Trademark Appeal Case
形状の識別力と機能性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年審判第16592号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、商標の構成を別紙に示すものとし、第7類「育苗箱」を指定商品として、平成9年5月12日に立体商標として登録出願されたものである。
2 原査定の理由
原査定は、『本願商標は、「育苗箱」を指定商品としているが、本願商標に係る全体の形状がおおむね薄い箱形であるなどの構成上の特徴に鑑みれば、指定商品である育苗箱の一種を表したものと容易に認識されるものであることから、これをその指定商品に使用したときは、その商品の形状を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。』旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的に表された標章であって、商品又は役務について使用をするものを登録する立体商標制度を導入し、その中には商品若しくはその包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含まれるとしても、商品等の形状は、それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)に商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、この商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、全体としてみた場合商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まるというのが相当である。
また、商品等の形状は同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人も使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係しない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標は、使用された結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品又は役務と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても、「3.(1)立体商標制度の導入▲3▼需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、特許法等により保護されている形状について重ねて又はその権利消滅後商標登録することにより保護することは知的財産制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることとなる。
(2)▲1▼これを本願についてみれば、本願商標は、指定商品「育苗箱」の一形態を表すものであるから、これを指定商品に使用しても、取引者、需要者は単に指定商品の形状を表示したものと認識するにすぎないものと認められ、自他商品の識別標識としては機能しないものと言うべきである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
▲2▼請求人は、『本願商標に係る「育苗箱」は、箱の底部表面に逆角錐状の凹部が並設され、この凹部同士が隣接する角部に○形状の突部を設け、この○形状の突部に□形状の穴を設けた点において極めて特異な育苗箱』である旨主張し参考資料2乃至同6を提出している。
しかしながら、参考資料3は昭51−31282に係る実用新案公報であるところ、これによれば、実用新案登録請求の範囲には、「トレー状の育苗箱1の底板2に逆錐形の多数の凹部3を基板目状に連接し、これら凹部の上縁の交わる交点に孔5を貫設してなる育苗箱」とあり、当該考案の効果として、考案の詳細な説明には、「・・・各苗株の根毛はほとんどからみ合うことなく独立して育苗することができる。したがって、従来のように田植えに当たり根切り行う切要がなく、かつまた田植機にかけたとき、苗の取り出しも容易であり、きわめて能率のよい移植作業を行うことができる効果がある。・・・」とある。
してみれば、請求人主張の極めて特異な育苗箱の形状は、専ら、田植時の田植え又は田植機の効率的な作業に適した苗を育てるために採択された形状と認められ、これが直ちに指定商品「育苗箱」について自他商品の識別標識として機能するとは認め難く、また、本願商標が育苗箱と認識されるものであることは前示認定のとおりである。
なお、請求人は、本願商標に係る「育苗箱」について、特許、実用新案登録及び意匠登録を受けている旨主張し、参考資料2乃至同6を提出しているところ、このような商品の形状に商標登録を認めるべきでないことは前示のとおりである。
▲3▼また、請求人は、本願商標は使用により識別力を取得した旨主張し、甲第2号証の1乃至同号証の10を提出している。
しかしながら、提出に係る証明書は、請求人の一人が予め用意した書面を用い、各県1業者が当該県において(新潟県については2業者)、『・・・「住商のダイヤカット育苗箱」として、○○県においては取引者間に広く知られている。』旨を9県について証明したものであり、この証明書のみをもって、本願商標が商標法第3条第2項の要件を満たすものと認定することは困難と言うべきである。しかも、本件請求人(出願人)は、証明に係る「住友商事プラスチック株式会社」を含めた3名である。
4 結論
以上のとおり、本願商標は、指定商品の形状を表示するものとし、商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、正当であって取り消す限りでない。
よって結論のとおり審決する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。