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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と語尾音「ス」

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35277号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第2723945号商標(以下、「本件商標」という。)は、別紙(1)に示すとおり、「LANX」の欧文字よりなり、平成2年12月14日に登録出願、第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)、電気材料」を指定商品として、平成10年1月30日に設定の登録がされたものである。

2 引用商標

請求人が本件商標の登録を無効とすべきものとして、その理由に引用した登録第2465264号商標(以下、「引用商標」という。)は、「LANC」の欧文字よりなり、昭和63年7月8日に登録出願、第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)、電気材料」を指定商品として、平成4年10月30日に設定の登録がされたものである。

3 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、との審決を求める旨申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由をつぎのように述べ、証拠方法として、甲第1号証乃至甲第53号証を提出した。

(1)本件商標は、請求人の所有に係る引用商標と類似するものであって、且つ、その指定商品も同一又は類似であるから、その登録は商標法第4条第1項第11号に該当するにもかかわらず、登録されたものである。したがって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号の規定により、その登録は無効とされるべきである。

(2)本件商標と引用商標とを比較すると、本件商標から生ずる称呼は、我が国において最も慣れ親しまれている英語の発音則に従い、「ランクス」である。これに対して、引用商標から生ずる称呼もまた、英語の発音則に従い、「ランク」である。請求人は、この称呼において本件商標と引用商標とは類似のものと思料する。

▲1▼本件商標より生ずる称呼「ランクス」と引用商標より生ずる称呼「ランク」とを比較すると、両者は、称呼識別上最も重要な要素を占める語頭音を含め、3音「ランク」を共通にし、異なるところは、語尾における「ス」の音の有無である。而して、「ス」の音は無声の摩擦音であって、通常、弱い音となるばかりでなく、母音が明瞭に発音されにくい語尾に位置している。しかも、前音「ク」は、比較的強い響きをもった破裂音であるから、該「ス」音は、一層弱い音となり、明瞭に聴取されるとは言い難いものである。したがって、語尾音「ス」の有無が両称呼の全体に及ぼす影響は決して大きいとは言い難く、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語感が近似したものとなり、彼此相紛れ聞かれるおそれがあると云うべきである。

▲2▼被請求人は、平成5年3月25日の審判請求書(本件商標に係る登録出願の査定不服審判事件)において、本件商標より生ずる称呼は、比較的短い称呼であって、無声の破裂音「ク」に連係する関係から、摩擦音でとげとげしい音質の「ス」が、殊更明瞭に発音され聴取されると主張し、審決例7件を挙げている。

しかし、前音が無声の破裂音であることをもって「ス」の音が明瞭に発音聴取されることの理由を形成しないことは明らかである。かえって、前音「ク」の前音は弱音の撥音「ン」であるから、当該「ク」音は強音となって聴取されるものである。

また、被請求人の提示した審決例は、極めて例外的なものであって、本件商標と引用商標とは、明らかに事案を異にするすると云うべきである。むしろ、全体の音数が3音と4音であって第2音が「ン」で共通しており、且つ、末尾音「ス」の有無において相違する商標の類否が争われた審判事件において、非類似と判断された審決は皆無である。以下の審決例(6件)は、いずれも類似と判断された事例である(甲第5号証ないし甲第10号証)(掲載省略)。

▲3▼さらに、全体の音数が3音と4音で末尾音の「ス」の有無においてのみ相違する商標にあって、第2音が撥音「ン」と同様、弱音の促音「ツ」であり、且つ、第3音が破裂音と母音「ウ」とを組み合わせた「ク」又は「プ」である点で共通する事例においても、非類似と判断された審決例は皆無である。以下の審決例(15件)は、いずれも類似と判断された事例である(甲第11号証ないし甲第25号証)(掲載省略)。

このように、3音と4音で末尾音の「ス」の有無において相違するにすぎない商標にあって、第2音が弱音の「ン」若しくは「ツ」の場合、または、第3音が破裂音「ク」若しくは「プ」の場合、審決公報に掲載されている事例は、例外なく、すべて、類似と判断されているのである。

また、請求人は「リンク」の称呼を生ずる商標登録出願をしたところ(商願平7−105025)、「リンクス」の称呼を生ずる各登録商標が引用され、拒絶査定謄本が送達された(甲第27号証ないし甲第32号証)。

かかる判断は、従来より一貫して踏襲されているところであって、例えば、以下は、一方が登録されていれば、他方が拒絶されている審査例(5件)である(甲第33号証ないし甲第49号証)(掲載省略)。

このように、審決のみならず、審査においても、称呼音数が3音、4音であって、第2音が「ン」、第3音が「ク」である点で共通し、末尾音「ス」の有無のみ相違する商標は、類似と判断されているのである。特に、上記審査例中の登録第2353616号「ランクス」(旧第4類)と商願平7−49867「ランク」(第3類)のケースは、本件と同様の称呼を生ずるものであり、「ランク」の称呼を生ずるものが「ランクス」に類似すると判断されている点は、十分勘案されるべきであって、決して看過されるべきでない。

(3)被請求人の答弁に対する弁駁

▲1▼被請求人は、答弁書において、本件商標に係る登録出願は引用商標と類似するとの理由により拒絶査定を受けた後、同査定不服審判の請求があった結果、出願公告され、これに対し請求人より申立てのあった登録異議申立の審理を経て最終的に登録されたものであるから、本件商標と引用商標との類否は、審査及び審判において十分議論が尽くされ、結論づけられている旨述べている。

しかしながら、まず、第一に、被請求人のいう審判事件は、あくまでも、拒絶査定不服審判事件、所謂、査定系の審判であるから、当事者系の無効審判とは、自ずとその性質を異にするものである。

