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Trademark Appeal Case

略語と規格名称の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2004−90023(T2004−90023/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4717079号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1.本件商標

本件登録第4717079号商標(以下「本件商標」という。)は、平成14年10月18日に登録出願、「EV−Formula」の文字を横書きしてなり、第12類「自動車用タイヤ」を指定商品として、同15年10月10日に設定登録されたものである。

2.登録異議の申立の理由

登録異議申立人は、「本件商標は、『電気自動車のフォーミュラ規格車両に装備されるタイヤ』の意を認識させるから、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものであって、商標法第3条第1項第3項に該当し、上記商品以外の商品について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨主張している。

3.本件商標に対する取消理由

当審は、商標権者に対し、意見書を提出する期間を指定して、平成16年9月27日付けで商標登録の取消の理由を通知した。その理由の趣旨は次のとおりである。

(1)本件商標の構成中「EV」の文字は、「電気自動車」を意味する「Electric Vehicle」の略語を表したものであり、このことは、(株)自由国民社・2002年1月1日発行の「現代用語の基礎知識」(甲第1号証)、(株)集英社・2001年1月1日発行の「imidas’01」(甲第2号証)等において明らかである。

また、「Formula」の欧文字については、本来「方式、公式」等の意味を有する英語であるが、その指定商品との関係においては、「FIA(国際自動車連盟)の車両規則で定められた規格を表す語で、一般には車両規定で決められるレース専用車両を指す」ものである。(株)三栄書房・2003年11月発行「自動車情報事典 大車林」(甲第24号証)

そして、規格第1号は、フォーミュラー1(F1)と称され、その他フォーミュラー3(F3)などがある。現在は、タイヤとホイールが露出した屋根のない一人乗りのレーシングカーを総称して「フォーミュラーカー」と呼んでいる(前出「自動車情報事典 大車林」)。

してみると、本件商標は、「電気自動車」を表す「EV」の文字と、「レース専用車両」を表す「Formula」の文字とをハイフンで結合してなるものであるから、これを本件商標の指定商品「自動車用タイヤ」について使用するときは、該商品が「電気自動車のレース専用車両(フォーミュラー規格車両)に装備されるタイヤ」の意味合いを容易に認識させるものであって、単に該商品の品質、用途を表したものと言わざるを得ない。

(2)ところで、フォーミュラー1(F1)のレースは、高速を競う自動車競技であり、これまで電気自動車の参加は想定できなかったが、申立人の提出した2004年1月22日付け讀賣新聞朝刊(甲第36号証)によれば、以下の記事が掲載されている。

「慶応大学・電気自動車研究室が開発した超高速の電気自動車が完成。イタリアでセダン型電気自動車としては、世界最速の時速400キロに挑戦する。元F1レーサーの片山右京が運転を担当し、国内では高速で走れるコースがないため、二月下旬にイタリアへ空輸する。」

(3)上記のように、既に電気自動車のフォーミュラー1対応可能な高速車両も出現していることからすれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、前述のとおり、電気自動車のレース専用車両(フォーミュラー規格車両)に装備されるタイヤ」と理解され得るものとみるのが相当であるから、そうとすれば、本件商標を上記商品に使用するときは、商品の品質、用途を表示するにすぎないものと言わざるを得ない。

また、本件商標を、上記文字に照応する商品以外の商品について使用した場合は、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。

4.商標権者の意見(要旨)

上記3.に対し、商標権者は、要旨以下のとおり意見を述べている。

(1)「EV」の文字は、必ずしも「電気自動車」の略語とは認識されず、英語辞典によれば「English Version(聖書の英語版)」、「Electric Volt」等を意味するものとなっており、「電気自動車」を認識できるのは自動車業界専門のごく一部である。

(2)本件商標の指定商品は、「自動車タイヤ」であって、その関係において「Formula」が商品の品質を表すものとして使用されている事実はない。

(3)慶応大学自動車研究室が開発し時速400キロの高速を出す電気自動車は、フォーミュラーカーのレースに出場することを目的して開発されたものではなく、電気自動車の「Formula」規格の自動車レースが近い将来開催されるという主張は、非現実的である。

(4)以上のことから、本件商標は、「EV−Formula」と一体不可分に結合されてなる特定の意味を持たない造語であり、いまだかって、指定商品「自動車用タイヤ」について、商品の品質等を表示する語として使用されている事実はなく、このような事実から需要者、取引者は、本件商標から具体的かつ、直ちにどのような意味内容を有するか具体的に認識することは困難である。したがって、本件商標は、十分に自他商品の識別力を有するものであり、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。

