Trademark Appeal Case
BOSS商標の著名性と類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2004−90071(T2004−90071/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4723376号商標(以下「本件商標」という。)は、「ボス」及び「BOSS」の文字を二段に併記してなり、平成15年2月19日登録出願、第36類「クレジット利用者に代わってする支払代金の清算,割賦販売利用者に代わってする支払代金の清算,預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定著物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,割賦購入あっせん,前払式証票の発行,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,商品市場における先物取引の受託,建物又は土地の情報の提供,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,中古自動車の評価,企業の信用に関する調査,慈善のための募金,紙幣・硬貨計算機の貸与,現金支払機・現金自動預け払い機の貸与」を指定役務として、平成15年10月31日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
(1)登録異議の申立てについて
本件異議申立人(以下「申立人」という。)は、ドイツ最大手のメンズアパレルメーカーのフーゴ・ボス・アクチエンゲゼルシャフト(以下「フーゴ・ボス」という。)の日本法人である。
(2)「BOSS」商標の世界的な著名性について
フーゴ・ボスは1923年ドイツにおいて設立され、現在までヨーロッパ、アメリカ、アジアを含む世界各国で、高級紳士服及び高級紳士服用品の製造販売を行っている。同社は1998年12月31日には既に、カナダ、スペイン、フランス、香港、イタリア、日本、スイス、イギリス、ブラジル、オーストラリア、トルコ、ルクセンブルク、オランダ、アメリカの世界14か国に子会社を有し、それ以外の約40か国に総販売代理店を有している。フーゴ・ボスの製品(以下「BOSS製品」という。)は、衣類、スポーツレジャーウエア、服飾品、眼鏡、香水、スポーツ用品等の多岐にわたっている。
また、BOSS製品には、後記のように「BOSS」、「BOSS/HUGO BOSS」、「HUGO」、「HUGO BOSS」、「HUGO/HUGO BOSS」等のブランドを使用しているが、ブランド別の販売高、及び地域別の販売高はそれぞれ甲第14号証に記載されているとおりであり、フーゴ・ボス・グループの2000年の総販売高は、5年連続二桁である23%増の18億600万DM(ドイツ・マルク)であった。
そして、上記販売高の驚異的な上昇は、明らかに30%増という高い販売を成し遂げた流行の商標「BOSS」によって達成されたのである。「BOSS」商標を付した製品の総取引高(総売上高)は1億1,200万DM(ドイツ・マルク)に達した。
フーゴ・ボスは、世界中でBOSS製品を販売するため、世界各国に商標を出願し、権利を取得している。我が国では甲第1号証で示すように、被服類、眼鏡、かばん類、貴金属製品、運動用具等の各種商品と、ファッション情報の提供、商品の販売に関する助言及び指導等の役務に37件の商標を登録している。これらの商標はBOSS製品に付されて世界中で使用されている。なお、外国における商標の使用の態様は、甲第5号証ないし甲第13号証に示すような我が国での使用態様と同様である。
フーゴ・ボスは、毎年多額の宣伝広告費を費やして、一般日刊新聞紙、業界紙、専門家向け及び一般向けファッション雑誌への広告掲載、テレビ番組で出演者が着用する衣服の提供等を通じてBOSS製品の宣伝広告に努めた。また、世界中のスポーツイベントに協力したり、ハリウッド映画やテレビとのタイアップを盛んに行い、積極的なPR活動を続けてきた。例えば、テニスのデビス・カップ、全米、全仏オープン、ゴルフのメルセデスジャーマンマスターズなどのスポンサーのほか、人気の高いFIのスポンサーも実施している。また、BOSS製品はダスティン・ホフマン、ロバート・デニーロ、ショーン・コネリーなどのビッグスターにも愛用されている。さらに、ワールド・カップ・サッカー日本代表チーム向けの紳士服を提供するなど、一貫して、高級紳士服及び高級紳士用品の製造販売業者としてのフーゴ・ボスのイメージの普及、定着、及びBOSSブランドの周知に努めてきた。
商標「BOSS」、「BOSS/HUGO BOSS」、「HUGO」、「HUGO BOSS」、「HUGO/HUGO BOSS」等のBOSSブランドは、全世界的な規模で使用され周知となっているブランドである。
(3)日本における「BOSS」商標について
日本においてBOSS製品の本格的な販売が始まったのは1985年(昭和60年)秋であり、当初は商社を通じての販売であったが、その後1992年(平成4年)5月には、申立人であるヒューゴボスジャパン株式会社(旧名称ヒューゴ・ボス株式会社)が設立され、BOSS製品の日本における輸入及び販売を現在まで独占的に行っている。また、申立人は、BOSS製品を直営店及び有名百貨店のみで販売して、高級紳士服及び高級紳士用品としてのイメージの維持、定着に努めてきた。
さらに最近では、婦人服、バッグ、ベルト、ポーチ等の婦人用服飾雑貨を「BOSS WOMAN」、「HUGO WOMAN」の商標で販売している(甲第12号証参照)。
フーゴ・ボスによる永年にわたるBOSSブランドの宣伝広告活動等の結果、フーゴ・ボス・アクチエンゲゼルシャフトの略称でありかつ商標である「BOSS」は我が国で著名となっている。
1990年(平成2年)に発行された英和商品名辞典には「HUGO BOSS」が、フーゴ・ボスを指すものとして記載されている(甲第4号証)。
申立人は、BOSSブランドについて宣伝広告し、権利侵害者に対してはその度に警告書を送り、類似と思われる出願公告あるいは登録商標には異議を申し立て、フーゴ・ボスの著名な略称及び同社の登録商標である「BOSS」、「BOSS/HUGO BOSS」、「HUGO」、「HUGO/HUGO BOSS」、「HUGO BOSS」の保護と管理には多大の費用と時間をかけている(甲第6号証ないし甲第14号証)。
新聞等の紹介、宣伝広告及び販売活動によって、フーゴ・ボスの略称であり商標である「BOSS」は、本件商標の出願日である平成15年2月当時には、「BOSS」製品の需要者であるビジネスマン、キャリアウーマンを始めとして、上記の宣伝、広告あるいは新聞記事等に接した人々の間で広く知られて著名となっており、そしてこの状態は現在まで継続していると考えられる。
(4)商標法第4条第1項第8号について