また、請求人による登録異議の申立ては、差出日が期間経過後であったため、申立て自体が却下されており、実質的な審理は一切なされていない。

即ち、請求人による主張及びこれを裏付けるための証拠方法は、本件無効審判において初めて正当に審理されるものであり、また、利害関係人による無効審判の請求は、当然、法の許すところである。

▲2▼過去において、商標登録が無効とされた審決中、以下の事例(4件)がある(甲第50号証ないし甲第53号証)(掲載省略)。

これらの無効審判事件は、まさしく、本件と同様、少なくとも、一旦は登録異議申立てがあって、その際は、「理由なし」との異議決定が下されたにもかかわらず、無効審判事件において、登録が無効とされたものであるから、これらの事例は被請求人の主張に対しては、決して看過することができないものと思料する。

ところで、被請求人による答弁書において、被請求人は、請求人の請求自体の是非を争うのみであって、商標の類否に関する実質的な答弁はない。かかる事実は、被請求人としては、請求人による本件審判の請求における実質的な主張に対し、何等答弁し得る余地がない、と考えざるを得ない。

4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由をつぎのように述べている。

(1)本件商標「LANX」に係る登録出願は、平成2年12月14日に登録出願したところ、同4年9月17日付で引用商標の存在を理由に商標法第4条第1項第11号に該当するとの拒絶理由を受け、同年11月17日付で意見書を提出したが同5年2月1日付で拒絶査定を受けた。

これに対し、同年3月25日付で同拒絶査定不服の審判を請求したところ、同8年10月24日付で公告決定され、同9年1月31日に公告された(平成9年商標出願公告第9535号)。

次いで、同年4月1日付で請求人より引用商標と類似とする理由の登録異議の申立てを受け、同年9月17日付で異議答弁書を提出したところ、同年11月18日付で「本件登録異議の申立ては却下する。」、「原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。」との登録異議の決定及び審決があり、平成10年1月30日に登録されたものである。

(2)こうした中で、請求人の主張は、審査・審判過程における引用商標と全く同じ引用商標を用い、全く同じ理由でその無効を述べているが、審査及び審判過程での十分な審理を経て、本件商標は、引用商標とは非類似のものと判断されたものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものでなく、同法第46条第1項第1号により、無効とされるものではない。

5 当審の判断

本件商標と引用商標は、各々の構成別紙(1)、(2)に示すとおり、それぞれ「LANX」及び「LANC」の欧文字よりなるものである。

請求人は、本件商標は称呼において引用商標と類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する旨主張している。

そこで、両商標の類否について判断するに、両者の構成は、それぞれ前記したとおり、共に欧文字よりなるものであって、いずれの場合も特定の意味合いを表現し得ない造語といえるものである。そして、かかる外国文字に接する場合、取引者・需要者は、わが国において最も一般に親しまれている英語の知識と理解力をもって接するとみるのが通例といえるから、両商標は、それぞれの構成文字に相応して英語風に、前者からは「ランクス」、後者からは「ランク」の称呼をそれぞれ生ずるとみるのが自然である。

そこで、本件商標より生ずる「ランクス」の称呼と引用商標より生ずる「ランク」の称呼とを比較するに、両称呼は、末尾音の「ス」の有無に差異を有するものである。

しかして、差異音「ス」(su)の子音(s)は、舌端を前硬口蓋に寄せて発する無声摩擦子音であって、構音上、例えば、破裂音(p.b.t.d.k.g)等の音に比した場合、響きの弱い音として聴取されるものとしても、該子音は、摩擦音のなかでもその響きが長くなる傾向が強いという構音特性を有するから、母音(u)を帯有して発せられる「ス」の音は、それ自体比較的明瞭であって、これを含め全体として発せられる「ラ」、「ン」、「ク」、「ス」の各音も一音一音の響きが比較的明瞭かつ平坦な語調として聴取されるものといえる。したがって、「ス」の音が末尾に位置する故をもって、該音が必ずしも明瞭に聴取されないということはできない。

そして、本件の場合のごとく、比較的音数の短い称呼の対比(4音と3音)にあっては、該音の有無は少なからず称呼全体の語感印象に影響を及ぼし得るものといえる。

そうすると、本件商標と引用商標とは、たとえ、全4音中の前3音を共通にするとしても、両称呼をそれぞれ一連に称呼した場合は、全体の語感印象が異なり、必ずしも彼此を聞き誤るおそれがあるということはできない。

また、両商標の構成は、それぞれ別紙(1)及び(2)に示すとおり、語尾部において、欧文字の「X」と「C」との相違が顕著であって、その外観形象上の特徴をもって看者の脳裏に強く印象づけられるものといえるから、両商標は、外観上判然と区別し得るものと認められる。

そして、両商標は、共に造語と見られること前記認定のとおりであるから、両商標が観念において紛れ得るとする事由は存しない。

以上によれば、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念の各点を比較考量して総合判断するに、両者は、その出所について混同を生ずるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。

請求人は、末尾の「ス」音の有無に関する類似審査例・審決例を多数挙げ、本件商標と引用商標との類似を主張するが、商標自体の構成並びに指定商品との関係、その他取引の実情を考慮に入れて総合勘案するに、本件の場合は前記認定判断を相当とするものであるから、その主張は採用の限りでない。そして、このほか、本件商標に係る商品と引用商標に係る商品とが取引上混同を来しているというような特段の事情はなく、また、その証左も見出せない。

そうとすれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するということはできないから、その登録は、同法条の規定に違反してされたものとはいえない。

したがって、本件商標の登録は、同法第46条第1項第1号により、これを無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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