が提出した証拠を整理し、次のとおり反論する。

甲第4号証は、単なる名産事典であり、本件商標が無効になる証拠とはならない。このことは乙第2号証ないし同第6号証より明らかである。

甲第5号証に記載された河内ワインの記事は、「河内産ワイン」、「河内のワイン」のように単なる産地を示したに過ぎない表示であり、また、蝶矢が河内ワインを造っていたとあるが、その河内ワインの表現は、「河内産のワイン」という産地表示とみるのが自然である。しかし、たとえ蝶矢が河内ワインの商標で醸造していたとしても、その数量、販売開始時、販売期間が不明であり、また、本書証の発行日は平成3年であり、本件商標の登録日とはかけ離れている。なお、カタシモワインフードの使用商標は、「キングセルビー河内ワイン」であり、本件商標とは非類似商標である。すなわち、前半部分の「キングセルビー」が商標の要部であり、「河内ワイン」の部分は産地表示である。同時に、本証拠には本件商標権者の金徳屋が「河内ワイン」の商標を使用してワインを醸造販売していることが示されている。

甲第6号証は、昭和53年6月23日の新聞記事であり、この時点で権利者、蝶矢、他1社の3社が使用したとしても、本件商標の登録日とは20年近くもかけ離れた時点のものであり、権利者以外の2社がその後どのように使用したか全く不明である。

甲第7号証は、新聞の発行日不明であり、権利者以外の蝶矢1社が本当に使用したのか、また何時どの様に使用し、新聞掲載後どのようになったか全く不明である。

甲第8号証ないし同第12号証は、昭和53年7月14日の新聞記事であり、この時点で権利者以外に蝶矢1社が使用したとしても、本件商標の登録日とは20年近くもかけ離れた時点のものであり、実際に製造販売し、商標をその後どのように使用したか全く不明である。

甲第6号証ないし同第12号証は、新聞の発行日が昭和53年6月から9月に集中しており、然も蝶矢の記事ばかりである。このことから、蝶矢が昭和53年6月から9月にかけて「河内ワイン」を販売することを各社に記事として提供したに過ぎず、その時期以降実際にどのように販売され、商標が使用されたかは全く不明であり、平成9年に登録された本件商標を無効にする証拠としては年代が離れ過ぎている。さらに、3条2項の適用を受けるには、何時如何なるときも出願人以外の使用の事実があってはならないということはない。

甲第13号証は、甲第7号証ないし同第12号証に示された蝶矢のネームの入った印刷物であり、かつ、商標として使用されたのかどうかも不明である。

甲第14号証は、甲第7号証ないし同第13号証に示された蝶矢のネームの入った単なる印刷物であり、「河内産ワイン」として産地を示す印刷物に過ぎず、本件商標とは全く関係ない印刷物である。

甲第15号証は、昭和53年3月のもので本件商標の登録日とはかけ離れている上に、河内ワインラベルを印刷した印刷会社の証明に過ぎない。

甲第16号証は、証拠の意味不明である。

甲第17号証及び同第18号証の新聞記事に書かれた名称は、「キングセルビー」であり「河内ワイン」ではなく、本件商標とは非類似で関係ない。

甲第19号証は、単なる会社の宣伝で本件商標の無効理由とは関係ない。

甲第20号証は、「ここは大阪府下で唯一『河内ワイン』を製造している工場・・・」と虚偽の記載があり、証拠として信用出来ない。

甲第21号証ないし同第25号証は、「KING SELBY」が商標であり、「河内ワイン」の部分は産地表示と思われる。また、単なるラベルに過ぎず、商標として使用されたか、また使用されたとしても時期、数量が不明である。

甲第26号証ないし同第28号証は、何の印刷物か不明であるばかりでなく、「キングセルビー河内ワイン」「柏原ワイン」とあるだけで、柏原酒販組合協同企画!の文字から判断してそれぞれ産地表示に他ならない。

甲第29号証は、百貨店のチラシであり、実際に販売されたのか、数量、販売時期が不明である。

甲第30号証は、単なるラベルに過ぎない。

甲第31号証は、「河内産ワイン」とあり、産地表示に過ぎない。

甲第32号証は、日時不明である。また、本件商標の権利者以外の商標では、「河内飛鳥」「キングセルビー河内ワイン」「河内産ワイン」が殆どであり、僅かに1本だけ「河内ワイン」と表示したものがあるに過ぎない。

