結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2000−35333(T2000−35333/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4231581号商標(以下「本件商標」という。)は、平成9年9月30日に登録出願、別掲(A)に示すとおり、「アスチノン」の片仮名文字と「ASTINON」の欧文字とを二段に横書きしてなり、第5類「薬剤,歯科用材料,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液」を指定商品として、同11年1月22日に設定の登録がされたものである。
請求人が、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するとして引用する登録第567284号商標(以下「引用商標(1)」という。)は、昭和32年8月15日に登録出願、別掲(B)に示すとおり、「Hoechst」及び「Rastinon」の欧文字並びに「ヘキスト」及び「ラスチノン」の片仮名文字をそれぞれハイフンで結合し、「Hoechst−Rastinon」、「ヘキスト−ラスチノン」と上下二段に横書きしてなり、旧々第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として昭和36年3月10日に設定の登録がされ、該商標権は、同56年6月30日、平成3年6月26日及び同13年2月6日の3回に亘り、存続期間の更新登録がされているものである。
同じく、登録第856892号商標(以下「引用商標(2)」という。)は、昭和43年5月10日に登録出願、別掲(C)に示すとおり、「ヘキスト ラスチノン」の片仮名文字を横書きしてなり、旧第1類「化学品、薬剤、医療補助品」を指定商品として、昭和45年5月19日に設定の登録がされ、該商標権は、同55年9月26日、平成2年7月27日及び同12年3月21日の3回に亘り、存続期間の更新登録がされているものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求めると申し立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証を提出している。
(1)請求人へキスト・アクチエン ゲゼルシヤフトは、1863年ドイツのマイン河畔フランクフルトにおいて、染料の製造を目的として創立され、戦前のイージーファルベン時代を経て、1951年改組再建され、現在では世界各国に、14万8千人余り(1996年末)の従業員を擁する総合化学会社として、高分子材料、有機化学品、染料、無機化学品、ポリエステル、塗料原料、医薬品、農業関連製品、情報関連製品など多方面にわたる製品の研究開発製造に意欲的に取り組み今日に至っている。
それ故、品質優秀な上記請求人製品の代表的出所標識たる「HOECHST(Hoechst)」は、国際間に通用する「ヘキスト」「ヘヒスト」の称呼と共に日本の当業者・需要者間に広く知られ著名となっていることは、特許庁においても顕著な事実と確信する。(甲第4号証ないし甲第7号証)
(2)以上の事実を念頭に、本件商標と引用商標とを比較検討する。
本件商標は、「アスチノン」の片仮名文字及び「ASTINON」の欧文字を上下二段に左横書きしたものであるが、かかる構成の場合、上段の仮名表示が下段の欧文字の字音を定めたものと看取されるから、これより「アスチノン」の称呼が生ずるものである。
一方、請求人が引用する引用商標(1)は、ハイフン「一」で結合した「Hoechst」及び「Rastinon」の欧文字並びにハイフン「一」で結合した「ヘキスト」及び「ラスチノン」の片仮名文字が、常に一体不可分のものとして特定の語義を有する熟語を形成し、親しまれているものとみなければならない格別の事情が存するとも認められず、それぞれの文字部分が自他商品の識別標識として機能を果たすものであり、それぞれの文字部分に照応して生ずる称呼をもって取引に資されるものである。
さらに、「HOECHST」「Hoechst」の欧文字及び「ヘキスト」の片仮名文字は、指定商品を取り扱うこの種業界において、代表的出所標識としてのいわゆるハウスマークを表したものと認め得るものであり、引用商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者・需要者をして、「Rastinon」の欧文字及び「ラスチノン」の片仮名文字が商品毎の個別標識としてのペットマークと認識せしめられ、繁忙な商取引においては、ハウスマークの文字部分を省略し、ペットマークの文字部分「Rastinon」に相応して生じる「ラスチノン」の称呼をもって取引に資される場合が決して少なくないものである。
同様に、引用商標(2)「ヘキスト ラスチノン」も、これより全体として「ヘキストラスチノン」の称呼が生ずるものであるが、「ヘキスト」の片仮名文字は、代表的出所標識としてのいわゆるハウスマークを表したものと認め得るものであり、これをその指定商品について使用した場合、これに接する取引者・需要者をして、「ラスチノン」の片仮名文字が商品毎の個別標識としてのペットマークと認識せしめられ、繁忙な商取引においては、ハウスマークの文字部分を省略し、ペットマークの文字部分「ラスチノン」の称呼をもって取引に資される場合も生じ得るものである。
しかして、引用商標は、全体として「ヘキストラスチノン」の称呼を生じる他、「Rastinon」「ラスチノン」の文字部分に相応して「ラスチノン」の称呼をも生ずるものである。
そこで、本件商標より生ずる「アスチノン」の称呼と、引用商標より生ずる「ラスチノン」の称呼について比較すると、両称呼は5音中第2音以下の「ス」「チ」「ノ」「ン」のすべてを共通にし、異なるところは、語頭音の「ア」と「ラ」の差異にすぎない音である。
しかして、その差異音である語頭「ラ」の音は、舌先が硬口蓋に向かって反り上がり、その間隙を呼気が流れ出る摩擦音(r)と母音(a)とが結合されたもので、発声上比較的「ア」(a)の音に近い印象を与え、しかも他の4音を同じくするもであるから、両者はそれぞれを一連に称呼した場合、全体の語感語調が極めて近似したものとなり、称呼上相紛れるおそれがあるものと言わざるを得ない。
したがって、両商標は称呼において類似する商標であり、かつ指定商品も互いに抵触すること明らかである。
