結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2004−35066(T2004−35066/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件審判請求に係る登録第4490064号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおり、手書き風の「L'esprit」の文字を横書きしてなり、平成12年9月29日に登録出願、第16類「ラベル(布製のものを除く。),シール,ステッカー,下げ札,その他の文房具類(「昆虫採集用具」を除く。)」を指定商品として、平成13年7月13日に設定登録されたものである。
請求人が引用する登録第4559323号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、平成10年4月10日に登録出願、第16類「紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,型紙,裁縫用チャコ,紙製のぼり,紙製旗,荷札,印刷物,書画」を指定商品として、平成14年4月12日に設定登録されたものである。
同じく、登録第653754号商標(以下「引用商標2」という。)は、「エスプリ」の文字を横書きしてなり、昭和38年3月27日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、昭和39年9月21日に設定登録され、その後、昭和51年8月9日、同59年10月19日、平成6年12月21日及び同16年6月29日の4回にわたり商標権の存続期間更新登録がされているものである。
同じく、登録第1558196号商標(以下「引用商標3」という。)は、「ESPRIT」の文字を横書きしてなり、昭和53年12月11日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、昭和57年12月24日に設定登録され、その後、平成6年1月28日及び同14年12月10日の2回にわたり商標権の存続期間更新登録がされているものである。
同じく、登録第2097119号商標(以下「引用商標4」という。)は、引用商標1と同一の構成からなり、昭和61年8月8日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、昭和63年11月30日に設定登録され、その後、平成11年1月5日に商標権の存続期間更新登録がされているものである。
以下、これらをまとめていうときは、「引用各商標」という。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第61号証を提出している。
1.請求の理由
(1) 引用商標の著名性について
引用商標2ないし4は、請求人及びエスプリインターナショナルを中心とするエスプリグループが、米国、欧州、アジア各国で、カジュアルウェア、アクセサリー、バッグ、靴等に長年使用している著名商標である。
エスプリグループは、1968年米国サンフランシスコでの創業以来、カジュアルウェアを主とするファッションメーカーとして著しい発展を遂げてきた。1974年には香港に生産拠点を確保しアジア進出、1970年代後半には、ヨーロッパ、スカンディナビア、オセアニアへの進出を果たした。80年代にはいると、アクセサリー、バッグ、靴等次々に品目を増やし、世界的なトータルファッションブランドとしての地位を不動のものにした(甲第6号証ないし甲第59号証)。
日本においては、1984年エスプリジャパン設立後、衣類、バッグ等の輸入販売を開始し、その後、日本有数の寝装具メーカーである株式会社内野と提携し、パジャマ、バスローブ、タオル、シーツ、ハンカチ等の販売を開始した。さらに、1994年には日本各地に直営店を開き、カジュアルウェア、アクセサリー、バッグ、靴等、非常に好調な売れ行きを呈している。
現在、日本を含む全世界45ヶ国での年商は1,000億円以上、取扱い店舗数は843店以上にのぼっている。
商標「ESPRIT」は、エスプリグループが1976年に衣類について使用して以来、カジュアルウェア、アクセサリー、バッグ、靴等に長年使用され、エスプリグループの商品を表示するものとして広く知られている。当該商標を付した商品は、日本を含め世界中で一流品としての信用が形成されており、数々の刊行物によって紹介されている(甲第7号証ないし甲第59号証)。
また、1970年以来、エスプリグループの各企業は、取引業者、新聞雑誌、消費者の間で、単に「ESPRIT」又は「エスプリ」と略称されてきており、「ESPRIT」又は「エスプリ」が請求人を含むエスプリグループの各構成企業を表す略称であることは広く知られている(甲第7号証ないし甲第59号証)。
さらに、第三者の登録商標に対する登録無効審判事件における審決理由において、少なくとも昭和61年(1986年)4月11日以前に、エスプリ社が世界的な大企業であって、その商標「≡SPRIT」の文字は、我が国において一般に広く認識されていたと認め得ると判断されている(甲第53号証)。近年の商標登録異議申立の決定理由においても、商標「≡SPRIT」が、著名商標であると判断されている(甲第54号証)。
以上より、引用商標は、本件商標の登録出願時である平成12年(2000年)9月29日当時において、エスプリグループの業務に係る商品を表示するものとして、また、エスプリグループの各構成企業を表す略称として、既に我国において著名であったものと確信する。
(2) 本件商標と引用商標との類否
本件商標は、その構成文字に相応して、「レスプリ」の称呼が生じ得る。これに対して、引用各商標は、それぞれの構成文字に相応して「エスプリ」の称呼が生ずる。