甲第33号証は、発行時期不明、実際の販売時期、数量不明。

甲第34号証及び同第35号証は、ポスター、カタログの配布時期と権利者以外の「河内ワイン」と表示されたワイン1本が実際に販売されたかどうか不明である。

甲第37号証ないし同第45号証は、産地表不的な表示として記載された記事にすぎない。

甲第57号証は、不知である。これが無効理由となるのであれば、陳述した金銅和夫氏を証人として尋問する必要がある。

上述のとおり、請求人の提出した証拠はいずれも、実際に「河内ワイン」の商標を使用したのかどうか不明であり、また使用したとしても、証拠上は、蝶矢ただ1社に過ぎない。しかも、その蝶矢にしても、販売した時期、数量が不明であるから、これらの証拠では権利者の権利が無効になる理由にはならない。また、本件商標が登録になった平成9年5月ごろの権利者以外の者の使用が証明されていない。

たとえ、蝶矢が実際に「河内ワイン」として販売したとしても、販売期間が短く販売量も少なくて、権利者の方が圧倒的に販売期間・数量とも凌駕しておれば、権利者の使用商標に出所表示機能が生じて特別顕著性が発生するのは至極当然である。反対に権利者以外の蝶矢が一定期間一定量使用していることが証明されるとしても、それが直ちに権利者に特別顕著性が発生していないとする根拠にはならない。請求人の提出した証拠には、権利者に特別顕著性、すなわち使用による識別力が発生しなかったとする証拠はただの1点もないのである。

なお、権利者は、権利者が過去20年に渡って「河内ワイン」商標のワインをどれほど販売したかについても正確な数量を証拠として追って提出する予定である。

ところで、請求人が提出した証拠はすべて普通の書体で書かれた「河内ワイン」である。本件商標は特殊な書体で表現されており、その特殊な書体に特別顕著性が発生しているとして使用証拠を提出し登録された可能性がある(甲第59号証)。

したがって、万一、普通の書体による「河内ワイン」には出所表示を示す特別顕著性が発生していなかったとしても、本件商標の特殊な書体による「河内ワイン」には使用による特別顕著性、すなわち自他商品識別力が発生していたことは間違いない。

そうすると、請求人の提出した証拠にはその特殊な書体で権利者以外の者が唯の一度も使用した事実は証明されていないのであるから、本件商標が無効になる理由は全くないのである。

以上、要するに権利者以外の唯一蝶矢が「河内ワイン」の商標を使用していたとしても、そのことが直ちに権利者の権利が無効になる理由にはならないし、また権利者の特殊な書体の「河内ワイン」を使用した証明がなされない以上、本件商標が無効になる理由は全く存在しない。

5 当審の判断

以下、判断する。

(1)本件商標は、別紙(1)に表示したとおり、毛筆体風にデザイン化された「河内」の二文字を大きく縦書きし、その下に「河内」の文字よりも小さいゴシック体の「ワイン」の三文字を等間隔に横書きに配してなるものであるところ、その構成文字は、普通に用いられる域を脱しない程度の書体で表されているものと認められる。

ところで、「河内」とは、大阪府南東部地域の旧国名であり、また、「ワイン」は「ぶどう酒」を表すものとして一般に理解、認識され、使用されているものである。

そして、請求人提出の昭和52年10月17日東洋経済新報社発行「日本の名産事典」の写(甲第4号証)、平成3年1月21日日本テレビ放送網株式会社発行「世界のワイン5」の写(甲第5号証)、昭和53年6月23日発行「日本経済新聞」の写(甲第6号証)によれば、河内の旧国名で知られる河内地方は、ぶどうの産地として知られ、生産されたぶどうを使用して昭和の始めころから、ぶどう酒造りが行われている地域であることが認められる。

そうとすると、「河内ワイン」の文字が商品「ぶどう酒」に使用されたときには、河内地方で産出したぶどうで作られたぶどう酒又は河内地方で製造されたぶどう酒を表示するものであって、商品の産地、品質を表示したものと一般に理解、認識されるものとみるのが相当である。

