Trademark Appeal Case
称呼類似と音質差異
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2003−90303(T2003−90303/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4651841号商標(以下「本件商標」という。)は、「Vivexis」の文字を横書きしてなり、2002年5月10日にデンマーク王国においてした出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成14年11月11日に登録出願、第5類「糖尿病の治療及び予防に用いる薬剤,その他の薬剤」及び第10類「医療用機械器具」を指定商品として、同15年3月7日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立の理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、以下の登録商標(以下「引用商標」という。)を引用して、本件商標の登録は、指定商品中第5類「糖尿病の治療及び予防に用いる薬剤,その他の薬剤」について、商標法4条1項11号に違反してされたものであり、取り消されるべきであると申し立てている。
<引用商標>
登録第4613965号商標は、「BINEXIS」の文字を標準文字により書してなり、平成13年12月21日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同14年10月18日に設定登録されたものである。
3 本件商標に対する取消理由の通知の要旨
本件商標と引用商標は、上記のとおりの構成よりなるところ、それぞれの構成文字に相応して、前者が「ビベキシス」「ビベクシス」、後者が「ビネキシス」「ビネクシス」の各称呼を生ずるものとみるのが自然である。
そこで、本件商標より生ずる「ビベキシス」「ビベクシス」の各称呼と引用商標より生ずる「ビネキシス」「ビネクシス」の各称呼とを比較するに、両称呼は、第2音において「ベ」と「ネ」の差異を有するが、その「ベ」と「ネ」の音は母音を共通にする近似音であるから、この差異が両称呼の全体に及ぼす影響は小さいものであって、両称呼を一連に称呼するときは、全体の語感が近似したものとなり、彼此聴き誤るおそれがあるものといわなければならない。
また、本件商標及び引用商標は、上記のとおり「Vivexis」「BINEXIS」の文字を書してなるものであって、その構成文字中「V」と「B」、「v」と「N」の2文字を除く第2文字目の「i」と「I」及び後半部の「exis」と「EXIS」の各文字は、文字の小文字、大文字の相違はあるもののその綴りを同じくするものであるから、本件商標と引用商標とは、その外観において相紛らわしいものといわざるを得ない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼において類似する商標であるばかりでなく、上記のとおり外観において相紛らわしい商標であり、かつ、本件商標の指定商品中第5類「糖尿病の治療及び予防に用いる薬剤,その他の薬剤」は、引用商標の指定商品と同一又は類似する商品と認められる。
したがって、本件商標は、その指定商品中登録異議申立に係る商品について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
4 商標権者の意見の要旨
上記の取消理由の通知に対して、商標権者は、要旨次のように意見を述べ、乙第1号証ないし乙第26号証を提出した。
(1)本件における相違音である「ベ」音と「ネ」音は、前者が閉鎖によって止められた呼気が急に閉鎖をおし破るときに発する破裂音であり、一方、後者が口腔が閉ざされ、呼気が鼻腔を通るときに共鳴によって生じる鼻音である。このように、相違音はその調音方法が全く異なり、その結果、必然的に音質も全く異なるものとなる。加えて、「べ」音は濁音であるのに対して、「ネ」音は清音である故にその音質はなお一層相違するものとなる。具体的に言うと、「べ」音は力強い低く重々しく響くのに対して、「ネ」音は柔らかく弱く軽く響くものとなる。
<相違音が全体称呼に及ぼす影響>
本件商標及び引用商標は共に5音と、複数の語を組み合わせてなる商標が採択・使用されている現在の取引上の下では決して冗長なものではなく、むしろ、短い部類に属すると言える。そのため、需要者は5音からなる商標においては各構成音をそれぞれ聞き取れる。したがって、上述したように、その音質において全く異なる「べ」音と「ネ」音とは全体称呼に埋没することは決してない。
本件商標及び引用商標の指定商品の需要者は医師・薬剤師等の専門家であるが故に商標の称呼を聞き取る際にも細心の注意を払うものである。また、一般消費者が需要者になる場合にも、この商品が自身の生命・健康に関係するものであるから、同じく細心の注意を払う。そのため、他の商品分野では聞き誤るようなおそれのある商標同士であっても、この指定商品の分野では聞き分けられるものとなる。この指定商品の分野の特殊性からも「べ」音と「ネ」音の相違はなお一層明確に認識される。
