sokuhyo

Trademark Appeal Case

「π」の要部と称呼・観念の類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35091号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4128966号商標(以下、「本件商標」という。)は、「π」の文字とその上部に「パイ」の文字を横書きしてなり、旧第32類、「卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品」を指定商品として、平成1年8月30日登録出願、同10年3月27日に登録され、現に有効に存続するものである。

2 請求人の主張

(1) 本件商標の登録は、これを無効とするとの審決を求めると主張し、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第12号証を提出している。

(2) 本件商標と引用商標

▲1▼ 本件商標は前記1のとおりである。引用商標は、甲第3号証及び同第4号証のとおり、昭和62年5月29日に出願され、平成4年10月6日に公告、同5年6月30日に登録第2549288号商標として登録されたもので、ギリシア文字「π」と片仮名文字「ウォーター」を結合した「π ウォーター」からなるものであって、旧第32類、「食肉、その他本類に属する商品」を指定商品とするものである。

▲2▼ 本件商標と引用商標との対比

本件商標と引用商標とは共に旧第32類の指定商品について使用するものであり、そして、本件商標と引用商標とは「π」なるギリシア文字において共通し、引用商標は、それに更に「ウォーター」を結合してなるものである。しかし、「ウォーター」は水を意味する英語として本件商標の登録出願のはるか以前から親しまれており、殆んど日本語の普通名詞と同様に扱われている。

したがって、引用商標「π ウォーター」の自他商品識別の機能を果たす主要部はギリシア文字の「π」にある。

▲3▼ 請求人の前記▲2▼の主張は、請求人の出願、甲第5号証に係る「πのたまご」(商願平4−306718号)が本件商標を引用して拒絶され(甲第6号証及び同第7号証)、その理由も、やはり商標「πのたまご」の自他商品識別の機能を果たす主要部はギリシア文字の「π」にあるから、「パイ」の称呼をも生じ、当該商標はその引用商標「π」に類似すると認定されたことにあり、更に、請求人の出願、甲第8号証に係る「π−egg」(商願平4−306719号)も本件商標を引用して同様な理由によって拒絶されたこと(甲第9号証及び同第10号証)からみても当を得たものであることは明らかである。

したがって、本件商標と引用商標とは、自他商品識別の機能を果たす主要部「π」において共通し、「パイ」の称呼を生じるので、本件商標は引用商標に類似するものであると断定できる。

(3)以上のとおり、本件商標はその登録出願の日前の登録出願に係る他人(請求人)の登録商標に類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品について使用するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第10号の商標に該当し、商標法第46条第1項第1号の規定にもとづいてその登録は無効にされるべきである。

(4)答弁に対する弁駁

▲1▼ 被請求人の主張によると引用商標の「π ウォーター」は「π」と「ウォーター」とが一体不可分に結合された造語よりなる商標であるから、本件商標の「π」とは非類似であると言うものである。

▲2▼ しかし、甲第11号証に係る「現代用語基礎知識1992年版 第1368頁「π(パイ)ウォーター」の項をみると、(*π+water)とあり、πとWaterとが分離されている。更に、甲第12号証(食品工業 1993年4月15号)第30頁及び第31頁を参照するとπウォーターはπ化した水をさすこと明らかである。「π ウォーター」は、甲第11号証によっても理解されるように、非常に著名、かつ、周知な商標であり、甲第12号証によっても理解されるように、「π」は水等を生物学的に活性化する特殊な処理を意味していることも周知であることが理解される。

したがって、引用商標の「π ウォーター」において「π」は「π化した」という観念を与えるものであり、引用商標の主要部であることは言うまでもない。

▲3▼ そして、引用商標を旧第32類に属する商品(食品類)について使用した場合には、一般需要者は、これら食品類はπ化された健康に良い食品類であるとのイメージを持つであろう。

本件商標「π」も、旧第32類に属する商品について使用した場合は、一般需要者はやはりこれら食品類はπ化された健康によい食品類であるとのイメージを持つに違いない。

そうすると、一般需要者において、本件商標が旧第32類に属する商品に使用された場合には、π化されたものと言うイメージを共通している引用商標と間違いなく混同を起こす。

したがって、本件商標は、引用商標と類似しているので、本件商標の登録は無効とされるべきである。

3 被請求人の答弁

(1)被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証乃至同第4号証を提出している。

▲1▼ 請求人の主張は独断的見解であって容認することはできない。本件商標は、引用商標と非類似であり、請求人主張の商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。

▲2▼ 請求人は、本件商標と引用商標とは「π」の文字において共通し、「パイ」の称呼を生じるので、両者は類似するものであると主張している。しかし、この主張は当を得ないものである。

