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Trademark Appeal Case

弁理士事務所名の公序良俗

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2002−90277(T2002−90277/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4540843号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4540843号商標(以下「本件商標」という。)は、「東京国際特許事務所」の文字(標準文字)を横書きしてなり、平成12年10月23日に登録出願、第42類「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介,翻訳」を指定役務として同14年2月1日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由

これに対し、登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、異議申立ての理由を要旨次のように述べ、証拠方法して、甲第1号証ないし甲第7号証(枝番を含む。)を提出した。

(1)本件商標は、その登録査定時には日本弁理士会会則第43条に規定する「使用できない事務所名称」に該当し、使用意思がない状態にあるから、商標法第3条第1項柱書きの規定に該当する。

(2)本件商標は、指定役務の提供場所、品質を表示するにすぎないから、商標法第3条第1項第3号に該当する。

(3)本件商標は、行政区画名と業種名とを結合してなる会社名であり、その登録査定時には他の同一のものが現存するから、商標法第3条第1項第4号に該当する。

(4)本件商標は、日本弁理士会会則第43条の規定及びこの会則の遵守を規定した弁理士法第62条等他の法律によりその使用等が禁止されている商標に該当するから、公序良俗に反し、商標法第4条第1項第7号に該当する。

3 取消理由の通知

登録異議の申立てがあった結果、本件商標の登録を取り消すべきものとして、平成14年12月4日付けで商標権者に対して通知した取消理由は、要旨次のとおりである。

申立人の提出した、甲第1号証ないし甲第3号証によれば、本件商標の商標権者及び申立人は、日本弁理士会に所属する弁理士であり、申立人は、平成13年1月9日に、その事務所名称を「東京国際特許事務所」に変更登録したことが認められる。

また、甲第4号証によれば、日本弁理士会会則第43条には、会員は誤認混同を生じるおそれのある事務所名称を用いてはならない旨が規定(同条第2号該当)されている。

そこで、本件商標をみると、申立人の事務所名称と同一の「東京国際特許事務所」の文字よりなるものであって、本件商標の商標権者が使用した場合、申立人の事務所名称と誤認混同を生じるおそれのあることは明らかである。

そうすると、申立人が、上記のとおり、その事務所名称を変更登録した結果、本件商標の商標権者は、本件商標の登録査定時(平成14年1月16日登録査定)において、日本弁理士会会則第43条の規定により、「東京国際特許事務所」という事務所名称を日本弁理士会に登録することができず、その使用を禁止されていたものといえる。

そして、本件商標の指定役務は、弁理士がその業務として行うことができる役務ということができる。

そうとすれば、本件商標は、商標権者が使用した場合、公の秩序を害するおそれがあるものというのが相当である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。

4 商標権者の意見

商標権者は、意見書を提出して概略次のように主張している。

(1)商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序」とは国家社会の一般的利益をいい、「善良な風俗」とは一般社会の道徳的観念をいうことは周知の事実である。「公序良俗」は、国民一般の道徳観、社会的良心および利益に関わる際に使用される。

また、特許庁編の工業所有権逐条解説の記載によれば、本号の解釈に当たってはむやみにその幅を広げるべきでないと考えられ、本号は、1号から6号の国家、同盟国、国際機関、赤十字、地方公共団体、公益団体に準じる団体の権威が毀損されるおそれがある場合に初めて適用があるというべきである。

しかし、本件商標は、それ自体が国民一般の道徳観、社会的良心および利益を害するとは認められないし、国家や公益団体等の名称や標章でなく、申立人(東京国際特許事務所)は1号から6号の団体に準ずるものでもない。 さらに、日本弁理士会会則は国会の定立した「法律」ではなく、本件商標は商標審査基準にいう「他の法律で、その使用等が禁止されている商標」にも該当しない。

(2)申立人の事務所名称変更届は、他人の商標登録出願後になされたものであるから、このような場合に本件商標を本号に該当するとすることは著しく正義および公平に反し、妥当性を欠くものである。確かに、日本弁理士会会則第43条第2号では「誤認混同を生じるおそれがある事務所名称」を用いてはならない旨が記載されているが、他人の商標登録出願後に事務所名称を変更登録した場合にまで、変更登録が先の事務所名称を日本弁理士会会則第43条第2号が保護しているとは考えられない。商標法と日本弁理士会会則が矛盾抵触する場合には、「法律」である商標法が優先するのは当然である。

また、本号は後発的無効理由ともなっているので、本号違反を理由に本件商標を取り消すならば著しく妥当でない結果も生じる。極端なことをいえば、商標が登録された後に悪意(他人の商標登録があることを知った上)で他人が事務所名称変更届を行った場合でも、先願に係る商標登録が本号違反で常に無効となってしまう。

さらに、出願に時期を遅れて事務所名称変更登録を行ったことをもって(あくまで同業者内部の手続きにすぎない)容易に商標登録を覆すことができるのであれば、他者に先立って勤勉に商標登録出願を行った者の権利は一切無視されることになる。