上述のとおり「BOSS」は、本件商標の出願時点である平成15年2月頃にはフーゴ・ボス・アクチエンゲゼルシャフトの著名な略称になり、その状態は現在まで続いていると考えられる。したがって、本件商標は、フーゴ・ボスの著名な略称「BOSS」を含み、かつ同社の承諾を得ていないことから、商標法第4条第1項第8号に該当する(甲第3号証の9参照)。
(5)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、フーゴ・ボスの著名な略称と同一又は類似の部分を含むため、消費者、取引者にあたかもフーゴ・ボス又は申立人の製造販売するBOSS製品に関連する役務であるかのごとき意識をさせる可能性が高く出所の混同を生じせしめるおそれがある。
すなわち、本件商標の「ボス/BOSS」は、フーゴ・ボスの略称の英文表記「BOSS」と同一又は類似である。商標「BOSS」は申立人あるいはフーゴ・ボスが使用した結果、服装業界、ファッション業界を始め一般のビジネス社会等においても「紳士服及び紳士用品、婦人服及び婦人用服飾雑貨」はもちろんのこと「かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ」、「履物」、「糸」あるいは甲第3号証の9に示すように「輸送機械器具など」についても著名となったのである。この商標「BOSS」を一部にした本件商標に接した需要者、取引者は、本件商標「ボス/BOSS」がフーゴ・ボス、あるいは申立人と何らかの関係があると感じるのは明白である。
一般需要者が本件商標「ボス/BOSS」を付した、本件指定役務である「クレジット利用者に代わってする支払代金の清算,割賦販売利用者に代わってする支払代金の清算,建物又は土地の情報の提供,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,中古自動車の評価,企業の信用に関する調査,慈善のための募金」に接した場合、フーゴ・ボスあるいは申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し、出所につき混同を生じると考えられ、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第19号について
商標権者が、本件商標「ボス/BOSS」を使用した場合、フーゴ・ボス又は申立人の所有する「BOSS」商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれがあることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(7)上述のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第8号、同第15号若しくは同第19号に該当するため、本件商標の指定役務中「クレジット利用者に代わってする支払代金の清算,割賦販売利用者に代わってする支払代金の清算,建物又は土地の情報の提供,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,中古自動車の評価,企業の信用に関する調査,慈善のための募金」の役務についての登録は取り消されるべきである。
3 当審の判断
(1)本件登録異議の申立てがされた指定役務の範囲について
本件登録異議申立書の「1.登録異議の申立てに係る商標登録の表示」の欄中に「第36類 全指定役務」の記載があるので、申立人は、申立ての理由において、上記2(7)のように本件商標の指定役務中の一部について商標登録を取り消すべきとの主張をしているものであるが、本件商標の指定役務全部について登録異議の申立てがされたものと認める。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性について
申立人は、本件商標はフーゴ・ボス・アクチエンゲゼルシャフトの著名な略称である「BOSS」を含むものと主張する。
しかし、我が国においては、ボス(英語ではboss)は、「親方。親分。顔役。」「組織・部署の長。上司。」という意味(「広辞苑」参照)の語として知られているものであり、また、甲第6号証の2ないし10(新聞記事)においても、フーゴ・ボス・アクチエンゲゼルシャフトを「ヒューゴ ボス」などと略称している記載が認められるが、単に「BOSS」又は「ボス」と記載している事実は認められない。そして、他にフーゴ・ボス・アクチエンゲゼルシャフトが、「BOSS」の略称で著名であると認めるに足りる証拠資料はない。
したがって、この点の申立人の主張は採用できないものであり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものでない。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人の提出した証拠方法によれば、フーゴ・ボス・アクチエンゲゼルシャフト(フーゴ・ボス)の商品は、単独の「BOSS(Boss、ボス)」の文字を付した商標で販売、宣伝、紹介されている使用例よりも「HUGO BOSS(Hugo Boss、ヒューゴ ボス)」の文字を伴った使用例が多いものと認められる。そして、上記のとおり我が国においては、ボス(英語ではboss)は、「親方。親分。顔役。」「組織・部署の長。上司。」という意味の語として知られていることを考え合わせれば、本件商標は、紳士服や紳士用品とは分野が異なるといえるその指定役務について使用した場合、取引者、需要者は単に前記のボス(boss)という語から採択した商標として認識し、これよりフーゴ・ボス又はその使用商標である「BOSS」を想起認識することはないものというのが相当である。
そうすると、本件商標は、これをその指定役務に使用しても、申立人又は申立人と何らかの関係がある者の取扱いに係る役務であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれがあるとすべき特段の理由がないから、商標法第4条第1項第15号に該当するものでない。
(4)本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標が不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる証拠資料はなく、本件商標は、単にボス(boss)という知られた語から採択された蓋然性が高いものであって、フーゴ・ボスの使用商標「BOSS」の名声にフリーライドする意図のものとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものでない。
(5)まとめ
以上のとおりであり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものではない。
よって、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、結論のとおり決定する。
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