引用商標は「円周率」を表わす文字として一般的に広く認識されているギリシア文字の「π」と「水」を意味する外来語の「ウォーター」の片仮名文字を横書きして一連に結合してなっているものである。そして、この商標を構成する「π」及び「ウォーター」の各文字は、いずれかに比重をかけることなく、左右に調和よく結合されており、この商標は全体をもって「パイウォーター」と極く自然に称呼され得るものである。

また、この商標は上記した態様でバランスよく一連かつ一体に記載され、外観上、上記の各文字の結合は強く、その調子も極く自然であって発音し易く、この商標は指定商品との関連性を勘案してみても「π」の部分と「ウォーター」の部分とに分離して観察しなければならない必然性はなく、これらは不可分一体に結合された造語商標よりなる商標であると解釈するのが相当である。

したがって、引用商標からは「パイウォーター」の称呼が生じ、かつ、この称呼が引用商標から生じる唯一の自然的称呼である。

これに対し、本件商標は、その構成からして「パイ」の称呼が生じ、かつ、この称呼が本件商標から生じる唯一の自然的称呼である。

そこで、両商標の称呼を比較すると両者は「パイ」の部分について共通しているが、引用商標を称呼するときは、「パイ」と「ウォーター」との間に区切りをつけることなく、流れるように一気に「パイウォーター」と極く自然に発声されると共に、後段の「ウォーター」の部分が聴者に強く印象づけられる。

そのため、両商標を一連に称呼すると、両者は全体の語調、語感を著しく相違せしめることになる。したがって、両商標は称呼上互いに明確に区別し得るものである。

請求人は、この点に関し、引用商標を構成する後段部の「ウォーター」は水を意味する英語として本件商標出願日のはるか以前から親しまれており、殆ど日本語の普通名詞と同様に扱われている。したがって、「π ウォーター」の自他商品の識別機能を果たす主要部はギリシア文字の「π」にある旨主張している。

しかし、引用商標は、指定商品との関係を加味して考察してみても、不可分一体に結合された造語商標よりなるもので、「π」と「ウォーター」の部分とに分離して、「π」の文字部分に主要部があると解釈することは当を得ないものである。

▲3▼ さらに、請求人は、甲第5号証乃至同第10号証を提出しているが、登録出願に係る商標が「πのたまご」及び「π−egg」の各々の文字からなるもので、これら両商標の構成後部の「たまご」及び「egg」の文字は、指定商品そのもの乃至商品の品質を表示した部分と看取、認識されるものであって、本件とは事案を異にするものである。

(2)以上において明らかなとおり、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。

よって、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。

4 当審の判断

(1)本件審判請求に関し、請求人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する旨主張、立証するところ、被請求人も答弁書の中で同号を挙げているが、請求書の全趣旨によれば、商標法第4条第1項第11号の誤りと認められるから、本件商標が商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるか否かを審理する。

(2)▲1▼ 本件商標と引用商標の類否について検討するに、請求人は、引用商標「π ウォーター」は、その構成中「π」の文字が自他商品の識別機能を果たす主要部であることを前提として、本件商標と引用商標が類似する旨主張する。

▲2▼ しかしながら、引用商標は、甲第11号証及び同第12号証から明らかなように、「人間の体内の3分の2を占める生体水に限りなく近く、超微量の2価3価鉄塩を含んでいる水」を意味する一般的な用語として確立された「πウォーター」を表示してなるものであって、これを「π」と「ウォーター」とに分離して、前者が主要部とする理由はない。

しかも、引用商標の指定商品について、その後半部を構成する「ウォーター」の文字がその品質、原材料等表示、その他自他商品の識別力がないとみるべき特段の事情はなく、また、請求人も、英語に由来する水を意味する普通名称である旨以外主張、立証するところがない。

してみれば、引用商標「π ウォーター」の構成中「π」の文字が自他商品の識別機能を果たす主要部であることを前提として、本件商標と引用商標が類似する旨の請求人の主張は、理由がない。

▲3▼ 請求人は、甲第5号証乃至同第10号証に係る審査例を挙げているが、被請求人が指摘するように、審査例に係る登録出願商標が「πのたまご」及び「π−egg」の各々の文字からなるもので、これら両商標の構成中の後半部の「たまご」及び「egg」の文字は、当該出願に係る指定商品そのもの乃至商品の品質、原材料を表示した部分と看取、認識されるものであって、本件とは事案を異にするものであること明らかである。

▲4▼ なお、本件商標は「ギリシア文字のパイ」乃至は「円周率」を表す語として親しまれたものであるのに対して、引用商標は「生体水に近いパイ化された水」の観念を生ずるものと認められ、両商標は、観念においても類似するものではない。

(3)以上のとおり、本件商標と引用商標は類似するものではないから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものではない。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。