因に、上記請求人の主張するところが正当なるものであることは、本件と同種事件で商標全体として相互に称呼類似と判断された特許庁における審決例を参酌すれば容易に明らかになるものであり、本件もまた同様に類似するものと判断されて然るべきものと考える。(甲第8号証ないし甲第13号証)
また、さらに述べれば、商標の類否判断にあたっては、指定商品との関係をも考慮すべきであるとされているが、本件指定商品は人体に重要な影響を与えるものであるから、その商標の類否判断は厳格に為されなければならないことは言うまでもない。
したがって、上述の点から総合的に勘案した場合、本件商標と引用商標との類否判断に関する請求人の主張は誤りのないものであると確信する。
「Hoechst Rastinon」「ヘキスト ラスチノン」又は「ラスチノン」(「Rastinon」)なる医薬品は、請求人が糖尿病治療剤に付して1955(昭和32)年3月11日以来多量に製造販売し、この種需要者間に広く認識されているものである。(甲第4号証、甲第14号証ないし甲第18号証)
茲において、引用商標と類似の称呼が生じ得る本件商標が指定商品に使用され取引市場に出現した場合、これを一見一聞した当業者ないし需要者一般は、該製品も請求人会社製のものではないかと、或は請求人と何らかの関係を有する会社の取扱商品ではないかと、請求人の出所と誤認混同することは充分に虞れられるのである。
以上の理由により、本件商標は、引用商標と称呼上紛らわしい商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当し、さらに、本件商標がその指定商品に使用され、市場に出現した場合、請求人の業務に係る商品と混同を生ずる虞れがあるので、商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は許されないものと思料する。
被請求人は、何ら答弁していない。
(1)商標法第4条第1項第11号の主張について
本件商標は、前記のとおり、「アスチノン」と「ASTINON」の文字よりなるところ、これら文字からは何ら特定の語義を看取し得ない造語というべきものであり、該構成文字に相応して生ずる「アスチノン」の称呼をもって取引に資されるものである。
他方、請求人の引用する各商標は、前記のとおり、引用商標(1)は、「Hoechst−Rastinon」、「ヘキスト−ラスチノン」の構成よりなり、引用商標(2)は「ヘキスト ラスチノン」の文字よりなるものであるから、各構成文字に相応していずれも「ヘキストラスチノン」の称呼を生ずるものである。
そして、引用各商標の構成中の「Hoechst」、「ヘキスト」の文字部分は、本件商標の指定商品を取り扱うこの種業界において請求人業務を表彰する代表的出所標識としてのいわゆるハウスマークとして認識されるであろうことは請求人主張の全趣旨に照らし相当である。そうすると、該構成中の後半の「Rastinon」、「ラスチノン」の文字部分は、請求人に係る個別商品の識別標識としての機能を果たし得る、いわゆるペットマークであると把握、認識され、該文字部分をもって取引に資される場合も決して少なくないものといえる。
したがって、引用各商標は、「Rastinon」、「ラスチノン」の文字部分に相応して「ラスチノン」の称呼をも生ずるものである。そして、これら文字からは何ら特定の語義を看取し得ない造語といえるものである。
そこで、本件商標より生ずる「アスチノン」の称呼と引用各商標より生ずる「ラスチノン」の称呼とを比較するに、両者は、語頭音において「ア」と「ラ」の音にその差異を有するところ、「ア」の音は、口を広く開き、舌を低く下げ、その先端を下歯の歯ぐきに触れる程度の位置におき、声帯を振動させて発する音であるのに対し、「ラ」の音は、舌面を硬口蓋に近づけ、舌の先で上歯茎を弾くようにして発する有声子音(r)と、母音(a)との結合した音節であるから、その調音方法、調音位置が相違し、その音質、音感が異なるものである。また、これら「ア」と「ラ」の音は、後続の音「ス」が摩擦音で比較的弱い音として発せられるのに比し、明瞭に発音されるものであるから、両称呼を一連に称呼した場合、称呼識別上重要な位置を占める語頭音における該差異音の差が全体の称呼に及ぼす影響は決して小さいものとは言い難く、その語調、語感が相違したものとして聴取される結果、両称呼は、互いに紛れるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標と、引用各商標とが称呼において互いに紛れるとする事由は見出せない。
さらに、本件商標と引用各商標とは、前記のとおりの構成よりなるものであり、その外観及び観念において類似するものとすることはできない。
また、請求人の挙げる審決例は、本件とは音構成、音の配列などにおいて事案を異にするものであるから、これを直ちに本件に当てはめることは適切でなく採用の限りでない。
したがって、本件商標は、引用各商標と類似するものではないから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとすることはできない。
(2)商標法第4条第1項第15号の主張について
次に、申立人提出の証拠を見るに、引用各商標が「糖尿病治療剤」について使用され取り引きされていることは認められるが、これらの証拠によっては、引用各商標が本件商標登録出願時に需要者の間に広く認識されていたとする点を認めるに十分なものとはいえないから、本件商標をその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして、直ちに引用各商標を想起し、請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如くその出所について混同を生じせしめるおそれはないものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
(3)結論
以上のとおり、本件商標は請求人主張の各法条の規定に該当するものとはいえないから、その登録は、商標法第46条第1項により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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