ここで、本件商標と引用商標とは接頭語において「レ」と「エ」が違うのみであるが、これらは母音を共通にする近似した音であり、かつ、語頭音に続く「エスプリ」の音が強く印象に残るものであることから、語感語調は極めて類似し相紛らわしいものである。また、本件商標のうち「L'」部分はフランス語の定冠詞「Le」を表示するものの短縮形(リエゾン)である。すなわち、後に続く「esprit」の語が母音ではじまることからリエゾンにより「L'」となったものである(甲第6号証)。このことは、日本における一般の需要者においても容易に認識されているものと思料する。またこれにより、定冠詞「L'」部分を除いた「esprit」部分は引用商標と同一又は類似の文字から構成されているといえる。
したがって、本件商標と引用商標を比較するに、称呼、外観、観念において両商標は類似のものである。
さらに、本件商標の指定商品は引用商標1の指定商品と同一又は類似である。
(3) 商標法第8条第1項について
前述のとおり、本件商標は引用商標1に類似するものであり、その指定商品も同一又は類似のものである。
さらに、本件商標の登録出願日は、平成12年9月29日であるのに対し、引用商標1の登録出願日は平成10年4月10日であるから、本件商標は、引用商標1の後願であり、同一又は類似の商品について使用をする同一又は類似の商標について異なった日に二以上の商標登録出願があった場合における、最先の商標登録出願人とはいえず、商標法第8条第1項に違反して登録されたものである。
(4) 商標法第4条第1項第15号について
エスプリグループの各構成企業を表示するものとして著名な引用商標2ないし4と類似する本件商標がその指定商品に使用された場合、取引者・需要者をして、その商品がエスプリグループの提供にかかわるものであるかのごとく、あるいは、エスプリグループと何等かの経済的・組織的関連があるかのごとく認識され、出所混同を生ぜしめるおそれがあると思料する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5) むすび
以上、述べたところの理由により、本件商標は、商標法第8条第1項及び同法第4条第1項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第46条第1項第1号により無効にされるべきものであると確信する。
2.弁駁の理由
(1) 商標法第4条第1項第15号について
(ア) 請求人商標の周知性
最近の異議申立事件における決定理由において、請求人の商標が著名商標であるということを判断されている事実は明らかであり(甲第60号証)、被請求人の主張は失当である。なお、請求人が、英国で出願された同一・類似商標に対する情報提供資料として提出した宣誓書を参考資料として提出する(甲第61号証)。
(イ) 混同のおそれ
被請求人は、答弁書において、本件商標は、引用商標1及び4のような「≡」を有さず、商標の態様が異なることを理由として、引用商標とは混同が生じていない旨主張している。しかし、たとえ引用商標1及び4が語頭部において「≡」をもつ態様であるにしても、全体としては「ESPRIT」の文字を表したものと認識し得るものである。また、引用商標1及び4は、欧文字「E」を「≡」のように表しているものの、請求人の保有する著名商標は、「E」を「≡」としていない「ESPRIT」(引用商標3)ないし「エスプリ」(引用商標2)についても妥当するものである。したがつて、語頭部を「≡」とした引用商標をことさら取り上げて本件商標との態様の相違を議論することは失当である。請求人の引用各商標の著名性については、請求書で述べたとおりであり、かかる事実に鑑みれば容易に「エスプリ」の称呼が生じ、著名商標「ESPRIT」が観念されるものと認められることから、被請求人の反論は成り立たないものである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証を提出している。
1.異議決定
本件商標に対しては、請求人から登録異議の申立てがなされ(異議2001−90765号)、平成14年5月21日に登録を維持すべき旨の決定がなされている(乙第1号証)。この決定において、本件商標は、商標法第8条第1項及び同法第4条第1項第15号に該当するものでないと認定されている。
2.商標法第8条第1項について
(1) 指定商品の類似
本件商標が、引用商標1との関係において、異議決定のとおり、本件商標の指定商品「ラベル(布製のものを除く。),シール,ステッカー,下げ札,その他の文房具類(「昆虫採集用具」を除く。)」と、引用商標1の補正後の指定商品「紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,型紙,裁縫用チャコ,紙製のぼり,紙製旗,荷札,印刷物,書画」とは、その用途、性質及び取引事情等を異にするものであるから、両者は互いに非類似の商品である。
よって、本件商標が商標法第8条第1項に該当する余地はなく、請求人の主張には理由がない。
(2) 本件商標の称呼
本件商標の称呼を検討するに、異議決定において、本件商標の称呼は「レスプリ」のみであるとされている。
(3) 審決例等
本件商標は、請求人が主張するとおり、フランス語の単語「esprit」にリエゾンした定冠詞「L'」が付加されたのものである。
そこで、定冠詞「Le」「La」「L'」の特許庁での扱いをみると、「LA ***」又は「LE ***」と表された場合は、審決において「***」の部分が独立し、「***」部分に対応した称呼が生じるものとされる場合があるとしても、「La Pastel」(乙第2号証)、「LE CHOUCHOU」(乙第3号証)、「Lecile」(乙第4号証)なども、一連にのみ称呼されるものと判断されている。
そして、「L'***」とりエゾンして表された場合は、審判事例は2000−13163号が発見されたのみであるが、この審決では「L'espoir」は一連にのみ称呼されるものとし、「ESPOIR」とは非類似と判断している(乙第5号証)。