(3)誤認混同を問題とするのであれば公序良俗違反ではなく、他の条項にその根拠を求めるべきである。

5 当審の判断

(1)当審において通知した取消理由に対する商標権者の意見を検討してもなお、商標権者は、本件商標の登録査定時(平成14年1月16日登録査定)において、日本弁理士会会則第43条第2号の規定により、本件商標と同一の「東京国際特許事務所」という事務所名称を日本弁理士会に登録することができず、その使用を禁止されていたものであるから、商標権者が、本件商標をその指定役務について使用した場合、申立人の事務所名称と誤認混同を生ずるおそれのあること明らかであり、公の秩序を害するおそれがある商標というべきである。

(2)商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護すること。」を目的とするところ、その目的に照らし、同法による商標の保護が、産業の健全な発達及び需要者の利益を損なうものであってはならず、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良な風俗」もこのような観点から解すべきであるから、商標の使用をすることが商取引の秩序を乱し、社会公共の利益を害するような場合においても、そのような商標は同号に該当するものとして、登録を受けられないものというべきである。

そして、上記の、商標の使用をすることが商取引の秩序を乱し、社会公共の利益を害する商標には、公の秩序に関するものとして「他の法律で、その使用等が禁止されている商標」(「商標審査基準」第3 五、2.)も該当するというのを相当とし、また、この場合における「他の法律」とは、同号が商取引における健全な秩序の保全を目的とすることからみて、それに作用する法制度全般が含まれるものと解すべきである。

本件に関し、「日本弁理士会会則」は、弁理士法第57条の規定に根拠を置き、弁理士としての品位保持、業務の改善進歩、会員の指導、連絡・監督及び弁理士の登録に関する事務等を行うことを目的として制定されたものであるところ、同会則が、弁理士法を補完し、弁理士業務の秩序維持・改善に寄与するものであり、そして、現にこれが同業界の実際の取引場裏で果たしている役割等を勘案すれば、同会則をもって、上記した「他の法律」(法制度全般)に該当するものというのはむしろ当然というべきである。

しかして、同会則には「使用できない事務所名称」について「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある事務所名称、又は誤認混同を生じるおそれがある事務所名称」と規定されている(第43条第2号)。そのうち、「誤認混同を生じるおそれがある事務所名称」とは、2以上の弁理士が互いに誤認混同を生ずるおそれある事務所名称を使用することにより生ずる弁理士業務(役務)の出所の混同を防止するためのものであるにほかならないと解されるが、そうであるとすれば、既に同会則に則り登録されている事務所名称と誤認混同を生ずるおそれがある事務所名称は、同規定に基づき、これを登録し使用することはできないものであることは明らかである。

そうとすると、同会則に反するような事務所名称の商標登録を容認することは、公正な取引秩序の維持及び需要者の利益を損なうものといわざるを得ない。

してみると、日本弁理士会に既に登録されている申立人の事務所名称と同一の文字よりなる本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号の規定に違反してなされたものといわなければならない。

(3)商標権者は、本件商標は平成12年(2000年)10月23日に商標登録出願されたものであり、申立人の事務所名称変更届は平成13年(2001年)1月9日にされたものであるから、このような場合に本件商標を商標法第4条第1項第7号に該当するとすることは著しく正義及び公平に反する旨主張している。

しかしながら、商標法第4条第1項第7号の判断時期はその処分の日である登録査定時であり、本件については、本件商標の登録査定時である平成14年1月16日より前の平成13年1月9日に、申立人により、日本弁理士会に「東京国際特許事務所」の名称が同人の事務所名称として既に変更登録されていたのであるから、かかる変更登録が本件商標の商標登録出願後になされたものであるとしても、それが本件商標の登録査定時より前である以上、本件商標に関し、商標法第4条第1項第7号を適用することは何らその妨げとなるものとはいえない。

(4)加えるに、商標権者は、日本弁理士会に所属する弁理士であるから(甲第1号証の1)、平成12年12月当時、日本弁理士会より「事務所名称ガイドライン」(甲5号証の1)及び「事務所名称ガイドライン送付のご案内」(甲第5号証)の送付を受け、これら送付資料により、事務所名称の選択の自由化に伴う同名称の選択、変更の届出の受け付けは、2001年1月9日から開始されることを承知していたはずであり、また、本件商標と誤認混同を生ずる事務所名称が日本弁理士会に他人により登録された場合、以後、本件商標は事務所名称としてその指定役務について使用することができなくなることを熟知していたものといわなければならない。

上記によれば、商標権者が、本件商標を同人の事務所名称として使用をするのであるならば、同名称を日本弁理士会に登録する必要があったのであり(商標権者はそのことを熟知していたといい得ることは上記のとおり。)、しかるに、商標権者は、本件商標の商標登録出願をしたのみで、事務所名称の選択、変更の届出をなしたことの事実については、現在に至るもこれを窺い知ることができない。(なお、甲第1号証の1によれば、平成13年6月30日現在における商標権者の事務所名称は、「光陽国際特許事務所」と認められる。)

そうとすると、本件商標の登録を維持することは、商標法上の保護が商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるのがその本来的な姿であることからしても、適切でないといわざるを得ない。

その他、商標権者は、前述のほか、本件商標の登録は取り消されるべきではない旨種々述べるところあるも、それら意見はいずれも妥当性を欠くものであるから、採用の限りでない。

(5)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたというべきであるから、その登録は、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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