以上述べたことから、本件商標及び引用商標における相違音である「べ」音と「ネ」音の明確に認識され、必然的にこれら商標の全体称呼に大きな影響を与えるものとなる。その結果、本件商標と引用商標とは語調・語感が相違するものとなって相紛れることはない。
<特許庁における審査・審判例>
以下に掲げる審決において、「べ」音と「ネ」音はその音質が相違するものとされ、これらの音の相違によって商標を非類似のものと判断されてている(乙第1号証ないし乙第2号証)。
(イ)商標「LIVEX」と商標「LINEX」
(ロ)商標「ネストロン/NESTORON」と商標「ベストロン」
さらに、特許庁は、以下に掲げる如く、第2音以降において「べ」音と「ネ」音の相違する商標を相互に非類似のものとして併存してその登録を認めている(乙第3号証ないし乙第26号証)。
[本件商標と引用商標とが抵触する商品分野]
(イ)登録第2155294号商標「クレベイト/KUREBAIT」と登録第3361761号商標「クレネイト」
(ロ)登録第2064979号商標「コリベロール/COLIBEROL」と登録第4056892号商標「コリネロール」
(ハ)登録第2515706号商標「オベスター/OBESTAR」と登録第1122835号商標「オネスター」
(ニ)登録第2545183号商標「Titavest/チタべスト」と登録第713700号商標「チタネスト」
[他の商品分野]
(イ)登録第2250467号商標「バイオベスト」と登録第4320873号商標「バイオネスト」
(ロ)登録第4632067号商標「サンベスト」と登録第4500316号商標「サンネスト/SUNNEST」
(ハ)登録第4515612号商標「エゴベスト」と登録第4308123号商標「エゴネスト/ECO NEST」
(ニ)登録第1248704号商標「SUNBEST」と登録第4500315号商標「サンネスト/SUNNEST」
(ホ)登録第4433884号商標「エゴベスト」と登録第3362959号商標「エゴネスト」
(へ)登録第4382122号商標「エゴベスト/ECOBEST」と登録第4136130号商標「エゴネスト/ECO NEST」
(ト)登録第4136130号商標「カべライト」と登録第3073209号商標「KANELITE」、同第2504247号商標「カネライト」、同第4013445号商標「KANELIGHT」及び同第826435号商標「カネライト」
ここに、数多くの併存登録例が見出せることからすれば、「べ」音と「ネ」音の相違する商標はたとえこれら相違音が第2音以降に位置するものであったとしても相互に非類似のものと取り扱うことは特許庁における審査の基準として確立していると言える。
これら併存登録例における商標の殆どは5音からなるものであり、中には上記「コリベロール/COLIBEROL」と「クリネロール」並びに「バイオベスト」と「バイオネスト」のように本件商標及び引用商標よりも長い称呼の商標もある。したがって、音数の面で本件商標と引用商標の場合がこれら併存登録例と別異に取り扱われることはない。
これら併存登録例における商標中の「べ」音と「ネ」音はいずれも促音ないしは長音を伴っていないので、本件商標と引用商標における「べ」音と「ネ」音に対する認識度合は変わらない。この点でも、本件商標と引用商標の場合がこれら併存登録例と別異に取り扱われることはない。
これら併存登録例における商標中には、「コリべロール/COLIBEROL」と「クリネロール」、「バイオベスト」と「バイオネスト」、「サンベスト」と「サンネスト/SUNNEST」並びに「エコベスト」と「エコネスト/ECO NEST」のように第3音が相違する故に本件商標と引用商標の場合に比べ「べ」音と「ネ」音が全体称呼に与える影響が少ないものも含まれている。この相違音の位置の点でも本件商標と引用商標の場合がこれら併存登録例と別異に取り扱われることはない。
これら併存登録例における商標はいずれも全体としては何らの観念をも有しない造語であるから、これら商標は観念の相違によって聞き分けられたものではない。また、これら商標はいずれも普通に用いられる方法で書されているので、外観上の相違が商標の聞き分けに影響を及ぼすことはなかったと言える。これらのことから、観念・外観の面で本件商標と引用商標の場合がこれら併存登録例と別異に取り扱われることはない。
上述したように、本件商標と引用商標とが抵触する商品分野は他の商品分野で類似とされるような商標であっても非類似のものと判断される傾向にあるから、他の商品分野で非類似のものとされたものは当然本件商標と引用商標とが抵触する商品分野では非類似のものとされるものである。また、本件商標と引用商標とが抵触する商品分野でも併存登録例が見出せる。これらのことから、商品の面で本件商標と引用商標の場合がこれら併存登録例と別異に取り扱われることはない。