なお、本件商標の指定商品「文房具」の分野においては、取引者・需要者がフランス語に通じているとは認められないことも考慮されなければならない。
これらの事情、そして本件商標は「L'」部分を含めて全体として統一されたデザインとされていることを踏まえると、一連に「レスプリ」とのみ称呼される商標と認定されるべきものである。
(4) 証拠の検討
請求人は、甲第55号証ないし甲第59号証を提出しているが、これらの審判決例は、フランスでの判断であることに留意しなければならない。「ESPRIT」に冠詞が着いて「LE ESPRIT」となり、これがリエゾンして「L'ESPRIT」と表記されることは、フランス語の文法にしたがったものである。
これらは、フランスにおける判断であるから、「L'ESPRIT」と「ESPRIT」とはフランス人にとって見れば単に冠詞の有無と理解されるにすぎず、両者は同一視されて当然である(甲第55号証及び甲第59号証)。また、「L'ESPRIT」と「L'ESPRIT PROVENCE」等との対比であり、「L'ESPRIT」と「ESPRIT」との対比ではない(甲第56号証ないし甲第58号証)。
(5) むすび
以上のとおり、本件商標と引用商標1とは指定商品において抵触するものではなく、加えて、称呼も非類似であり、本件商標が商標法第8条第1項に違反して登録されたとする請求人の主張には理由がない。
3.商標法第4条第1項第15号について
(1) 異議決定
異議決定は、本件商標の称呼「レスプリ」と異議申立人(請求人)の商標の称呼「エスプリ」とが非類似であることを前提として、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものとはいえないとしている。
(2) 請求人商標の周知性
請求人は、その商標「ESPRIT」が周知であると主張し、多数の証拠を提出している。しかし、かかる証拠においては、請求人の商標が本件商標の登録査定時(平成13年・2001年)に周知著名であった事実は証明されていない。
請求人が提出する使用実績を示す証拠は、1983年(甲第11号証)ないし1995年(甲第52号証)におけるものである。1995年といえば7年前であり、近時における使用実績は一切主張、立証されていない。
異議申立後、証拠を用意する十分な時間があったにもかかわらず、使用実績を示す新たな証拠が提出されていないことは、1995年を最後として、請求人の「ESPRIT」事業は衰退した、と推測される。自社の宣伝広告資料すら提出できないということは、請求人事業は事実上終焉しているとも考えられる。
これらの証拠によって、本件商標の登録時における請求人商標の周知性が立証されているとは認められない。また、特許庁における判断例として提出する審判・異議決定も甲第53号証は平成7年に「平成2年」に登録された商標を判断したものであり、甲第54号証は平成9年における判断であって、古いものである。
他方、平成13年10月に出された審決において、その周知性が否定されている(乙第6号証ないし乙第8号証)。そうすると、請求人の商標「ESPRIT」はかつては周知であったとしても、現在ではその周知性は喪失しているというべきである。
また、甲第55号証ないし甲第59号証においても、請求人商標の周知・著名性を認定したものは存在しない。
(3) 混同のおそれ
本件商標及び請求人商標の構成文字「ESPRIT」は「才気、気性」等を意味するフランス語であり、なじまれた言葉である。このようななじまれた既成語が、非類似の商品に対しても混同のおそれが生じるというためには、周知性が極めて高い場合を除き、単に「エスプリ」という称呼のみではなく、商標の態様の近似性も必要とされる。
すなわち、本件商標が引用商標と混同を生じるおそれがあるか否かを検討するに際しては、その態様も考慮しなければならない。このことは、上記乙第6号証及び乙第7号証の審決からも裏付けられる。
他方、本件商標は、手書き文字風に「L'esprit」と表したものであり、「≡」のような「E」を有さず、態様の相違は明らかである。
また、指定商品についても、請求人の商標はファッション関連商品を中心として使用されてきたものであり、本件商標の指定商品である文房具類はファッション関連として扱われるものではない。このことは、請求人がレターヘッドに使用した実績があるとしても、これらをシリーズ商品として展開していたとも認められない以上、判断に影響を与えるものではない。
(4) むすび
以上より、請求人の商標は、本件商標が登録された平成13年当時には「周知性」がなく、また、本件商標の指定商品と請求人がその商標「ESPRIT」を使用してきた中心的商品分野であるファッション関連商品とは近似性がないので、混同のおそれはない。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたとする請求人の主張には理由がない。
1.商標法第8条第1項について
本件商標の指定商品「ラベル(布製のものを除く。),シール,ステッカー,下げ札,その他の文房具類(「昆虫採集用具」を除く。)」と、引用商標1の指定商品「紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,型紙,裁縫用チャコ,紙製のぼり,紙製旗,荷札,印刷物,書画」とは、その用途、性質及び取引事情等を異にするものであるから、たとえ両者に同一又は類似の商標が使用されたとしてもその出所について誤認混同するおそれはなく、両者は互いに非類似の商品というべきである。
してみれば、本件商標は、引用商標1とはその指定商品が互いに類似するものでない以上、商標の類否について検討するまでもなく、商標法第8条第1項の規定に違反して登録されたものということはできない。
2.商標法第4条第1項第15号について
(1) 引用商標の著名性について
