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Trademark Appeal Case

立体商標の形状識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第17501号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、商標の構成を別紙に示すものとし、第9類「保安用ヘルメット」を指定商品として、平成9年7月25日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の理由

原査定は、「本願は、「保安用ヘルメット」を指定商品とするものであるところ、本願商標は、半球状のものの先につばが付いたような形状からなる点にかんがみれば、容易に帽子やヘルメットの形状を表したものと認識し得ることから、これをその指定商品に使用したときは、その商品の形状を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用をするものを登録する立体商標制度を導入した。

立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状を含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)に商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。

そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まるというのが相当である。

また、商品等の形状は同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用をする必要があり、かつ、何人も使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。

そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用された結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品又は役務と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。

立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても、「3.(1)立体商標制度の導入▲3▼需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。

また、意匠法等により保護された形状について重ねて又は権利消滅後商標登録することにより保護することは知的財産制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることとなる。

(2)これを本願についてみれば、本願商標は、商品「保安用ヘルメット」の形状としてその一形態を表すものであるから、これをその指定商品「保安用ヘルメット」について使用しても、取引者、需要者は、単に商品の形状を表示したものと認識するにすぎないものと判断するのが相当である。

(3)請求人は、本願指定商品「保安用ヘルメット」においては、オートバイ走行時に被着して頭部を保護するという機能、目的に鑑みれば、頭部は人間の頭とピッタリ付着し且つ風の抵抗を少なくするために半球状でなくてはならず、風圧を避けるためには鍔部が必要であり、また軽量さを保ち且つ障碍物に当たりにくくするために他の構成を付加できないということから、半球状の頭部と鍔部のみから構成されていれば何人もこれを「指定商品(保安用ヘルメット)の形状自体であると容易に認識」する。しかし、本願商標を構成する立体的形状の第1の特長は鍔をアヒルの上嘴(赤、橙、青)及び下嘴(茶)を殀彷佛させる形状とした点、並びに第2の特長はヘルメット本体の下縁ライン(黄緑)を波形にした点にあり、これらの特長は他の「保安用ヘルメット」が全く備えていない斬新な形状であるから、本願商標は十分に出所表示力を備え得る形状である旨主張する。

しかしながら、本願商標は、保安用ヘルメットの鍔の部分をアヒルの嘴様及び本体の下縁部のラインを波形に形成した点において、通常の保安用ヘルメットとは異なる形状を示しているとしても、それは該商品の使用者の安全性(頭部の保護)、快適性(風の抵抗を少なくする)等を確保するための機能や商品の美感を高めるための目的で採用された形状・装飾(模様)と認めるのが相当である。

そうとすれば、請求人の主張する本願商標の保安用ヘルメットの形状の特長も機能、美感に係るものといえるから、それをもって、直ちに商品の出所を識別する自他商品の識別機能を有するものと認めることはできない。また、通常の保安用ヘルメットの形状とは異なるものであっても、それが商品の機能や美感に関わるものである以上は、これに接する取引者、需要者は、当該商品の形状を表示したものであると認識するに止まるものといわなければならない。

(4)請求人は、本田技研工業株式会社(以下、「本田技研」という。)の100%子会社であり、本田技研からライセンスを得て、平成1年7月13日本田技研が意匠登録を得た本願商標に係る立体的形状の耳当て有のヘルメットと耳当て無のヘルメットを1986年頃から販売してきており、本田技研の上記登録意匠は耳当て有のヘルメットに係るものであるが、その効力範囲は耳当て無のヘルメットにも及ぶから、本願商標に係る立体的形状とほぼ同一である耳当て無のヘルメットの独占的使用権を有しており、かかる独占的状態において過去10年間におけるハーフ型ヘルメット総数の5%を販売してきている。したがって、本願商標は商標法第3条第2項に該当する、と主張し、証拠方法として甲第1号証ないし同第8号証(枝番を含む。)を提出している。

提出に係る甲第1号証及び同第2号証(枝番を含む。)をみるに、請求人か本田技研の100%子会社であり、本願商標の立体的形状に耳当てを付けた意匠が意匠に係る物品を「ヘルメット」とし、本田技研を意匠権者として登録されている事実を認めることができる。

しかしながら、本願商標の立体的形状は耳当ての無いヘルメットに係るもので、上記登録意匠とは明らかに相違するものであるばかりでなく、意匠法における保護は、同法の目的に基づいて、保護の対象、要件、権利の範囲、効力等が定められているものであって、これらに従った登録意匠の実施と商標の使用とは明らかに異なるものであるから、意匠登録による独占を理由として使用により自他商品の識別力を有するに至ったものと認めることはできないばかりでなく、却って、意匠権消滅後は何人もの実施が予定されているものであるから、請求人のこの点に関する主張は採用できない。

さらに、甲第5号証(1986年ないし1998年において本願商標に係るヘルメットを販売するため頒布したパンフレット・カタログ類)をみるに、該パンフレット類に表された商品は本願指定商品「保安用ヘルメット」と認められ、その中の本願商標に係るヘルメットの頭部の前面部に「ami」「AMiCABLE」「AMICABLE」の文字よりなる商標と認識し得る表示がそれぞれ付されており、また、該パンフレット類には、「HONDA」の文字からなる商標と認識し得る表示が付されている。

そうとすれば、ヘルメットの頭部の前面部に前記の文字を表してなるものは、立体的形状と文字の平面標章より構成されており、本願商標と使用に係る商標が同一のものとはいえないものである。

また、該パンフレット類に表されたヘルメットは、商品の形状そのものを表したものであって、頭部の前面部に付された文字及び該パンフレット類に表された「HONDA」の文字よりなる商標によって、商品の出所について識別されているものとみるのが商取引の実際に照らして自然というべきで、これらのパンフレット・カタログ類によって本願商標(保安用ヘルメットの立体的形状)それ自体が自他商品の識別標識として認識されたとみることはできない。

そして、他の甲号証をみても本願商標が商標法第3条第2項に該当するということはできない。

(5)したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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