してみれば、「河内ワイン」の文字よりなる本件商標をその指定商品に使用するときには、これに接する取引者、需要者は、河内地方で産出したぶどうを原料として製造されたぶどう酒、又は河内地方で製造されたぶどう酒を想起するに止まり、自他商品を識別するための標識とは認識しないものというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。

(2)次に、本件商標が商標法第3条第2項の規定に該当するか否かについて検討する。

イ)昭和53年6月28日発行「日本経済新聞」の写(甲第6号証)、昭和53年発行「報知新聞」の写(甲第7号証)、昭和53年7月14日発行「サンケイ新聞」の写(甲第8号証)、昭和53年8月17日発行「日経流通新聞」の写(甲第9号証)、昭和53年8月21日発行「毎日新聞」の写(甲第10号証)、昭和53年8月23日発行「サンケイ新聞」の写(甲第11号証)、昭和53年9月27日発行「日本経済新聞」の写(甲第12号証)、蝶矢の「河内ワイン」、「河内産わいん」の胴ラベル及び裏ラベルの写(甲第13号証、同第14号証)、フタバ印刷株式会社のカタシモワインフード宛ての昭和53年3月1日納品分の「河内ワインラベル」の納品証明及び売上帳の写(甲第15号証)、昭和53年3月2日から同年同月27日まで大阪道頓堀中座において上演された芝居「河内ワイン」他の宣伝パンフレットの写(甲第16号証)、昭和61年9月13日発行「日刊ゲンダイ」の写(甲第17号証)、昭和62年4月20日発行「大阪農業共済」の写(甲第18号証)、平成5年12月1日株式会社大和銀総合研究所・大阪本社発行「ダイワアーク」12月号抜粋の写(甲第19号証)、平成4年9月20日福徳銀行広報室発行「CULTURE&CYCLESPORTS倶楽部」Vol.9の抜粋の写(甲第20号証)、カタシモワインフードのKINGSELBY(レギュラー)の「河内ワイン」のラベルの写(甲第21号証、同第22号証、同第23号証及び同第24号証)、カタシモワインフードのリーフレット(甲第25号証)、カタシモワインフードの「河内ワイン」が掲載されたパンフレットの写(甲第26号証、同第27号証及び同第28号証)、「いきいき・阪神」1997 SUMMER GIFT号の写(甲第29号証)、請求人の「河内ワイン」の胴ラベル(甲第30号証)、神田屋の「河内産ワイン」の胴ラベルの写(甲第31号証)によれば、▲1▼カタシモワインフードは、昭和53年3月に大阪中座において上演された「河内ワイン」と題する演劇の会場で、包装容器に「KING SELBY 河内ワイン」の標章を付したワインを販売し、以降、同社は今日まで上記標章を付したワインの製造販売をしていること、▲2▼昭和53年5月に羽曳野市産業課による地ワインの「河内ワイン」への銘柄の統一化の呼びかけにより、同年6月には、金徳屋、蝶矢、金剛葡萄酒醸造(請求人である「飛鳥ワイン株式会社」の前身)の3社が、地ワインを「河内ワイン」の統一銘柄で売り出す計画を進めたこと、▲3▼蝶矢は、昭和53年8月頃、河内地方で収穫したぶどうを用いて醸造したワインに「河内ワイン」の標章を付して販売を開始し、少なくとも平成6年頃までは、上記名称のワインの製造、販売を継続していたこと、▲4▼昭和53年8月頃、金徳屋は、包装容器に「河内ワイン」の標章を付したワインの販売を開始し、その営業を継続した被請求人は、今日まで同標章を付したワインの製造、販売を継続していること、▲5▼請求人は、遅くとも、昭和60年10月頃には、「河内飛鳥」の標章を付したワインを販売し、遅くとも平成3年1月頃には「河内ワイン」の標章を付したワインを販売しており、平成9年頃までは、上記標章を付したワインの製造、販売を継続し、その後、「河内産ワイン」の標章を付して製造、販売していること、▲6▼時期は明らかではないが、神田屋も「河内ワイン」の標章を付したワインを製造、販売していることが認められる。