商標法第4条第1項第15号の適用との関係において、引用商標2ないし4が周知著名となっているか否かは、本件商標の登録出願時及び登録査定時の双方の時点において判断されるべきことは同法第4条第3項の規定からも明らかである。そこで、引用商標2ないし4が本件商標の登録出願時及び登録査定時において周知著名となっていたか否かについて検討する。
(ア) 引用商標の使用状況
請求人提出に係る甲第11号証ないし甲第52号証(各種雑誌・新聞等の抜粋写し)によれば、請求人を中心とするエスプリグループが、被服、アクセサリー、バッグ等のファッション関連商品について引用各商標と同一の構成態様からなる商標を使用し、相当程度広告宣伝を行い、各種雑誌等でも取り上げられていたことが認められる。
しかしながら、甲第10号証(エスプリ会社案内抜粋写し)によれば、「インターナショナル・セールス・オペレーション」と題する表には、日本について「STORES」、「FRANCHISES」、「SHOP−IN−SHOP」及び「SHOWROOM」がいずれもゼロとなっているほか、我が国における取引量等の具体的な状況が必ずしも明らかでない。しかも、上記各甲号証は、いずれも1983年から1995年の間に発行された雑誌、新聞等の写しのみであり、本件商標の登録出願時である平成12年(2000年)12月及び登録査定時である平成13年(2001年)5月の時点よりもかなり前のものである。他に、本件商標の登録出願時及び登録査定時において引用商標が使用されていることを立証する証拠はない。
しかして、昨今の世界や日本の経済情勢、社会情況等の盛衰・変動や変化の速さ等を考慮すると、数年前の情況をもって現在を語ることができないというべきであるから、上記各甲号証からして、引用商標が一時期ある程度知られていたことは推認できるとしても、本件商標の登録査定時における使用事実を立証する証拠がない以上、その知られている状態が本件商標の登録査定時にまで継続していたものと認めることはできない。
(イ) まとめ
そうすると、引用商標2ないし4は、本件商標の登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示する商標として我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものということはできない。
(2) 商標の類似性
(ア) 本件商標の構成
本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からなるところ、外観上、全体としてまとまりよく一体的に看取し得るものであって、これより生ずると認められる「レスプリ」の称呼も冗長なものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。そして、語頭の「L'」の部分がフランス語の定冠詞「Le」の短縮形であるとしても、本件商標の指定商品を取り扱う分野においては、フランス語が頻繁に使用されて浸透しているものともいえないことからすれば、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標の構成文字全体をもって一体不可分の一種の造語よりなるものと認識し把握するというのが相当である。
してみれば、本件商標は、その構成文字に相応して「レスプリ」の一連の称呼のみを生ずるものといわなければならない。
(イ) 引用商標の構成
他方、引用商標1及び4は、やや図案化されているものの、全体構成からみて「ESPRIT」の文字を表したものと認識されるものであって、「エスプリ」の称呼を生ずるものといえる。また、引用商標2及び3は、その構成文字に相応して「エスプリ」の称呼を生ずること明らかである。
(ウ) 本件商標と引用商標の類否
本件商標から生ずる「レスプリ」の称呼と引用商標から生ずる「エスプリ」の称呼とは、称呼の識別上重要な要素を占める語頭音において「レ」と「エ」の明らかな差異を有するものであり、この差異が比較的短い音構成からなる両称呼の全体に及ぼす影響は大きく、それぞれを一連に称呼した場合には全体の語調語感が相違し彼此相紛れるおそれはないというべきである。
また、本件商標と引用商標とは、その構成に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有しており、さらに、本件商標は特定の既成観念を有するものとはいえない造語よりなるものであるから、観念上、引用商標と比較すべくもない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(3) 混同のおそれ
上記(1)のとおり、引用商標2ないし4が取引者・需要者間に広く認識されているものとはいえないことに加え、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であって別異のものであることからすれば、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者が引用各商標ないしは請求人を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品が請求人又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如くその出所について混同を生ずるおそれはないものというするのが相当である。
(4) まとめ
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではないといわなければならない。
3.結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第8条第1項及び同法第4条第1項第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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