5.当審の判断

本件商標の構成中「EV」の文字は、「電気自動車」を意味する「Electric Vehicle」の略語を表したものであることは、前述の「現代用語の基礎知識」、「imidas’01」等において記載があることからも明らかである。

そして、上記雑誌は、自動車の専門雑誌ではなく一般人向けの雑誌と言えるから、「EV」の文字から「電気自動車」を認識できるのは自動車業界専門のごく一部の者であるとする権利者の主張は採用できず、むしろ、本件商標の指定商品「自動車用タイヤ」との関係を考慮すれば、当該商品に接する取引者、需要者は、「EV」の文字からは「電気自動車」を認識するものとみるのが相当である。

また、「Formula」の文字は、一般には「レース専用車両(フォーミュラー規格車両)」の意を認識させるものであることは、前記3.で示したとおりであるが、その中には、F1競技のように高度な装備を要するものや、単なる競技用自動車(公道を走ることはできない。)ものも含むものと解される。

ところで、インターネット(YAHOO・JAPAN)で「EVフォーミュラ」及び「EVフォーミュラー」の語を検索すると、前者で32件、後者で17件の検索結果を得ることができる。

このことは、既に「EVフォーミュラ(ー)」の語が相当程度、理解、認識され、かつ、使用されていることを示すものと言えるものである。

その一例を示すと、(1)岐阜県各務ヶ原市の株式会社ゼロスポーツのホームページ(以下「HP」という。)には、「『EVフォーミュラー』(EV=Electric Vehicle)電気自動車のフォーミュラーカー。日本での最高速度を出した未来の車・・・昨年の12月、富士スピードウェイで電気自動車としては、国内最高の276.6キロを記録しました。」の記載がある(http://www.ctv.co.jp/zeppin/contents/2001/0818/z5.html)。

(2)「KP Club’s」のHPには、「夜のお台場を疾駆したEVフォーミュラー、X1」として、レーシングカータイプの電気自動車が掲載されている( http://www.kawamura-kikai.co.jp/kpevrrp7.htm)。

(3)株式会社ゼロスポーツが掲載された新聞報道として、2000年12月5日付北陸中日新聞に「『ZERO EVフォーミュラ』は、ガソリン車のような大きなエンジン音もなく、レース場を滑るように疾走、直線コースを計3回計測した結果、2回目に276.6キロを記録した。」の掲載が認められる。また、同年1月8日の中日新聞には、「自動車部品、用品メーカー『ゼロスポーツ』が電気自動車『EVフォーミュラ』を開発、千葉幕張メッセでオートサロンに展示」の記事がある。同日付けの東京新聞にも同記事が掲載されている(http://www.zerosports.co.jp/company/shinbun.html)。

(4)また、環境省のHPにも、平成13年12月1日開催された「大気環境フォーラム」の報道発表資料の中に、「低公害車の展示 商工会議所正面エントランス:4台『EVフォーミュラー、プリウス他』」の掲載がある。

(http://www.env.go.jp/press/press.)

(5)さらに、東京モーターショー2003年のHPには、「出展テーマの『スピード&エコ』を象徴するEVフォーミュラをはじめ、最先端を凝縮したディスプレイが特徴」の記載と、本件商標権者の紹介の中に「メインステージにはスピード&エコの究極EVフォーミュラも展示される予定だ。」との記載も認められる(http://motorshow2003.yahoo.co.jp/parts/10.html)。

以上のことから、「EV−Formula」の文字は、電気自動車のレース専用車両(フォーミュラー規格車両)、あるいは(公道を走ることのできない、競技用の)フォーミュラタイプの電気自動車の意を容易に認識させるものである。

そして、上記自動車が特殊な競技用自動車であるところから、当該自動車に適した、あるいは、当該自動車用のタイヤも存在するとみるべきであって(たとえば、スリックタイヤ「Slick tire」や特殊なゴム質のタイヤ等)、そうとすれば、本件商標をその指定商品「自動車用タイヤ」に使用するときは、取引者、需要者は、当該商品が「電気自動車のレース専用車両用タイヤ」、あるいは「フォーミュラタイプの電気自動車用タイヤ」であることを表したもの理解、認識するものと言わざるを得ない。

してみれば、本件商標「EV−Formula」は、その指定商品「自動車用タイヤ」の品質、用途を表すにすぎず、また、上記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質、用途について誤認を生ずるおそれがあるものと言わなければならない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、商標法第43条の3第2項により、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり、決定する。

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