ロ)そして、昭和60年9月10日飛鳥出版株式会社発行「世界のワイン&チーズ事典」の抜粋の写(甲第32号証)には、金徳屋の製造、販売にかかる「河内ワイン」、カタシモワインフードの製造、販売にかかる「KING SELBY 河内ワイン」、蝶矢の製造、販売にかかる「河内ワイン」及び「河内産わいん」、請求人の製造、販売にかかる「河内飛鳥」が並列して掲載されていること、前掲の平成3年1月21日日本テレビ放送網株式会社発行「世界のワイン5」の写(甲第5号証)には、請求人の販売にかかる「河内ワイン」、蝶矢の製造、販売にかかる「河内ワイン」及び「河内産わいん」、金徳屋の製造、販売にかかる「河内ワイン」、カタシモワインフードの製造、販売にかかる「キングセルビー 河内ワイン」が並列して記載されていること、平成6年11月30日講談社発行「世界の名酒事典」の抜粋の写(甲第33号証)には、蝶矢の製造、販売にかかる「河内ワイン」が掲載されていることが認められる。

また、社団法人大阪府食品産業協会発行の3Eマーク食品に関するPR用ポスター(甲第34号証)及び大阪府発行の3Eマーク食品に関するPR用リーフレット(甲第35号証)には、神田屋の製造、販売にかかる「河内産ワイン」、金徳屋の製造、販売にかかる「河内ワイン」、請求人の製造、販売にかかる「河内ワイン」が並列して掲載されていることが認められる。

さらに、昭和59年10月8日発行「日本経済新聞」の写(甲第37号証)、平成9年11月18日発行「読売新聞」の写(甲第41号証)、昭和60年9月コミュニティ企画発行「ザ・淀川」9月号の抜粋写(甲第42号証)、昭和62年8月3日近畿郵政局発行「YOU−Say.」Vol.7の抜粋写(甲第43号証)、平成3年9月28日発行「リビング東大阪」の写(甲第44号証)、1983年12月29日にNHKテレビが放送した「ニュースワイドぶらり訪問」、1984年9月5日に関西テレビが放送した「ホットタイム10時です」、1984年10月25日に大阪テレビが放送した「まいどワイド30分」、1992年10月28日に朝日テレビが放送した「ニュースリポート」、1992年11月19日に朝日テレビが放送した「朝日テレビOH天気、1993年10月19日にNHKテレビが放送した「おはよう日本」(甲第60号証)、1984年2月11日にNHKテレビが放送した「飛鳥への道」、1989年10月5日にNHKテレビが放送した「ちょっといい旅」、1993年6月5日に毎日テレビが放送した「大阪メモ」大阪府提供のビデオテープ(甲第61号証)によれば、「河内ワイン」の文字が、河内地方で産出するぶどうを原料として製造されたワインを指す一般的な名称として、あるいは少なくとも河内地方に存する複数のワイン製造業者が製造、販売するワインの総称として使用されていることが認められる。

ハ)ところで、本件商標登録出願の拒絶査定に対する審判請求の時に被請求人(本件商標権者)が提出した「大阪新聞記事の写(甲第1号証)」、「大阪新聞記事の写(甲第2号証)」、「中小企業家しんぶん記事の写(甲第3号証)」、「奈良リビング新聞記事の写(甲第4号証)」、「食料醸界通信記事の写(甲第5号証)」、「河内ワインのチラシ広告(甲第6号証)」をみるに、それらの証拠は、被請求人が自己に有利なもののみを提出したものと認められる。

ニ)そうとすると、「河内ワイン」の文字は、上記の認定のとおり、本件商標の審決時に、被請求人のみならず、被請求人以外の河内地方に存するワイン製造、販売業者によっても、河内地方で産出するぶどうを原料として製造されたワインを指す名称として使用されている事実が認められることから、「河内ワイン」の文字よりなる本件商標は、被請求人が継続して使用した結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとはいえない。

してみれば、本件商標は、商標法第3条第2項の規定に該当号するものとは認められない。

(3)したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、同法第3条第2項の要件を具備していなかったにもかかわらず、これらの規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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