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Trademark Appeal Case

「士」名称の資格誤認

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2002−17468(T2002−17468/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、「建物鑑定士」の文字(標準文字による商標)を書してなり、第36類「建物診断・改修計画と投資コスト判定,建物の設備診断・改修計画と投資コスト判定,建物の耐震診断・改修計画と投資コスト判定,建物の防犯診断・改修計画と投資コスト判定,建物の防災診断・改修計画と投資コスト判定,建物の省エネルギー診断・改修計画と投資コスト判定,建物の長期修繕計画書の作成,建物のライフサイクルの計画書作成,建物の室内環境診断書の作成,建物の適正評価業務,不動産情報開示図書作成,土地・建物の紛争解決の評価書作成,国際会計基準による不動産の時価評価,金融担保の資産評価,不動産証券化の投資判定と格付け,再開発の権利調整・交換の評価書,損失補償の査定,損害賠償の査定,損害保険の損害額査定,公的課税客体の評価額査定,建物の事業手法の判定(売却・賃貸・分譲・証券化等),土地・建物の不動産の投資判定,建物の時価評価,建物の最有効使用・用途の判定,建物の投資コスト・追加投資コストの査定,建物売却と建物新築の収益比較の査定,建物の維持管理費の査定,建物の維持管理手法の判定,建物の収益向上の手法判定,建物の省エネルギー・経費削減の手法算定,建物の減価償却資産の判定,建物の固定資産税評価額の査定,建物の経済的耐用年数の判定」を指定役務として、平成12年7月11日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、特定の資格を示す名称又は称号と認識される『建物鑑定士』の文字を書してなるものであるが、かかる名称又は称号は法律の規定あるいは公認の試験により認定される資格であるかのごとく一般需要者に誤認させるものであるから、このようなものを商標として登録するのは穏当でない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

本願商標は、「建物鑑定士」の文字(標準文字)よりなるところ、末尾に「士」の付された語の通常の意味は、「広辞苑」第5版(1998年11月11日発行)や「講談社カラー版日本語大辞典」(1995年7月3日発行)によれば、「一定の資格・役割をもった者」、「特別の資格・職業の人」などといったものであり、その用語例として、「弁護士」、「栄養士」、「学士」、「代議士」、「公認会計士」等が挙げられていることが認められる。ここにいう一定の資格に何が含まれるかについては、格別の制限が付されていないから、形式的には、国家資格(法令に根拠を有するもの)、民間資格(それ以外のもの)のいずれをも含み得ることになる。しかし、末尾に「士」の付された名称の中で、一般国民にとって接する機会が多く、一般国民にとって知られている度合いの大きいものの多くは、上記「弁護士」、「栄養士」、「公認会計士」を始め、税理士、建築士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、司法書士、行政書士など国家資格に係るものであり(なお、前記「代議士」は、衆議院議員の俗称であって、法令に基づく名称ではないが、衆議院議員が法令に基づく地位であることは明らかであるから、国家資格に係る名称であることに変わりはない。)、しかも、その状態が古くから続いてきていることは、当審において顕著である。

また、末尾に「士」の付された名称のうち、国家資格に係るものは、国家が、公共の福祉その他政策上の目的のために、国民の職業選択の自由を制限してでも、一定の能力を有すると判定された者に限って一定の地位ないし権限を付与する必要があると認めて法令をもってそのように定めたものであり、そのために、国家資格に伴う地位ないし権限は、必然的に対世的かつ排他的なものとなる。これに対して、民間資格は、上記のような必要に基づくものでも、法令に根拠を有するものでもなく、対世的かつ排他的な地位ないし権限の付与を伴うものでもない。このように、国家資格と民間資格とでは、一般国民に対して現実に果たしている役割の重要性において比較にならない相異がある。

これらの事情の下では、一般国民は、末尾に「士」の付された名称に接した場合、一定の国家資格を付与された者を表していると理解することが多いとするのが相当である。

これを本願商標についてみるに、「建物鑑定士」の文字よりなる本願商標に接する需要者・取引者は、その構成文字よりして容易に「建物に関する鑑定をする資格を有する者」のごとき意味合いを理解・認識するものとみるのが自然である。

他方、国土交通省所管の国家資格として「不動産鑑定士」という資格があるところ、不動産の鑑定評価に関する法律(昭和三十八年七月十六日法律第百五十二号)においては、「この法律において『不動産の鑑定評価』とは、土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することをいう。」(第2条第1項)とし、「この法律において『不動産鑑定業』とは、みずから行なうと他人を使用して行なうとを問わず、他人の求めに応じ報酬を得て、不動産の鑑定評価を業として行なうことをいう。」(同第2項)とし、「この法律において『不動産鑑定業者』とは、第二十四条の規定による登録を受けた者をいう。」(同第3項)としており、特に、「不動産鑑定士又は不動産鑑定士補でない者は、不動産鑑定業者の業務に関し、不動産の鑑定評価を行なつてはならない。」(第36条第1項)とし、「不動産鑑定士又は不動産鑑定士補でない者は、それぞれ不動産鑑定士又は不動産鑑定士補の名称を用いてはならない。」(第54条)としているものである。

そして、この「不動産鑑定士又は不動産鑑定士補」の資格名称の独占化は、一般国民が不動産鑑定士又は不動産鑑定士補の基本的性質について誤った認識をもち、これによって、一般国民に不利益を及ぼすことのないようにしたものであって、「資格の名称の独占化」の趣旨は公の秩序に関する事柄として十分に尊重されるべきものと解される。

そうすると、「建物鑑定士」の文字よりなる本願商標に接する需要者、取引者は、これよりは上記国家資格である「不動産鑑定士又は不動産鑑定士補」のほかに、当該不動産の鑑定評価に関連した国家資格あるいは公的職業資格が存するかのごとく誤信する場合があることは否定できないところである。

してみれば、たとえ請求人(出願人)が特定非営利活動法人であっても、本願商標をその指定役務に使用するときは、あたかも該役務が国家資格を有する者の取り扱いに係る役務であるかのような印象を抱かせるものであり、上記不動産の鑑定評価に関する法律の趣旨に反することになるばかりでなく、一般世人をして誤信せしめ、国家資格等の制度に対する社会的信頼を失わせることにもなり、ひいては社会公共の利益に反するおそれがあるものといわざるを得ない。

したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消すべき限りでない。

よって、結論のとおり審決する。

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