以上述べたことから、本件商標と引用商標の場合がここで挙げた併存登録例と別異に取り扱われる理由は何一つ存在しない。むしろ、商標の類否の経験則からすれば本願商標と引用商標の場合に比べ類似するとされる度合いが大きい商標同士であっても非類似のものとされている。商標の登録の可否を決定する審査が行政処分である以上、たとえ裁量行為であっても、法的安定性を担保するために、その処分内容には統一性が厳しく求められ、同じ状況下にあっては同じ判断がされなければならない。であるとすれば、これら併存登録例における商標と同じく本願商標と引用商標とは当然称呼上非類似とされなければならない。
<まとめ>
以上述べた如く、本件商標と引用商標における相違音はその音質が相違し、これら商標の全体称呼に影響を及ぼし、両商標の語調・語感を相違せしめ、そのため、両商標は称呼上相紛れることはない。そして、本件商標と引用商標とが称呼上非類似のものとされることは特許庁における審査例に合致する。
(2)外観上の非類似
今日、わが国の平均的需要者はローマ字26文字を全て知り得ていることは多言を要しない。そのため、商標におけるローマ字の相違は正しく認識できる。したがって、そのローマ字において2つの文字の相違がある本件商標と引用商標とが外観上相紛れることはない。特許庁において二つの商標の間にローマ字1文字同士の相違しかない商標であっても相互に非類似のものとされていることは夙に知られている。
(3)結論
以上詳述したことから明からなように、本件商標は引用商標に類似しない。
5 当審の判断
(1)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標は、上記のとおりの構成よりなるところ、それぞれの構成文字に相応して、前者が「ビベキシス」「ビベクシス」、後者が「ビネキシス」「ビネクシス」の各称呼を生ずるものとみるのが自然である。
そこで、本件商標より生ずる「ビベキシス」「ビベクシス」の各称呼と引用商標より生ずる「ビネキシス」「ビネクシス」の各称呼とを比較するに、両称呼は、第2音において「ベ」と「ネ」の差異を有するが、その「ベ」と「ネ」の音は母音を共通にする近似音であるから、この差異が両称呼の全体に及ぼす影響は小さいものであって、両称呼を一連に称呼するときは、全体の語感が近似したものとなり、彼此聴き誤るおそれがあるものといわなければならない。
また、本件商標及び引用商標は、上記のとおり「Vivexis」「BINEXIS」の文字を書してなるものであって、その構成文字中「V」と「B」、「v」と「N」の2文字を除く第2文字目の「i」と「I」及び後半部の「exis」と「EXIS」の各文字は、文字の小文字、大文字の相違はあるもののその綴りを同じくするものであるから、本件商標と引用商標とは、その外観において相紛らわしいものといわざるを得ない。
さらに、本件商標と引用商標は、ともに特段の意味を有しない造語と認められるから、本件商標と引用商標との称呼及び外観における類似性を低下させるものとはならない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼において類似する商標であるばかりでなく、上記のとおり外観において相紛らわしい商標であり、かつ、本件商標の指定商品中第5類「糖尿病の治療及び予防に用いる薬剤,その他の薬剤」は、引用商標の指定商品と同一又は類似する商品と認められる。
(2)商標権者の意見について
商標権者は、本件商標と引用商標は、称呼上及び外観上非類似の商標であると主張するが、両者が類似すると判断されること前記のとおりであり、商標権者の主張は採用することはできない。
また、商標権者は、「薬剤の需要者は、医師・薬剤師等の専門家であるが故に商標の称呼を聞き取る際にも細心の注意を払うものである。また、一般消費者が需要者になる場合にも、この商品が自身の生命・健康に関係するものであるから、同じく細心の注意を払う。そのため、他の商品分野では聞き誤るようなおそれのある商標同士であっても、この指定商品の分野では聞き分けられるものとなる。この指定商品の分野の特殊性からも「べ」音と「ネ」音の相違はなお一層明確に認識される。」と主張している。
しかしながら、本件商標及び引用商標の指定商品中には、一般家庭で日常使用される常備薬なども含まれており、これらの商品の取引者・需要者には、一般の消費者も含まれるのであって、これらの消費者が商品を購入するにあたって相当高度の注意力をもつとすべき特別な事情は認められないばかりか、本件の類否判断において、一般消費者の普通の注意力を基準に類否判断をすることが妥当ではないとはいえず、前記商標権者の主張は採用することはできない(なお、この点に関しては、「この種の 指定商品の商標についても一般需要者の普通に用いる注意力を類否判断の基準とすべきである」旨の判決例(東京高裁 昭和24年3月23日言渡 昭和22年(行ナ)第6号判決)を参照されたい。)。
(3)結論
したがって、本件商標の指定商品中「糖尿病の治療及び予防に用いる薬剤,その他の薬剤」についての登録は、商標法4条1項11号に違反してなされたものといわざるを得ず、商標法43条の3第2項により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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